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試乗・解説

Honda CB400 SUPER FOUR ひょっとすると、この4気筒は、 世界の宝かも。 ローカル枠出身、唯一無二の存在。
月刊『ミスター・バイクBG』12月号から始まった新企画『NITTY GRITTY REPORT 現行車ニチギチレポート』と連動した試乗インプレッションだ。
BGでは「書き切れない!」という試乗ライダー・ノア セレンさんと松井 勉さんに、思いの丈をぶつけて貰おう、という『もっともっと現行車ニチギチレポート』である。
さ~て、まずは松井 勉さん、お願いします!  ↓

というワケで松井です。ミスター・バイクBGでは400の2気筒か4気筒かどっちが残って、どっちが本筋をこれから歩むのか──そんな問いかけからCB400 SUPER FOURとCBR400Rで比較してみたワケだけど、身も蓋もない言い方をすれば、どちらも面白くて、どちらかがどちらかを凌駕するものとは思えない、というのが私の答えだった。
それはともかく、4気筒とか400とか枠を決めなくても、CB400 SUPER FOURはひょっとすると隠れた「ワールドクラス」だと思った。その理由をお伝えしたい。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:赤松 孝 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/






 たしかにコトの発端はBIG 1 PROJECTだ。そのスタイルキーとなる燃料タンクは、ホンダCBの頂点モデルの一つ、CB1100Rのそれを思わせる耐久タンク風。4気筒を抱くダブルクレードルフレームもオマージュされているように見えるし、その伝統的フォルムに、角形で太いアルミスイングアームやラジアルタイヤ等々しっかりと組み合わされ、見事にスパイスを効かせている。
 

 
 だから、もしCB1300 SUPER FOUR/SUPER BOL D’ORのように「SP」バージョンがあったら──、そんなコトを夢想してしまう。それほどこのバイクは唯一無二な存在に感じたのだ。

 個人的にこのバイクの魅力の源泉はやはりエンジンにあると思う。4気筒であること、はもちろんながら、ここまで磨かれたHYPER VTEC Revoが魅せる400離れしたトルク感だ。400という枠を軽々と飛び越えたトルク感の演出は間違いなく2バルブ領域がみせるもの。それはまるで空冷OHC2バルブ4気筒のCB650のエンジンを思わせる、剛力ではないが、5000回転までの麗しいトルクで魅了したあのしっとりしたスムーズさを感じる。
 

 
 そして次なる見所は、4バルブ領域に入った瞬間から「カーン」と排気音と加速の伸びに艶やかさが増すところ。それに上への盛り上がりがあるのだから文句のつけようがない。

 そして走りだ。ツインショックやダブルクレードルというスタイルを「トラッド」「古さ」などの形骸的に使ってはいるが、シャーシとしてみた場合、それは乗りやすさ、走る楽しさを追求した今風な走りにはどこにも古さや陰りはない。今なお第一線。

 それは長年かけて磨いてきたこともある。しかし、開発者達はロングセラーのCB400 SUPER FOURだけを研鑽するのではない。このシリーズの開発に配属され一定期間、開発に心血を注ぎ、そしてまた別の開発チームへと移動をする。そんな繰り返しだろう。料理人が変わってもCB400 SUPER FOURの味が変わるコトはない。しっかりと秘伝の味が護られている。
 

 
 今回も走らせてそれが解った。例えば取り回し。軽くはない。だが、重くないのだ。適度な手応えがある。ハンドリングもそうだ。市街地ではおおらかなビッグバイク感があり、それでいて意のまま感がある。だからこそこのバイクを操ると楽しくなる。
 

 
 そして高速道路。ここでは400クラスを意識させず全体の印象は取り回し時と似ていて、軽くなく重くなく。100km/hクルーズでは2バルブ領域の静かでスムーズさで魅了するゾーンで走り続ける。ひとたび加速が必要なら1速、いや2速か3速まとめてシフトダウンし、アクセルを開け増せば、今やCB400 SUPER FOUR(SUPER BOL D’ORも)でしか味わえない最新の400クラスの4気筒が持つ独特の盛り上がりある世界を楽しめる。
 

 
 レッドゾーンに向かうタコメーターの針、その動きに合わせて聴覚が刺激を受け、快感が体内を駆け巡る。

 サスペンション、ブレーキも屈強過ぎず甘すぎず。ここも絶妙なるチューニングの合わせ技が見える。そう、それがCB400 SUPER FOURなのであり、CB・Fの暖簾を守る気概に溢れたところにこそ魅力が凝縮されている。

 だから、真髄を造る上で4気筒エンジンは欠かせないし、HYPER VTEC Revoも同様。しかし、4気筒ならどれでも同じか、というとそうはならない。このパッケージこそ全てだ。
 

 
 個人的に、現状のメーター周りにコネクティビティを盛り込んだダッシュ周りにすれば、世界で戦えるキラーコンテンツになると思う。そうしたら、世界1000台限定で、各部の素材を軽量化したスペシャルはどうだろう。ホイール、サスペンション、スイングアーム、エンジンのカバー類、ハンドルバー、マスターシリンダー、レバー類等々、思いつくままに単価の高いパーツを装備したモデル。そうしたら前後タイヤは現状から、フロント120/70ZR17、リア180/55ZR17が欲しくなるところ。

 いや、それぐらいしてでも世界に打って出るタマだと思う。きっとその先に新しいCB400 SUPER FOURの未来図があるような気がするのだ。
 結局、4気筒か2気筒か、という議論には全く結論が出ないままなのだが……。
(試乗・文:松井 勉)
 

 

ライダーの身長は183cm。

 

磨き込まれたエンジン。その特性は400という枠を越えたワールドクラスだと思う。その中に400らしいはじけた特性を入れているのも持ち味。4本のステンレス製エキパイが集合部に向けてそれぞれの角度でキレイに並ぶ。

 

ニッシン製キャリパーはマウント方法もコンベンショナルなもの。用途としてツーリング、市街地走行などが主体の場合、マウント方法よりもパッドとディスクローターの相性、ブレーキホースやマスターシリンダーのタッチや握り込んだ時のホースの膨張率まで考慮したチューニングの詰めた方が様式に勝る場合が多い。ホンダはこうした部分にしっかりとリソースを割いている。

 

骨太なスイングアーム、サブタンク付きのリアショック。細身のスポークが印象的なホイール。スキのない構成要素を盛り込んでいる。
ペダルストロークによりしっかりと減速成分を発揮するリアブレーキ周り。市街地や低速でのなめ踏みにも効果を発揮。

 

サイレンサーは丸形。エンドもコンベンショナルなスタイル。世界と共通性の多い環境規制としたことでマフラーからも4気筒らしい澄んだ音が聞こえるようになった。
ヘルメットホルダーはこの位置に。

 

丸形ライトという様式の中に最新のLED光源を入れる。リング式のランニングライト風なものも備え、トラディショナルさと今を共存させている。LED化の恩恵として高輝度ライトの良さを活かし、デザイン的に極力ライトを小型化するのがトレンドだが、ヘッドライトはφ180mm的な美観がそこにある。ウインカー、ダブルホーンもCB・Fの流れを組むもの。
ヘッドライトの最新とトラッドの共存に対し、メーターと中央の表示部分はまさに文法通り。反面、小さい液晶モニター、表示切り替えやリセットには走行中なら必ず片手運転を強いる操作性の悪さは、2輪、4輪を造る数少ないメーカーである強みを出せていないように思う。4輪の手元で何でも操作できることに慣れたら、これはストレスだと思うしTFTモニターにして表示のバリエーションを増やしたりすることも視野にいれて時代を先取りして欲しい部分でもある。アバンギャルドさはまず400から、CBから、というフローがあってもだれも文句を言わないはずだ。

 

タンク容量は18L。ホワイト×キャンディーレッドメタリックのカラーリングはCBX400Fを思わせる色調。
ステップドシートとキックアップしたテールカウルは永遠のCBフリークを酔わせるポイントだ。ライダー用シート前端はしっかりと絞られ、足着き性が良い。

 

フロントエンド同様、リアエンドもLEDのテールランプと白熱球のウインカーの組み合わせ。
最近、ホンダ車で採用が拡大している横出しのエアバルブ。ラバー製のバルブに対して耐久性が高く交換頻度も低いとタイヤショップは証言する。なによりガソリンスタンドなどでエアチェック、補充をする時、クルマ用の長いエア・チャックが2枚のディスクに阻まれ入れにくかったことをから解放してくれる。

 

●CB400 SUPER FOUR Specification
■エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒■ボア× ストローク:55.0×42.0mm■最高出力:41kW〔56ps〕/ 11,000rpm■最大トルク:39N・m〔4,0kg-m〕/ 9,500rpm■全長× 全幅× 全高:2,080×745×1,080mm■ホイールベース:1,410mm■シート高:755mm■タイヤ(前× 後):120/60ZR17M/C× 160/60ZR17M/C■車両重量:201 ㎏■燃料タンク容量:18L■メーカー希望小売価格(消費税10% 込み):884,400?928,400円

 


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2020/12/02掲載