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Q2


最後にカワサキが参戦


 1980年代、2ストウォーズの主役は水冷エンジンとなり、新たなステージに突入した。1970年代後半からWGPにワークスマシンKR250を投入、コーク・バリントンやアントン・マンクらの活躍で1978年から4連覇という強さでタイトルを獲得したカワサキであったが、沈黙を続けていた。そんなカワサキも、1984年ついに2ストウォーズに参戦する。振り返れば、ロータリーディスクバルブのA1、空冷3気筒の250SS、KH250Rなど他メーカーとは異なったエンジンで2Qを歩み続けたカワサキらしく、新たに開発された水冷エンジンは、市販車では類を見ないタンデムツインレイアウトのロータリーディスクバルブを採用した。かくて、短くも熱いカワサキの2Qレーサーレプリカ史が幕を開けた。
1984年4月 KR250(KR250A) 

カワサキ初の水冷2ストレプリカは、WGP4連覇の偉業を成し遂げたKR250のレプリカモデルとして1983年の東京モーターショーでお披露目された。直列2気筒のタンデムツインエンジンは、ロータリーバルブとリードバルブを併用するRRISというシステムの採用で、中速域でのパワー強化と加速力を確保した。フレームもカワサキ初のアルミ製で角型パイプの3ピース構造、アンチノーズダイブシステムのAVDSも採用し、スペックもライバル車と遜色がなかった。しかし、唯一の誤算はそのスタイル。ワークスレーサーKRとは異なったオリジナリティあるデザインが採用されたが、世はレーサーレプリカ至上主義時代の入口。スペック至上主義と同レベルでスタイルにもワークスレーサーをコピーしたデザインが強く求められていた。また一足先に登場したライバル車がモデルチェンジにより、さらに先鋭化を続けたことも相まって、残念ながらKRは大ヒットには至らなかった。当初カラーはカワサキのイメージカラーのライムグリーンとギャラクシーシルバーの2色であったが、7月にポーラホワイト×サンビームレッド、エボニー×ファイアクラッカーレッド、ファイアクラッカーレッド×グレーストーンが追加された。さらにオプションとして、ワークスレーサーKR250がWGPチャンピオンを獲得したことを記した「KR250GPワールドチャンピオンステッカー」2種類が設定された。

KR250 ライムグリーン
KR250 ライムグリーン
KR250 ギャラクシーシルバー
KR250 ギャラクシーシルバー

KR250 エボニー×ファイアクラッカーレッド
KR250 エボニー×ファイアクラッカーレッド

KR250 ファイアクラッカーレッド×グレーストーン
KR250 ファイアクラッカーレッド×グレーストーン

KR250 ポーラホワイト×サンビームレッド
KR250 ポーラホワイト×サンビームレッド

●エンジン:水冷2ストローク直列2気筒ロータリーディスクリードバルブ ●総排気量(内径×行程):249cc (56×50.6mm) ●最高出力:45ps/10000rpm ●最大トルク:3.7kg-m/8000rpm ●全長×全幅×全高:2035×685×1185mm ●軸距離:1360mm ●乾燥重量:133kg ●タイヤ前・後:100/90-16・110/80-18 ●車体色:ライムグリーン、ギャラクシーシルバー ●発売当時価格:498000円

1985年4月 Kawasaki KR250S

両側のマフラーにバルブ付きの分岐ポートを設置し、これを連結したカワサキ独自の排気デバイスKVSS(Kawasaki Exhaust Valve Syncronization System)を追加装備してKR250Sにバージョンアップ。KVSSはシンプルな構造ながら全域でフレキシブルなパワー特性を実現した。車体色はエボニー×ファイアクラッカーレッド、ルミナスポラリスブルー×パールアペンホワイトに一新。

KR250S ルミナスポラリスブルー×パールアペンホワイト
KR250S ルミナスポラリスブルー×パールアペンホワイト

	KR250S エボニー×ファイアクラッカーレッド
KR250S エボニー×ファイアクラッカーレッド

●エンジン:水冷2ストローク直列2気筒ロータリーディスクリードバルブ ●総排気量(内径×行程):249cc (56×50.6mm) ●最高出力:45ps/10000rpm ●最大トルク:3.7kg-m/8000rpm ●全長×全幅×全高:2035×685×1170mm ●軸距離:1360mm ●乾燥重量:139kg ●タイヤ前・後:100/90-16・110/80-18 ●車体色:ルミナスポラリスブルー×パールアペンホワイト、エボニー×ファイアクラッカーレッド ●発売当時価格:508000円






1988年1月 Kawasaki KR-1(KR250B)

先鋭化を続けるレーサーレプリカ市場の強い要求もあり、KR250SはよりレーサースタイルとなったKR-1へとフルモデルチェンジ。独特なタンデムツインからオーソドックスな並列2気筒へとチェンジしたエンジンは、前傾50度にセットされ、吸気方式もクランクケースリードバルブへと一新。新型排気デバイスのKIPSも装備し、角型断面を持つ押出材により剛性を高めたアルミツインチューブタイプのe-BOXフレームに搭載。レーサースタイルとなったカウル形状は、CdA値0.26を達成し空気抵抗を大幅に減少させている。収納式の荷掛フックであるバンジーフックやリアシート下に小物入れなども装備し、利便性も向上している。

KR-1 ポーラホワイト×ライムグリーン
KR-1 ポーラホワイト×ライムグリーン

KR-1 ファイアクラッカーレッド×ポーラホワイト
KR-1 ファイアクラッカーレッド×ポーラホワイト

●エンジン:水冷2ストローク2気筒クランクケースリードバルブ ●総排気量(内径×行程):249cc (56×50.6mm) ●最高出力:45ps/10000rpm ●最大トルク:3.7kg-m/8000rpm ●全長×全幅×全高:2005×690×1115mm ●軸距離:1365mm ●乾燥重量:123kg ●タイヤ前・後:100/70-17・130/60-18 ●車体色:ポーラホワイト×ライムグリーン、ファイアクラッカーレッド×ポーラホワイト ●発売当時価格:563000円

1989年4月 Kawasaki KR-1S(KR250C)

KR-1をベースに、吸排気系やキャブ等の変更によりさらなるハイレスポンスを実現。フレーム構造も変更はないが、メインパイプがリブなしの丸みのある形状に変更され、スイングアームピポッドはφ20mmと大径化された。リアショックはリザーバータンク付きユニトラックへと各部が進化、ホイールも5本スポークの新デザインに変更された。消費税の導入により、以下の価格はすべて税抜き価格で表記。

KR-1 エボニー×メタリックゼウスブルー
KR-1S エボニー×メタリックゼウスブルー

KR-1 エボニー×ライムグリーン
KR-1S エボニー×ライムグリーン

●エンジン:水冷2ストローク2気筒クランクケースリードバルブ ●総排気量(内径×行程):249cc (56×50.6mm) ●最高出力:45ps/10000rpm ●最大トルク:3.7kg-m/8000rpm ●全長×全幅×全高:2005×695×1105mm ●軸距離:1370mm ●乾燥重量:131kg ●タイヤ前・後:110/70-17・140/60-18 ●車体色:エボニー×ライムグリーン、エボニー×メタリックゼウスブルー ●発売当時価格:559000円

1989年4月 Kawasaki KR-1R

KR-1Sをベースにクロスミッション、強化クラッチスプリング、φ35mm大径キャブなどを追加したスポーツプロダクション仕様のKR-1Rを追加。タンクの車名とゼッケンプレートに入ったSPORTS PRODUCTIONの文字が外観上で見分けるポイント。車体色はエボニー×ライムグリーンのみ。

KR-1R エボニー×ライムグリーン
KR-1R エボニー×ライムグリーン
●エンジン:水冷2ストローク2気筒クランクケースリードバルブ ●総排気量(内径×行程):249cc (56×50.6mm) ●最高出力:45ps/10000rpm ●最大トルク:3.7kg-m/8000rpm ●全長×全幅×全高:2005×695×1105mm ●軸距離:1370mm ●乾燥重量:131kg ●タイヤ前・後:110/70-17・140/60-18 ●車体色:エボニー×ライムグリーン ●発売当時価格:599000円



[青春のQ2カタログその11 HONDA 水冷編-2| その12 Kawasaki 水冷編 |その13 YAMAHA 水冷編-3]






2020/06/19掲載