YAMAHA Ténéré700 ABS 車両解説
ヤマハオフ車ファン待望の“テネレ”が帰ってきたのは、2020年6月。いや、今ならアドベンチャーファン待望の、といった方が実情に即しているか。
テネレというバイクの歴史は1983年に始まる。“XT600テネレ”の発売が始まりだ。
1982年のパリショーでデビューしたそのマシンは、今やアドベンチャーラリーの代名詞ともなっている「パリ・ダカールラリー」の第一回、第二回を制したXT500をベースに30リットル入りの燃料タンクと、キックオンリーのOHC4バルブYDIS装備のビッグシングルエンジンを搭載したマシンだったが、そのスタイルはまだ個性的なパリ・ダカールレーサーと呼べるスタイルまでには至っていなかった。“アドベンチャーラリーの長距離走行に対応させたオフ車”といえる存在だった。
それもそのはず、XT600テネレは、ヘッドライトカウルと呼ぶべき小さなフェアリングを備えていたのみで、現在のアドベンチャーモデルの原点とも言えるのは、次の“XT600Zテネレ”(1988年発売)の登場を待つことになる。XT600テネレがXT550をベースに排気量とパワーアップを行い、車体側では急遽ビッグタンクを搭載して長距離走破を可能としたラリーマシンに仕立て上げた“スペシャル”的存在だったのに対して、XT600Zテネレは、長距離走行時にライダーの疲労を軽減するハーフフェアリングを標準で備えた、今でいう“アドベンチャーマシン”というカテゴリーへの萌芽を思わせる“進化”を見せたマシンだった。
その後テネレの名は、1989年の“XTZ750スーパーテネレ”(2気筒エンジンを採用)、1991年の“XTZ660テネレ”、2010年のXT1200Zスーパーテネレ(水冷2気筒DOHC4バルブ、1199ccエンジン搭載)などへと引き継がれてきたが、それらはすべて輸出仕様のみだった。もちろん逆輸入車として手に入れることはできたが、国内の多くのオフ車ファン、アドベンチャーマシンファンにとって「テネレ」の名は、羨望の的に近いものがあったといえる。
それだけに2020年6月の“テネレ700 ABS”国内販売には大きな注目が集まったといえる。
新型テネレの特徴を端的に言い表すと、「オフ車ファンにとっても、アドベンチャーマシンファンにとっても、受け入れられることができる本格的なオフロード走行を基本としたアドベンチャーマシン」。“やればできるオフ走行”ではなく、「テネレのルーツは、あくまでパリ・ダカールラリーにある」を主張するニューテネレの誕生だった。
2022年5月発売の2022年モデルは、平成32年排出ガス規制に適合化させるとともに、新グラフィック&カラーを採用。2023年1月発売の2023年モデルはカラーバリエーションの変更のみ。
今回は、YCC-T(電子制御スロットル)と走行モード切替システムやトラクションコントロール、6.3インチフルカラーTFT縦型メーター、新作ヘッドライトなどを新たに採用。前後サスの最適化、一体型フラットシート採用とタンク形状の変更によるライディングポジションの見直しなどにより、初のモデルチェンジをおこない3月31日に発売される。車体色は単色のブルー、マットグレーとストライプが入ったライトブルーの3色をラインアップ。ローダウン仕様のテネレ700 ABS Lowの発売も予定している。
YAMAHA ニュースリリースより (2025年2月13日)
アドベンチャーモデル「Ténéré700 ABS」2025 年モデル発売 ~YCC-T 採用などによりオフロード走破性をさらに高め利便性も向上~
ヤマハ発動機販売株式会社は、“クロスプレーン・コンセプト※1”に基づく、水冷・4ストローク・DOHC・直 列2気筒・270度クランク688cm3エンジンを軽量ボディに搭載したアドベンチャーモデル「Ténéré700 ABS」をモデルチェンジし、2025年モデルとして3月31日に発売します※2。
今回の「Ténéré700 ABS」は、“The Total Ténéré – Top in Adventure”をコンセプトに開発。オフロ ードでの高い走破性を進化させながらツーリングでの利便性も高めアップデートを図りました。
主な変更点は、1)「YCC-T」(電子制御スロットル)採用、2)走行モード切替システムやトラクションコ ントロール、機能を充実させたクイックシフター(アクセサリー設定)など走行支援テクノロジー、3)前後サ スペンションの最適化、4)一体型フラットシート採用やタンク形状変更などによるライディング自由度向 上、5)“つながる”機能搭載の専用設計6.3インチフルカラーTFT縦型メーター、6)ラリーイメージの新 作ヘッドライトなどです。
「Ténéré700 ABS」は、車体耐久性や整備性の高さ、荷物積載時の高い適応力など、オフロードの 走破性とツーリングでのユーティリティ性を高次元でバランスさせたアドベンチャーモデルです。
また、ローダウンシート&ローダウンリンクを装備したアクセサリーパッケージ「Ténéré700 ABS Low」 の販売も予定しております。販売会社希望小売価格は1,474,000円[消費税10%含む](本体価格 1,340,000円/消費税 134,000円)の予定。詳細は改めてニュースリリースにてご案内します。
※1 クロスプレーン・コンセプトは、慣性トルクが少なく、燃焼室のみで生み出される燃焼トルクだけを効率良く引き出す設計思想
※2 本モデルは、YSPおよびアドバンスディーラーのみで販売する「ヤマハモーターサイクル エクスクルーシブモデル」です。ご購入につき ましては当社Webサイト掲載の取扱店までお問合せください
- ●発売日
- 2025年3月31日
- ●メーカー希望小売価格
- 1,452,000円(本体価格 1,320,000円/消費税 132,000円)
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※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
※本モデルはデジタル化推進および、環境配慮の観点から紙のカタログを製作しておりません。製品情報は下記 Web サイトよりご確認ください。
Ténéré700 製品サイト:https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tenere700/ - ●販売計画
- (国内・年間) 500台
- ●カラー
- ・ディープパープリッシュブルーメタリック C(ブルー/新色)
- ・マットイエローイッシュグレーメタリック 2 (マットグレー/新色)
- ・ブルーソリッド A(ライトブルー/新色)
- 【新しい「Ténéré700」の主な特徴】
- 1) 「YCC-T」 を採用し、全回転域で滑らかなトルク特性を実現
- 「YCC-T(Yamaha Chip Controlled Throttle=ヤマハ電子制御スロットル)」を新たに採用しました。 これにより CP2(クロスプレーン・コンセプトの 2 気筒)エンジンが備える全回転域でのリニアでスムー ズな吹け上がりを支え、ライダーの操作にリニアに反応する出力特性を実現しました。
またインテーク形状を変更したことにより、低回転域でのトルクアップを達成し低速域でのオフロー ド走破性をさらに高めました。 - 2)走行モード切替システムやトラクションコントロールなど走行支援テクノロジー
-
2 つの走行モードを選べる機能と、ON・OFF 可能なトラクションコ ントロール(TCS)を搭載しました。
走行モードは、オフロード走行用に鋭いスロットルレスポンスが得 られる「SPORT」と街中での扱いやすさを重視した「EXPLORER」の 2 つから選択できます。
また、加/減速時いずれもシフトアップ&ダウン可能なクイックシフ ターも別売アクセサリーとして設定しました。
なお、継続して、前後 ON、前後 OFF、リアのみ OFF が可能な 3 モード ABS を搭載しています。 - 3)高性能な走りを支える前後サスペンションの最適化
- 43mm 径インナーチューブの倒立式フロントサスペンションは、バ ルブのセッティングを見直すとともにプリロードアジャスター付としま した。初期作動がよりなめらかになり、接地感を得やすい特色があ ります。
リアもストローク量を増やし、底付きしにくい減衰特性を備えたリ ザーバータンク付きリンク式モノクロスサスペンションを採用。フロン トと調和して作動し、過酷な条件下でも高いパフォーマンスを発揮し ます。 - 4)ライディング自由度の向上
- ライダー側とパッセンジャー側とが一体となったフラットシートを採 用しました。また、燃料キャップをフラットタイプのものへ変更し、燃 料タンク形状も見直して天面を低く抑えることで、車両の上でライダ ーが動きやすいことを視覚的に表現しています。
さらに、クラッチのプッシュレバー位置を変更し、アクチュエーショ ンポイント(赤丸のクラッチワイヤーがエンジン側に接続される部分) を 35 度後部に移動。プロテクションカバーも変更し、ライディングブ ーツの邪魔になりにくいレイアウトとしました。 - 5)つながる機能搭載の専用設計 6.3 インチフルカラーTFT 縦型メーター 直感的に操作可能な新作ハンドルスイッチなどの機能装備
- 「Ténéré700」専用に新設計した 6.3 インチフルカラーTFT 縦型メー
ターを採用しました。走行に必要な情報が見やすいレイアウトにして います。スピードメーターやタコメーターの他、燃料計、平均燃費、水 温計、気温計、シフトインジケーターなどの表示機能を搭載。各機能 の情報操作、セレクトは直感的に操作できる新作の統合型ハンドル スイッチで行います。
また表示パターンは、従来同様、好みに応じて「EXPLORER」と 「STREET」の 2 つのデザインテーマから選択可能です。
専用アプリ「Y-Connect (Yamaha Motorcycle Connect)」をインスト ールしたスマートフォンと車両を接続することで、電話やメールの着 信通知など、多様なコンテンツが利用できます。さらにスマートフォ ン経由で Google Maps を連携させることにより、交差点などでの進 行方向を矢印アイコンなどで表示するターンバイターン表示にてナ ビゲーションを表示。USB-C 充電ポートも標準装備です。 - 6)ラリーイメージの新作ヘッドライトと新スタイリング
- ヘッドライトの 4 灯 LED を従来の丸からシャープな印象の四角へ 変更しました。取り付け位置を若干高めにし、配光などを新たに作り 込んで光量を十分に確保。同時に新鮮でアグレッシブな印象を作り あげています。
ヘッドライトのアップデートにあわせて、外装も一新。特徴的なハ イフェイスと細身の車体による、一目でアドベンチャーモデルとわか る独創的なシルエットを継承しています。
なおカラーリングは、YZF-R や YZ シリーズとも連動したヤマハのスポーツイメージを象徴する“ブ ルー”、堅牢さとアドベンチャーイメージを表現し、アウトドアシチュエーションにマッチする“マットグレ ー”、1980 年代前半のヤマハのラリーマシンを想起させる“ライトブルー”の 3 色です。 - そのほかの新装備
• 搭載位置を変更しカバーを装着したサイドスタンドスイッチ。丸太や岩場に乗り上げた際にも抵触しにくくなり、オフロード走行を支える。
• 大型化により、快適性とマシンコントロール性の向上に寄与するフットレスト。ラバーの取り外しが可能で、ラバー装着時はツ ーリング時の快適性、ラバーを取り外すとオフロード走行時の グリップ性に貢献。
• 「二段階フラッシャー機能」「消し忘れ機能」を搭載したフラッシャー
主要諸元
車名型式 | 8BL-DM17J | |
---|---|---|
Ténéré700 ABS | ||
発売日 | 2025年3月31日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.370×0.935×1.455 | |
軸間距離(m) | 1.595 | |
最低地上高(m) | 0.240 | |
シート高(m) | 0.875 | |
車両重量(kg) | 208 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 |
35.7
(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 |
|
24.6(WMTCモード値 クラス3 サブクラス3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | – | |
エンジン型式 | M431E | |
水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 688 | |
内径×行程(mm) | 80.0×68.5 | |
圧縮比 | 11.5 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 54[73]/9,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 68[6.9]/6,500 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | TCI(トランジスタ式) | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ式 | |
潤滑油容量(L) | 3.00 | |
燃料タンク容量(L) | 16 | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.846 |
2速 | 2.125 | |
3速 | 1.631 | |
4速 | 1.300 | |
5速 | 1.090 | |
6速 | 0.964 | |
減速比1次/2次 | 1.925(77/40)/3.066(46/15) | |
キャスター(度) | 27°00′ | |
トレール(mm) | 105 | |
タイヤサイズ | 前 | 90/90-21M/C 54V (チューブタイプ) |
後 | 150/70R18 M/C 70V (チューブタイプ) | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム(リンク式) | |
フレーム形式 | ダブルクレードル |
※1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
※3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。