かつてこのWEBミスター・バイクで乗って、書いたように、僕はNinja400を「史上最高の2気筒400ccだ」ってベタボメしたことがある。「シン」エリミネーター400は、その史上最強のエンジンを積んだクルーザー。となると、クルーザーにつきものの「アレ」がないわけです!
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔 ■協力:カワサキモータースジャパン ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/、アルパインスターズhttps://www.okada-ridemoto.com/brand/Alpinestars/
カワサキ伝統のネーミングが復活
エリミネーターといえば、ミスター・バイク読者ならばNinja900の兄弟車とか、1000RXの兄弟車ZL1000を、または400や250を思い出すかもしれない、懐かしいネーミングだ。
令和によみがえった「シン」エリミネーターは、400ccスポーツNinja400の兄弟モデル。Ninja400はNinja250と同じ車体を持つ兄弟モデルだから、3兄弟ってことになるかな。Z400やZ250もあるから、もっとか。水冷並列2気筒エンジンを搭載したクルーザースタイルモデルだ。
カワサキが目指したのは、バイクに乗る時に、気合を入れたり、さぁ今日はバイクに乗るぞ、なんて気負わずに走り出せるモデルだ。だから、乗った時に緊張感を強いない足着きの良さ、低いシート高がいい、とクルーザースタイルになったのだろう。
そしてこの「シン」エリミ、本当によく走る! 当たり前だよね、僕が史上最高の2気筒だ、って断じたNinja400のエンジンなんだもの、低回転からドン、というトルクはそこそこでも、日常使用回転域である3000rpmあたりで、本当にトルクの出方が柔軟。ブン回さなくてもスルスルスルッと走ってくれる。
ちょっと前が空いたら、スロットルを大きく開けてあげると、Ninja譲りの俊足さが顔を出す。6000rpmくらいからグンと伸びて、ビートの効いたこのエリア、ハッキリ言って速いです。
それをクルーザースタイルのライディングポジションで乗るから、最初はちょっと異質なのだ。のんびり走る態勢で、回せば速い──そういえば、初代の900エリミネーターもこんなんじゃなかったか。あれはクルーザーというよりは、ドラッグマシンっぽい雰囲気のモデルで、それでも高回転を使えば、900Ninja譲りのパワーが顔を出すバイクだった!
クルーザーというか、旧式な呼び方をすればアメリカンと呼ばれていた時代には、こういうポジションのバイクは、スピードを追い求めず、ドコドコッと鼓動あふれる乗り味がお約束だった。
フロントホイールが大きくて遠くにあって、キャスターが寝た、直進安定性の高いバイク。カワサキも、ENやVN、そしてバルカンシリーズがそうだったしね。
けれどそれは、やっぱり旧時代のアメリカンにこそつきものなキャラクターであり、今どきのクルーザーはよっこらせ操舵やドコドコ感がないものなのだ。だから「シン」エリミね。
クルーザーの楽しいところであるクルージングについては、Ninja400よりも快適性がアップされていて、その辺はぬかりがない。キャスターが寝かされてトレールを長く設定されているけれど、直進安定性が強すぎて曲がりにくい、なんてことはない。
ピタッとした直進安定性があって、レーンチェンジもきちんとフロントタイヤの接地感のある安定した動きがある。さすが400ccだけあって、高速道路の120km/hもまだまだ余裕で、トップ6速での120km/hは7000pmくらい。1万rpmまで回るエンジンはまだまだ余力があるし、120km/hでエンジンが唸るようなイッパイイッパイさがないのが400ccの良さだよね。
そして、ワインディングに持ち込んだわけではないけれど、むしろ「シン」エリミはよく曲がるバイクだ。Ninja400の前後17インチから、「シン」エリミはフロント18/リア16インチの、前上がり後ろ下がりシルエット。このフロントタイヤが70扁平の130サイズを使っていて、タイヤのラウンド形状に沿ってきれいに舵角がついて回頭、グイグイではないけれど、スムーズによく曲がるのだ。
これは、なにもハンドリングがどうこうというよりも、街中の交差点なんかでおっとっと、って持て余さないように作り込んだ特性なのだと思う。
トップ6速50km/hも余裕で、その気になれば120km/hオーバーまでイッキに伸びる。やはり「シン」エリミは、ドコドコ感のない、快速クルーザーなのだ。やっぱりNinja400の並列ツインはいいエンジンだなぁ、でも旧エリミネーター400みたいに、ZX-4RRの4気筒エンジンを使った「シン」エリミRがあっても面白いかも、って思っちゃいました。
僕は「シン」エリミ400を、2008年にNinja250を、そして20年にNinjaZX-25Rを発売して、普通免許枠にビギナーやリターンライダーを増やしてきたカワサキの「みんなもっとバイクに乗ろうよ」シリーズだと考えている。
Ninja250の兄弟車として、並列2気筒250ccエンジンを使った「シン」エリミネーター250を作らないのは、きっと250ccクルーザーには「あいつ」が大人気でいるからなのかもしれない。250はホンダさんに任せましたよ、うちは400やりますから、的な考えもあるのだろう。
こういう、幅広い層に乗って欲しい普通免許ワクのモデルで、同じ排気量枠にライバルをぶつけて人気を食い合う、なんてことは避けたいのだと思う。パイを取り合うより、より大きなパイにしよう、みんなマーケットを大きくしていこうぜ、的なね。
ここは、よそのメーカーだけれど、250ccはアチラ、400ccは「シン」エリミ400とすればスマートだなぁ、と思うのだ。
(試乗・文:中村浩史、撮影:森 浩輔)
■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:398㎥ ■ボア×ストローク:70.0×51.8mm ■圧縮比:11.5 ■最高出力:35kW(48PS)/ 10,000rpm ■最大トルク:37N・m〔3.8kgf・m〕/8,000rpm ■変速機:6段リターン ■全長× 全幅× 全高:2,250×785×1,100[1,140]mm ■ホイールベース:1,520mm ■シート高:735mm ■タイヤ(前・後):130/70-18M/C 63H・150/80-16M/C 71H ■車両重量:176[178]㎏ ■ブレーキ(前・後):油圧式シングルディスク・油圧式シングルディスク ■燃料タンク容量:12L ■車体色:メタリックフラットスパークブラック [ファントムブルー × エボニー、メタリックフラットスパークブラック × メタリックマットダークグリーン] ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):814,000 [913,000]円 ※[ ]はELIMINATOR SE
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