HONDA CRF250L<s>/CRF250 RALLY<s> 車両解説
ホンダの新世代オフ車としてCRF250Lが登場したのは、2012年5月。『On(日常)を便利に、Off(週末)を楽しむ ちょうどいい相棒 New On & Off Gear』をキーワードに2011年の東京モーターショーで国内デビューを果たして以来、多くのホンダ・オフ車ファンの注目を集め、2012年5月の発売と同時にベストセラーとなった。発売にあたって、強調された“オン・オフ”のコンセプト。本格的なオフロード・マシンではない、というのは東京モーターショー発表時にも強調されていたとおりだったが、“オン・オフ”の意味が、最近のトレンドとなっている一般的なオン・オフマシンとはちょっと違い、それは日常使いの“On”と、週末の楽しみとしての“Off”の“オン・オフ”を目指したというものだった。
本格的なオフロード競技を楽しむならモトクロッサーのCRF250Rがあり、はたまたエンデューロを堪能したいならCRF250Xがある。そう、今や一台のマシンでオフ・ジャンルのすべてをカバーしなければならなかったXRの時代とはまったく違う、ということなのだ。
発売と同時に、このジャンルのマシンを待ち望んでいた多くのユーザーの支持を得たのはご存知の通り。最初のマイナーチェンジは、2012年12月におなじみ“無限”のパーツとカラーを纏った“無限スペシャル”が登場しているが、本来の意味でのモデルチェンジは2015年2月に、兄弟車だったCRF250Mと同時にカラーチェンジが行われたのが初めだろう。
CRF250 RALLYは、2015年3月に開催された大阪&東京モーターサイクルショーでコンセプトモデルとして世界初公開され、多くの注目を集めた250アドベンチャーモデルがスタートとなっている。ただし実際に市販モデルとして登場したのは若干間が空いて、2017年2月のことだった。“ダカールラリー”参戦マシンのCRF450 RALLYのレプリカといえるスタイリングほぼそのままのイメージで発売された。
「ザ・ダカールレプリカ 週末の冒険者へ」を開発コンセプトに、ダカールラリー参戦マシンCRF450 RALLYのフォルムを始め、その開発思想までも受け継いで開発されたという本格的アドベンチャーモデルだった。ウインドプロテクション性能に優れ、快適な高速巡航を可能とする大型スクリーンをはじめ、ラリーマシンと同様のフレームマウントで、個性的なフロントビューを印象付ける左右非対称の二眼LEDヘッドライトを採用。また、未舗装路での走行を考慮したロングストロークの前・後サスペンションを採用するなど、250ccクラスの枠を超えた存在感を演出しての登場だった。
エンジンは、CRF250Lで定評の低回転域での力強いトルクと高回転域での伸びのある出力を両立する、扱いやすい特性の水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、250㏄エンジンを搭載。改良されたCRF250L/Mシリーズの2017年モデルと同一の出力、トルクを発揮。ブレーキシステムには、不意なブレーキ操作時や急な路面変化によるタイヤロックを抑制するABSもタイプ設定された。また、前・後サスペンションを変更し、シート高を65mm低くすることで足つき性を高めたType LDもタイプ設定と至れり尽くせり。
“On(日常)を便利に、Off(週末)を楽しむ ちょうどいい相棒 New On & Off Gear”をキーワードに登場したCRF250Lの思想に、さらに“長距離”と“オフ寄り”の長い脚がプラスされたアドベンチャーマシン、それがCRF250 RALLYだった。
CRF250 RALLYのモデルチェンジとしては、2018年3月に新色のブラックが追加されている。それまでのエクストリームレッドと合わせ2色のカラーバリエーションとなった。
CRF250Lのモデルチェンジとしては、2017年2月にローダウンサスを採用したType LDが発売されたこと、また2018年3月に新色のブラックが追加され、それまでのエクストリームレッドと合わせ2色のカラーバリエーションとなったこと、RALLYバージョンの追加に合わせて型式名がMD38からMD44へ変更されたことなどがあげられる。
好評な販売を続ける(軽二輪車の販売ベスト10位辺りを常に記録してきた)CRF250シリーズだが、それ故かマイナーチェンジの回数も少なく、一番最近では、CRF250Lが2019年2月15日に、CRF250 RALLYは3月26日にカラーリングを変更して発売されたぐらい。ただ、ボディカラーのみではなく、フロントフォクカラーがブロンズに変更され、CRF250Lではホイールのリムカラーもブラックへと変更されるなど大がかりなマイナーチェンジだった。
実に8年振りの大幅モデルチェンジとなった2017年の改良では、オンロード性能はそのままに、オフロードでの走破性を高めるための変更が目につく。エンジン面では吸排気系のチューニングとしてインテーク側のカムシャフトを新しくし、吸気バルブタイミングを変更、吸排気効率の最適化を図った新設計エアクリーナーやエキゾーストパイプの採用など。またクラッチにはアシストスリッパークラッチを新採用。車体面では、全面見直しされた新設計のフレームにより剛性を最適化しつつ軽量化も図るなど見た目以上の変更が随所に行われている。
また、今回、サスストロークを従来モデルに対しフロント10mm、リア20mm伸長させた260mmに変更、オフロード走行における衝撃吸収やオンロードでの後心地を向上させた<s>タイプも発売となった。
2023年モデルは、CRF250Lに都会的で洗練された「スウィフトグレー」のカラーリングを新たに設定。CRF250L、CRF250L<s>にナックルガードを標準装備、そしてCRF250L、CRF250L<s>、CRF250 RALLY、CRF250 RALLY<s>すべてを平成32年(令和2年)排出ガス規制に適合させた。
今回はシリーズ全車のラジエーターグリルとサイドカバーの形状と前後サスペンションのセッティングを変更すると共に、車体色とグラフィクを変更。CRF250L(スウィフトグレー)とCRF250L<s>(エクストリームレッド)は車体色表記の変更はないが配色と、グラフィックを変更。CRF250 RALLY、CRF250 RALLY<s>(エクストリームレッド)も同様に車体色表記に変更はないが、シートカラーとグラフィックを変更した。
★ホンダ ニュースリリースより (2025年3月28日)
「CRF250L」「CRF250L<s>」と「CRF250 RALLY」「CRF250 RALLY<s>」のカラーリング設定と仕様を一部変更し発売
Hondaは、市街地からオフロードまで幅広いシチュエーションでの軽快な走りが魅力のオン・オフロードモデル「CRF250L」「CRF250L<s>」「CRF250 RALLY」「CRF250 RALLY<s>」のカラーリング設定と仕様を一部変更し、3月20日(木)に発売します。
CRF250Lに採用しているカラーリング「スウィフトグレー」は、外装の配色を一部変更するとともに、グラフィックデザインを変更しました。CRF250L<s>に採用しているカラーリング「エクストリームレッド」は、グラフィックデザインを変更しています。CRF250 RALLY、CRF250 RALLY<s>に採用しているカラーリング「エクストリームレッド」は、シートのカラーをブルーに変更するとともに、グラフィックデザインを変更しています。
また、各タイプとも、ラジエーターグリルとサイドカバーの形状を変更し、エキゾーストパイプなどエンジン周辺からの排熱によるライダーへの影響を軽減しているほか、前後サスペンションのセッティングを変更し、より快適なライディングに寄与しています。
※〈〉内はCRF250L<s>タイプ、《》内はCRF250 RALLY、【】内はCRF250 RALLY<s>タイプ。
主要諸元
車名型式
2BK-MD47
CRF250L〈250L<s>タイプ〉《CRF250 RALLY》【250 RALLY<s>タイプ】
発売日
2025年3月20日
全長×全幅×全高(mm)
2,210〈2,230〉《2,200》【2,230】×900〈820〉《920》【920】×1,165〈1,205〉《1,335》【1,415】
軸間距離(mm)
1,440〈1,455〉《1,435》【1,455】
最低地上高(m)★
0.245〈0.285〉《220》【275】
シート高(m)★
0.830〈0.880〉《0.830》【885】
車両重量(kg)
141《153》
乾燥重量(kg)
–
乗車定員(人)
2
燃費消費率(km/L)※2
47.5(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)
32.4(WMTCモード値 クラス2-2 1名乗車時)※3★
登坂能力(tanθ)
–
最小回転小半径(m)
2.3
エンジン型式
MD47E
水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ
総排気量(cm3)
249
内径×行程(mm)
76.0×55.0
圧縮比★
10.7
最高出力(kW[PS]/rpm)
18[24]/9,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm)
23[2.3]/6,500
燃料供給装置形式
電子制御燃料噴射装置[PGM-FI]
始動方式★
セルフ式
点火方式★
フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑油方式★
圧送飛沫併用式
潤滑油容量(L)
–
燃料タンク容量(L)
7.8《12》
クラッチ形式★
湿式多板コイルスプリング式
変速機形式
常時噛合式6段リターン
変速比
1速
3.538
2速
2.250
3速
1.650
4速
1.346
5速
1.115
6速
0.925
減速比1次/2次
2.807×2.857
キャスター(度)★
27°30′
トレール(mm)★
109
タイヤサイズ
前
80/100-21M/C 51P
後
120/80-18M/C 62P
ブレーキ形式
前
油圧式シングルディスク(ABS)
後
油圧式シングルディスク(ABS リアキャンセル機能付き)
懸架方式
前
テレスコピック式(倒立サス)
後
スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式
セミダブルクレードル
■道路運送車両法による型式認定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/Thai Honda Manufacturing Co., Ltd. ■製造国/タイ ■輸入事業者/本田技研工業株式会社
※2 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※3 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※4 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます