サイドスタンドプロジェクトの活動は、
地道だが着実に展開されている
青木拓磨のライダー復帰計画を機に、障がいを負ってしまった元ライダーに「再びオートバイを運転する」“夢”と“希望”を応援する一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)を青木宣篤・治親兄弟が立ち上げた。
そして実際に障がいを持つ人に、バイクを楽しむ機会をと、パラモトライダー体験走行会を始めたのが6月のこと(https://mr-bike.jp/mb/archives/12741)。ハンドシステムを搭載したバイク、そしてヘルメットからツナギまでライディングギアをすべて用意し、サーキットというクローズの空間を使用しての走行イベントである。
6月のパラモトライダー体験走行会初開催では、過去にバイクレースの経験もある2名がこれに参加。そのひと月後となる、7月には場所を筑波サーキットに移して2回目の体験走行会を開催。この2回目の会場では、雨にもかかわらず、パラモトライダー初体験2名が参加し、会場には障がいを持つ7名が見学参加した。
そして、その筑波での見学者のうちの2名を集めての3回目のパラモトライダー体験走行会が、8月21日(金)、第一回目と同じ千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。
今回は、第一回目から毎回参加している野口忠さんが継続参加。それ以外の新規参加者は、1名がその野口さんの甥にあたる野口輝さん(33歳)。一般道でバイク乗車時にクルマの飛び出しによる事故で、脊椎損傷(腰椎L2)で2年前から車いす生活となっている。もう一人の、前田高豪さん(49歳)は「脳動静脈奇形」という病名で足の自由が効かないという(足の感覚はある)。趣味の二輪レース中にサーキットで発症し、以後25年にわたって車いす生活となっている。ともに第2回の筑波での体験会に来場し、今回の初参加につながった。
なみに、青木拓磨選手は、前週行われたドイツ・ベルリンでジャガーの電気自動車レースに参戦後、帰国はしているものの2週間の自主隔離中ということで、今回は残念ながら不参加。
この日の袖ケ浦周辺は、朝からすでに気温が上昇し、午後にはさらに陽射しがきつくなり、厳しい残暑の一日となった。この天候下では、健常者でも熱中症へのリスクが高くなるが、脊椎損傷を負っている方は体温調節障がいもあるのでさらに注意が必要。
そこで、今回SSPでは、リフトゲート付きの冷蔵トラックのレンタカーを会場に持ち込んだ。関係者用休憩スペースとして、走行を終えた参加者やスタッフが時折トラックに入って身体を涼ませ体調を整えていた。
初めての体験走行を終えた野口輝さんは満面の笑みでピットへ戻ってきた。やはりブランクは2年とほかの参加者よりも短かったこともあり、すぐにバイクに慣れた感じだ。公道では中型の400に乗っていたが、今回初めてビッグバイクで、「大きいバイクはすごく乗りやすかった」とコメント。
前田さんは「25年ぶりのバイクでした。目線が下がり気味だったり、乗っていた時の感覚をけっこう忘れていました。でも慣れれば乗れると思います。ちょうど今教習所に通い始めたようなもの。これからも走りたい」とコメントしてくれた。
このパラモトライダー体験走行会は順調に月に一回の開催となっている。が、今後の予定は未定という状況。あくまで開催は参加希望者とサーキットとの調整によるもので開催をして行くという。非常に順調に開催をしているようにみえるが、まだ、試乗車両、スタッフの数もあって、制限を掛けざるを得ない状況だ。
もちろん、参加者にしても、本来なら、乗ってみたいという意思を持って会場まで足を運べば、そのままバイクに乗れるのが一番なのだが、それも現在のところできない。というのも、帯同する理学療法士の先生が、参加希望者の身体の状態を確認し、走行の可否を判断し、スタッフともその対応を含めた情報共有をしたうえで実際に受け入れるという形となっている、からだ。
しかし、それでもこの日も会場に2名の見学者がやってきた。少しずつではあるが、着実にパラモトライダーの輪は広がってきている。これからもこの広がりに期待したい。
<取材・レポート:青山義明>
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