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バイク承前啓後






 

高山さんのバイク承前啓後 第55回 美しき排気系「Honda編 Part1」

 
 二輪車のデザインについて、こだわる点は人それぞれですが、私はエキゾーストパイプからマフラーまでの排気系の美しさに感動を覚えます。
 そのルーツは、1970年発売のホンダ ベンリイCB90でした。当時高校生の私は、スズキのハスラー90に乗っていました。高校生にとっては、コストパフォーマンスに優れた90ccスポーツが人気でした。ハスラー90は、CB90よりも加速が良く私の自慢でした。しかし、CB90の光り輝くエキゾーストパイプからメガホンマフラーにつながる排気系の美しさには完敗でした。
 美しい排気系は、見る楽しみと磨く楽しみがあり、芸術の域に達したと思えるモデルもあります。内燃機関に許された装飾品の一つなのかもしれません。
 では、私が惚れ惚れするホンダの排気系を紹介いたします。はじめの2台は、私のバイクライフには存在しなかった製品ですが、別格として紹介いたします。

●1949年 ドリームD型
 ホンダの本格的な量産二輪車の第一号として誕生しました。開発陣は、自分たちが造りあげたオートバイを見て、「まるで夢のようだ」と感激したと言います。ここから、ドリームという車名がスタートしました。ドリームD型は、今日でいう実用タイプに属すると思いますが、フレーム形状やカラーリングからは「働くバイク」の域を出た美しさを感じます。エキゾーストパイプは、2ストローク単気筒98ccのエンジンの後方から流れるようなラインで伸びています。

ドリーム
ドリーム0
1949年 ドリームD型。

●1955年 ドリームSA
 ホンダ初の4ストロークOHC直立単気筒エンジンを搭載した250ccの高性能モデル。同系の350ccドリームSBは、1955年の浅間火山レースにおいて、セニアとジュニアクラスで優勝するなど、高性能ぶりを発揮しました。バーチカルエンジンならではの、力強く豪快なエキゾーストパイプが印象的です。

ドリームSA
1955年 ドリームSA。

●1969年 ドリームCB750FOUR
 日本はもとより、世界に衝撃を与えたナナハン。初めて実物を見た時の驚きは、今でも記憶に残っています。美しいというより、4列に並んだエキパイには圧倒されました。

ドリームCB750FOUR
ドリームCB750FOUR
1969年 ドリームCB750FOUR。

●1970年 ベンリイCB90
 若者に人気の90ccロードスポーツでは、他社の2ストロークエンジンが最高出力を10.5PSまで高めていました。ホンダのCS90は、扱いやすさや燃費の良さで多くのファンを獲得していましたが、若者にとっては最高出力8PSが不満の一つでした。
 そこでホンダがこのクラスに投入したのが、やや前傾の直立タイプの新型エンジンを搭載したCB90です。最高出力は10.5PSを実現したのです。直立型の4ストロークエンジンならではの美しい排気系です。

ドリームCB750FOUR
ドリームCB750FOUR
1970年 ベンリイCB90。

●1970年 ドリームCB350 エクスポート
 バーチカルツインエンジンから流れるようなラインを描いてメガホンマフラーにつながる、まさに流麗かつダイナミックなデザインです。エクスポートタイプのツートーンカラーによって、さらに引き立てられています。同系で250ccクラスのドリームCB250エクスポートもラインナップされていました。

ドリームSA
1970年 ドリームCB350 エクスポート。

●1971年 ベンリイCB50
 CBの最小排気量として、若者に人気を博したロードスポーツモデルです。ロードレースマシンのようなロングタンクにショートシート、そしてバーチカルエンジンから伸びる排気系は、50ccとは思えない質感があります。

ドリームCB750FOUR
1971年 ベンリイCB50。
ドリームCB750FOUR
マフラーは先端が切り落とされたようなメガホンタイプになりました。1976年のCB50のカタログより。

●1974年 ドリームCB400FOUR
 4into1のエキゾーストシステムは、ホンダの量産二輪車では初めての採用です。オイルフィルターを避けて右側に配置された4本のエキパイは、まさに芸術品の域に達したと言っても過言ではないでしょう。このCB400FOURの通称「集合マフラー」は、他社にも大きな影響を与えました。

1974年 ドリームCB400FOURR
1974年 ドリームCB400FOUR
1974年 ドリームCB400FOUR。

●1977年 CB125T-Ⅰ
 新設計の前傾2気筒エンジンは、16PSの最高出力を11,500回転で発揮する高回転型エンジンでした。レッドゾーンは12,000回転からです。180°クランクによって、どこまでも吹き上がるような気持ちの良いエンジンでした。私が新車で初めて購入したバイクです。もちろん、エンジンと美しい排気系に魅せられました。

1977年 CB125T-Ⅰ
1977年 CB125T-Ⅰ。
1977年 CB125T-Ⅰ
1977年のカタログより。

●1979年 CBX
 空冷4ストローク・DOHC・6気筒1000ccのエンジンは、迫力満点。輸出専用車のため、発売当初は日本で見ることはほとんどありませんでした。最もエンジンが威張っているバイクだと思います。

1979年 CBX
1979年 欧州仕様。
1979年 CBX
1980年 アメリカ仕様。

CBXのカタログより0
1981年 CBXのカタログより。

●1980年 CB250RS
 単気筒でありながら、ツインエキゾースト、ツインマフラーの排気系がスタイリングのポイントでもありました。軽快な走りを得意とするオールマイティなスポーツモデルとして人気を博しました。エキパイとマフラーを磨くには時間はかかりますが、楽しい作業でした。私の愛車でもありました。

1980年 CB250RS
1980年 CB250RS。
1980年 CB250RS
右のGB250クラブマンもツインエキゾーストでした。

●1981年 CBX400F
 他社が400ccクラスに4気筒DOHCを採用し高性能化が進む中、ホンダはホークシリーズの2気筒で戦っていました。ホンダファンの期待に応えて新たに投入したのが、4ストローク・DOHC・4バルブ4気筒のCBX400Fです。4本のエキパイは、「X」状にデザインされてマフラーへとつながります。CB400FOURのデザインを手掛けた佐藤氏の力作と言われると納得します。

1981年 CBX400F
1981年 CBX400F
1981年 CBX400F。


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2025/03/25掲載