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レース・イベント

パラモトライダー体験会、2022年もスタート ── 第15回SSPレポート なんと、盲目ライダーのみで開催!?
青木三兄弟の、三男・治親と長男・宣篤が立ち上げた一般社団法人サイドスタンドプロジェクト。2020年から活動を展開している「パラモトライダー体験走行会」もこの過去2年での開催は14回を数えた。そして2022年最初の体験会が開催された。
■レポート・撮影:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト https://ssp.ne.jp/






 1998年にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされたものの、その後は4輪ドライバーとして活動をしている元WGPライダー・青木拓磨に、再びバイクに乗ってもらおうという企画「Takuma Ride Again」を基に発展した一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)のプログラム「パラモトライダー体験走行会」。これは拓磨と同じように、事故などで障がいを抱えてしまって、2輪車を諦めた人に再びバイクに乗ってもらって、バイクを一緒に楽しんで行けるように応援するもの。

 国内のサーキットや休校日の自動車教習所を会場として開催しているが、2022年最初の回となる15回目の「パラモトライダー体験会」は、神奈川県川崎市にある向ヶ丘自動車学校で開催となった。この会場での開催は3回目となるが、今回持ち込まれたのはアウトリガーを装着したKTM デューク250のみである。SSPでは、毎回バランス確認のためのアウトリガー付きのデュークと、ハンドシフト装置を装着した大型車両を持ち込んでいるのだが、今回はアウトリガー車のみ。それもハンドシフトを装着していない車両だ。

 というのも今回の参加者は、半身不随の障がい者ではないから、である。昨年6月の開催時に初参加となった視覚障がい者にも門戸を広げているが、今回はたまたま3名の体験走行希望者が集まったため、盲目ライダーのみの今回の開催が決まった。
 

 
 体験走行会の内容は、基本的には、これまでと変わらない。SSPで用意しているアウトリガー付きの小型車両を使い、いざというときの転倒を防止する。この車両はリモコンでエンジンを停止することができるようになっており、スタッフが車両を止めることができる。ライダーへの指示は、サインハウスが製造販売しているバイク用Bluetoothインカム「B+com」で行なう。これを付けたヘルメットを装着した参加者と、B+COMの店頭デモ用ヘッドセット(店頭デモ用のため非売品となる)を装着したスタッフが会話をし、ライダーに指示を出す。また、インカムでの会話の内容は場内に設置したスピーカーで全スタッフが聴くことが可能。
 

 
 実際の走行は、まずアウトリガーをつけたまま、最初はエンジンを掛けずにスタッフによる手押しで、続いてエンジンをかけて自走して、まっすぐ走れるかを確認しながら走行を繰り返していく。それがクリアできると今度はカーブなどを使って曲率に合わせてステアリング操作の指示を出しながら走行をしていく。

 今回参加したのは、縫田政広さん、加藤直樹さん、竹村雄一さんの3名の視覚障がい者。縫田さんは持病の糖尿病の合併症による網膜症で失明。SSPには昨年から参加し、今回が4回目の参加となる。すでに自動車学校での体験、そしてサーキットでも走行を経験。今回は、失明後初めて走行した同じ場所をもう一度走りたいということで参加している。他の2名はツィッター上でのやり取りからこのSSPの存在を知り、参加となった。
 

「今回は完全に身をゆだねているというか、前回ここで走行した時よりも楽しさが増してます」と縫田さん。約半年前の盲目ライダー初の体験会では手探り状態だったわけだが「今回はスタッフも進化している」と。

 

 
 加藤さんは交通事故によって失明した。それでもクライミングやウェイクボードを楽しむアクティブな性格で、このSSPのことを知った直後に連絡をして今回の参加を決めていたという。
 

29年ぶりのバイクで「力がどこに入っているのかわからない」と困惑しながらも走行を楽しんだ。加藤さんは「次は縫田さんが走った同じ(袖ヶ浦の)サーキットで走って、レコード(全盲ライダーのラップタイム記録)を抜きたいです」と話す。

 
 竹村さんは、網膜色素変性症という病気により、視力低下が進行しており、現在では光を感じられる程度だという。バイクに乗りたいとSNSにつぶやいたのがきっかけとなり、今回の参加となった。
 

「楽しみと緊張でいっぱいいっぱい。走行が終わっても緊張しています。初めての走行でしたが、走行のほうは不安もなく走ることができました。これからも参加できるなら参加していきたい」と竹村さん。

 
 さらに、見学者として会場にやってきたのは、YouTubeチャンネル「現代のもののけ姫」を発信している車いすYouTuberの渋谷真子さん。公営競技の競輪とオートレースを統括する公益財団法人JKAの補助事業部の活動を発信するアンバサダーとして来場。半身不随の参加者のことは知っていたようだが、今回の全盲のライダー誕生の様子を見て、「もう、できないことなんてないんじゃないの?」と驚いていた。
 

渋谷真子さんはSSPのこの活動を実際に見て、今後発信していく予定だという。バイクについてはタンデムや原付程度しか経験はないが、この場でバイクにまたがってみて「やれるならやってみたい」と。近々バイクに乗ることもあるかも?

 SSPのこのパラモトライダー体験会は、2022年も積極的に開催していくという。次回は、3月下旬に鈴鹿サーキットで開催の予定だ。
(レポート:青山義明)

 



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2022/02/04掲載