Facebookページ
Twitter
Youtube

試乗・解説

小排気量2気筒の限界に挑んだ 史上最強スポーツ250ccツイン HONDA CBR250RR
現在の250ccスポーツのメインカテゴリーである水冷2気筒スポーツモデルたち。
2008年にカワサキNinja250Rが登場してから4メーカーめぐって打者一巡。
2017年モデルとして登場したCBR250RRがいま現在の最強モデルである――。
■文:中村浩史 ■撮影:松川 忍 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/

 

ライダーの身長は178cm(写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます)。

 

ものすごいワクワク感と少しのがっかり感!?

 2008年にNinja250Rが発売された時、ものすごいワクワク感と少しのがっかり感があったのを覚えている。

 今でこそ各メーカーがラインアップして、人気カテゴリーになっている2気筒250ccスポーツモデルだけれど、その切り込み隊長として登場したNinja250Rは、80年代のスーパースポーツ、レーサーレプリカ達をリアルタイムで知っているオールドライダー達、もちろん私を含めてのベテランにとっては、ずいぶん物足りないものに思えたからだ。

 わくわく感は、おぉ楽しそうなスポーツバイクが出てきたなぁ、ってこと。なにしろそれまでの250ccクラスといえば、使いまわしのエンジン&車体を使ったのんびりモデルやストリートトラッカーばかりで、マーケットも縮小。Ninja250Rのような、見るからにスポーツバイク、ってモデルなんかなかったからね。
 物足りなさは、そのパフォーマンス。特に45ps/15000rpmの4気筒250ccモデルを知っている世代にしてみれば、新登場したNinja250Rの31ps/11000rpmはいかにも役不足。実際に走ってみても、もちろん排出ガスや音量規制をクリアしてのものだとわかっていても、どうにももどかしいパワー特性に仕上がっていたからだ。
 今でも口さがないオールドファンは、現代の2気筒250ccスポーツモデルに乗ると「なにこれ、壊れてるの? 力ないなぁ」って言うことが多いけれど、それは自分が30年も昔に味わった思い出を美化しすぎているから。厳しいコスト制約、排出ガス規制に騒音規制をクリアして開発された現代の2気筒250ccスポーツモデルは、これをガラパゴス進化というんだろうけど、きちんと独自の発展を重ねてきているのだ。

 そして2気筒250ccスポーツモデルはあらためて独自の進化をスタートさせた。カワサキNinja250Rに続いてホンダは単気筒のCBR250Rを、スズキはスポーツモデルとは言い難いものの、新設計の並列ツインGSR250を、そしてヤマハはYZF-R25をリリースする。これで4メーカーの250ccスポーツモデルが出揃ったわけだ。
 もちろん、ライバル関係もヒートアップし、カワサキはNinja250をフルモデルチェンジ、スズキはスポーツルックのGSX250Rを新作、ヤマハもR25をマイナーチェンジした。そこでホンダが選んだのが、単気筒エンジンのCBR250Rを完全に新作し、2気筒スーパースポーツCBR250RRを作ることだった。狙いはずばり、2気筒250ccスポーツモデルナンバー1パフォーマンス。これで、各メーカーの250ccスポーツモデルが2巡目に突入したってことだ。
 

 

狙いは単純明快、2気筒250ccスポーツ最強モデル

 現行モデルのカワサキNinja250、ヤマハYZF-R25が、あくまでストリートスポーツとしての2気筒250ccスポーツモデルをはぐくんできているのに対し、ホンダCBR250RRはもっとスポーツ寄りに仕上げられた。狙いは単純明快、2気筒250ccスポーツ最強モデルだ。これには先代のCBR250Rとの差別化も考えられていて、250RRはカリカリのスポーツバイクですよ、もっとストリート向けなら250Rね、っていう使い分けができるようになっていた。現在は250Rは廃番となって、もっとストリートスポーツに特化したCB250Rがラインアップしている。
 だからこそのオールニューモデルがCBR250RR。もうエンジンから車体からスタイリングから完全新設計で、排気量を問わず、ホンダが久々に本気になったスポーツバイクだったというわけ。私は先代の単気筒モデルCBR250Rにもずいぶん乗ったけれど、もう250RRはまるっきり違う。エンジンパワー、ハンドリングにおいて、パフォーマンスを一気に上げていたのだ。

 一番の違いは、もちろんエンジン。新設計の水冷2気筒DOHC4バルブは、はっきり高回転型で、それでいて低~中回転域のトルクもきちんとある。つまり、回さなくても普通に走るし、高回転まで回せばもっと面白い! このパワーの盛り上がりが250RRのキモだと思う。ギアレシオの関係もあるけれど、ボア×ストローク値とパワースペックがほぼ同じNinja250よりもダッシュ力は力強く感じる。
 ただしCBRは回転の吹けが軽く、パワーが盛り上がってくる回転域に持っていくのが早い。これは現行の2気筒250ccスポーツモデル中ナンバー1にスロットルレスポンスがシャープで、力の盛り上がりがはっきり感じられる特性。これこれ、このエキサイティングさが新世代の250ccスポーツモデルになかったんだなー!
 その時のサウンドも結構エキサイティングなもので、決しておとなしすぎない、穏やかなものではない。吸気音も徐々ににぎやかになって、ツインエキゾーストからの排気音は、250ccだと考えると太く、連続したビートが感じられる。30年前の4気筒モデルでも、この「サウンド」は気持ちよさの一端を担っていたから、これもCBRを楽しいと感じる一因なのかもしれない。
 パワーを感じられるのは7500rpmあたりからで、そこから12000rpm近くまでイッキに回る。これは、CBRが250ccスポーツ車の中で唯一採用している選択式スポーツモードの中で「スポーツ+」の時に顕著。おぉ力あるなぁ、って領域で、これを知ればオールドファンとて「昔の250は良かったぜ」なんて言えないはずだ。
 

 

ハンドリングでもスポーツバイクナンバー1を

 CBRはハンドリングでもスポーツバイクナンバー1を狙った設定で、クルクルよく回るというか、自由自在にコントロールできる仕様となっている。直進安定性がピシッとしているかと思えば、左右レーンチェンジのアクションも軽く、ワインディングでも自由自在にコントロールできる。いわゆる「昔の250」=旧4気筒250ccスポーツは、その車体重量に反して低い車体がベターンとグリップしているようなハンドリングで、対して新世代の250ccスポーツ、特にCBRは軽やかに舵が切れる。
 ワインディングも走ったけれど、エンジン回転を7000rpm以上にキープしてあげれば、エンジンのレスポンスがよく、狙った通りのトルクがすぐに取り出せて、アクセルに車体を反応させてコーナリングしていく、というビッグバイクみたいなアクションができる。加速して行ってコーナーに差し掛かると、アクセルオフとブレーキングでフロントを沈めておいて、クルーッと一次旋回してから、コーナー出口が見えたらアクセルオン。そうするとシートがギューッと沈んで立ち上がっていく。一次旋回でも回頭性がよくて、前後タイヤのグリップ感が破綻しない──私はそれが自由にコントロールできるバイクの条件だと思っているから、このハンドリングがたいそう気に入ってしまっている。
 CBRのエンジン特性こそ2気筒250ccの史上最強だって言う人も多いけれど、私はどっちかというと、このハンドリングこそCBRの魅力だと思う。スポーツバイクに寄っていて、普段の用途にも全く問題ない──もう完成の域に達してるなぁ、と思うのだ。

 もちろん、CBRにも出来ていないところがあって、長距離をずんずん走っていくロングツーリングやタンデム、荷物を積んだりするツーリング性能ではライバルに劣るところが少なくない。
 税抜き価格だって、GSX250R=49万9000円、YZF-R25=55万5000円、Ninja250=59万5000円に対して、CBR250RRはひとつ飛びぬけていて73万円! GSX250Rの1.5倍近いじゃないか! でも、それでもいいのだ。最強スポーツバイクを標榜して、街中で扱いやすく、ワインディングで速い──そういうハッキリしたコンセプトや割り切りこそが、今までの2気筒250ccスポーツモデルに足りなかったところなのかもしれないからね。
(試乗・文:中村浩史)
 

 

 

新世代250ccツインクラスでいち早く倒立フォークを採用。フォークはインナーチューブ径37mmで、左側のみにダンパー機構を内蔵。ブレーキはφ310mmのシングルローターで、波型のペータルディスク。ホイールデザインも専用のもので7本スポークのアルミホイール。キャリパーはニッシン製2ピストンで、ABS装着車と非装着車が選択できる。

 

エンジンは専用設計のDOHC4バルブツイン。ショートストローク設定で、1万2500rpmでピークパワーを発揮する。クランク、コンロッド、バランサーの軸受けにはプレーンメタルを使用して、高回転時の耐久性と静粛性を確保。さらにCBR1000RR同様、高回転時のカムチェーン振れを防止するよう、ダブルピボットカムチェーンテンショナーを採用。ビッグバイクのスーパースポーツでは、もはや当たり前となったスロットルバイワイヤ方式としている。
鋼管トラス構造としたメインフレーム。よく見るとアウトラインはかつてのアルミツインチューブフレームによく似ている。車体構成はガチガチの高剛性というより、速さを伝える車体骨格として、しなやかで強い骨格を目指した最新のフレームだ。

 

カタマリ感あるボディデザインに、エッジの立った形状としたスタイリングデザイン。レイヤード構造のアンダーカウルはカウル内にエアを導入、効果的に排出するデザインで、エンジン周りの冷却にも効果があるという。アンダーカウルにはMotoGPマシン的な小ぶりなウィングレットが装備されている。

 

マフラーは2in1構造。サイレンサーは内部を3室に分割した構造で、排出口がデュアルエキゾーストでイイ音がするんです。デュアルエキゾーストのそれぞれの音がシンクロして、特に高回転では250ccツインらしからぬサウンドが味わえる。
写真の逆サイドを、サイレンサー容量を稼ぐためにへの字形状とした鋳造アルミ材を使用したスイングアーム。リアサスはリンクつきシングルショックで、プリロードを5段階に調整可能。

 

スペースの前半分ほどをエアボックスとして、ガソリン容量14Lを稼ぐためか、上下左右にボリュームのある形状としたフューエルタンク。タンク上面の両サイドにはスポーツラン時に両腕のフィット感を高めるカバーが装着されている。
左右が張り出しボリュームのあるシートカウル。シートは前後に段差のあるセパレート型で、足つき性を高めるよう、シート前部をスリムに絞り込んでいる。ヘルメットホルダー(下写真)はタンデムシート裏にひっかけるタイプで使いやすくはない。

 

カチ上がりのテールデザインは2段式テール&ストップランプ、ウィンカーともLEDを採用。ナンバーステー部は別体式で、両ウィンカー裏には荷かけフックを装備し、前部分はタンデムステップ裏にフックを備えている。

 

メーターはフルデジタル。オド&ツイントリップ、燃費計を表示し、時計部分は時刻表示と手動式ラップタイマーを備える。タコメーターのバーグラフはREVインジケーター機能付きで、シフトポイントの回転数表示を手動で設定できる。

 

左ハンドルスイッチには、LAPタイムスイッチと、レバー側にモード切替ボタンが備わる。パワーモードはスポーツ/スポーツ+/コンフォートの3種類が選択でき、コンフォートは出力が穏やかに、特にスロットル応答性に変化が出る感じ。

 

●CBR250RR 主要諸元
■型式:2BK-MC51■全長×全幅×全高:2,065×725×1,095mm■ホイールベース:1,390mm■最低地上高:145mm■シート高:790mm■車両重量:165kg■燃料消費率:40.1km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)26.7km/L(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時 )■最小回転半径:2.9m■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ■総排気量:249cm3■ボア×ストローク:62.0×41.3mm■圧縮比:11.5■最高出力:28kw(38PS)/12,500rpm■最大トルク:23N・m(2.3 kgf・m)/11,000rpm■燃料供給装置:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)■始動方式:セルフ式■点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火■燃料タンク容量:14L■変速機形式:常時噛合式6段リターン■タイヤ(前・後):110/70R17M/C 54H・150/60R17M/C 66H■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク■懸架方式(前・後):テレスコピック式(倒立タイプ)・スイングアーム式(プロリンク)■フレーム形式:ダイヤモンド■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):803,000円~


| Honda CBR2500RRの試乗記事はコチラ (旧PCサイトに移動します)|


| YAMAHA YZF-R25の試乗記事はコチラ (旧PCサイトへ移動します)|


| SUZUKI GSX250Rの試乗記事はコチラ (旧PCサイトへ移動します)|


| カワサキNinja250の試乗記事はコチラ |


| ホンダのWEBサイトへ |

2020/02/19掲載