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試乗・解説

レブルシリーズの魅力は 見た感じの「アメリカン」度が薄いこと! Honda Rebel 1100 DCT
3年連続ベストセラーを獲得した「異常人気」ともいえるレブル250。
レブル1100は、250でライダー心をがっちり掴んだ
「レブル流の作法」をきちんと継承しているバイクです。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:松川 忍 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




軽快に街を走れる、上質なクルーザー

 REBELというと、どうしたって僕ら旧世代は85年デビューの空冷2気筒のやつ(MC13)を思い出すんだけれど、2017年デビューの現行Rebel250(MC49=以下レブル250)は、当然のようにまったくの別モノ。
 その現行レブル250は、海外向けに300、兄弟モデルの500と同じスタイリングのラインアップで、アッという間にベストセラーモデルに昇りつめました。この移り変わりの激しい時代にですよ? 発売翌年の2018年から3年連続でベストセラー、しかもデビューから時間がたつと新鮮味が薄れるというのに、18年より19年、19年より20年の方が販売台数が多いという不思議なレブル現象。22年春ごろに判明する2021年のランキングも、きっと1位じゃないかな、って思ってます。
 Rebel1100は、そのレブルシリーズの最大排気量モデル。300/250と500のようなダイレクトな兄弟関係じゃなくて、お名前いただきました、的なラインアップ。レブルで好評な「素材感」的なスタイリングで、CRF1100Lアフリカツイン系の並列2気筒を搭載。素材感、シンプルさを押し出した250/500と違って、ハイメカエンジンを積んだプレミアムな立ち位置ですね、これは。
 

 
 そもそも現代のレブルは、実は「アメリカン」らしからぬバイク、ってところに人気の秘密があると思うんです。アメリカン、っていうのは今でいう「クルーザー」のことで、もちろん本家ハーレー・ダビッドソンやインディアン的な、大きく寝かされたキャスター角で、大きなフロントホイールにロングホイールベース、低いシートにVツインエンジンとかなんとか、直線を快適にのんびり走りたい気持ちにマッチするバイクのことです。
 エンジンは低回転からトルクがあって、キンキンと高回転を回して走るより、低回転定速度で距離を稼ぐようなライディングに向いたバイクですね。あれはやっぱり、アメリカという「まーっすぐな道」の多い国に育まれたバイクですから、日本で合っているかというと、それはちょっとしたズレがある。だから日本でメインストリームにはならないんですね。もちろん、好きな人は大好き──それがクルーザーのカテゴリーです。
 

 
 レブル250は、「クルーザー」的キャラクターを抑えめにしているバイクです。大きく寝かされたキャスター角に見えても、レブルが28度なのに対し、同じ250ccだとCBR250RR=24度30分、CB250R=24度44分。すでに絶版モデルのシャドウ400=34度、CB400SuperFour=25度5分、GB350=27度30分、CB1100は27度などなど。この場合、キャスター角は数字が多いほど「キャスターが寝かされている」という言い方をするんですが、レブルはさほどでもありません。GB350もかなり近いですから。
 それでいてレブル250は、シート高が低く、エンジンは低回転からパンチのある単気筒エンジンで、つまりクルーザーに見えるスポーツバイクなんです。だからこそ、これだけ売れに売れている。それは水冷2気筒エンジンを搭載しているレブル500も同じような狙いで、1100もこのキャラクターを踏襲しているバイクです。
 だから、初めてレブル1100に乗った時には驚きました。こういったスタイリングのバイクから一番遠いはずのキャラクター、つまり速い! なんの予備知識もなく乗った初乗りでは、とにかく速さ、トルクの太さ、パンチ力に圧倒されました。もちろん、アフリカツインの95PSから87PSにデチューンされているんだけれど、あのパワフルなアフリカツインほぼそのままのパワーだと思ったくらいでした。
 

 
 走り出しは、ラフにスロットルを開けるとドン、と背中を押されるようなトルク。ピックアップも鋭く、回転の上がり下がりがすごくシャープです。アフリカツイン同様、270度クランクという不等間隔爆発を採用しているので、ヒュンヒュン回るより、ダダダダッとくる、その回り方はVツインっぽいです。しかもスポーツバイク的なエンジンの反応です。
 今回、試乗したのはクラッチワークもシフトチェンジも要らないDCT仕様。いわばオートマチックなんだけれど、スクーターのCVT無段変速のような味気なさはゼロ。きちんと体の下でカチャカチャと変速しているのがわかる「走っている感」にあふれるフィーリングです。
 アフリカツインよりもクランクマスを増やしているのか、低回転からのネバりはレブル1100の方が上。アフリカツインの軽快な吹け上がりよりも、中回転域でドロドロドロッと回るようなフィーリングです。それでも高回転まで引っ張ると6000回転あたりまでぐんぐん回り込むような、低回転トルクと高回転のパワーを、手応えを持って出しているエンジンです。
 

 
 さらにレブル1100には、スポーツ/スタンダード/レインと自分で設定するマニュアル、合わせて4つのパワーモードが選べるようになっていて、スポーツモードはフルパワーだけに、やっぱり力強い。スタンダードはスポーツと同じ力感ですが、スロットルのツキが少しぼんやりしています。レインは、濡れた路面でもホイールスピンを起こさないように出力を控えめにしているんですが、これはドライ/ウェットみたいな2段階で、雨の時にスピンしないモードがあるだけでいいんじゃないかな、って感じ。
 スポーツモードもかなりパワフルなだけに、今回の試乗では、ずっとスタンダードで乗っていました。同じくトラクションコントロールとエンジンブレーキコントロールも標準装備でしたが、CBR1000RR-Rならまだしも、レブル1100でこのシステム使う人、いるのかな。電子制御もやりすぎると大きなお世話だな、とも思ったんですが、同じく電子制御の一種ともいえるクルーズコントロールはすごく出来がいい! 50km/hから設定可能で、スロットルを開けっ放しでいなくても設定スピードで走るよう制御してくれて、ちょっとであっても、高速道路を走る時には重宝しました。モデルに合った、そのモデルに必要な制御メニューってあるんだと思います。
 

 
 そしてハンドリングも、やはりレブル流。クルーザーっぽい、直進安定性重視で、ハンドリングはカクンと舵が切れるような動きは少なく、重い手応えもない、ネイキッドバイク的自然さのあるハンドリングです。
 コーナリングでは、180サイズの16インチリアタイヤのラウンド形状に合わせて穏やかにバンクするような感じ。決して曲げようと入力を頑張ったり、ブレーキングできっかけを作って、というキャラクターではないですね。このあたりが、クルーザーだけれどクルーザーすぎない、というレブル流の作法をきちんと継承していました。つまりは「ちょっとアメリカンっぽいスタイリングの、足着きがすばらしくいいスポーツバイク」なんです、レブル1100は。
 

 
 やっぱりレブル1100が気持ちいいのは、トップギア100km/hとかで流している時で、標準装備のクルーズコントロール、グリップヒーターをセットして高速道路を流している時あたりかな、と思います。エンジン回転は3500rpmくらいで、エンジンの鼓動をそこそこに感じながら路面をタタタタタッと蹴とばして進む感覚が、いかにもツーリングに出たぁ、って気持ちにさせてくれます。
 街乗りを小気味よく、ワインディングも軽快に、そして快適にクルージングできるレブル1100。これは、人気があるのもよーくわかります。プライシングもすごく良心的で、この完成度のビッグクルーザーが、マニュアルミッション車は税抜き100万円ぴったし、DCT車は税抜き110万円で設定されています。
 このコロナ禍のゴタゴタが早く収まって、販売車両の供給体制が安定すれば、もっともっとレブル1100は増えていくと思います!
(試乗・文:中村浩史)
 

 

ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

φ330mmのフローティングディスクに、4ピストンキャリパーをラジアルマウントするレブルのシングルディスクブレーキ。レブルにはtoo much、まるでロードスポーツの充実度だけれど、そのアンバランスさも魅力。
φ43mmのインナーチューブを持つ正立フォークを採用。フロント18インチの130幅フロントタイヤがレブル1100の「アメリカンっぽくない」ハンドリングを決定づける。キャスター角は28度とGB350にも近似値。

 

マニュアルミッション/DCT仕様2タイプのエンジンは、アフリカツインのエンジンをベースにして仕様を専用設定。270度クランクの不等間隔爆発エンジンで、低回転では鼓動感を、高回転では軽快な伸びを味わえる。写真はDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様で、クラッチレバーのない自動変速。左ハンドルスイッチでマニュアルシフトで走ることもできる。

 

これがDCT車のクラッチカバーまわり。DCTは右ハンドルでA=オートマチックとM=マニュアルシフトが選択でき、Mボタンを押して左スイッチの+/-ボタンでハンドシフトアップ/ダウンを行なうことができる。
あえてシンプルなデザインとしたサイレンサーを持つ2in1マフラー。サウンドチューニングも図られていて、低回転では力強く、高回転では軽快に伸びるような吹け上がりを感じることができる。重低音です。

 

250/500にも見られるシンプルデザインのスイングアームは、250/500がφ45mmなのに対し、より大径のφ50.8mmの鋼管丸パイプとしている。250/500と違ってリアサスはリザーバータンクつきを標準装備。
気になったところといえば、足を降ろす位置にステップがあり、それもステップラバーのないメタルペグのため、跨ったり、降りてバイクを押し引きする時にスネを何度もぶつけてうずくまりました(笑)。

 

現行250/500とも共通イメージの4眼インナーレンズ式LEDヘッドライト。1100のみヘッドライトケース外周部に半円形状のポジションランプを装備する。ウィンカーにも導光リングを装備し、ポジションランプの役割。
250/500と似た形状のシンプルデザインのタンクだが、1100のみ質感の高いフランジレス製法(タンク下面に溶接リブが見えない)。13L容量で、今回の試乗では約18.5km/Lで、フルタンク200kmオーバーを確保。

 

立体的で座面の広いサドル型シート。タンデム部は面積こそ小さいが充分な厚みがあり、純正アクセサリーのバックレストを使用すれば、かなりタンデムもラクになるかも。シート下にETC車載器を標準装備。

 

アメリカンのテールランプの定番といえば縦長のツームストーンタイプだけれど、レブルのそれは現代的な薄型楕円形状。ウィンカー、ヘッドライトも合わせてすべてLEDで、リア周りの灯火類はすべてクリアレンズ。
ギアポジション表示つきの液晶メーター。燃料計の下はパワーモードを表示し、切り替えるとトラクションコントロール、エンジンブレーキ効きもセットで変化。オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費なども表示する。

 

ハンドル右スイッチは上の赤スイッチからセル&キルスイッチ、A/M切り替えとAモードの走行&ニュートラル出しボタン、クルーズコントロールボタンとスピード+/-レバー。左スイッチは上からハザード、セレクトボタンと、左にパッシングつきハイ&ロービーム切り替え、メーター表示モード切替、ホーン、ウィンカーと、マニュアルシフトダウンボタン。シフトアップボタンは写真のスイッチホルダー裏側にある。

 

ヘルメットホルダーはライダー側シート裏側のフックにDリングをひっかけ、共締めするタイプ。外部式ヘルメットホルダーも欲しいところだが、シートの取り外しやすさから、使いにくさは感じなかった。

 

●Rebel 1100 / Rebel 1100 DCT 主要諸元
■型式:ホンダ・8BL-SC83 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒OHC4バルブ ■総排気量:1,082cm3 ■ボア×ストローク:92.0×81.4mm ■圧縮比:10.1■最高出力:64kW(87PS)/7,000rpm ■最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/4,750rpm ■燃料消費率:国土交通省届出値、定地燃費値31.5km/L〈60km/h、2名乗車時〉 WMTCモード値18.7km/L(クラス 3-2)〈1名乗車時〉■全長×全幅×全高:2,240×850[830]×1,115mm ■ホイールベース:1,520mm ■最低地上高:120mm ■シート高:700mm ■車両重量:223[233]kg ■燃料タンク容量:13L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン[電子式6段変速(DCT)] ■タイヤ(前・後):130/70B 18M/C 63H・180/65B 16M/C 81H ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:ガンメタルブラックメタリック、ボルドーレッドメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,100,000円[1,210,000円] ※[ ] はDCT

 



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2022/01/31掲載