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試乗・解説

DCTはオモシロイ! Rebel 1100編 Rebel 1100 DCTで旧道風情を巡る。
その朝、東名高速で西に向かった。江戸時代から街道とともに栄えた港町に春の使者、桜エビを食いに。そして東海道の歴史風情がそこここに残るという旧道をあちこち巡ってみよう。そして1100直列ツインエンジン+DCTを組み合わせたRebel 1100 Dual Clutch Transmissionとじっくり旅しよう。それが何よりの目的。Rebel 1100で試してないワインディングにもゆくぞ。どんどん近くなる富士山をついに通り越し、高速の出口、富士川サービスエリアまでひとっ走り。踏切みたいなゲートを出たら、そこには旧道が待っていたのだ。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:渕本智信 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/




カッパ、スマホ、薄手のダウン。

 バックパックに小旅行に必要な小道具を詰めた。忘れ物はないだろうか。遠足前の子供の気分だ。暗色系にして艶やかなボルドーレッドメタリックのRebel 1100 DCTはとっくに眠っている。それなのに乗り手の方は「あれ、キーどうしたっけ……」と。

 ジャケットのどのポケットに入れたか。入れたそばからほかの準備に気持ちが焦るから記憶がさらりと消去される。もう一度全部イチから確認。スマホ充電したっけ? いい加減にしなさい! って言われそうな夜はあっという間に過ぎた。翌朝、身支度をしてRebel 1100 DCTに跨がる。左膝前にあるキーシリンダーをひねりエンジンを掛ける。ああ、その前にシート開けてETCカード挿入だった! 

 Rebel 250から始まった一族のデザインDNAのごとく、1100ccもありながら思ったほどのデカさはない。もちろん250より重たいが、ソレが不便に感じないのがRebel 1100のいいところ。街乗りにこれほど馴染む1100ccはあるまい。ならば下町探訪でもしようか。下町、下町、細い道、と考えているウチに思いついたのが今回の目的地、静岡だ。桜エビ漁が始まり、春霞に煙る富士山が見える場所へ。ちょこまか走るにはRebel 1100は最高の相棒にちがいない。だってDCTだし。

 そんなワケで用賀インターから2時間弱。新東名じゃない方の東名高速、いわば旧道となる海沿いルートで富士川サービスエリアへとやってきた。ココまでRebel 1100での高速道路移動での印象を述べれば、頼もしいの一言。前に試乗会で走らせた時には少々乗り心地に角があるように思えたが、今日走らせてきたRebel 1100は距離が進んだせいか、サスペンションの動きがマイルド(Rebel 1100 DCTの試乗インプレッション記事はコチラ→https://mr-bike.jp/mb/archives/19842)。
 乗り心地も良かった。特にリアのプログレッシブレートのスプリングがもたらす吸収力の良さが乗り手を心地よく運んでくれる。フロントサスも、試乗会で乗った時はギャップの当たりに「カチン」と鋭いキックバックを返すこともあったが、今日はとにかく良い印象しかない。評価を改訂しよう! Rebel 1100、乗り心地、快適です。

 そしてクルーズコントロールが付いたことで右手での速度維持という神経を使う仕事から解放された。その分、目に入る細かな景色や道々を彩る春の花を眺めるゆとりがある。もちろん、DCTがもたらすクラッチやシフトチェンジ操作をプロライダー以上にミスのない機械に任せることで、心の余裕はほぼ満タンになる。これ、DCTを体験した人なら誰でも共有できる部分ではないだろうか。
 

 

インター出たら3分で一里塚。

 ETC2.0 が標準装備されるRebel 1100。正直嬉しい。というか、クルーズコントロールがついているような機種なら、ETC2.0標準装備が今や新常識でしょ? だって、そうじゃないとサービスエリア内から外の道にアクセスするようなETC専用出口を活用できない。本音を言えば料金支払い装置にこんなに高いコストを投じた上でお高い通行料を払うのはシャクだし、と思う僕のような人には、あらかじめ付いていることで、別にお金を払った感が多少なりとも緩和されるから良いのだ! と言いたい。有料道路を使わない派もいると思うので、ご意見は様々かと思う部分ではありますが。

 富士川サービスエリアから出て数分で旧街道にアクセスする。程なく道標たる一里塚があった。旧道を過去の道、と勝手に思っていたが、今も地元では現役の道で、写真を撮るのにクルマが途切れるのをしばし待っていたほど活用されている。センターラインがない道ながら、賑わいが残る感じが嬉しい。Rebel 1100はこんな道も当たり前の守備範囲。250と同じじゃないにしても、ビッグバイクが表看板ではない。ここでもDCTが市街地ライディングに馴染む。ついさっきまで高速道路で満足感を愉しんだが、ここでも納得の走りなのだ。クラッチ、シフト操作がないから、交差点、歩行者、対向車にしっかりと注意力が向けられる。
 

 
 そんなのMT車だってできるでしょ! DCTに乗る前、実は神経を発進、シフトアップ&ダウンに使っているとは意識していなかった。でも、DCTを体験するとライディングをしている時、自分の意識というか脳味噌の半分ぐらい、クラッチ操作をすることに取られている、と解った。不思議だけど、CVTのスクーターに乗るとそうは思わない。MTミッションを自動的に変速、自動的にクラッチ操作をするDCTだからそれが如実に感じたのだ。もちろん、クラッチやシフトの制御がちぐはぐならばそうはならない。ホンダのDCTなら自分でやるよりお任せした方が賢い、そう思えるほど完成度の高いプログラミングだ。それにシフトミスしないし、ギア抜けもない。エンストして焦ることもない。これはスゴイことだ。
 

 

バイパスからわずかな距離に続く東海道。

 旧道は現代の本道である国道1号バイパスから少し内陸側を通っている。そのまま町を行くとところどころに風情のある街並みが目に入る。古い街道沿いで見る間口は大きくないが、奥行きがある家々が並ぶ。その中に和泉屋の屋号を掲げている商店があった。そのとなりは「お休み処」と書かれたギフトショップだ。建物は見た感じ旅籠。ちょっとバイクを駐めるや、中から主が出てきて和泉屋にまつわる歴史を語り出す。土間から見上げる太い梁。小上がりには歴史を今にとどめる写真や雑貨が並んでいた。じっくり話す主人をたしなめるように奥様が「忙しいのよ、みんな。引き留めてゴメンナサイ」と笑う。
 話好きの主から60年前の風景を写真で見せてもらいながら旧道旅は、昼前にも関わらず早くも一つ目のピークを迎えた。
 

 
 轟々と大型貨物が行き交う海沿いのバイパス。そのわずか内陸側にこんな静かな情緒が残っている。その街道からさらに山側にはお寺や神社が点在していた。

 路地裏探訪を続けながら時間が過ぎる。一度大通りで西に向かうと程なく由比だ。由比といえば桜エビ。どうやら漁期に入ったばかりでなんとなく活気付いている。そう思ったら、お昼を摂りに入ったそば屋さんで、最近は不漁が続きこの辺でいくつも旗を出している桜エビ料理を出す店の中には輸入物に頼るところもある、というではないか。

 なんか、それを聞いたら桜エビのかき揚げとざるそばにしようと思ったけど、メニューにあった天丼とそばのセットを頼んでしまった。天丼には桜エビではない普通のエビと野菜の天ぷらが載っていた。美味しかったけど。あれ、桜エビを食いに来たのに……、とそば湯を飲む頃に目的を忘れている自分に気が付く。
 

 

密柑山に登る。

 由比駅から少し西に移動したところに「薩埵峠入り口」という案内板があった。迷わず右に折れる。対向車が来たらバイクでも避けて停まってやり過ごすほど幅が狭い道が続く。由比宿を抜ける道沿いは格子戸の家もあり街道風情が色濃くあった。程なく西倉沢の一里塚跡から山に登る道へ。薩埵峠へと続く急な上り坂沿いにはミカン畑が続く。富士川SAから一般道に出てから民家の軒先に「ミカンあります」と手描きの短冊と小さな台に袋詰めされたミカンが置いてある。日当たりの良い斜面の柑橘畑と旧街道というのが面白い。

 Rebel 1100はそれこそ軽トラが下ってきてもすれ違えなさそうな細くくねくねした道でもスイスイ走っていける。DCTだからライディングへの緊張感が少なく、リラックスしていられるのだ。おっと、峠から車が一台下って来た。少し広い場所で待避。やり過ごしてから走り出す。曲がりながら発進。しかも上り。こんな場面でもシート高が低く足着き性が抜群、そしてDCT効果でまったく問題無し。旧道風情を愉しむ相棒としては125のスクーターと同等のお気軽気分なのだ。

 柑橘畑越しに見える駿河湾。富士山は春霞の中でパーフェクトに姿が隠れている。峠への道は荒れた舗装が続く。しかし路面からの入力をきれいに吸収するRebel 1100のサスペンションはここでもハナマル級だ。エンジンが持つ1100ツインの存在感を、すぐれた足周りの恩恵でこんな荒れた細い道でも楽しめるのがいい。
 

 

ワインディングでまた別の面白さを確認。

 薩埵峠を抜け、少し西へ。今度は日本平へと登った。海岸レベルから一気に標高を上げるその道は短いながらも楽しいワインディングロードが続く。ワインディングを走り始めてすぐに感じたのは、ハンドリングの正確性だ。Rebelファミリーでは唯一前輪に18インチを履く1100。ハイトはやや低めの70だが幅は130mmで250、500と同じ。後輪は180/65B16と、ワイドタイヤを履く。そして全体では細身、さらにウエストをキュット絞ったような形状のフレーム。まるでベンチに腰かけた時、足を少し前に置いたような位置関係にあるステップからいわゆるスポーツバイク的な乗り味はあまり想像ができない。しかしカーブに合わせたラインを決めバイクを寝かすと、その線をキレイにトレースして走ってくれるのだ。前輪が思ったよりも外側を通るとか、想像したより早くステップが路面について驚いた、ということもない。ブレーキ性能もバイクの性格によく馴染んだモノだった。しっかり減速してくれる。フロントはもちろん、コントロール性と荷重の乗った後輪からの制動力が頼もしく安心してブレーキングができる。
 

 
 DCTのシフトはDのまま。ライディングモードはスタンダード。そこにシフトパドルからシフトダウンを指示して走ると、まるで自分の足でシフトダウンしたかのようにエンジンブレーキを手に入れるタイミングもバッチリ。攻める走りをするわけではないが、極めて純度の高い一体感を楽しめた。かっこは良いけど、カーブがね……。パワーはあるけど直線だけならね……。というクルーザーではない。Rebel 1100は楽しいバイクだ。
 

 

Rebel 1100 DCTはやっぱり楽し。

 結局、夕方までこの周辺を巡り、翌日は見過ごしていた久能山東照宮にも登ってみた。1159段あるという石段を上れば、汗だくになったころご褒美のように駿河湾の遠望を楽しめる。しかも耳の中で太鼓のように響く自分の鼓動を聞きつつだ。

 宿場町で買おうか迷った手ぬぐいを買いにギフトショップへ。開けて見たら歌川広重が名作、東海道五十三次に収められた一遍だった。この周辺なら「薩埵嶺」「興津川」、はたまた「三保遠望」などを期待したものの、日本橋「朝之景」だった。まさに東海道スタート地点の図柄だった。浮世絵に描かれた風景のリアリティーとは対象的に登場する街道をゆく人々がポップに描かれたように見える歌川広重の画風、なんか和むんですよね。
 

 
 そんな昼時、清水にある海鮮市場なる場所を見つけた。あ、桜エビ、と思い出す。今日こそは。地魚のどんぶりを頼むと、生の桜エビが載っていた。「今朝獲れです」とお店の人。甘い。それとは別にかき揚げも。これまた旨い。輸入ものに頼るのか、と昨日は思ったが今日は競りにエビが上がったわけだ。大満足。

 実は昨日の昼に、あの話を聞いてから、由比の駅前にあった桜エビが向かい合って載ったアーチもなんとなく色あせてみえた。でもそれは頭の中にあるかき揚げの桜エビの赤がイメージだったのだが、取れたてで生の桜エビはその名の通り桜色。しかも透き通っているから淡い。駅前のアーチに乗ったモニュメントは本物志向だと解った。早合点、たいへん失礼しました!!
 

 
 今回、富士川SAを降りてから距離にしたらたいした移動をしていないが、旅は思い出深いものになった。三保の松原がある小さな半島で夕陽でも、と粘ってみたが、初日の夕陽は厚手の雲に阻まれ特色を出さないまま沈んでいったのが残念だったけど、Rebel 1100 DCTとならまた来られると思った。高速道路での帰り道、Rebel 250でツーリング中のライダーを追い抜いた。大袈裟にいえばこれも街道の一期一会。
 どことなく潮風香る高速道路を再び2時間弱ラクラクと移動して戻ったのである。帰ってガソリンを入れてみた。燃費はちょうど20km/lだった。旧道巡りで走る停まる、低速移動とUターンの繰り返しだったから、ツーリング燃費この辺がボトムだと思う。いいバイクでした!
(試乗・文:松井 勉)
 

 

デュアル・クラッチ・トランスミッション搭載の並列2気筒エンジン。アフリカツインのユニットをRebel用にチューニングしたものを搭載。ジェントルにもパワフルにも右手次第でライダーに楽しさを分け与えてくれる逸品。DCT歴10年を越えたホンダが丹精込めて熟成をしているだけにDCTでしか味わえないライディングプレジャーの質が高まっていた。
フロントフォークのインナーチューブに施されたコーティングはサスの作動性を高め、タイヤの接地性を高める役割を果たす。4つのLEDを丸形のケースに納めたヘッドライトユニット。ケース外周に道光帯が備わるRebelの顔だ。

 

丸形メーターパネルはLCDモニターに様々な情報を映し出すもの。P 、T 。EBとあるのは、パワーデリバリー、セレクタブルトルクコントロールの介入度、エンジンブレーキの強さを視覚化したもの。スタンダードモードではこの値、という意味だ。ライディングモードはレイン、スタンダード、スポーツ、ユーザーとあり、レインは早めにシフトアップをし穏やかなパワーデリバリーと介入度の高いトラコン特性となるほか、エンジンブレーキも弱め。滑りやすい路面を念頭にしたものだ。早めにシフトアップして低回転重視で走りたい場合、ドライ路でもレインモードだとクルーザーフィーリングを高めることができる。
スタンダードはレインよりもやや高回転側までシフトタイミングを移し、トラコン、エンジンブレーキはドライ路面用となる。今回、ツーリングではスタンダードを多用したが、時折、シフトアップパドルで早めのシフトアップを促す場面も。スポーツは市街地では3速程度までしかシフトアップしない。高い回転まで低いギアをキープするイメージ。ワインディングではドンズバなモードながら、シフトダウンをアプローチで2回はしたい派の僕はあえてシフトアップが速いスタンダードを選択した。ETC2.0車載器を標準装備する。

 

グリップヒーターを標準装備。5段階の温度調整が可能。スイッチボックスの上側右列には表示モードを変更する時に押すMODEスイッチ、そして上下矢印付きシーソースイッチがセレクター。メーター内のファンクション表示を切り替えるのもこの二つのスイッチで行う。ウインカー下はシフトパドル。マイナスの反対(前側)にはシフトアップ用プラススイッチがある。DCTモデルだけの装備だ。

 

右側スイッチボックスにはDCTモデルで使うシフトセレクターがある。Nはニュートラル、Dはドライブ。A/MはATモードとマニュアルモードの選択をするもの。
ライダーの膝前周辺のフレームを絞りくびれを付けている。実際にバイクのスキニーさを実感しつつ体とフィットする印象があり、走っても意思通りにバイクが動くスポーティーさで愉しませてくれるのが嬉しい。ステップに取り付けられたバンクセンサーも、先端ではなく車体側についている。これもコーナリングが愉しめるRebel 1100のキャラを物語る。

 

リザーブタンク付きのリアショックユニット。Rebelの流儀に則りダークに抑えたパーツ使いがかっこいい。上方のスプリングピッチが狭く、下方が広いプログレッシブレートのスプリングを使う。細かなギャップはソフトな上側が、大きな動きは下側のスプリングががっちりと受け止める。今回のツーリングでは乗り心地の良さも確認できた。

 

 



| Rebel 1100は、クルーザーのシズル感と、パワースポーツを兼ねた逸材だった! |


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2021/04/28掲載