カワサキ初の水冷2ストレプリカは、WGP4連覇の偉業を成し遂げたKR250のレプリカモデルとして1983年の東京モーターショーでお披露目された。直列2気筒のタンデムツインエンジンは、ロータリーバルブとリードバルブを併用するRRISというシステムの採用で、中速域でのパワー強化と加速力を確保した。フレームもカワサキ初のアルミ製で角型パイプの3ピース構造、アンチノーズダイブシステムのAVDSも採用し、スペックもライバル車と遜色がなかった。しかし、唯一の誤算はそのスタイル。ワークスレーサーKRとは異なったオリジナリティあるデザインが採用されたが、世はレーサーレプリカ至上主義時代の入口。スペック至上主義と同レベルでスタイルにもワークスレーサーをコピーしたデザインが強く求められていた。また一足先に登場したライバル車がモデルチェンジにより、さらに先鋭化を続けたことも相まって、残念ながらKRは大ヒットには至らなかった。当初カラーはカワサキのイメージカラーのライムグリーンとギャラクシーシルバーの2色であったが、7月にポーラホワイト×サンビームレッド、エボニー×ファイアクラッカーレッド、ファイアクラッカーレッド×グレーストーンが追加された。さらにオプションとして、ワークスレーサーKR250がWGPチャンピオンを獲得したことを記した「KR250GPワールドチャンピオンステッカー」2種類が設定された。
両側のマフラーにバルブ付きの分岐ポートを設置し、これを連結したカワサキ独自の排気デバイスKVSS(Kawasaki Exhaust Valve Syncronization System)を追加装備してKR250Sにバージョンアップ。KVSSはシンプルな構造ながら全域でフレキシブルなパワー特性を実現した。車体色はエボニー×ファイアクラッカーレッド、ルミナスポラリスブルー×パールアペンホワイトに一新。
先鋭化を続けるレーサーレプリカ市場の強い要求もあり、KR250SはよりレーサースタイルとなったKR-1へとフルモデルチェンジ。独特なタンデムツインからオーソドックスな並列2気筒へとチェンジしたエンジンは、前傾50度にセットされ、吸気方式もクランクケースリードバルブへと一新。新型排気デバイスのKIPSも装備し、角型断面を持つ押出材により剛性を高めたアルミツインチューブタイプのe-BOXフレームに搭載。レーサースタイルとなったカウル形状は、CdA値0.26を達成し空気抵抗を大幅に減少させている。収納式の荷掛フックであるバンジーフックやリアシート下に小物入れなども装備し、利便性も向上している。
KR-1をベースに、吸排気系やキャブ等の変更によりさらなるハイレスポンスを実現。フレーム構造も変更はないが、メインパイプがリブなしの丸みのある形状に変更され、スイングアームピポッドはφ20mmと大径化された。リアショックはリザーバータンク付きユニトラックへと各部が進化、ホイールも5本スポークの新デザインに変更された。消費税の導入により、以下の価格はすべて税抜き価格で表記。
KR-1Sをベースにクロスミッション、強化クラッチスプリング、φ35mm大径キャブなどを追加したスポーツプロダクション仕様のKR-1Rを追加。タンクの車名とゼッケンプレートに入ったSPORTS PRODUCTIONの文字が外観上で見分けるポイント。車体色はエボニー×ライムグリーンのみ。
[青春のQ2カタログその11 HONDA 水冷編-2| その12 Kawasaki 水冷編 |その13 YAMAHA 水冷編-3]