車いすドライバーとして活躍する元WGPライダー・青木拓磨に、再びバイクに乗ってもらおうという「Takuma Ride Again」のプロジェクトから派生した一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)。青木3兄弟の長男・宣篤選手と三男・治親選手のふたりが立ち上げたこのSSPは、事故などで障がいを抱えてしまって、2輪車を諦めた人に再びオートバイに乗ってもらい、オートバイに乗る趣味を一緒に楽しんで行けるように応援する非営利支援団体。
そのSSPは、2020年6月から毎月1回のペースで一般の障がい者を対象としたパラモトライダー体験走行会を開催している。一方通行で事故の危険性の低いクローズドの空間であるサーキットを舞台に開催してきたが、5回目のパラモトライダー体験走行会は初めて自動車教習所で開催となり、6回目となる今回も、前回同様の自動車教習所での開催となった。
舞台となったのは、神奈川県川崎市にある向ヶ丘自動車学校。その開催地の選定は、今回公務としてこの体験走行会に参加となった神奈川県警察本部高速道路交通警察隊の紹介によるもの。当初SSPから「白バイの訓練場などを使えないか?」という会場の相談をしていたところから話が広がり、この教習所も訓練の場所として借りることがあるということから紹介された上での開催となった。
交通警察隊の参加についても、当初はボランティアでの参加を検討しており、公務での参加予定ではなかったが、「中には交通事故で障がいを負ってしまった方もおり、そういった方々が再びバイクに乗りたいという『夢の実現』への手伝いができる上に、安全運転への警鐘、交通安全の意識向上にもつながる」という高速道路交通警察隊隊長のひと言で、公務として、実際にパトカー1台、白バイ2台の計4名の参加となった。前回も群馬県警察本部交通部交通機動隊第2小隊特連班の8名がボランティアで参加してくれていたが、今回は初めて警察官としての参加となった。
開催となった12月21日はこの自動車学校の休校日ということで、そのタイミングを利用して、というもの。早朝から好天に恵まれたこの日、これまでもSSPを支えているボランティアスタッフに、普段から宣篤選手にライディングのレクチャーを取り入れているボッシュから3名がボランティアで参加し、介助の仕方などの確認を進めていく。また、参加者と見学者は、SSP専属理学療法士が参加者の体調や現在の状態などの確認を行い、走行がスタート。
今回の体験走行には、6月の第一回目の走行会から3回続けて参加していた野口忠さんと、前々回の袖ケ浦フォレストレースウェイでの走行会に参加した渡邉友章さんの2名。ともに腰椎の損傷で、腰から下の完全麻痺となっている。野口さんは、すでに3回の体験走行でも問題なく走行ができており、この日も久しぶりのバイクでの走行を楽しみにしているという状況。渡邉さんは、前回はまっすぐ走ることができず、補助輪付き車両での広場での走行練習にとどまっており、大型バイクでのサーキット周回には進めていないため、今回はそのリベンジといったところ。
また、常にバイクの改良を行っているSSPでは、この走行会のために仕立てた特殊な補助輪付きバイクの改善を行っている。これまでも補助輪の装着位置を変更するなどの試行錯誤を重ねており、今回も、この教習所等での走行に合わせるため、よりバンク角を稼げるようにアウトリガーの角度を調整している。ただ、これによって重心が上がることが懸念されており、バランスを取るのが難しい参加者との意見を交えながらのさらなる改善を検討している。
また、以前から採用しているエンジン停止が可能なリモコンも、エンジン停止とともにリアブレーキを効かせるように新たに機能を追加。こちらについても、今回ボランティアスタッフとして参加したボッシュのメンバーと意見交換する等、さらなる車両開発が進みそうだ。
この日の走行も、アウトリガー付きの小型バイクでの教習所内の最も広い交差点区間を使用して走行確認の後、大型バイクに乗り換えて教習所の外周コースでの走行に移行。この外周コースでの走行では、神奈川県警察の白バイによる先導走行となり、これまでとは異なる走行となった。今回は見学者も含め、実際に白バイへの乗車体験も行なうことができ、そちらも楽しい一日となった。
ここまで6回の開催を行なったパラモトライダー体験走行会だが、2020年の開催はこれにて終了。2021年ももちろん引き続いて開催予定だが、次回は春先での開催となる予定だ。今後の開催日程など、詳しくはSSPのホームページで告知されるのでそちらを参照していただきたい。
(レポート:青山義明)
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