6月の第一回開催から5か月が経ち、5回目のパラモトライダー体験走行会が、一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)主催で10月26日(月)に行われた。これまでのパラモトライダー体験走行会は、「一方通行で事故の危険性の低いクローズドの空間である」ということで、袖ケ浦フォレストレースウェイや筑波サーキットといったサーキットという場で開催してきたわけだが、今回はそのサーキットを飛び出して、自動車教習所という場での開催となった。
早朝から好天に恵まれたこの日、休校日である群馬県自動車教習所には、この体験走行会用のバイクやライディングギアが持ち込まれた。また、いつものボランティアスタッフ以外にも、隣接する群馬県警察本部交通部交通機動隊第2小隊特連班の8名が参加。普段は白バイを駆る頼もしい面々だが、この日は非番ということで、特連班の全員がボランティアでの参加となった。また、この群馬県内にR&D拠点「太田サイト」を持つ、日本ミシュランタイヤからも6名がボランティアで参加。未経験のボランティアスタッフということで、SSP専属理学療法士からの注意点や介助の仕方などのレクチャーなどがいつも以上に時間をかけて行われた。
青木宣篤・治親兄弟が立ち上げたこのSSPは、青木拓磨のライダー復帰計画を機に、障がいを負ってしまった元ライダーに「再びオートバイを運転する “夢”と“希望”」を応援する団体で、今回も2名のパラモトライダーがこれに参加した。
この体験走行会初の女性パラモトライダーである川口めぐみさんが前回に引き続いて2回目の参加となった。川口さんは、バイクツーリング中の事故で、胸椎(T12)損傷で、腰から下が不全麻痺となってしまっている。
そしてもう一人は、今回初参加となる関口和正さん。前回9月の袖ヶ浦での走行会に見学に来ていた。関口さんも12年前に林道ツーリング中に崖から転落した際に、肋骨骨折とともに胸椎(T9)を損傷し、あばらから下が完全麻痺という状態である。関口さんは、走行会の見学までは来たものの「もうバイクはいいです」と実際に乗るということは考えていなかったという。すでに自身のライディングギアも12年前に処分していたということだったのだが、そういったギア類もレンタルができることでハードルも低いし、見学の帰途で「やっぱりバイクに乗りたい、ここまでいろいろやってもらえるのに乗らないなんてもったいない」と今回の参加を決意した。
SSPでは、このパラモトライダー体験走行会のために、特殊な補助輪付きバイクを開発して、実際に走行会に投入し、さらに安全性や操作性など性能向上を行なっている。前回は後輪部分に装着するタイプの補助輪を開発した新しい車両を投入しているが、今回もまた新たな車両を開発した。今回投入されたのは、バイクではなく、ペダルナシの自転車。まずは、この自転車でバランスのとり方を学んでからバイクにステップアップするという段階を踏めることになる。エンジンがないからスタッフが手押しすることになるが、速度が低い分、危険性は低いということで、今回の2名の参加者もまずこの自転車で車両の傾きとそれを補正する動きを確認。そして補助輪付きバイクで走行練習からスタート。
今回は教習所のコースということで、いつものサーキットのパドックよりも長い直線を使用することができるため、この補助輪付きバイクでの練習走行はじっくりと行なえる。今回の2名ともがじっくりと補助輪バイクでの練習を行なった。関口さんは、直線走行だけでなく、教習所の交差点も曲がれることができたため、補助輪付き車両ではなく、大型車両に乗り換えての走行に移行。
教習所のコースはサーキットと比べると、コース幅が若干狭く、もちろんエスケープゾーンがないこともあり、大型車両での走行が難しいのでは、ということだった。が、最後は、宣篤が関口さんを先導し教習所のコースの外周を走行して、この日の体験走行会は、無事に事故なく終了した。今回サーキット以外でも体験走行会の開催が可能だということも確認できた。パラモトライダー体験走行会は、引き続き開催を予定しているが、今後の開催日程など、詳しくはSSPのホームページで告知されるのでそちらを参照していただきたい。
(レポート・撮影:青山義明)
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