スポーツバイクと
「スーパー」スポーツは違うもの
GSX250RとGIXXER250──どちらもスズキの250ccスポーツだ。
GSX250Rは2017年にデビューしたモデルで、国内4メーカーの250ccスポーツの中でも異彩を放つ人気モデル。
「異彩」というのは、ライバルの250ccスポーツがどんどんスポーツ性を高めていっているのに対し、GSXは完全に独自路線。いくらスポーツテイストが重要視されようが、レースパフォーマンス比べになろうが、GSXはあくまで「スーパー」ではない「スポーツバイク」であり続けている。それがロングセラーにつながっているのだろう。発売から3年が経って、大きな変更ないままに販売ランキングのTOP10にい続けるなんて、流行り廃りのはげしい250ccスポーツにあって稀なことだ。
対するGIXXER250は、2020年のニューモデルとして新発売された、これまた250ccクラスのスポーツモデル。150ccに次いで発売されたジクサーシリーズ第2弾で、ジクサー=GIXXERとはもともとはGSX-Rシリーズの愛称だ。
ちなみに私が考える「スーパースポーツ」と「スポーツバイク」の差は、ともにスポーツバイクでありながら「スーパー」の方は、性能を重視して乗り手にいささかの我慢を強いるモデルのことだ。
スポーツランに必要だから、と強い前傾姿勢のポジションとしたり、高回転で最高出力を稼ぐために低回転の扱いやすさを犠牲にしたり。もちろんこれはスーパースポーツモデルには必要なもので、ごくまれに「もっと低回転なくていいから上が伸びてくれれば」と思うモデルだってあるから、要は適材適所ということ。「街乗りに最適な」ってモデルのハンドルが低すぎたり、「サーキット性能を重視」しているはずのモデルが低回転から扱いやすい特性で、高回転の伸びが弱かったりすることが中途半端なのだ。
ジクサーとGSX250Rの大きな違いは、GSXが水冷2気筒エンジンを採用しているのに対し、ジクサーは油冷単気筒エンジンだってこと。けれど、どちらも決して「スーパー」スポーツに走ることなく、街乗りからツーリングにまで使えるスポーツバイクとしているという共通点がある。
当初、ジクサーのデビューが明らかになった時、新設計の油冷エンジンを開発したということもあって、スズキもついに250ccスーパースポーツ市場に参入するのか、と思ったんだけれどさにあらず。GSXとは少し方向性の違う、それでも「スーパー」じゃないスポーツバイクに仕立て上げてきた。これはスズキが「250ccスポーツとはこういうモデルであるべき」との考えを示しているのだろう。
その2車、まずまたがるとそう大きな違いを感じない。GSXの方がやや大柄で、ジクサーの方がややスリム、スクリーントップが低いことで前方視界がいい。ホイールベースはGSXの方がやや長く、車両重量はジクサーの方が20kgも軽い。
取りまわしてみると、やはりジクサーの軽量さがはっきりするけれど、車体サイズはほぼ同じなのだ。
「速い」や「キビキビ」が正義じゃない
走り始めて気づくのは、ジクサーの軽快さとGSXの重厚さ。これは、単気筒と2気筒のエンジン特性の違いと言えばそれまでだけれど、出足からして手応えが違った。ジクサーがスッと軽快な出足なのに対して、GSXはズン、と出る。トルクが出ているのはGSXの方で、発進トルクはライバル250ccスポーツと比べてもぶ厚いかわりに、回転が俊敏なのはジクサーの方。そのまま各ギアで引っ張っても、ジクサーは軽快で、GSXは重厚というイメージは変わらない。
街乗りを始めると、やはりキビキビ走るのはジクサーの方。3000~5000rpmといった低回転での回転が軽やかで、俊敏に走ることができる感じだ。これは、エンジンのフリクションロスをていねいに取っているからこその扱いやすさだと思う。
パワー特性はかなりのフラットトルクで、どの回転域でも力が出ている印象。しかも、最新エンジンらしく、排気音やエンジンからのノイズも抑えられ、すごくジェントルに走ることができる。スゴい静か! こういう特性が大好きな人も少なくないはずだ。
対してGSXは回転の上下が穏やかで、トルクがブ厚いのが特徴。加速力という点ではジクサーに軍配が上がるけれど、街乗りでものんびり走りたい向きにはまったく不満はないだろうと思う。よく言えば穏やか、悪く言えば鈍重。ただ、長時間乗っていると、穏やかに走る特性に体が慣れてしまうものだ。キビキビ走りたい人ばっかりじゃないってこと。
高速道路に入ると、街乗りで気になったGSXの動きを頼もしく感じることになる。たとえば100km/hに達するまでの時間はジクサーの方がいくらか早いけれど、100km/hといった一定スピードでクルージングすると、GSXの落ち着きが光る。アクセルへのレスポンスがいい意味でダルで、一定スピードをキープするのがイージーなのだ。
もちろん対するジクサーも、100km/hでの快適性は高い。けれど、トップ6速での100km/h時では、GSXが6000回転、ジクサーが6500回転ほど。回転そのものは大きな違いがなくとも、定速走行での落ち着きは2気筒のGSXの方が落ち着きがあるものだ。
街乗りでキビキビ走るならジクサー、高速道路をクルージングして距離を走るならGSX――この2車はこんな関係性だと思う。もちろん、ジクサーでの長距離ランも、GSXでのシティランもなんら問題はない。要は、自分のメインの用途に近い方を選べばいい、ってこと。
物事には両面があるものだ。GSXの特性を重ったるいと感じる人もいれば、重厚で落ち着きがあるな、と感じる人もいる。
もちろん、バイク=スポーツの道具と捉えれば、バイクの動きはシャープでクイック、エンジンパワーも俊敏でパワーの盛り上がりがある方が分かりやすい。でも、それがすべて正しいわけじゃない。
私は、これまでGSXに何度も乗って、乗り始めの頃は重ったるい、動きもモサッとした特性だと感じたものだけれど、何度も乗るにつけすごく体に親しんできたのがよくわかる。街乗りで「キビキビ」走ったり、ワインディングやサーキットを「速く走る」ことは苦手だけれど「のんびり流す」ことや「気持ちよく攻める」にはちょうどいい。また、250ccのユーザー層は、そういう特性の好む層が多いからこそ、のGSX人気なのだろうと思う。
ジクサーはその延長線上にある。決してユーザーを置いてけぼりにせず、気持ちのいい用途に特化しない――スズキが考える250ccスポーツは、ブレない!
<試乗・文:中村浩史>
■型式:2BK-DN11A■全長×全幅×全高:2,085×740×1,110mm■ホイールベース:1,430mm■最低地上高:160mm■シート高:790mm■車両重量:178kg■エンジン種類:水冷4サイクル直列2気筒SOHC2バルブ■総排気量:248cm3■ボア×ストローク:53.5×55.2mm■圧縮比:11.5■最高出力:18kw(24PS)/8,000rpm■最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/6,500rpm■燃料供給装置:フューエルインジェクション■始動方式:セルフ式■点火装置形式:フルトランジスタ式■燃料タンク容量:15L■変速機形式:常時噛合式6段リターン■タイヤ(前・後):110/80-17M/C 57H・140/70-17M/C 66H■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式■フレーム形式:セミダブルクレードル■クリスタルブルーメタリック/パールネブラーブラック/パールグレッシャーホワイトNo.2/パールネブラーブラック/パールネブラーブラック/トリトンブルーメタリックNo.2■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):536,800円~548,900円
■型式:2BK-ED22B■全長×全幅×全高:2,010mm / 740mm / 1,035mm ■ホイールベース:1,345mm■最低地上高:165mm■シート高:800mm■車両重量:158kg■エンジン種類:油冷4サイクル単気筒SOHC4バルブ ■総排気量:249cm3■ボア×ストローク:76.0×54.9mm■圧縮比:10.7■最高出力:19kw(26PS)/9,000rpm■最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/7,300rpm■燃料供給装置:フューエルインジェクション■始動方式:セルフ式■点火装置形式:フルトランジスタ式■燃料タンク容量:12L■変速機形式:常時噛合式6段リターン■タイヤ(前・後):110/80-17M/C 57H・140/70-17M/C 66H■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式■フレーム形式:セミダブルクレードル■車体色:マットプラチナシルバーメタリックNo.2/マットブラックメタリックNo.2/トリトンブルーメタリック■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):481,800円
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