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レース・イベント

視覚障がい者の参加も続々 バイクの楽しみをもっと多くの人へ
レジェンドライダー青木三兄弟の、三男・治親と長男・宣篤が立ち上げた一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が障がい者を対象に開催している『パラモトライダー体験走行会』。2023年になって2回目の開催は茨城県にある筑波サーキット内にあるオートレース選手養成所での開催となり、6名のパラモトライダーがバイクを楽しんだ。
■文・写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクトhttps://ssp.ne.jp/






 一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)の定期的な活動となるパラモトライダー体験走行会。2020年の6月から開催を始め、ほぼ毎月のように(冬季を除く)開催している。青木三兄弟の次男・拓磨と同様に、バイクの事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされた元ライダーを再びバイクに乗せたいというこの活動は、障がいの内容も半身まひだけでなく、バイク経験も問わず、と対象をどんどんと広げて活動を展開している。
 SSPでは、それぞれの障がいに合わせてバイクをカスタムしている。今回も、転倒を防止できるアウトリガーを装着したKTMデューク250と、ペダル操作ができなくてもバイクをコントロールできるハンドシフト装置を装着した大型車両MVアグスタ・ストラダーレ800とBMW F750 GSを持ち込んだ。また今回からSSPのサポーター企業にKTM JAPANが加わり1290スーパーデュークが提供され、さっそくSSPのハンドシフト仕様になって、他の車両と同じくこの会場に持ち込まれた。
 走行中の操作に関わるバイクのカスタマイズでいかようにもなるが、低速時と発進や停止のタイミングで不安定になるバイクを支えるボランティアスタッフがカバーする。この方式でパラモトライダー体験走行会は行われている。
 

転倒を防止するアウトリガー、バイク操作を四肢すべてを使わずにできるシステム、そして、ボランティアスタッフの人力によってバイクを支える、これによりパラモトライダー体験講習会は運営されている。

 
 今回も半身まひと視覚障がいを持つ6名が参加。そのうち2名が初参加となった。今回は、筑波サーキット内にあるオートレース選手養成所の駐車場を使って走行練習が行われた。アウトリガーを装着し、リモコンで離れた場所からもエンジンを止めることができる小型バイクを使用し、バランス取りやブレーキの練習を重ねていく。視覚障がいを持つ参加者については、サインハウスのバイク用インカム「B+com」をライダーのヘルメットに装着し、周囲からスタッフが指示を出しながら走行をサポートする。
 今回は初参加の2名を含む6名ということで、時間的には厳しかったものの、ボランティアスタッフの班分けで2名のライダーが同時に走行するなどして、無事に全員の走行を事故なく終えることができた。
 

バイクへの移乗など必要なサポートを行うボランティアサポーターは今回も50名ほどが集結した。バイクに乗るという楽しさを共有できるこの瞬間はなにものにも代え難い経験となる。

 
 最後に、このパラモトライダー体験走行会では最初の視覚障がい者としてバイクに乗り、袖ケ浦フォレストレースウェイやこのオートレース選手養成所のオーバルコースを初めて完走した、縫田政広さん(糖尿病の合併症による網膜症失明)が1月に呼吸器不全でお亡くなりになられたことがこの場で伝えられた。
 ご自身がパラモトライダーとして参加されない時でも、会場に顔を出し、誰彼構わず、大きく元気な声で声をかけ、常にボランティアスタッフを気遣い、会場をいつも明るくしてくれた縫田さんの姿をもう見られないと思うと悲しくなってきてしまう。縫田さんの御冥福をお祈りしたい。
(文・写真:青山義明)
 

半年前には、この養成所のオーバルコースをまるで目が見えているかのように悠々と走っていた故・縫田政広さん。今回奥様からボランティアスタッフに差し入れをいただいた。

 

胸椎損傷で下半身不随となってしまった伊東 博さんはこの筑波の養成所では必ず参加、今回で4回目の参加となる。「コツがつかめてきたかなぁ」と伊東さん。次回こそはオーバルコースへステップアップを、と熱意を語ってくれた。

 

脳性小児麻痺による両下肢機能障害の障がいを持つ松崎 勇さんは、昨年の6月以来の2度目の走行となった。久しぶりのバイクに「気持ちいい、クルマとは全然違うこの風を感じる感じ、ハマっちゃいますね」と満面の笑みで応えてくれた。このパラモトライダー体験会のことを知ってる人も周囲に増えてきて、みんなに応援してもらえてる、とも。

 

17歳でバイクに乗り始め、2年ちょっとで交通事故に遭い、右半身の麻痺と失明という障がいを負ってしまった山仲聡彰さんは今回初参加。事故をしてしまったバイクは父親が修理して乗れるようにしていて理解がある家族だという。「10代のころの記憶がよみがえってきて、すごく楽しかった。細かく走行指示をしてもらえて、走行を終えたらスタッフの皆さんが拍手してくれてほんとうに良かった」とコメントしてくれた。

 

今回で3回目の走行となる早岐伸子さんは、脳出血による右半身麻痺の障がいを持つ。二人でツーショット写真を撮るためだけに、体験走行のタイミングで御主人がツナギを着て登場。この日オーバルコースへ唯一進んだライダーだったこともあり、しっかりと走行をすることができた。「思いっきり走れて、ほんと申し訳ないです。身体の反応が少し遅れるので、そのあたりを克服したい」と今後の課題も見えた様子。

 

4回目の参加となった竹村雄一さんは網膜色素変性症による弱視、である。「(同じ視覚障がいを持っていたパラモトライダーの)縫田さんが手伝ってくれたんじゃないかなと思うほど、いつもよりリラックスして楽しめました」とコメントしてくれた。

 

3歳半で高熱を患った際に視力が低下し、高校時代には全盲になってしまったという小林 崇さんも初参加。機械いじりが好きで、いろいろなものを分解して組み立てることが趣味で、今回はクラッチを操作してギヤチェンジすることが楽しみだと語っていた(笑)。実際に走行をすると「ブレーキをもっと繊細に操作しなければいけないってことと、左に曲がっていってしまう癖を何とかしなければなりません」と、クラッチ以外に問題点が発覚!

 

 



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2023/04/05掲載