2025年の鈴鹿8耐の大会期間中に実車が初公開されたGSX-8T / 8TTが、いよいよ国内販売をスタート! モデルコンセプトは「Retro Spirit,Next Generation Performance」、最新技術を懐かしさで包んだパッケージのGSX-8T / TT、早く乗りたい!
- ■文:中村浩史 ■写真:SUZUK、中村浩史
GSX-8Sをベースとしたスタイリングモデル
「スズキにはいま、ネオレトロというカテゴリーモデルはカタナ1000しかないのですが、GSX-8T / 8TTはその第二弾、バイクでのスポーツというより、楽しく快適に乗ってほしいストリートバイクです」(チーフエンジニア・加藤幸生さん)。
GSX-8T / 8TTは、GSX-8S / Rシリーズのエンジン、フレームという基本コンポーネンツをベースとしたスタイリングモデルだ。ヘッドライトやタンクシートといったスタイリングパーツを新作し、GSX-8S / Rシリーズ同等の走りの楽しさを狙ったモデル。このコンポーネンツを使用したモデルは、これでGSX-8S / 8R、それにVストローム800 / DEに続く5~6機種目になる。
エンジン、フレームはGSX-8Sをベースに使用。GSX-8T / 8TT用に新作したのは、主に外装パーツだ。タンクシートやヘッドライトまわりを新作し、GSX-8Sよりもグッとクラシックなパッケージに仕上げてある。
「やはりアピールしたいのはスタイリングです。過去のスズキの名車をそのままイメージするのではなく、エッセンスをオマージュして、ベースとなったGSX-8Sの基本性能の高さをきちんと持っているモデルとしています」(加藤さん)
デザインエッセンスの元となったのは、なんと1968年登場の名車、タイタンことT500! GSX-8T / 8TTの「T」は、このタイタンからつけられたものだという。「トラディショナル」とか「ツーリストトロフィ」じゃなかったのね(笑)。
デザインのスタートは、スズキ社内の「わくわくプロジェクト」。デザイナーがデザイン志向でモノづくりをしてみようという活動。「こんなものあったらいいな」というものを、デザイナーのわがままを優先する形で作ってみよう、というのがアイディアの発端なのだという。
「デザインはスズキイタリアのデザインセンター主導で、本社側ではデザインに日本発想ではない新しい風を吹かせようという考えでした。イタリアで複数のデザイナーがコンペをして、このイメージにつながっていったんですが、イタリアのデザインチームを日本に呼び寄せたときに、彼らが本社併設の『スズキ歴史館』に訪れて、強く印象に残ったのがT500だったんです。彼らは本物のレトロなT500に新しい魅力を感じたようですね」(デザイン・古橋伸介さん)
このT500のタイムレスな雰囲気をニューモデルに取り入れたら、ユーザーの皆さんもワクワクするんじゃないか、とプロジェクトは進んでいった。ちなみにイタリアのデザインセンターにいて、デザインを主導したのは、フランス人のアーサーさん。実際にイタリアの個人売買でT500を購入したほどの熱の入れようだったという。
そのスタイリングの要となっているのが、スズキでは例がない(と思ったら過去の海外向けモデルに一例あったらしい)バーエンドミラー。パッと見では、見慣れなさに違和感があるユーザーは多いだろうけれど、実際にトライしてみると、開発チームの中でも評価は高かったのだという。
「そもそもはイタリアのデザインセンターの意見だったんですが、うーん、バーエンドミラーかぁ、と試してみたら、後方視界がよくて前方に邪魔なものがない新鮮なフィーリングだったんです。もちろん、振動対策や重量面をきちんとクリアして採用したもので、みなさん通常のミラーステーがにょきっと出ているミラーに慣れていると思いますが、バーエンドにした時の視界の良さは予想以上、ぜひ味わってほしい」(車体設計・小林銀河さん)
もうひとつの特徴的なパーツとしてはフューエルタンク。全体的に丸みを帯びていながら、ボクシーなフォルムは、やはりT500、それも写真の後期型のディテールを意識しているという。特にバイクにまたがった時に上から見た造形は、かなり左右の張り出しが強く、存在感が大きかった。そのおかげか、GSX-8Sよりも、タンク容量が2Lも増えている。
そしてGSX-8Sとの大きな違いは、ライディングポジションだ。発表会の席上でこっそりまたがらせていただいたら、ハンドル/ステップ/着座位置はGSX-8Sから変わらないものの、シート座面が広く、シートとタンクのつながり部分も幅広いため、GSX-8Sとかなりフィーリングは変わっている。
「さらにGSX-8T / TTのシートには高密度ウレタンを採用してあるので、シート高の数値は同じでも、座ったフィーリングはかなり快適になっています。さらにノンカウルのGSX-8Tのシート表皮はタックロールタイプで、表面に盛り上がりの凹凸がある分、さらにフワッと座れるかんじですね。GSX-8Sのストリートファイター的な印象が、このシートの座った感じで、ゆったり乗りたいストリートバイクっぽくなるんです。タンデム時のパッセンジャーさんの快適性も考慮してあります」(古橋さん)
さらに、GSX-8T / 8TTに限らず、これからのスズキ車のアピールポイントとなりそうなのが、リチウムイオンバッテリーだ。すでに2026年型のHAYABUSAや近日登場予定のNewGSX-R1000R、ヨシムラの世界耐久レーサー、スズキCNチャレンジプロジェクトの世界耐久車両であるGSX-R1000Rでも使用実績のあるエリーパワー社製のリチウムイオンバッテリーは、従来の鉛バッテリーに比べて小型軽量で、放電や繰り返し充電にも強い、新世代バッテリーだという。
「GSX-8Sの鉛バッテリーと比べて2.7kg軽量で、大きさは40%減、スズキ社内で計測した自由放電サイクル試験では期待寿命が10年、自己放電も少なく、バッテリー容量が半分になるまでに鉛バッテリーが125日だったのに対し、エリーパワーでは740日かかりました。充電時間も短く、-10℃での充電実験で、バッテリー電力50%から80%になるまで、鉛バッテリーが4.2時間かかったのに対し、エリーパワーは5分でした。ひと冬バイクに乗らなくて、さぁ春に乗り出そうとしたときにセルが回らない、なんて不安も軽減できると思います」(柴山さん)
GSX-8S同等の走りをカジュアルに楽しめることを狙って開発されたGSX-8T / 8TT。すでに海外では特にヨーロッパで注目度が高く、まだ発売日すら発表していなかった日本でも、予定の日本向け生産台数を超えるオーダーがあったのだという。
「僕はかなりGSX-8Sの走りが気に入っているんですが、GSX-8T / 8TTは、その走りのフィーリングをそのままに、バイクらしさ、新しさとクラシックさを両立したテイストが楽しめると思います。もちろん、バイクっぽい形をしていますが、ドライブモードセレクターやトラクションコントロール、双方向クイックシフターなどの現代技術も採用しているので、GSX-8Sや8Rで速く走るために使用していたライダーサポートを、GSX-8T / 8TTでは安全のために使ってもらえると思います」(走行実験・佐藤洋輔さん)
見てわくわく、乗ってわくわく、というのも、スズキの「わくわくプロジェクト」。試乗しての紹介は近日中にお届けします!
(文:中村浩史、写真:SUZUKI、中村浩史)
■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:775㎤ ■内径×行程:84.0×70.0mm ■圧縮比:12.8 ■最高出力:59kW(80PS)/ 8500rpm ■最大トルク:76N・m(7.7kgf-m)/ 6800rpm ■全長×全幅×全高:2,115×775×1,105<1,160>mm ■軸間距離:1465mm ■シート高:815<810>mm ■車両重量:201<203>kg ■燃料タンク容量:16L ■変速機:6段リターン ■WMTC燃費:23.4km/L ■タイヤ前・後:120/70ZR17・180/55ZR17 ■車体色:マトスティールグリーンメタリック、キャンディバーントゴールド、マットブラックメタリック<グラススパークルブラック、パールマットシャドーグリーン> ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,298,000<1,386,000>円
