第140回 「ぼくの夏休み 後悔2022夏(またか)」
365日が鉄道の日という大きなお友達もたくさんいますが、一般的な鉄道の日は10月14日です。昭和鉄道少年には、鉄道記念日というほうがしっくりきますが、国鉄臭が強いとかで国交省が改称を要請(という名の強制)したとか。JRになってからは、毎年各地でイベントをしたり、保線関係の方からすれば卒倒しそうなテッピー&テッピーナという公式キャラも制定された、すべての鉄道事業者がお祝いする記念日です。航空記念日(9月20日)、海と船の記念日(7月1日)やバスの日(9月2日)もありますが、認知度では鉄道の日がナンバーワン(と思いたい)。
今年は日本で鉄道が開業してから150年という記念の年です。テレビもラジオも「それでは出発進行!」と指さし喚呼やなぜか敬礼したりして始まる鉄道特番が目白押しです。発車したのはいいけれど、いきなり第1閉塞から注意信号が出るような内容(←鉄はニヤッとしてほしい部分です)もあったりなかったり……それでも鉄道をフィーチャーしてくれるだけでもしてくれるだけでもありがたいです。だから全国でお祝いムードかと思えばさにあらず。なんだか西高東低ならぬ東高西低のように感じるのは私だけでしょうか? 乗り放題の切符もJR東日本だけ(「鉄道開業150周年記念秋の乗り放題パス」という全国版も発売されますが、これは18きっぷの秋版でいわばレギュラーメンバーなので)。鉄道150周年記念JR東日本パスは、3日間JR東日本全線(新幹線含む)+東エリアの7社の指定区間が乗り放題で22150円。一日あたり約7400円ですから、東京から高崎や宇都宮まで新幹線で往復すれば1日分の元が取れます。指定席も4回まで取れますから、全席指定のはやぶさ、こまち、つばさ、あずさ、かいじ、ひたち、ときわにも乗れます。お休みの取れる方は使ってみてはいかがでしょうか(WEBのみで発売 2022年10月14日〜27日)。あっ、東からは1円ももらっていません(くれるわけないけど)。
せっかくの150周年記念なのに、なんで他のJR各社は特別なきっぷを発売しないのか? つらつら考えるに150周年を迎えるのは、正確にいうと最初に開業した新橋〜桜木町間のみで、他社にしてみれば「だってうちは関係ないもん」と思っているのかもしれません。本当の理由は知りませんが。これも分割民営化の光と影でしょうか。
国鉄の光と影といえば、中公新書から8月に刊行された「国鉄 日本最大の企業の栄光と崩壊」は読み応えありました。著者は初代JR九州社長を務めた石井幸孝氏。国鉄のディーゼル機関の設計の第一人者でもある技術者でありながら、労務などにも造詣の深い、鉄道という複雑な産業装置を知り尽くした方です。国鉄がなぜ崩壊したのかだけではなく、今後日本の鉄道はどうすればよいのかも提言されています。こちらも1円ももらっていません(当たり前ですが)。
9月に大休パスを使って夏休みを満喫したばかりですから、鉄道150周年記念JR東日本パスはパスです。前記のとおりたいへんお得ですが、大休パスに比べると割高感は否めません。人間一度快楽を知ってしまうともう元には戻れないのです。無駄に歳を重ねていますが、歳を取ったおかげでいいこともあるものです。
そんな楽しかった夏休み、初日の9月11日は直江津へ。立喰・ソメインではなく、えちごトキめき鉄道の国鉄型観光急行の乗車がメインテーマです。クハ455-701+モハ412-6+クモハ413-6の3両編成で、正確にいえばクハ455以外は急行型ではないのですが、観光列車といえば、やたら金ピカにしたり木を使ったりしてデザインしましたというこれでもか!みたいなのが主流で、まあ、それはそれで人気があるようですからいいのですが、鉄の心をしっかりと解っていらっしゃる鳥塚社長が繰り出す、細かい演出と大胆な企画が「あれは急行じゃないね」といいそうな一部の口うるさい鉄も黙らせます(たぶん)。ボックスシートから日本海を眺めつつ聞くフルノッチのMT54サウンドは、最高のつまみになります。
昨今は車内販売も少なくなったので、あらかじめ用意しておくのですが、車販があるから安心です。ちなみに途中駅では駅弁も買えます。まさに昭和の急行気分が満喫できます。大火から復興した糸魚川ではキハ52もじっくり愛でることができ、いつのまにか謙信庵から直江津案に店名が変わっていた直江津駅の立喰・ソもしっかりお腹に納めました。今回は割愛した直江津D51レールパークと直近にあるつかだ庵は次回のお楽しみです。初日は大満足のうち無事終了。立喰・ソをメインにしなかったからでしょうか?
翌12日は能代へ。昨年の9月に計画していたのですが、コロナがとんでもない猛威をふるいだしたこともあって延期しました。今回も8月の記録的な大雨で、東北の線路はあちこちで大きな被害を受けてしまい、不通区間が残っていたこともあり、珍しく秋田からレンタカーで行動しました。というわけで、何十年かぶりに吞まずに新幹線に乗りました。吞めないと秋田まで4時間は長いかなと心配していましたが、禁断症状が出ることなく無事に到着。レンタカーのカウンターでは、私の前にいたおばはんが、なぜか値切りはじめ、当然押し問答となり(レンタカーを値切る人は初めて見ました)、10分ほど待たされたものの秋晴れの秋田の空の下、能代へ向けてレッツラゴー(死語)。せっかくレンタカーを借りたのですから、秋田港セリオンタワーの自販機と秋田港に放置されている24系も表敬訪問しました。
秋田から能代、地図上で見るとすぐそこです。鉄道で移動したときもすぐ隣くらいの感覚でした。が、のんびり走る車に続いて走る国道7号線はながーく感じました。信号のほとんどない国道をだらだら走るのは久しぶりで、一定量アクセルを踏み続けていたら足が攣りそうになり心底焦りました。若い頃、アメリカ大陸をピックアップトラックで横断したことがあります(軽い自慢)。毎日毎日うんざりするほど走りましたがこんなことはありませんでした。老化は確実に進んでいることを国道7号線に思い知らされました。
だらだら走り続けること1時間半くらいで、第一目標に到達。周りに民家はほとんどなく、公共交通機関ではたどり着くのは大変そうな、車は一人一台当たり前という、日本地方都市の典型のような立地条件でした。昼時なのに、立喰・ソ前には車が一台も止まっていませんでしたが、やっと来られた、やれうれしやと気にも留めずに店の前に立つと貼り紙が……あれ〜!? 苫小牧の悲劇再び。またまた針の穴を通すようなピンポイントで、臨時休業日ですと。
まあ、いいです。こんなの苫小牧茶飯事ですから、すぐ第2目標へ転進します。さほど迷わず(ナビってすごいですね。昔はどうやって目的地を探したのか、今となっては思い出せません)到着するも、ここも昼時なのにがら〜んとしています。魔の貼り紙はありませんでしたが、月曜日が定休でした。そんなことくらい事前に調べておけよって話ですが、なぜだか土日休業だと思い込んでおりましたから、後の祭り(祭りはやってませんが)。
苫小牧同様、怒ったり悲しんだり驚くこともなく、スキップしたくなるほど嬉しくなってしまいました。Z世代も嬉しくなるとスキップしたくなるのでしょうか? おそらくニヤニヤしながら、腰に手を当て駐車場をぐるぐるスキップスキップ。周りに誰もいなくてほんとよかったです。苫小牧同様、もしこのあたりで事件があれば、レンタカーでやってきた見知らぬ奴が、ニヤニヤスキップですから、間違いなく容疑者です。任意同行の後、スキップの理由を正直に説明しても、自白するまで拘留されたことでしょう。冤罪はこのように起こるのかも知れません。
さて、帰りますか。今日は何も食べていないのでお腹と背中がくっつきそうです(昭和の定番)とハンドルを握りました。このハンドルを握るという表現、よく目にしますが、ハンドルを握っただけで車は進みません。ハンドルを握ったら、エンジンを起動して、サイドブレーキを解除、左右と後方の安全を確認して、アクセルを踏んで発進させました。
国道7号線のドライブ以上にだらだらと中味のない内容が続きました。みなさんのうんざり顔が怒り顔にならないうちにこのあたりでさようなら。続きはまたいつかきっと。
私は前世でなにか立喰・ソ神の逆鱗にふれることでもしたのでしょうか?
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