Facebookページ
Twitter
Youtube

レース・イベント





全日本ロードレース選手権シリーズ 第5戦 「44歳の伸びしろ」


2025年のMFJ全日本ロードレース選手権シリーズ第5戦、「スーパーバイクレース in 九州」が2025年9月13〜14日に大分県日田市のオートポリスで開催された。標高800mにあるコースは、ダイナミックなアップダウンがあり、見どころが多い。晴れれば青空と山の緑のコントラストが美しく、爽やかな風が吹く。だが、雨が降り気温の変化が大きくなると深い霧が出る。秋雨前線の影響で、天気が心配されていた。
最高峰JSB1000クラスの浦本修充(AutoRace Ube Racing Team)は、世界耐久選手権ボルドール24時間参戦のため欠場。スポット参戦していた津田拓也(Team SUZUKI CN CHALLENGE)が、後半戦全戦に参戦するとリリースされた。
■文:佐藤洋美 ■写真:赤松 孝

 JSB1000は2レース開催された。予選の天候は曇り、ドライコンディションで強い風が吹いていた。
 #2中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が、#4野左根航汰(Astemo Honda Pro Racing)、津田とのアタック合戦を制して唯一の47秒台となる1分47秒960を記録。セカンドタイムも1分48秒178でトップとなり、両レースのポールポジションを獲得した。

 レース1決勝日はどんよりとした曇り空で、スタート前に雨が降りウェットレースが宣言されたが、雨は止み強い風が吹き、路面はほぼドライコンディション。全ライダーがスリックタイヤを選択してグリッドに並んだ。
 ホールショットは野左根、中須賀、#6名越哲平(SDG Team HARC-PRO. Honda)、#8岩田 悟(Team ATJ)、#9伊藤和輝(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)が続く。トップグループは野左根、中須賀、岩田に追い上げた津田、名越の5台。それを#30鈴木光来(Team ATJ)と伊藤が追い、トップグループは7台へと膨れ上がった。
 4周目、中須賀がトップに立つとペースを上げ、1周につき1秒前後の差でリードを拡大しトップでチェッカーを受けた。激しい2番手争いは、最終ラップに大粒の雨が落ち、名越が転倒してしまう。後退していた野左根が前に出て2位。3位には津田が入った。
 北九州出身でオートポリスの勝率の高い中須賀は表彰台で「とにかく地元の声援が大きく、それを力に換えて優勝できました」と笑顔を見せた。

#JSB1000-Rd5-AP

 翌日のオートポリスは早朝から濃い霧が発生し、朝のウォームアップ走行が全クラス中止となり、予定されていたJ-GP3クラスとST600クラスの決勝は中止となる。午後になり奇跡のように霧が晴れ、JSB1000クラスの決勝レース2は予定周回数を減算して12周で戦うことになった。レース1決勝で転倒した名越は欠場となる。

 スタート直前に5分間実施したウォームアップ走行では路面が濡れていたが、状況は変化していき全車がスリックタイヤを選択。だが所々にウェットパッチが残る難しい路面だった。サイティングラップで中須賀がコースアウトする場面もあったが、「ここで、路面の状況を確認できたとポジティブに捉えたい。転倒しなくて良かった。レース中なら、コースアウトを取り戻すのは、難しいので、その前に、状況が分かって良かった」とコース復帰してグリッドに着いた。
 中須賀はホールショットを奪い、追撃する野左根とのバトルを見せたが、首位に立つと独走体制を築き勝利した。2位に野左根、3位に伊藤が入り初表彰台を獲得。予選15番手から順位を上げて3位の伊藤に迫った#3水野 涼(DUCATI Team KAGAYAMA)が4位、僅差で鈴木が5位に入った。

 中須賀は「決勝レースがあるかないかわからず、準備したり止めたりの繰り返しでモチベーションや集中力を保つのが難しい1日でした。それでも、せっかく会場に足を運んでくださったお客様に1レースでも見せることが出来て良かったです。序盤で野左根選手の挙動を後ろからチェックしていたら、思うように乗れていない感じがあったので、早めに抜き返して何周か1分48秒台に入れられ引き離すことが出来た」と語った。
 レース1決勝で2位に8秒626、レース2決勝で2位に7秒783の差をつけて、中須賀がダブルウィンを飾った。圧倒的な勝利で強い中須賀の復活だった。

#JSB1000-Rd5-AP

 開幕戦はドゥカティの水野が勝利、第2戦SUGOはダブルウィンを飾るも最後まで続くトップ争いを制しての勝利だった。鈴鹿8時間耐久のプライベートテストで、中須賀はあばら骨3本にひびが入った状態でMotoGPのジャック・ミラー、初参戦のスーパーバイク世界選手権(WSBK)のアンドレア・ロカテッリと挑んだ。
 トップ10トライアルにも姿を見せずスタートライダーを務めたが、首位を走る高橋 巧(Team HRC)を追うことはなかった。結果は2位。常に最速に拘り1番を狙ってきた中須賀にとっては辛いレースだったはずだ。

#JSB1000-Rd5-AP
#JSB1000-Rd5-AP

「鈴鹿8耐は、6年ぶりにヤマハファクトリーで参戦でした。6年前とは違って年を重ね、当然ですが6年前とは違う自分がいて、勝ちを狙うアベレージで走れるのかという不安と、やれるという期待と、いろいろな感情が入り混じった8耐でした。ミスしちゃいけないし、しっかり乗り越えなきゃいけない。非常にプレッシャーも感じていた。その中で転倒してケガをしてしまい、非常に精神的にも辛かった。正直なところ、やり切るのが大変でした。ジャックとロカには負担をかけ迷惑をかけたんですけど、『お前はお前の役目をしっかりやって、俺らがその分稼いでくるから』と心強い言葉をかけてくれて、自分自身が頑張るきっかけにもなった。非常にチームワークの取れたいいチームで走ることが出来て、あの時に自分が出来る最大限を出し切れたんじゃないかなと思っています」
 中須賀はハンデがある中でもトップライダーとしての役目を果たし、しっかりとバトンをつないでトップ争いを繰り広げ、優勝したTeam HRCに引けを取らない存在を示し観客を沸かせた。
「彼らは同じ設定のYZF-R1で、ジャックもロカもさらに高い限界値を見せてくれたので、自分のセッティングで作ったバイクでああいう走らせ方ができるのかと学べたことはいい刺激になり、まだまだ伸びしろを感じました。44歳になりましたが、努力し続ければ可能性はしっかりあるんだなっていうのが見えた8耐だったので、そういった意味ではいい刺激になりました」

#JSB1000-Rd5-AP
#JSB1000-Rd5-AP

 そして第4戦もてぎを迎えた。鈴鹿8耐から1か月が経ちケガも癒え「ほぼ完治していますし、いい状態で来ている。8耐を終えてチーム自体の士気も高まっていますし、勢いづける形でいいレースができるように頑張りたい」と挑んだ。BMWを駆る浦本に次いで両レースを2位となり「対抗できるスピードが足りなかった」と語ったが、最大限の走りで、貴重なポイントを得た。
 第5戦オートポリスは中須賀の地元であり負けられないレースだった。その重圧を跳ね除け圧勝して50ポイントを加算、次の岡山国際でタイトルの可能性を引き寄せた。自身13度目のチャンピオン獲得に向けて挑むことになる。
 最終レースとなっていたST1000クラスも、濃霧となり、JSB1000以外は中止となった。他クラスは予選結果によりハーフポイントとなった。ST1000は國峰啄磨(TOHO Racing)、ST600は伊達悠太(AKENO SPEED・MAVERICK)、J-GP3は尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)が予選トップだった。

#JSB1000-Rd5-AP
#JSB1000-Rd5-AP

 第6戦全日本は岡山県・岡山国際サーキットで2025年10月4日〜5日に開催された。すでにご存じのように最終戦の鈴鹿GPを待たずに、自身13回目のチャンピオンを決めた。詳細は近々公開予定だ。
(文:佐藤洋美、写真:赤松 孝)


[『2025年 全日本ロードレース選手権第4戦もてぎ JSB1000レポート』へ]

[『2025年 全日本ロードレース選手権第2戦SUGO JSB1000レポート』へ]

[『2025年 全日本ロードレース選手権第1戦もてぎ2&4 JSB1000レポート』へ]

[『鈴鹿8耐レポート 高橋 巧の覚悟』へ]

2025/10/13掲載