1998年にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされた元WGPライダー 青木拓磨は、その後4輪ドライバーとして多方面で活動をしている。その拓磨に再びバイクに乗ってもらおう企画『Takuma Ride Again』をきっかけに、拓磨と同じように、事故などで障がいを抱えてしまって、2輪車を諦めた人にもバイクを一緒に楽しんで行けるように応援するプログラム『パラモトライダー体験走行会』を開催しているのが一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)である。
これまでSSPでは、2020年の初開催以来、月に一回程度という頻度で「パラモトライダー体験走行会」を開催してきたわけだが、2022年も積極的な開催を続けている。3月には鈴鹿サーキット東コースで、そして4月6日(水)には、千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイ、そして5月23日(月)には埼玉県上尾市にあるファインモータースクール上尾校で、といった具合だ。
袖ケ浦での開催では、これまでと異なり、アウトリガーを装着したKTM デューク250の出番はなかった。このアウトリガー付きは、体験走行会の最初にまず乗車して体験をするマシンとしてSSPが用意したもので、バランスのとり方や、シフト操作など、それぞれの障がいに合わせ、2輪の再体験をするマシンとなっている。今回は参加者がすべて過去にSSPで体験走行を終えており、このマシンは必要ないという判断の下、用意されなかったのである。
代わりにハンドシフト装置を装着した大型車両が通常の倍となる4台が持ち込まれた。また、先導車両もいつもより多くなった。それは、その4台を同時に走らせるため、である。今回参加したのは7名のパラモトライダー。ここに30名ほどのボランティアスタッフが集結し、4台が同時に走行をしても、それぞれのライダーの走り出しと停止をサポートできるようにというそれぞれ班別けを行い、朝からフォーメーションの確認などもしっかり行われた。
今回はさらに新たな試みが行われた。これまでは先導および後追いの2台が、1台もしくは2台のパラモトライダーのマシンを挟みながら走行を行なっていた。先導&後追い車は青木宣篤や治親、そして今野由寛他プロライダーが担当し、コース内にはプロライダーとパラモトライダーのみ、が走行していた。しかし、今回はそこに一般健常者が一緒に走行するという機会が設けられた。
この企画は、今回参加のパラモトライダーの長田龍司さんから「昔のバイク仲間と一緒に走行をしたい」という希望があったことから実現したもの。長田さんは17歳の時にバイクの単独事故で脊椎を損傷し、バイクを降りているが、当時一緒のチームで走っていたのが今回のリクエストとなった小幡敏治さんである。
90年代初頭、バイクブーム絶頂期だ。小幡さんは当時のことを振り返る。
「ちょうど周りで立て続けに事故があったんです。そんな中、(長田さんも)事故に遭って……。一度は自分もバイクを降りようかと思ったこともありました」という。それでも長田さんとの友人関係は続いており、昨年このSSPで長田さんが再びバイクに乗るという体験走行会には同行して見学に来ていた。
「ついに一緒に走ることができて、ほんとうに良かった。普段バイクに乗っていないのに、ずいぶんとうまいな、と思いました(笑)」と長田さんの走りを評価。長田さんは「当時の仲間がまだ他にもいるので、それらのメンバーたちと一緒に走れたら最高ですね」とさらなる夢を語ってくれた。
ちなみに、SSPでは今後も、参加するパラモトライダーの友人・家族等に限定して、同時に走行をする機会を設けたいとしている。一般参加者はパラモトライダーひとりに対して2名まで、となる。一般参加者の乗るバイクは持ち込むこと(排気量250cc以上)。バイクはきちんと整備された車両であること、が条件となる。またサーキット走行にふさわしい装備を準備できることも条件となる。走行に関しては、誓約書の提出、寄付金というカタチで、走行費に代わる費用負担を依頼する、としている。
障がいを負ってしまった友人とともに参加する、事故する前に一緒に走っていた昔の友人と一緒に走る、そんな嬉しい体験の報告が、これからもSSPの体験走行会から発信できることだろう。
(レポート・撮影:青山義明)
| 『第16回 パラモトライダー体験会、再び鈴鹿へ』のページへ |
| 『パラモトライダー体験走行会 新たな協賛会場で開催』のページへ |
| 『バイカーズ議連が、 青木三兄弟のSSPを視察。』のページへ |
| 『再びバイクに乗る。神奈川県警もひと肌脱いだ!』のページへ |
| 『サーキットを飛び出して、再びバイクに乗る。』のページへ |
| 『再びバイクに乗る、その喜びの輪をさらに!』のページへ |
| 『障がいがあっても、もう一度バイクに乗る。』のページへ |
| 『青木拓磨に続け!「体に障がいを負ってももう一度バイクに乗りたい」』のページへ |