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レース・イベント

ついに一般ライダーと一緒に走行 MVアグスタ主催の「MOTO GENERATIONS」で記念すべき走行が!
2022年の9月に開催された箱根ターンパイクを貸し切り使用したツーリングイベント「やるぜ!箱根ターンパイク」により、一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)は、そのひとつの目標を達成したが、今回また新たな実績を積み上げることとなった。それが『一般健常者と一緒にサーキットを走行する』というものだ。
■取材・文:青山義明 ■写真:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト






 青木三兄弟の、三男・治親が代表理事を務めるSSPは、その実兄である次男・拓磨のバイクに乗るプロジェクト「Takuma Ride Again」を経て活動を展開してきたが、事故などでバイクを降りてしまった元ライダーのバイク再デビューを支援するため、2020年6月から障がい者を対象に「パラモトライダー体験走行会」を開催してきた。その体験走行会の先の一つの目標として、SSP設立当初から構想にあった、箱根ターンパイクを占有してツーリングするイベントを成功させている。

 その感動のイベントから約ひと月後には日本ミシュランタイヤの太田サイトでのパラモトライダー体験走行会を行い、さらにそこから半月後、今度はさらなる活動を展開した。それが一般健常者との混走によるサーキット走行会に参加するというものである。それが、10月30日(日)に静岡県にある富士スピードウェイで開催された「MOTO GENERATIONS in FUJI SPEEDWAY 2022」である。これは、MV AGUSTA JAPANが主催するイベントで、MVアグスタのオーナーが集まり、富士スピードウェイの本コースを走行するイベントとなっている。MV AGUSTA JAPANは以前からこのSSPのパラモトライダー体験走行会へ車両提供をしており、今回もMVアグスタ・ジャパンからの誘いもあって実現したもの。
 

青木宣篤・治親がしっかりと運営する「パラモトライダー体験走行会」。今回は初めてのサーキット走行ということもあり、事前に同じ走行枠で走行をする一般の健常者を交えたブリーフィングも設けられた。一般の健常者と一緒に走れるというこの機会には、今後のパラモトライダーの意識にも大きな影響を与えるだろう。

 
 この「MOTO GENERATIONS in FUJI SPEEDWAY 2022」では、参加者を3つのクラスに分け、走行会を行っている。脊椎損傷による下半身不随の障がいを持ったパラモトライダーが6名、そして右足大腿部切断のパラモトライダー1名の合計7名のパラモトライダーは、クラス分けされた内の初心者クラスの走行枠に参加。いずれも箱根ターンパイクで行なわれた「やるぜ!箱根ターンパイク」に参加している面々である。
 

当日午前中にはスタンプ(シール)ラリーも開催。シールを集めるラリーのチェックポイントのひとつとして、SSPのブーステントが設定され、この場でSSPの活動をモトジェネレーションズ参加者に説明する機会ともなった。
「箱根を一緒に走った仲間のうちの6名に今回ボランティアで参加してもらいました」というのは関口和正さん。ただ参加して走るだけでなく、もっと広めていくために、大学時代のバイク仲間にボランティア参加に誘っての参加となった。

 
 MVアグスタのDRAGSTER 800 RRやSTRADALE 800を始めとする4台の大型車両を、今回の走行用にSSPが用意。その車両にはシフト操作を手元で行なえるようにカスタムしている。そのハンドシステムは、左ハンドル周辺に装備したスイッチを使い、シフトのアップとダウンのボタン操作をすることで、シフトペダル付近に備えているアクチュエーターを動かし、直接シフトペダルの操作を行う。足は自転車競技などで使用されているビンディングを使い、ステップとブーツを接続して固定。膝が開いてしまうことを制御するためのシートベルトで大腿部も固定する。
 

MVアグスタ・オーナーにも車両を見てもらおうと、SSPのブース前に車両を展示した。実際にどのように動かしているのか、と参加した一般健常者からもそのシステムについての質問も飛び交った。

 
 青木三兄弟の長男・青木宣篤氏と全日本ロードレース選手権に参戦してきた今野由寛氏が先導を担い、先導車1台に付き2名ずつ引っ張る形で、走行枠ひと枠で4台が走行を行なった。このパラモトライダーをサポートするボランティアスタッフは、今回30名ほどが集まったが、同時に4台がコースインし同時にピットに戻るため、ボランティアスタッフも4台それぞれにつき、バイクを支えることとなった。走行枠は初心者クラスと言いながらも、追い抜きも可能な走行会となっている。その中でパラモトライダーも先導車付とはしながらも、健常者と一緒になって自由に走行をすることとなった。
 

緊張するパラモトライダーの体調チェックも欠かさない。また、ピット前で乗降の支えをするボランティアスタッフの安全を考慮し、パラモトライダーの走行のピットアウト&インのタイミングは一般の参加者と少しずらすことでアクシデントにも配慮。

 
 秋も深まり、冠雪した富士山、そして富士スピードウェイの周囲の山々もしっかり落葉となり、早朝は少々肌寒い気候であったものの、快晴という素晴らしい天候の下、「MOTO GENERATIONS in FUJI SPEEDWAY 2022」は開催となり、7名のパラモトライダーは、富士のコースを堪能した。
 

「箱根でのツーリングから約ひと月。その良い思い出に浸っている間もなく、富士での走行になってしまいました。今日は緊張もあったけど、皆さんについていくだけで」と右大腿切断をしている囲 美和さん。

 

「生まれて初めての富士スピードウェイでしたけど、富士は広くて路面も良くて、走りやすいですね。今までの中で一番走りやすかった」と古谷 卓さん。「ダンロップコーナーでバイクを少し寝かせられたかな」

 

「先導付の走行ですが、周回を重ねるごとにペースアップしてくれたので、すごく楽しめました。なにより、健常者の方々と一緒に走って、両者が分け隔てなくバイクを一緒に楽しめる機会のきっかけになれば」と辰己晃一さん。

 

「箱根のツーリングもそれはそれでよかったんですが、思いっきりアクセルを開けてコーナーを抜けていく感覚はすごく久しぶりで、このスピード感もバイクのひとつの楽しさだというのがよくわかりました」と関口和正さん。

 

20数年ぶり、車いす生活になって初の富士での走行となった阿部一雄さん。鈴鹿で2回の走行を経験しているものの「鈴鹿とは違う感動があります」と。「ただただボランティアスタッフの皆さんに感謝しています」

 

「レーシングカートでこの富士の本コースを走行したことはあるけれど」と野口 忠さん。「見える景色が全然違うし、レーシングカートと比べるとそれほどスピードが出ていないのに、コースが圧倒的に短く感じました」と。

 

栗本秀幸さんは「楽しいのひと言に尽きますね、この広いサーキットで走行するっていう解放感も最高! 周り(の健常者)と同じように走れるんだってことを改めて気づくことができた」と走行後に話してくれた。

 

 



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2022/11/18掲載