400の4気筒。ネイキッドのCB400スーパーフォア(以下SF)とCB400スーパーボルドール(以下SB)はこのクラスで唯一最後まで4気筒の牙城を守ってきた。レーサーレプリカブームに明け暮れた1980年代。パワー競争、モデルチェンジ競争のうねり、猛スピードで変化するバイクのカタチ。
それ以前のゆったりとした時代を懐かしむようにカウンターカルチャーのように始まったのがZEPHYRに代表される新たなネイキッドブーム。80年代の後半のことだった。空冷4気筒、2本ショックという70’sなスタイルと90年代を控えた技術を盛り込んだバイクは、その後むしろメインストリームへとなってゆく。
1992年、プロジェクトBIG-1を掲げたホンダが送り出したのが初代CB400SFだった。水冷4サイクルDOHC並列4気筒エンジンを搭載し、燃料タンクからサイドカバー、リアカウルへと流れるスタイルはセクシーでワイルド、パッケージは威風堂々としていること。それらをキーセンテンスに開発がされている。今からもう30年も前のことだ。
以来、モデルチェンジとマイナーチェンジを重ね最終到達点とも言えるほど熟成された2022年の今、あらためてロングセラーであるCB400SBを走らせてみた。
LEDヘッドライト、10本スポークのホイール、跳ね上がりを緩やかにしたテールカウルとクリアになったテールレンズ、そしてライディングポジションのアップライト化。決定稿とも言えるスタイルになったのは2014年。その後、2017年にはスロットルボディやサイレンサーの変更を受けた他、ホイールのエアバルブがL字型となる。2019年にはスーパーボルドールが標準装備するETCがETC2.0となり、グリップヒーターの標準装備化もあってツーリング機能はさらに高まることに。また、現行の、いや、最終型のCB400SBは、歴代でもっともスペック的にハイパワーとなる。
エンジンの大きな特徴の一つは水冷並列4気筒DOHC4バルブであること、そしてバルブ休止システム、HYPER VTEC Revoを搭載すること。これは、可変バルブタイミングとは異なり、6300rpm未満では各シリンダーヘッドに備わる吸気2本、排気2本、計4本あるバルブのうち、対角線上の吸気1本、排気1本を閉じたままとすることで、低中回転域での吸入充填効果を高める効果を持っている。
これによりオーバーラップを高回転型としても、日常域のドライバビリティに優れたエンジンとなる。同時に、1~5速では6300rpmから6750rpmの領域でライダーのアクセル開度などパワーが求められる状況によって休止していたバルブを稼働させ、4バルブとしてパワフルな走りにも応えるバリアブルさを持たせているのもRevoの特徴。
6速は6750rpm以上で、としたのは100km/hでの高速道路巡航をしている時にバルブ休止領域とすることで、高速道路移動時の巡航燃費の向上に割り当てているからだ。
CB400SBの見なれたスタイル。ノーズにせり出したフェアリングを装着し、全体のなかでのデザインバランスがしっかりと取れている。この点はCB1300SBと同様。コンフォート最重視というよりスポーティさを兼ね備えたもの。18リッター入りの大きな燃料タンクの形状もボリューミー。ああ、空になるまで走ったらここから何キロいけるだろう。跨がるだけでちょっと夢が広がるのだ。
音と走りで醸し出す小気味よさ。
4000rpmを目処にシフトアップ。並列4気筒が織りなす快音。2000rpmから2500rpmでもCB400SBは力強く不足なく走ってくれる。むしろ、6速40km/h台でズボォーと低い音を楽しみながらアクセルを開けるのもこのバイクらしい。でも市街地でアクセルを開けると4000rpm~5000rpmまで常用域として使えるのがこのクラスの美点。もちろん、低いギア限定となるが、このチャキチャキした加速が楽しい。
200㎏を越える車重ながら身軽、というか、気分が軽くなるような走りが魅力なのだ。ブレーキやサスペンションもまとまりがある。加速感と音だけを頼りに走る楽しみがある。確かに伝統的な回転計と速度計を中心にしたシンプルなメーターパネルも魅力的だ。中央には時代性に合わせた液晶モニターも備えるが、レトロモダン的なアプローチではなく、現在ここにある時代性と対峙してアップデイトを繰り返してきたCB400SBにとって全面TFTカラーモニター+スマホとコネクト……、なんて新しさも見てみたい気もする。
それはともかく、とにかく6300rpm以下、バルブ休止領域で見せる、これが400㏄並列4気筒なのか! という逞しいトルク感ある走りは健在。600㏄エンジンと言われたらすんなり信じてしまいそうな充実感なのだ。低い回転で心地よい加速をしてくれる点で、大排気量車から乗り換えても足りなさを感じないのが凄い。
高速道路のETCゲートで減速、そこからフル加速を試みた。低いギアではタコメーターの上昇速度が速く、正確に何回転で休止していたバルブが動き出しのかは解らない。が、ある瞬間、ヘッド回りから「チッ」というナニかのスイッチが入ったような音がした次の瞬間、排気音が変わり、直線的にレッドゾーンまで増強した加速が続く。
ハイパーVTECを搭載したCB400SFがデビューした1999年から何度も体験してきたのに、毎回このスコーンとくる走りには心が持っていかれる。回す悦び、これも400クラスだからこそ、かもしれない。
ワインディングでも心地よいスポーツ感を堪能できた。車体はしっかりとした剛性感がありつつ、ペースを上げないと楽しめない、という特定の速度域以上を想定したものではなく、ツーリングペースでもそれが楽しめる一体感がある。裾野が広い。もちろん、ひとたび4気筒エンジンを活発に回せば、例のバルブ休止ゾーンからカァーンと盛り上がる4バルブゾーンをあえてクロスオーバーさせるような加速メソッドにするだけで面白さが倍加する。
カーブに向けて2速シフトダウン、軽い力でリーンさせつつ、安定感と接地感のある足周りからのフィーリングを楽しみつつ加速をする。わずか数秒単位で変位するバイクの姿勢、ライダーのコントルールにすらパート、パートで良さが染み渡るバイク。ロングセラーだけど、走りは今なお現役でなおかつレギュラーメンバー。そんな印象だ。
あと2ヶ月もない。
生産終了まで本当に秒読みが始まったCB400SB。見慣れた、乗り慣れたつもりでいたが、あちこちに発見があった今回、やっぱり4気筒っていい、音が、パワーが、曲がり方が、と再確認できた。正直、贅沢なエンジンだ。4個のピストン、16本のバルブ。それを考えたらホンダらしさを湛えたこのCB、買いたい人にはそれこそすぐにお店に行くことをおすすめしたい。
(試乗・文:松井 勉)
■エンジン型式:2BL-NC42 ■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ■ボア× ストローク:55.0×42.0mm ■最高出力:41kW〔56ps〕/ 11,000rpm ■最大トルク:39N・m〔4,0kg-m〕/9,500rpm ■全長× 全幅× 全高:2,080×745×1,160[1,080]mm ■ホイールベース:1,410mm ■シート高:755mm ■タイヤ(前・後):120/60ZR17M/C× 160/60ZR17M/C ■車両重量:206[201]㎏ ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■燃料タンク容量:18L ■車体色:キャンディークロモスフィアレッド、アトモスフィアブルーメタリック、ダークネスブラックメタリック[■メーカー希望小売価格(消費税10% 込み):1,084,600 / 1,040,600 [928,400円 / 884,400]円※[ ]はCB400 SUPER FOUR
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