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第133回 「プ・ソ」

 2022年1月14日、惜しまれながら幻立喰・ソになってしまった小山駅のきそば(駅ソは正式店名があってもないようなものなので正式な店名は不明ですが、中沢製麺のサイトでもきそばと表記されていますから間違いないでしょう。最近では、財産表などをちゃんと確認する、玄人さんもいますからうかつなことは書けません)。
 人気アニメに登場したプ・ソのモデルになったことで、聖地化している影響も大きかったとか(カウンターに貼ってあったきそば新聞によれば、正確にはここではなく、かつてあった両毛線ホームの方だとか。ということは115系か211系、ひょっとして105系 も出てくるかもしれませんから、一度ちゃんとアニメを見ないといけません)。

 ここは昨今では珍しくなった非JR系が運営する、風情も味もある貴重な昭和的プ・ソでした。大家さんであるJR側の都合による閉店で、駅ファンには悪名高かった?NRE改めJR東日本クロスステーションが後釜に新店舗を出すようです。だから、小山駅からプ・ソがなくなるわけではなさそう。普段使いで使っていらっしゃる地元の人にとっては、一安心ですが、やはり慣れ親しんだ味とは違うわけでして、通りすがりの一見であれば、パス!で済みますが……かつてベルリンに進撃する赤軍のごとく、どえらい勢いで地元系駅ソを次々と駆逐し、あじさい化(イメージカラーがオレンジだったので、なんだか赤化にだぶったのはもちろん気のせい。あじさいについてのたわごとはこちらでどうぞ)していったあの頃を思い出してしまいます(誤解なきように付け加えますと、中には店主の高齢化や店舗の老朽化など、今日に続く立喰・ソ問題により、喜んで経営移譲した駅ソもあったようですから、一概に悪者扱いしてはいけません)。まあ、コロナ禍もあって本体の鉄道を助けるために、不動産や物販に精を出すというお家事情もあるでしょうし←余計なお世話。
 ちなみに小山駅のプ・ソを運営していた中沢製麺ですが、山手線大塚駅の近所に直営の「東京なまめん なかざわ製麺」を昨年オープンしました。本業に邁進するその姿、まさに立喰・ソ界の鏡です。立喰・ソが併設されていないのは残念ですが、小山駅きそばも再現できます。いろいろ扱っていますので、立喰・ソ好きはもちろん、ラーメン、焼きそば、スパゲッティ好きの方もぜひいちど。

小山駅のきそば
小山駅のきそば
多くの人に惜しまれつつ幻立喰・ソになってしまった小山駅のきそば。(2017年4月撮影)

小山駅のきそば
小山駅のきそば
攻めの姿勢?でおもしろソもいろいろやっていました。この日お目当てだった蕎麦パスタは残念ながら売り切れでした。幹線駅だけにひっきりなしにお客さんがやってきます。それでもにゅーっと手が出てパッと水を出してくれました。これぞおもてなしの精神!(2017年4月撮影)

両毛線
水戸線
東北新幹線、東北本線、水戸線、両毛線が乗り入れる栃木県のジャンクション小山駅だけに、かつては両毛線(左 2007年9月撮影)、水戸線のホーム(右 2007年9月撮影)にもプ・ソがありました。

 小山駅のきそばは最終日が近づくと、大行列になり1時間待ちだったとニュースになっていました。京急川崎駅のパタパタといい、昨今は鉄がらみの小ネタが普通にニュースになったりして、すっかり市民権を得たようです。
 その影で、昨年は多くの駅ソが静かに消えてしまいました。かつてプ・ソといえば、急行が停車するような幹線の駅は当たり前、夜行列車が普通に走っていた時代は、24時間営業も珍しくありませんでした。地方の線区でも中堅クラスの駅にはありました。現在50代以上のみなさんが、国鉄の周遊券を駆使していた青春時代、宿は駅の待合室か夜行列車の自由席、コンビニはまだ普及しておらず、食事は、お金に余裕があれば駅前食堂のカツ丼、普段は駅前のなんでも屋で買った菓子パン(列車に乗ってさあ食べようと思ったら、うっすらカビが。戻るわけにもいかず泣き寝入り……賞味期限なんてあってないような当時、こんな経験された方絶対いると思います)が定番で、たまに食べる駅ソ、プ・ソ(もちろんかけ)は、五臓六腑に染み渡りました。特に冬の寒い夜は、湯気を上げている駅ソまたはプ・ソのあの香りに誘われて、ついつい散在してしまい、翌日は飯抜きなんてこともありました。あの頃、お酒の味を知らなくて、ほんとよかったと思います。

 ちなみに現在、JRホーム上の囲いのない吹きさらしタイプの昔ながらのプ・ソはどれくらいあるのか、ざっと調べてみたらなんと12駅16店舗のみ(抜けている所あるとおもいます)。聞いた話では、立て直しや新築する場合、吹きさらしだと保健所の許可がでないようで、これから先、減ることはあっても増えることはまずないでしょう。特にオススメのプ・ソは沼津駅です。広い構内に木造のホーム屋根と、かつての幹線駅の雰囲気が残る稀少な駅でもありますから、機会があればすすってみてください。

札幌駅 5-6番線 弁菜亭
札幌駅 5-6番線 弁菜亭(2016年3月撮影) 
札幌駅 5-6番線 弁菜亭
札幌駅 7-8番線  弁菜亭(2019年12月撮影)

宇都宮駅 7-8番線 野洲そば
宇都宮駅 7-8番線 野洲そば(2017年6月撮影)
本庄駅 1番線 本庄そば
本庄駅 1番線 本庄そば(2017年3月撮影)

高崎駅 2-4番線 第5売店
高崎駅 2-4番線 第5売店(2018年1月撮影)
長野駅 6-7番線
長野駅 6-7番線 蕎麦処 しなの(2021年11月撮影)

長野駅 しなの 13-14番線
長野駅 13-14番線 新幹線ホームそば(2021年11月撮影)
沼津駅 3-4番線 桃中軒
沼津駅 3-4番線 桃中軒(2016年5月撮影)

三島駅 3-4番線 桃中軒
三島駅 3-4番線 桃中軒(2012年4月撮影)
静岡駅 1-2番線 富士見そば
静岡駅 1-2番線 富士見そば(2015年5月撮影)

静岡駅 3-4番線 富士見そば
静岡駅 3-4番線 富士見そば(2014年5月撮影)
富士駅 1-2番線 富陽軒
富士駅 1-2番線 富陽軒(2019年5月撮影)

小倉駅 1-2番線 ぷらっとぴっと
小倉駅 1-2番線 ぷらっとぴっと(2019年2月撮影)
小倉駅 7-8番線 北九州駅弁
小倉駅 7-8番線 北九州駅弁(2019年9月撮影)

博多駅 3-4番線 博多ホームうどん
博多駅 3-4番線 博多ホームうどん(2021年11月撮影)
鳥栖駅 5-6番線 中央軒
鳥栖駅 5-6番線 中央軒(2012年4月撮影)

 青春時代の胃袋をささえた、昭和風情のホームにあった駅ソ&プ・ソは減少する一方です。昨年は、有名な多くの駅ソが幻立喰・ソになってしまいました。駅ソだけではなく、駅近所にあったまさかの名店のいくつかも、幻立喰・ソになってしまいました(第132回を参照してください)。
 終息どころか、再び拡大の様相がみえるコロナ禍の影響は大きいと思います。さらに、時間の経過という人間にとって抗うことのできない悲しい現実も避けては通れません。どう考えても人生折り返し地点は通過した私も、ぼやーっとしているヒマはありません。まだまだ未踏の立喰・ソだらけ、ちょっと考えただけでも、気が遠くなりぼやーっとしてしまいます。今年もこんな調子でよろしくお願いいたします。

 あっ、最後になりましたが、なんの説明もなく当たり前のように使っていた「プ・ソ」という単語、奥歯にはさまったネギ級の違和感と嫌悪感あったやもしれません。新年早々ごめんなさい。プラットホームにあるソの略です。プラットホーム(platform)はいろいろな意味がありますが、車体やデバイス、観測衛星のことではなく駅のホーム(漢字で表記すると歩廊。中国語では月台だそうです)上に存在する立喰・ソのことです。誰も使っていない、さきほど思いついただけ。もう二度と使うことはないと思いますので、スカッと忘れてください。コロナもスカッと飛んでいけ〜。

音威子府駅の常磐軒
音威子府駅の常磐軒
昨年2月、主である西野さん逝去され、惜しまれつつ幕を閉じた音威子府駅の常磐軒。「写真を撮ってもよろしいでしょうか?」とちょっと恐そうなご主人におそるおそる尋ねると、静かにうなずいて許していただけました。ご冥福をお祈りいたします。(2009年4月撮影)


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2022/01/29掲載