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レース・イベント

さまざまな障がいを乗り越える パラモトライダー体験走行会 ついにSSPが公道へ? 新たな発表も!
「事故などで障がいを抱えてしまってバイクを諦めた人たちに、再びバイクを楽しむ機会を」ということで、一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が、2020年から開催している『パラモトライダー体験走行会』。今年も1月の向ヶ丘自動車学校、3月の鈴鹿サーキットから始まり、4月に千葉の袖ケ浦フォレストレースウェイ、と開催してきて、5月は23日(月)に埼玉県上尾市にあるファインモータースクール上尾校で開催となった。
■レポート・撮影:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト https://ssp.ne.jp/






 レース業界ではもはや説明する必要もない、青木三兄弟。その次男である元WGPライダー 青木拓磨は1998年にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、その後車いす生活を余儀なくされたが、4輪ドライバーとして多方面で活動をしている。その拓磨に再びバイクに乗ってもらうこと、そしてその感動をより多くの人へ、ということで、三男・治親と長男・宣篤が立ち上げたのが、このSSPで、協賛スポンサーのサポートと、多くのボランティアスタッフの手によってパラモトライダー体験走行会が開催されている。
 

 
 このパラモトライダー体験走行会では、SSPがバイクはもちろんライディングギアも用意する。バイクは、それぞれの障がいに合わせ、脊椎損傷による下半身不随の障がい者用には、シフト操作を手元でできるように、シフトスイッチを左側のハンドル近くに用意し、そのスイッチの操作で直接シフト操作するアクチュエーター・ユニットを組み込んでいる。下半身は、両腿をベルトで制御し、ライディングブーツとバイクのステップをビンディングで接合することで固定する。発進と停止の際には、ボランティアスタッフがバイクを支えることとなる。基本的にはヘルメットに組み込む通信用インカム「B-com」を使用し、ライダーとサポートスタッフとの通信ができるようになっており、盲目ライダーには、補助輪付きのバイクを用意し、この「B-com」を使って、進行方向や速度、路面状況などを伝えながら走行することになる。
 

最初に乗車してもらうサイドアシスト車だが、参加者のレベルに合わせて角度違いのアウトリガーの付け替えをしながら、走行を重ねていく。

 
 バイクに乗る前のバランス取りの練習のためのペダル無し自転車も用意し、さらにKTM デューク250を加工したサイドアシスト車(アウトリガー補助輪付きの小型車両)を使って実際の走行練習を行なう。このサイドアシスト車はアウトリガーを接地タイプ、補助輪が10cmほど浮いた仕様、補助輪が20cmほど浮いた仕様の3種類を用意し、走行に合わせて付け替えを行っていく。これで走行を確認出来たところで、外周路(サーキットの場合はコース)用の大型バイクで走行をすることになる。現在、MVアグスタ・ストラダーレ800とBMW F750GSが用意されている。
 ヘルメットからツナギ、ブーツまでバイクに乗る際に必要な装備は各サイズを用意しレンタルできるようになっている。また参加者はSSP専属理学療法士が体調や現在の状態などの確認を行ってから走行をスタートする。
 

SSPが特別に製作したペダルナシ自転車。実際にバランスが取れるのかどうか、さらにどうバランスをとるか、練習ができる。
参加者および見学者には、必ずSSP専属理学療法士が直接問診を行って、体験走行の可否を確認していく。

 
 2022年の4回目となる今回は、上尾市にある自動車学校が舞台。学校が休校の一日を貸し切り状態でパラモトライダーは体験走行を行っていく。今回の参加者は5名。そのうち2名は今回が2回目の参加者となる。

 玉代勢一己さんは、昨年6月に引き続きの参加。前回は実に40年ぶりの走行だったが、また楽しみたいということで、家族みんなで参加した(2人の息子さんはボランティアスタッフとして積極参加!)。
 

「今日も楽しく走ることができました。体力不足を感じたので、もう少し体力をつけて次回は参加したいと思います」と玉代勢さん。

 
 そして伊藤 博さんはこの体験走行会初年度2回目の参加以来、2年ぶり2度目の参加となる。前回は筑波サーキットのオーバルコースでの体験会であった。その後「新型コロナの影響もあってなかなか参加できなかった」と言う。この2年の間にSSPの運営も大きく進化しており、この体験会自体の変化ぶりにも驚いた様子。
 

「2回目の走行なんですが、『あれ?』ということが多く、もっとスムーズに走れるはず、という感じでした。(前回参加してからの)2年の間にイメージが膨らんでしまっていたのかもしれません。次こそは大型バイクに乗りたいと思います」と伊藤さん。

 
 初参加の牧原伸之さんは下半身不随であるが、いわゆる脊椎損傷ではなく骨髄損傷という症状。12年前、3車線の道路でそれを一気に車線変更してきたタクシーを避けて駐車車両に突っ込んでしまい、3週間意識不明だったという事故に遭った。青木拓磨経由でこの走行会を知り、参加申し込みはしていたものの、ようやく参加できたという。
 

「最高でした。事故った後も次のバイクどうしようかと思っていたくらいで、バイクが忘れられず、今はトライクに乗っています。それはそれで十分満足していたんですが、やっぱり気持ちいいですね、バイクは。自分で操作しているこの感覚、やっぱりバイクが好きってことを思い出すことができました」と牧原さん。

 
 S.M.さん(今回は周囲の理解を得ていないためイニシャル表記とさせてもらいます)はリターンライダーで、奥多摩を走行中にブレーキがベーパーロックを起こし、止まり切れずに道路外へ。その際ガードレールではなくガードロープだったことで右足大腿部切断、そして左足にも障がいが残っている。
 

「事故によって今までできていたことができないことだらけになってしまってました。今日はいい経験になりました。事故してもう絶対乗れないって思っている方に、ぜひ参加してもらいたいと思いました」とコメントしてくれた。

 
 そして谷田光一さんは、病原性網膜剥離により、左目が視力無く、右目も0.3ほどの視力はあるものの視野が極端に狭い弱視となる。20歳からバイクに乗っていたが、この病気を23歳で発症、わずか3年ほどのバイク経験だったがそれが忘れられないという。3月にこのSSPの活動のニュースを知り、今回の参加につながった。
 

「もう感無量です。クラッチをつないだ時の、まさに手から感じる感動、です。病気を発症して卒業や就職の内定なども失いました。もちろんバイクも。現在は仕事もしていますが、バイクだけは取り戻せなかった。今でもバイクが夢に出て来ます。これがかなったことを(クラッチを握る)左手から感じることができました。本当にうれしかった。ぜひ次回も参加したい」という。

 
 次回は6月13日(月)、神奈川県川崎市にある向ヶ丘自動車学校で開催予定である。そして9月11日(日)に、アネスト岩田ターンパイク箱根で、SSP初の公道でのパラモトライダー体験走行会の実施することも発表された。
 この企画のタイトルは「やるぜ!! 箱根ターンパイク2022」となり、6月1日からは国内最大級のクラウドファンディングサイトCAMPFIRE(キャンプファイヤー)での支援の募集もスタートしている( https://camp-fire.jp/projects/586211/activities )。走行できるパラモトライダーはすでにこのSSPの体験走行会に参加し、箱根ターンパイクの走行が可能と判断された参加者となる。現時点ではまだ詳細は明かされていないが、他イベントとの共催も模索されており、この9月の週末は箱根を目指すというのもアリだ。もちろんSSPではボランティアスタッフも募集中(特にこの箱根のイベントに際しては医療従事者のボランティア参加をお願いしたいという)。なんといってもターンパイク全線を借り切っているから。
(レポート・撮影:青山義明)
 

 



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2022/06/15掲載