2025年4月27日、埼玉県モトクロスヴィレッジで恒例、春の『チキチキVMX』が開催され、北は北海道から、西は香川県から、13歳から81歳まで、延べ240台の参加を記録。ヴィンテージゆえ1960年代から80年代のバイク達が土の上を走るわけだが、シックなスタイルと安心のトコトコ走行感に惹かれて、当時を知らない若い世代の参加も増えている。
- ■撮影・文:高橋絵里
- ■主催:ウエストポイント
パドックエリアにあふれる1960年代スクランブラーから1980年代モトクロッサーは、素晴らしく旧く、うっとり見とれてしまう美しい光景だ。これらのバイクが活躍した時代をリアルに記憶する世代は、今では立派な中高年。あの頃思いきり走りまわって青春時代を過ごした人も、あるいは子供心に憧れていた人も、それぞれの思い出とラップしながら今も走る。朝の開会式で『本日の最高齢は81歳です』のアナウンスに『えぇー、すごいなぁ!』と会場がどよめく。パドックでの愛車お披露目タイムに続いて、いよいよレースが始まった。マシンの仕様と年式ごとにスプリントもあればミニ耐久もあり、走るほうも見るほうも皆さん笑顔が絶えない。お宝の希少車は決して飾るだけのものじゃない、みんなちゃんと走って遊ぶのだ。あの時代と同じサウンドとオイルの香りを発しながら。
「僕はね、これまで生きてきて、ずっと『無邪気な夢の中』にいる。夢の中にいたい。今日の僕は、65年前にタイムスリップできて最高!」と言うアサガさんは81歳、開会式でこの日の最高齢と紹介されたライダーだ。
そうです、この方こそパリ・ダカールラリー18回出場を始め国際ラリーストとして活躍した浅賀敏則さんで、今なお愛してやまないバイクの、この日は『ドリーム50改・カブレーサー仕様』をお披露目して走らせた。マシンにまつわる思い出を話してくださった。
「あれは1960年、16歳だった僕がランペットCA-2で『MCFAJ横須賀スクランブル』というレースに出た時、僕のことを3周も周回遅れにした男がいて、それが長谷見昌弘だった。彼はホンダCR110というカブレーサーでレースをぶっちぎった。その印象があまりにも強烈で、僕はその後CR110を手に入れ、スペアパーツでタンクを持っていたんです。で、そのタンクがつい最近になって倉庫から出てきて、アッこれがあったか! と思って、ドリーム50でカブレーサーふうに仕上げました。こんなカブもあるんだよという提案と、僕のエンディングにこのバイクでモトクロスできたらいいよね、という気持ちです。そんな無邪気な夢のひとつとして、今日走れたのは、スゴイ嬉しい。
そうそう、長谷見さんとはその後パリダカールラリーで、長谷見さんが日産で僕がトヨタで闘って僕が勝って、16歳の時のカタキは取ったの(笑)」
旧車に新たな魅力を感じ取る!? 若人大歓迎!
「VMXに出たくて不動車だったこのバイクを買って直して、10年くらい所有しています。現行モトクロッサーには乗ったことがないんですが、速くてちょっと怖いイメージ、でも旧車はトコトコ走る感じで怖くないし、何より旧車の雰囲気が好きなんです」
「今日が僕の誕生日で13歳になりました。幼稚園からPWに乗り、このCR80は半年前からで、今日はスプリントのほかミニ耐久も出ました。VMXは現行車では感じられない振動とかが味わえたり、壊れても直してセッティングして乗るのが楽しい」
「念願の初参加です。ビンテージの空冷の2サイクルバイクが好きで今日は眼福です。70年代のシンプルなデザイン、ティアドロップタンクに全体のフォルム、それらを追いかけ続けていると当時を知る先輩方と知り合えたり話しができて、とても幸せです」
「ビンテージバイクの魅力は、奥が深いこと。作りは単純なんですが、そのぶん直したりパワーアップなど、先輩方から教えてもらったり経験談を聞いて自分でやってみる。それでいて奥が深い。そしてみんなで一緒に競い合って走るのは、やはり楽しいですね」