SUZUKI V-STROM 1050 車両解説
スズキのフラグシップ“アドベンチャー・ツアラー”として欧州を中心に人気を集めていたV-Strom 1000 ABSの国内仕様モデルが発売されたのは2014年6月。ハヤブサに続き、欧州仕様そのままのハイパワー仕様で国内市場への導入だった。
1997年発売のTL1000S、そして翌1998年のTL1000Rに源を発するスズキのリッタークラスVツイン・スポーツに系譜をたどれるスズキの90度Vツインスポーツエンジン。セミカムギアトレインやラムエア機構、そしてF.I.採用などにより125PSのハイパワー(国内仕様は93馬力に抑えられていたが)エンジンを軽量なアルミツインスパーフレームに搭載した“じゃじゃ馬”マシンとしてのスタートだった。
“アドベンチャー・ツアラー”としてのヒストリーは、2002年、「次世代アドベンチャー・ツアラー・モデル」として生産を開始したV-Strom 1000の登場に始まる。より快適で上質なロングツーリングに最適なモデルとしてツーリングファンの支持を得ることに成功し、その後、2004年に発売開始した弟分のV-Strom 650と合わせて、「スズキに個性的なアドベンチャー・ツアラー・シリーズあり」を強く印象づけることに成功している。その後、V-Strom 1000は2007年に、650では2011年にエンジンから車体に至るまで、ほぼすべてを一新するモデルチェンジを受けている。
V-Strom 1000 ABSの国内仕様発売は、2014年。新型に生まれ変わるやすぐさま販売実績を塗り替えたというほどの人気となった海外仕様モデルをベースに、180km/hのスピードリミッターの追加、イグニッションキーの変更(海外仕様で備わるパーキングポジションを廃止、国内のレギュレーションに合わせた)、そして各種のコーションラベル類を日本語に変更、という3点のみの変更にとどめていた。
ちなみに2代目V-Strom 1000 ABSへの変更点を取り上げておくと、エンジンでは、基本構造以外のほぼすべてを新設計。ピストン径をそれまでの98mmから100mmへとボアアップすることで、排気量を996ccから現状のシリンダーレイアウトではほぼ限界といえる1,036ccへアップ。最高出力は72.0kW(97PS)から74.0kW(100PS)に、最大トルクも101.0N・mから103.0N・mへとアップ。ピストン自体もサイズアップにもかかわらず、従来と変わらない重量と剛性も確保していたという。
シリンダーヘッド周りでは、ツインイリジュウムスパークプラグが新たに採用された。イグニッションコイルも1気筒当たり2個を採用。フューエルインジェクションでもインジェクターホールを4から10に増やし、よりクリティカルなコントロールを可能とし、排出ガス規制もEuro3をクリア(従来はEuro2)、燃費を18.0km/Lから20.9km/Lに向上させている。フライホイールマグネトーの慣性重量は15%アップし、ISC(Idle Speed Control)システムを採用したF.I.スロットルボディの採用などとともに低回転時のコントロール性を大幅にアップしている。
ラジエターの冷却能力を19.8kWから22.7kWに向上。オイルクーラーは廃止。さらに冷却システム全体でマイナス1.3kgの軽量化も実現。クラッチはスリッパークラッチ機能やアシスト機能を持たせたSCAS(Suzuki Clutch Assist System)を採用。マフラーは従来のツインマフラーからシングルへと変更、約4.7kgの軽量化を実現。
車体周りでは、スズキの二輪車では初採用となるトラクションコントロールを採用。状況に合わせて2タイプのモード(オフを入れて3ポジション)を選択可能だった。フレームはツインスパータイプと基本構造はそれまで通りだったが、最新のFEM(有限要素法)解析によりほぼ一新され、剛性を33%アップさせつつ、重量は従来モデルよりも13%軽量化している。スイングアームは約36mm延長、ホイールベースも20mmの延長となった。フロントにはKYB製のφ43mm倒立式フォーク、リアにはプリロードアジャスター付サスを採用。フロントブレーキは異形対向4ピストンモノブロックラジアルマウントキャリパーにグレードアップ。ボッシュ社製のABSを標準装備している。
ハンドルバーはそれまでのモデルよりも34mm後方に、フットレストも15mm後方にセッティングされ、ライダーの足着き性を向上させている。特徴的な上下2段にレイアウトされたヘッドライトを採用。そして必要にして最小限といえる、これまた特徴的なウインドスクリーンは、工具使用により3段階の高さ調節が可能。角度も3段階に調整が可能で、こちらは工具不要だ。メーターはデジタルの多機能メーターパネルを採用した。
“ワイルド&スマート”をデザインコンセプトにして生まれ変わった新型V-Strom 1000 ABS。ライバル各車がリッタークラスからさらに排気量を拡大、より大きく、より豪華なマシンへと変身していくのに対して、あくまで軽量&コンパクトさ、にこだわったマシン作りで“アルペンマスター”、アルペンルートでの最速マシン、という分かりやすい目標を実現するべく生まれ変わったモデルだった。この4世代目は、2015年12月に新色が追加設定されたのがラストとなった。新色2色の追加で、継続色合わせて計5色もが用意されるカラーラインナップとなっていた。
弟分のV-Strom 650シリーズとよりイメージを統一した新デザインのスタイリングと、制動時の姿勢をより安定させてくれる“モーショントラックブレーキシステム”に注目だろう。従来からの“トラクションコントロールシステム”採用により加速時のホイールのスリップをコントロールしてくれるのは同一だが、新たに採用された“モーショントラックブレーキシステム”ではABSも進化し、前後輪で協調作動するシステムに発展。バンク角の変化にも対応して前輪と後輪のABSの制動力を自動でコントロールし、より最適なブレーキング性能を発揮できるように制御してくれるという。
最近の動きとしては、2018年3月に新色の「オールトグレーメタリックNo.3」(QEB)の追加が行われ、2019年3月にも、V-Strom 650 ABS/650XT ABSシリーズ同様カラーリング及びデカールの変更が行われ2019年モデルとなっている。
そして2020年4月。3世代目へとフルモデルチェンジ。車名が「1000」から「1050」へと変わったが、排気量1,036cm3に変わりは無く、V型2気筒の基本構成もそのままだった。ただし電子制御スロットルの採用や吸排気タイミングの調整により、出力を5kW向上させながら、同時にその年の12月から新型の二輪車を対象に導入された令和2年排出ガス規制に対応させていた。また、出力特性を3タイプの中から選択可能なSDMS(スズキ・ドライブ・モード・セレクター)や3段階から選択可能なトラクションコントロールなど、様々な走行シーンに対応する電子制御システムS.I.R.S(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)を新たに搭載し、長距離ツーリングに求められる使い勝手や利便性を向上させている。
最大の変更点といえるスタイリングは、1988年に発売されたスズキ初のアドベンチャーモデル「DR750S」をモチーフにしたデザインを、より現代風にアレンジすることで、スポーツアドベンチャーツアラーらしい力強いイメージを強調している。ボディを構成する各パーツも従来の丸みを持ったものから、直線を基調とし、DR750Sを強くイメージさせるシャープなスタイルとなった。
高さの調整が可能なウインドスクリーン、アルミ製のテーパー形状のハンドルバーの標準装備、また、「V-STROM 1050XT」には、新採用のクルーズコントロールやヒルホールドコントロールのほか、荷重や下り坂に応じてブレーキを制御するロードディペンデントコントロールやスロープディペンデントコントロールなども搭載された。アルミ製アンダーカウリング、アクセサリーバー、センタースタンド、シート高調整機能、LED 式ターンシグナル、12Vアクセサリーソケットも新たに標準で装備している。
また、V-STROM 1050XTには、車体色に「DR750S」をベースとした1988年のパリ・ダカール・ラリー出場マシン「DR-Z(ジータ)」を彷彿とさせる特別色「ヘリテージスペシャル」が設定された。
2021年3月、2022年モデルのV-STROM 1050はグラススパークルブラック/キャンディダーリングレッド、グラススパークルブラックに。V-STROM 1050XTはチャンピオンイエローNo.2/グラススパークルブラック、ブリリアントホワイト/グラスブレイズオレンジ、オールトグレーメタリックNo.3/グラススパークルブラック、グラススパークルブラックにカラーを変更。
2024年5月発売の2024年モデルではV-STROM 1050のみパールビガーブルー/マットブラックメタリックNo.2、グラスブレイズオレンジ/マットブラックメタリック、グラスブレイズオレンジ/マットブラックメタリックへとカラーを変更した。
今回はV-STROM 1050がオールトグレーメタリック No.3/マットブラックメタリック No.2、マットスティールグリーンメタリック/マットブラックメタリック No.2、グラススパークルブラック/マットブラックメタリック No.2にカラーを一新。ワイヤースポークモデルのV-STROM 1050DEは、チャンピオンイエローNo.2/グラススパークルブラックとパールテックホワイト/グラススパークルブラックの2色となり、車載式故障診断装置が触媒の劣化に対応する仕様となった。
★スズキ ニュースリリースより (2025年2月10日)
大型二輪車「V-STROM(ブイストローム)1050」、 「V-STROM (ブイストローム)1050DE」のカラーリングを変更して発売
スズキ株式会社は、大型二輪車「V-STROM(ブイストローム)1050」、「V-STROM(ブイストローム) 1050DE」のカラーリングを変更して 2 月 17 日より発売します。
「V-STROM(ブイストローム)1050」は、街中から高速道路、山岳路まで、長距離ツーリングでの様々 な状況で快適に走行を楽しむことができるスポーツアドベンチャーツアラーです。
1,036cm3 水冷 4 サイクル V 型 2 気筒 DOHC4 バルブエンジンを搭載し、低中速域のトルクを維持 しながら高回転域での伸びがある、よりVツインらしい特性となっています。
様々な走行シーンに対応する電子制御システム S.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)は、 IMU(慣性計測装置)等のデータを組み合わせる「モーショントラック・ブレーキシステム」のほか、クラッ チやスロットルを操作せずにシフトアップ/ダウンが可能な双方向クイックシフトシステム、クルーズコント ロールなどの機能を装備。さらに、S.I.R.S.の設定状況を含む様々な情報を表示する 5 インチ大画面 カラーTFT 液晶メーターを採用し、長距離ツーリングに求められる使い勝手や利便性を向上させていま す。
スタイリングは、1988 年発売のスズキ初のアドベンチャーツアラー「DR-BIG」の DNA を継承した独特 な「クチバシ」デザインを、より現代風にアレンジすることで、スポーツアドベンチャーツアラーらしい力強 いイメージを強調しました。また、高さの調整が可能なウインドスクリーンに加え、頑強なスタイルを演出 するアルミ製のテーパー形状のハンドルバーを標準装備しました。
ホイールとタイヤには、10 スポークアルミキャストホイールを装備し、フロント 110/80R19 とリヤ 150/70R17 のブリヂストン BATTLAX ADVENTURE A41 ラジアルタイヤを装着して高い快適性と爽快な 乗り心地を実現しています。
また、「V-STROM(ブイストローム) 1050DE」には、トラクションコントロールシステムに専用のG モードを設定し、未舗装路での操縦安定性を高めました。フロントには大径の 21 インチホイールを 装着し、前後タイヤにセミブロックパターンのタイヤを採用しました。さらに、標準車よりも左右に 20mm ず つ幅を広げることで衝撃吸収性能が向上したハンドルバーや、外観向上や用品装着の為のアクセサリ ーバー、地面の飛び石等からエンジン下部を保護するアルミ製エンジンプロテクターを採用しました。
- ●主な変更点
- ・カラーリングの変更
- V ストローム 1050
- 設定色:3色
- オールトグレーメタリック No.3/マットブラックメタリック No.2 (BN8)
- マットスティールグリーンメタリック/マットブラックメタリック No.2 (CWY)
- グラススパークルブラック/マットブラックメタリック No.2 (C4X)
- V ストローム 1050DE
- 設定色:2色
- チャンピオンイエローNo.2/グラススパークルブラック (BT1)
- パールテックホワイト/グラススパークルブラック (CK6)
- ・車載式故障診断装置(OBDII)の監視要件のうち、触媒劣化に対応
- ・メーカー希望小売価格の変更
- ●「V-STROM1050」、「V-STROM1050DE」の主な装備と諸元
- V-STROM 1050 【V-STROM1050DE】
- 装備
- S.I.R.S. (スズキインテリジェント ライドシステム)
- 電子制御スロットル
- SDMS (スズキドライブモードセレクター) 出力特性を3つの中から選択可能
- トラクションコントロール トラクションコントロール (3モード+【Gモード】+OFF) リヤホイールの空転が感知された時に、 エンジン出力を制御
- 双方向クイックシフトシステム クラッチやスロットルを操作せずにシフトアップ/ダウンが可能
- スズキイージースタートシステム ワンプッシュでエンジン始動が可能
- ローRPMアシスト スムーズな発進を補助
- ヒルホールドコントロールシステム 上り坂で停止後の発進時に車両後退を抑制
- スロープディペンデントコントロールシステム 下り勾配に応じてABSの制御を最適化
ロードディペンデントコントロールシステム - モーショントラックブレーキ(2モード【2モード+リヤABS解除モード】) コーナリング時に車体のバンク角に応じてABSを制御
- クルーズコントロールシステム スロットルを回さずに、設定した一定速度で走行
- ホイール キャストホイール 【ワイヤースポークホイール】
- ウインドスクリーン 高さ11 【3】段階調整(工具不要)
- その他 USBソケット、12Vアクセサリー ソケット、ナックルカバー、 アンダーカウリング 【アンダープロテクター、アクセサ リーバー、センタースタンド】
- 諸元
- 全長(mm) 2,265 【2,390】
- 全幅(mm) 940 【960】
- 全高(mm) 1,470 【1,505】
- ホイールベース(mm) 1,555 【1,595】
- 装備重量(kg) 242 【252】
- エンジン型式 1,036cm³水冷4サイクルV型2気筒DOHC4バルブ
- 定地燃費値※1 27.0km/L(60km/h)2名乗車時
- WMTCモード値※2 19.4km/L(クラス3、サブクラス3-2)1名乗車時
- ※1 車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
- ※2 発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
- ●商品名
- V ストローム 1050 (DL1050RRM5)
- ●メーカー希望小売価格(消費税10%込み)
- 1,705,000円(消費税抜き 1,550,000円)
- ●発売日
- 2025年2月17日
- ●車体色
- 3色
- オールトグレーメタリック No.3/マットブラックメタリック No.2 (BN8)
- マットスティールグリーンメタリック/マットブラックメタリック No.2 (CWY)
- グラススパークルブラック/マットブラックメタリック No.2 (C4X) V ストローム 1050DE
- ●商品名
- V ストローム 1050DE (DL1050RJM5)
- ●メーカー希望小売価格(消費税10%込み)
- 1,793,000円(消費税抜き 1,630,000円)
- ●発売日
- 2025年2月17日
- ●車体色
- 2色
- チャンピオンイエローNo.2/グラススパークルブラック (BT1)
- パールテックホワイト/グラススパークルブラック (CK6)
主要諸元
車名型式 | Vストローム1050 [Vストローム1050DE] | |
---|---|---|
8BL-EF11M | ||
発売日 | 2025年2月17日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.265[2.390]×0.940[0.960]×1.470[1.505] | |
軸間距離(m) | 1.555[1.595] | |
最低地上高(m) | 0.165[0.190] | |
シート高(m) | 0.850 | |
車両重量(kg) | 242[252] | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 27.0(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 | |
19.4(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | – | |
エンジン型式 | U502 | |
水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 1036 | |
内径×行程(mm) | 100.0×66.0 | |
圧縮比 | 11.5 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 76[103]/8,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 97[9.9]/6,000 | |
燃料供給装置形式 |
フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式v | |
点火方式 | フルトランジスタ式 | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ式 | |
潤滑油容量(L) | 3.5 | |
燃料タンク容量(L) | 20 | |
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.666 |
2速 | 1.933 | |
3速 | 1.500 | |
4速 | 1.227 | |
5速 | 1.086 | |
6速 | 0.913 | |
減速比1次/2次 | 1.838/2.647 | |
キャスター(度) | 25°40′[27°30′] | |
トレール(mm) | 110[126] | |
タイヤサイズ | 前 | 110/80R19M/C 59V [90/90-21M/C 54Hチューブタイプ] |
後 | 150/70R17M/C 69V [150/70R17M/C 69H] | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク(ABS) |
後 | 油圧式シングルディスク(ABS) | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック |
後 | スイングアーム | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応
※1:装備重量は、燃料・潤滑油・冷却水・バッテリー液を含む総重量となります
※2:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。実際の燃費は、使用環境(気象、渋滞等)や 運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※3:定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
※4:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
※5:エンジン出力表示は、「ps/rpm」から「kW/rpm」へ、トルク表示は「kgf・m/rpm」から「N・m/rpm」へ切り替わりました。( )内は、旧単位での参考値です。