YAMAHA Ténéré700 ABS 車両解説
オフ車ファン待望の“テネレ”が帰ってきた。いや、今ではアドベンチャーファン待望の、といった方が実情に即しているか。
テネレというバイクの歴史は1983年に始まる。“XT600テネレ”の発売が始まりだ。
1982年のパリショーでデビューしたそのマシンは、今やアドベンチャーラリーの代名詞ともなっている「パリ・ダカールラリー」の第一回、第二回を制したXT500をベースに30リットル入りの燃料タンクと、キックオンリーのOHC4バルブYDIS装備のビッグシングルエンジンを搭載したマシンだったが、そのスタイルはまだ個性的なパリ・ダカールレーサーと呼べるスタイルまでには至っていなかった。“アドベンチャーラリーの長距離走行に対応させたオフ車”といえる存在だった。
それもそのはず、XT600テネレは、ヘッドライトカウルと呼ぶべき小さなフェアリングを備えていたのみで、現在のアドベンチャーモデルの原点とも言えるのは、次の“XT600Zテネレ”(1988年発売)の登場を待つことになる。XT600テネレがXT550をベースに排気量とパワーアップを行い、車体側では急遽ビッグタンクを搭載して長距離走破を可能としたラリーマシンに仕立て上げた“スペシャル”的存在だったのに対して、XT600Zテネレは、長距離走行時にライダーの疲労を軽減するハーフフェアリングを標準で備えた、今でいう“アドベンチャーマシン”というカテゴリーへの萌芽を思わせる“進化”を見せたマシンだった。
その後テネレの名は、1989年の“XTZ750スーパーテネレ”(2気筒エンジンを採用)、1991年の“XTZ660テネレ”、2010年のXT1200Zスーパーテネレ(水冷2気筒DOHC4バルブエンジン搭載)などへと引き継がれてきたが、それらはすべて輸出仕様のみだった。もちろん逆輸入車として手に入れることはできたが、国内の多くのオフ車ファン、アドベンチャーマシンファンにとって「テネレ」の名は、羨望の的に近いものがあったといえる。
それだけに今回の“テネレ700 ABS”の国内販売には大きな注目が集まっている。
新型テネレの特徴を端的に言い表すと、「オフ車ファンにとっても、アドベンチャーマシンファンにとっても、受け入れられることができる本格的なオフロード走行を基本としたアドベンチャーマシン」といえる。“やればできるオフ走行”ではなく、「テネレのルーツは、あくまでパリ・ダカールラリーにある」を主張するニューテネレの誕生だ。
YAMAHA ニュースリリースより (2020年3月11日)
アドベンチャーモデル「Ténéré700 ABS」新発売
~アドベンチャーカテゴリーを切り拓いた“Ténéré”ブランドのニューモデル~
ヤマハ発動機株式会社は、水冷・4 ストローク・DOHC・直列2気筒・270度クランク・688cm3エンジンを軽量ボディに搭載したアドベンチャーモデル「Ténéré700 ABS」を6月5日に発売※します。
「Ténéré700」は“Top of Adventure Ténéré”をコンセプトとし、軽量化にこだわり開発しました。乗車姿勢自由度の高い車体、耐久性や整備性の高さ、荷物積載時の高い適応力など、オフロードの走破性とツーリングでのユーティリティ性を高次元でバランスさせたアドベンチャーモデルです。
主な特徴は、1)パワフルでトルクフルな270度クランクエンジン、2))オフロード走破性を徹底追求した吸気・排気系、3)オフロードでのポテンシャルを支える軽量で強靭なボディ、4)走破性を支える前後サスペンション、5)初期タッチやコントロール性に磨きをかけたブレーキ、6)自由度の高いライディングポジション設定、7)ラリーの血筋を感じさせるスタイリングなどです。
※ 本モデルは、2020年より順次リニューアルを進めているYSPおよびアドバンスディーラーのみで販売する「ヤマハモーターサイクル エクスクルーシブモデル」です。ご購入につきましては当社Webサイト掲載の取扱店までお問合せください。
- ●発売日
- 2020年6月5日
- ●メーカー希望小売価格
- 1,265,000円(本体価格 1,150,000円/消費税 115,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
- ●販売計画
- (国内・年間) 600台
- ●カラー
- マットダークグレーメタリック 6(マットダークグレー)
- ブルーイッシュホワイトパール 1(ホワイト)
- マットブラック 2(マットブラック)
- 主な特徴
- 1)パワフルでトルクフルな270度クランクエンジン
- 「クロスプレーン・コンセプト」※に基づき開発した直列2気筒・688cm3エンジンは、低中速の豊かなトルクと、高回転の伸びやかさが特徴。エンジン特性に合わせ2次減速比を最適化し、本格的なオフロードライディングと日常的な市街地走行での扱いやすさを両立しています。
- ※クロスプレーン・コンセプト:慣性トルクが少なく、燃焼室のみで生み出される燃焼トルクだけを効率良く引き出す設計思想。
- 2)オフロード走破性を徹底追求した吸気・排気系
- エアクリーナーボックスは吸気ダクトの向きを進行方向とし、後輪からの砂埃等の吸い込みを抑制するなど十分な吸気容量を確保しました。コンパクト設計のエキゾーストパイプと別体式サイレンサーといった排気系や、冷却ファンやグリルを新設計したラジエーターといった冷却系とともに、オフロードのさまざまなコンディションで高い走破性を発揮する安定性に磨きを掛けています。
- 3)オフロードでのポテンシャルを支える軽量で強靭なボディ
- フレームはヤマハ伝統の軽量・スリム・コンパクトを追求し新設計しました。形状はダブルクレードルタイプで、素材には高強度で軽量な高張力鋼管を採用し、オフロード走行に必要な剛性を確保しつつ、しなやかな乗り心地を実現。さらにアルミ製のリアアームを採用するなど軽量化を図りました。
- 4)走破性を支える前後サスペンション
- フロントサスペンションは43mm径インナーチューブの倒立式を採用し、優れた接地感とショック吸収性を確保。アンダーブラケットやハンドルクラウンもサスペンションに合わせて強度バランスを整え、倒立らしい自然な操舵感を引き出します。リアは、リンク式モノクロスサスペンションを採用し、一般路から砂漠地帯のような過酷なオフロードコースまで幅広く対応する走行性に磨きをかけました。
- 5)初期タッチやコントロール性に磨きをかけたブレーキ
- 前後ブレーキは最適設計のウェーブディスクに加え、軽量・コンパクトなブレンボ製キャリパーを採用。初期タッチ、制動力、コントロール性、リリース特性など優れたバランスを追求しました。さらにオン・オフ切替え可能なABSを搭載しています。
- 6)自由度の高いライディングポジション設定
- シート高875mmのフラットシートとスリムなタンクとのバランスを調整し、自由なライディングポジションを取りやすくしました。また、ライディングポジションに重要な3点(フート・ヒップ・ハンドル)の位置関係を最適化することで、疲労感の低減も実現しています。
- 7)ラリーの血筋を感じさせるスタイリング
- スタイリングやデザインは当社デュアルパーパスタイプのシリーズ「XT」や「WR」がもつラリーイメージを継承。さらに機能部品であるヘッドランプやタンクに特徴的なアレンジを加え、新しいモダンラリーバイクのプロポーションを提唱しています。
主要諸元
車名型式 | 2BL-DM09J | |
---|---|---|
Ténéré700 ABS | ||
発売日 | 2020年6月5日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.370×0.905×1.455 | |
軸距(m) | 1.595 | |
最低地上高(m) | 0.240 | |
シート高(m) | 0.875 | |
車両重量(kg) | 205 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 35.0(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 | |
24.0(WMTCモード値 クラス3 サブクラス3-2) 1名乗車時)★※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | – | |
エンジン型式 | M415E | |
水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 688 | |
内径×行程(mm) | 80.0×68.5 | |
圧縮比 | 11.5 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 53[72]/9,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 67[6.8]/6,500 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | T.C.I.式(トランジスタ) | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ | |
潤滑油容量(L) | 3.0 | |
燃料タンク容量(L) | 16 | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.846 |
2速 | 2.125 | |
3速 | 1.631 | |
4速 | 1.300 | |
5速 | 1.090 | |
6速 | 0.968 | |
変速比 | 1.925/3.066 | |
キャスター(度) | 27020′ | |
トレール(mm) | 105 | |
タイヤサイズ | 前 | 90/90-21 M/C 54V |
後 | 150/70R18 M/C 70V | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム(リンク式) | |
フレーム形式 | セミダブルクレードル |
※1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
※3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
- 「Ténéré700 ABS」フィーチャー
- ・フル液晶マルチファンクションメーター
- ・スリムな16L燃料タンク
- ・フラットシート(前後2分割構造)
- ・LEDテールランプ
- ・アルミ製重力鋳造リアアーム
- ・ピレリ製タイヤ「Scorpion Rally STR」
- ・アルミシリンダー採用ショックアブソーバー
- ・リンク式モノクロスサスペンション
- ・⽔冷・4ストローク・直列2気筒・DOHC・4バルブ・688cm3エンジン
- ・GPS等装着用ステー
- ・LEDヘッド&ポジションランプ
- ・43mm径倒立式サスペンション
- ・位置調整可能フェンダー
- ・ABS(オン・オフ切替え可能)
- ・282mm径ダブルディスクブレーキ
- ・アルミ製アンダーガード
- ・240mm のグランドクリアランス
- ・鍛造ピストン、メッキシリンダー、小型クラッチ、オフセットシリンダー、二次レシオ最適化、コンパクト1軸バランサー