■レポート・写真:河野正士
EICMA2024速報、第二弾は、主に海外ブランド編です。パンデミック後、プロモーション戦略を方向転換せざるを得なかったいくつかのブランドは、EICMA参加を取りやめたり、本社主導からイタリア支部へとショーの運営を移したりしていました。しかし今年は、久しぶりにEICMAに戻ってきたブランド、また本社主導へと運営が戻りブース規模を大きくしたブランドが目立ちました。そしてそして、中国&インドの新興勢力のパワフルさは、今年も続いています。新興といっても、すでにバイクユーザーから大きな支持を得て確固たる地位を築いているブランドもありますから……なかでも勢いとクオリティを高め、すでに風格すら感じ始めた中国ブランドも紹介します。
■BMW Motorrad
まずはBMWから。パンデミック後、初の出展になります。そのプレスカンファレンスで発表されたのは、なんと「Concept F450GS」。ある筋から小排気量のアドベンチャーモデルが発表されるかもしれない、という事前情報を得ていたので、G310アドベンチャーの派生もしくは限定モデルかな、と高を括っていたので、驚きました。排気量450cc並列2気筒エンジンを搭載。ピンと足が長く、アドベンチャーと言うより、エンデューロマシンやラリーマシンに漂うスプリンターのオーラが漂っていました。
関係者にちょっとだけ話を聞いたところ、エンジン開発は社内だけど、量産はG310シリーズと同じインドのTVSになると思う、と。んん、量産? と聞き返すと、まぁ今は、これ以上言えないよ、とのことでした。
また限定発売予定のスーパーバイク世界選手権王者・トプラック選手が駆ったファクトリーマシンレプリカの「M RR WSBK CHAMPIONS EDITION 2024」も発表。新しく2つ目を採用した「S1000R」も展示されていました。
■Royal Enfield
EICMAプレスデイの前日の夜、ミラノ市内のイベントホールで、新型電動バイク「Flying Flea(フライング・フィラ)」を発表。開発を取り仕切ったのは、かつてドゥカティ・スクランブラーを生み出し、その後にロイヤルエンフィールドに移籍したマリオ・アルヴィージ。Chief Growth Officer of Electric Vehicles(要するに電動バイク部門の開発責任者)という肩書きが付いていたので、これから電動バイクがどんどん開発されていく、ということだと思います。そしてこの「Flying Flea」、コンセプトバイクのように見えますが、市販予定車です。
またEICMAプレスデイでは、スクランブラースタイルの新型車「Bear650(ベアー・ロクゴーマル)」と、650クルーザープラットフォームを採用した「CASSIC650(クラシック・ロクゴーマル)」も発表されました。
■Ducati
プレスデイ初日のトリを飾ったのはドゥカティ。新型V2エンジンを搭載した「パニガーレV2」と「ストリートファイターV2」を発表しました。バルブスプリングシステムと可変バルブタイミングシステムを採用、排気量は890cc。ドゥカティは、史上最軽量&コンパクトなV2エンジンと称しています。しかも前モデルに比べ17kgも軽量化を実現。17kgですよ! それを表現するために、彼らはプレゼンテーションに、荷物をパンパンに詰めた大きな旅行用トローリーケースを持ちだしてきて、これくらいの重量を取り除きました、と。このドゥカティCEO/ドメニカーリさんの笑顔を見てください。自信満々です。
ドゥカティ・ブースには、DWPと称してEICMAに向けてカウントダウン的に2025年モデルの新型車を発表した「スクランブラー・ドゥカティ10周年記念RIZOMAエディション」「スクランブラー ICONダーク」「スクランブラー フルスロットル」「ムルティストラーダV4パイクスピーク」も展示されていました。
■KTMグループ(KTM、ハスクバーナ、MVアグスタ)
KTM、ハスクバーナ、MVアグスアタ、GASGASとビッグファミリーのKTMグループがEICMAに戻ってきました。正確には、パンデミック後もイタリア支部が参加していましたが、今年は本社主導。彼ら曰く”フルパワー”での参加となりました。プレスカンファレンスは開催していないものの、EICMAに向けて発表してきた2025年モデルを展示していました。KTMは並列2気筒エンジンのスーパースポーツ「990 RC R」、同型エンジンを搭載するストリートファイター「990 DUKE R」、排気量拡大とともにAMTやアドバンスドレーダーシステムの採用などKTMファミリーでもっとも先進的な「1390SUPER ADVENTURE S EVO」、それと同型エンジンを搭載したツアラー「1390 SUPER ADVENTURE GT」、新型フレーム&スイングアームの採用やヘッドライト周りのデザイン変更にくわえラリータワーやTFTディスプレイを新たに搭載した「390 ADVENTURE R」です。
ハスクバーナは、社名をハスクバーナ・モーターサイクルからハスクバーナ・モビリティに変更。EICMA直前にフランスでメディア試乗会を開催(これにも参加したのでレポートは後日!)した新型車「Vitpilen 801」とともに、KTMのデザイン関係を取り仕切るデザイン会社KISKAがデザイン&制作した「Vitpilen 801 Custom」も展示しました。
MVアグスタは世界限定300台の「F3 COMPETIZIONE」のほか多数モデルを展示していました。
■トライアンフ
トライアンフもプレスカンファレンスは無し。事前に発表されていた、クラシックロゴを中心にモダンクラシックなディテールを採用した「ICON Edition」の各モデル、「TRIDENT660」、スポーツの名前をプラスしてロードスポーツ的なスタイリングを採用した「TIGER SPORT800」、「SPEED TWIN900&1200」を展示しました。
■ピアッジオ・グループ(モトグッツィ、アプリリア、ピアッジオ、ベスパ)
相変わらず巨大なブースを構えるピアッジオグループ。真ん中に大きなステージを構えて、ステージコンテンツも連発させています。モトグッツィはアドベンチャーモデル「Stelvio Duecento Tributo」や「V7Sport」、アプリリアは「RSV4 Factory」や「Tuono 457」、ピアッジオの大型ホイールスクーターシリーズからは新型エンジンを搭載した「Beverly310S」などが展示されていました。
■FANTIC
EICMA開催前日に、会場内のイベントスペースでプレスカンファレンスを行ったファンティック。エンジン開発&製作のグループ会社モトーリ・ミナレッリが新たに開発し、ミナレッリ史上初となるDOHCを採用した排気量500ccエンジンを搭載した各モデルを発表。そのエンジンは、ファンティックのスポーツモデル「IMORA」やキャバレロ「500ccシリーズ」に搭載されます。イタリアンブランドであることは我々の強みのひとつなんだとCEOのマウリツィオ・ロマン氏が語り、またミナレッリのジェネラルマネージャーであるヴィットリオ・フィリッパス氏はコンパクトかつ広い回転域で効率よくパワーとトルクを生み出すために初の自社DOHCエンジン開発に取り組んだと語ってくれました。
■CFMOTO
ここからは元気の良い中国ブランドを紹介。まずはCFMOTOです。KTMグループである同社は、KTMとジョイントベンチャー企業を立ち上げ、エンジン開発や製造を行っています。KTM&ハスクバーナの並列2気筒系エンジンの一部は、そのジョイントベンチャーによって開発&製造されています。同時に彼らは、自分たちのブランド用にニューモデルを開発&販売しています。とくに四輪バギーではトップブランドですね。昨年のEICMAで排気量675cc並列3気筒のコンセプトエンジンが発表されましたが、今年はそれを使ったプロダクトを発表しました。それがスーパースポーツの「675 SR-R」と、ネイキッドモデル「675 NK」です。また会場では排気量1000cc90度V型4気筒のコンセプトエンジンも発表。カウンターローテーティングクランクシャフト(要するに逆回転エンジン)を採用。エンジン単体で61.5kg、154kW@14,500rpm、114Nm@12,500rpmとのこと。3気筒エンジンの例があるので、これも来年プロダクト化か? と期待が高まります。またKTMグループにエンジン提供していることから、この並列3気筒&V4エンジンが、今後グループ内でどのように活用されるかも想像が膨らみます。
■KOVE
300世界選手権での勝利や、ダカールラリーでの活躍など、いきなり世界選手権のトップに躍り出てきたKOVE。会場での注目度も、非常に高いですね。会場を回っている各メーカーの開発陣、メディアの人たちが、CFMOTOに次いで、KOVE見た? と聞いてくる数が多いです。そのニューモデルが並列2気筒エンジンを搭載したスーパースポーツモデル「350RR」、そして並列4気筒エンジンを搭載する「450RR Pro」です。欧州で知名度を上げている中国ブランドはどれもそうなんですが、欧州や日本のメーカーのタッチで車体を仕上げ、完成度とデザイン力を上げている感じ。なかでもこのKOVEは、スタートから間もないブランドであるにもかかわらず、そのクオリティと知名度は非常に高い。CFMOTOとともに、今後どのように展開していくのか大いに気になるブランドです。
■日立アステモ
海外ブランドではないのですが、SHOWA時代から数えて、今年でEICMA参加10年目となる日立アステモも紹介します。日立アステモは、このタイミングに合わせて新しいロゴデザインを発表。ブース詳細は後日展開しますが、まずはそのロゴと、SHOWA&NISSINとの共同開発による新しいサスペンション&ブレーキシステムのコンセプトのお話を聞いてきました。
このコンセプトモデルは、倒立フォークのボトムケースから伸びる一本足でブレーキキャリパーを連結。ボトムケース下の空洞とブレーキキャリパーにデザインした冷却ファンで冷却効果を向上させているとのこと。ボトムケース&キャリパーにデザインされたロゴは、切削加工によってデザインされています。NISSINのロゴが、SHOWAと同じ書体になり、SHOWAと同じ書体のロゴも若干変更されているの、分かりますか?
というわけで、駆け足でしたが2日間のEICMA2024速報はこれで終了です。これから、また会場に行ってきます!
(レポート・写真:河野正士)