車両メーカーがニューモデルを発表するように、用品および部品メーカーも新製品や新しい技術を発表するのがEICMA。それはお客様に向けたBtoCはもちろん、企業に向けたBtoBの場合もある。そう、EICMAはトレードショーでもあるのです。2024はそのウェイトが非常に重くて、過去最多の10パビリオンでショーが展開されましたが、そのうち2パビリオンは、中国のBtoB向け企業が占拠していました。一時期、なりを潜めていた中国パワーが復活した、という印象です。まぁ、これもEICMAですから。今回はその用品&部品メーカーのトピックスを、お伝えします。そして最後には、ショーを彩った女性陣を紹介しますね。
■文・写真:河野正士
●HJCのキャラクターヘルメット
韓国のヘルメットブランドHJCは毎年、さまざまなキャラクターとのコラボレーションヘルメットを発表しています。それは玩具メーカーのハズブロやバンダイナムコ、映画会社のディズニーやユニバーサル・ピクチャーズというビッグブランドばかり。そういった方面に疎い自分でも知っているキャラクターがヘルメットにデザインされています。見ていてとても楽しいですね。
●勢いのあるMT Helmet
スペインのヘルメットブランドMT Helmetは勢いがありますね。調べると1968年操業とあるのですが、僕は最近までまったくその存在を知りませんでした。でもロードレース世界選手権Moto2およびMoto3クラスにチームを持ち、その知名度を高めています。昨年は小椋藍選手もTeam MT HelmetからMoto2クラスに参戦しチャンピオンを獲得しました(小椋選手はアライヘルメットを被っていましたが……)。また山中流聖選手も同チームから参戦。2025年シーズンもTeam MT HelmetからMoto3クラスに参戦予定とのこと。なのでブースには、山中選手のポップとレプリカヘルメットが展示されていました。
●自動で瞬時に、スモークとクリアを自在に変更
IRID(イリッド)は紫外線を感知して、ヘルメットのシールドをクリアからスモークへ、そしてスモークからクリアへと変更するシステムを開発したイタリアのテックカンパニー。
EICMA2023で、そのコンセプトモデルを展示していましたが、EICMA2024ではその製品版が、ヘルメットブランドのSHARK、NOLAN、LS2に純正採用されたとのこと。シールドセンターの上部に紫外線の感知センサーやシステム、それにソーラーパネルが仕込まれていて、そのセンサーが紫外線を感知すると、その紫外線量に合わせてシールドの斜光具合を変更してくれるというもの。僕自身は、このIRIDと同様に、紫外線量に合わせて自動的に斜光具合を変化させるフォトクロミック・シールドの愛用者で、その調光レンズ的な機能の便利さを気に入っているライダーの一人。ただ難点は、調光スピードの遅さでした。でもこのIRIDのシステムは、ソーラーパネルからの電力を使って、瞬時に調光を終えます。ソーラーパネル小さすぎない? 陽が出てなかったらどうするの?と聞けば、システムは小さなソーラーパネルでも十分に機能する簡素なシステムで動いているから問題ない。陽が出てなかったらシステムを動かす必要がないから、それも問題ないよ、と。うーん、試してみたいです!
●曇らないだけじゃないPinlock
ヘルメット用シールドの曇り止め防止として知られ、モデルによっては標準で付属しているPinlock(ピンロック)。シンプルながら高機能なそのPinlockが進化しています。というのも、雨や曇りの日に景色をクリアに見せる「イエロー」や、強い日射しをしっかり遮る「ダークスモーク」、それに紫外線量にあわせて自動で調光する「プレシション・トーン」と、曇り止めに追加した新機能でライダーをサポート。これ、良いですね。
またそのPinlockがイヤープラグも開発していました。いま、高機能イヤープラグが気になるんですよねー。その昔に、耳穴をピッタリと塞ぐ、いわゆる耳栓を付けてバイクで走ったことがあったのですが、そのとき遮音性は良いが、遮音しすぎて今ひとつ使い勝手が良くなかったのです。でも近年は、ノイズを低減して必要な音は届ける的な高機能イヤープラグが、日常生活の中でも人気。調べるとバイク用にもいろいろ出てるんですねー。ということで、これも試してみたい!
●エアバッグシステムのIN&MOTIONとヘルメットブランドのAIROHが提携
ヘルメットの安全性能を高めようと、イタリアのヘルメットブランドAIROH(アイロー)が開発を進めていたエアバッグ内蔵のヘルメットにおいて、AIROHは新たに、フランスのエアバッグシステム・ブランドIN&MOTION(イン&モーション)と提携しました。AIROHはかつて、オーストリアのエアバッグシステム・ブランドAutoliv(オートリブ)と開発を進めていましたが、すでにMotoGPやダカールといった二輪レースやスキーの領域において実績があり、あらたにモトクロスレースや乗馬においてもエアバッグシステムの開発と製品の供給を進め、進化を続けるIN&MOTIONをパートナーに選んだのです。その開発は始まったばかりのようですが、ベストやライディングジャケット&スーツなど、ライダー用エアバッグシステムとヘルメットをBluetoothで連動させ、コードレスでのシステム稼働を目指しているそうです。
●トップブランドを支えるパーツメーカーの凄みを感じる
これらはイタリアのVRMという会社のブース。彼らは欧州二輪車メーカーをはじめ、高級四輪ブランドのアルミキャスティングパーツやエンジンコンポーネンツの開発や製造を行っている会社。ブース内には、ドゥカティ用のフレームやスイングアームが多数展示されていました。いやー、アルミフレームやスイングアームは、信じられないほど薄い素材で構成されていて、その造形も複雑でした。なのに裏側に、格子状の補強がない。とくにドゥカティはエンジンをフレームと考え、そこから生えるようにフロントフレームとスイングアームが装着されていて、いわゆるフレームという考え方とは違うのかもしれませんが…アルミキャスティングの製造技術はもちろんですが、各パーツが求められる機能やカタチも変化&進化してるんだなぁ、と実感しました。
またVRMはサスペンションブランドのマルゾッキを傘下に収めていて、ドゥカティ・ムルティストラーダV4&V4Sが採用する、自動車高調整機構付きの電子制御サスペンションのほか、トライアンフのスピードツイン1200用のサスペンションなど両社とのパートナーシップも発表されました。マルゾッキは2021年に、中国ブランドQJ Motorと設立した合弁会によって、中国でのサスペンション開発および製造も行っているようです。
ということで、細かなトピックス紹介もこれで終わりです。お付き合い、ありがとうございました。あとは会場を彩った女性陣を紹介して、お開きといたします!
(文・写真:河野正士)
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