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バイク承前啓後






 

高山さんのバイク承前啓後 第52回 ホンダ二輪車の読み方とは?  その2

 
 二輪製品のネーミングは、外観を見る限り全てといってよいほど、ローマ字表記です。カタログをみても、ローマ字表記がメインで、日本語はサブとして扱われています。ホンダの広報資料(発表リリースまたは、プレスインフォメーション)では、製品名称を正しく伝えるために、カタカナ表記を多く使っています。時として、広報資料ではローマ字や数字の読み方を括弧書きで紹介する車種があります。
 では、年代順に括弧書きされた製品名を紹介させていただきます。

MB8
・1980年 MB8(エムビー エイト) 2ストローク単気筒80ccエンジンを搭載したスタイリッシュなロードスポーツ。1979年に発売された50ccのMB50の車体をベースとしています。MB50のタンクにあるロゴは「MB-5」なので、エムビーファイブと呼んでいるひとが多かったのです。翌年の1980年、MB50のアップハンドル仕様が追加され、こちらの車名はMB5になりました。推測ですが、50ccと認識されるネーミングを嫌ったのかもしれません。その兄貴分の80ccがMB8(エイト)になりました。

MB50
1979年 MB50 。
ドリームCB72
1980年 MB5。MB5は、読み方を紹介されていませんが、エムビーファイブと読むのが一般的でした。

DJ1
・1985年 DJ・1(ディジェイ・ワン) アクティブな若者向けの50ccスクーター。

RC30
RC30
・1987年 VFR750R(RC30 アールシーサンマル) ※読み方は紹介されていません 発表リリースでは、正式な車名であるVFR750Rのみ紹介しています。カタログではRC30をメインに扱っています。RC30は型式番号ですが、開発陣は響きの良いこの番号をあたかも車名のように訴求したかったのです。現在、熊本製作所内で展開されている「RC30 リフレッシュプラン」をみても分かるように、正式な車種名よりも著名になりました。サンマルが広く浸透しています。https://www.honda.co.jp/motorcycle-refresh-plan/

G
・1989年 G´(ジーダッシュ) フロントにディスクブレーキを採用したスポーティーな50ccスクーター。
ベンリイCB92
・1990年 ZOOK(ズーク) 都会派ヤング向けのトレンディなニューモデルとして登場。広報リリースには、車名の由来も紹介されています。ZOOK(ズーク)……「ーずく」(ーの傾向が生じる。)からヒントを得たホンダのオリジナル造語。当時のホンダ社内報では、ホンダのお店は活気づーく、街は色づーく、営業マンは元気づーく、他社は怖じ気づーく、そして発表日は二月づーく(19)日にするなど、ユニークなスタイリングに合わせたネーミング戦略も紹介されています。

EZ-9
・1990年 EZ-9(イーズィーナイン) 2ストローク単気筒90ccエンジンを搭載したオートマチックのオフロードマシン。前年1989年の東京モーターショーに参考出品。当時のプレスブリーフィングの映像を検証すると、EZ90(イーゼットキュウジュウ)の車名でした。正式発表時には、上記の車名に統一されました。カタログには、読み方の記載はありません。
CUV ES
・1994年 CUV ES(シーユーヴィ イーエス) ホンダ初の電気スクーターとして登場。官公庁などにリース販売されました。CUV ESの語源は、Clean Urban Vehicle Electric Scooterの頭文字をとったもの。

CUV e
・2024年 CUV e:(シーユーヴィ― イー) 40年ぶりにCUVのネーミングが復活。インドネシアで販売される電動スクーターです。
マグナ50
・1995年 マグナ50(フィフティ) 50ccでも立派なアメリカンバイクです。名前もアメリカンっぽく、フィフティと名付けました。
タンクのロゴには、FIFTYの文字が確認できます。

X4
・1997年 X4(エックスフォー) 4気筒1300ccエンジンを搭載したカスタムスポーツで1997年の大ヒットモデルでした。間違ってもペケヨンと読まれたくなかったのかもしれません。
ZOOMER
・2001年 ZOOMER(ズーマー) 4ストロークエンジンを搭載した50ccネイキッドスクーター。広報リリースには、車名の由来が紹介されています。造語で、所有する人のライフスタイルをさらにアクティブに、クリエイティブに拡大(ZOOM)してくれるツールとして、また既存のスクーターの概念を拡大(ZOOM)する新しい生活ツールの意味合いからネーミングされた。

BENLY e:Ⅰ
・2019年 BENLY e:Ⅰ(ベンリィ イーワン) BENLY e:Ⅱ(ベンリィ イーツー) 2020年に発売されたビジネスユースの電動スクーター。写真は原付1種のe:Ⅰ:(コロン)は読みません。
EM1e:
・2023年 EM1e:(イーエムワン イー) パーソナルユースの電動スクーター。

【RRからRR-Rまでの変遷】

 
 ホンダで「R(アール)」はレーシングを意味し、ワークスマシンのRCレーサーなどに使われてきました。一般市販車でRが車名末尾に付けられたのは、1981年のCB1100Rが広く知られています。
 その後、1983年に「CB」のスーパースポーツバージョンと言える「CBR」ブランドが誕生しました。CBRの第一弾はCBR400Fでした。

CB1100R
・1981年 CB1100R ロードレースのベースマシンとしても高い支持を得た輸出専用車。
CBR400F
・1983年 CBR400F 車名の末尾には「F」が付けられました。

 
 そして、このCBR400Fの進化版が1986年のCBR400Rです。

CBR400R
・1986年 CBR400R フルカバードスタイルは、欧州では支持を得ましたが、日本ではおとなしいデザインのため低調気味でした。激戦区の400ccロードスポーツ市場に投入したのはフルモデルチェンジしたCBR400RRです。RからRRになりました。
CBR400RR
・1988年 CBR400RR(シービーアール ヨンヒャク ダブルアール) 当時のカタログでは、「ダブルアール」と読み方を紹介しています。

CBR400RR

 
 CBRシリーズでは、CBR250RRやCBR900RRなどのように、究極のスーパースポーツモデルには「RR」が付けられていきました。以降、CBR1000RRやCBR600RRなどでも、RRはダブルアールとして浸透していきました。
 転記が訪れたのは、2009年頃と記憶しています。本田技研の広報部で私が担当した2009年のCBR1000RRの報道関係者向け説明会では、開発者は従来のダブルアールから「アールアール」に読み方を変更しました。欧州では、ダブルアールとは言わずアールアールと言うのが一般的というのが理由です。日本では、ダブルアールが長く使われていましたので、広報資料には読み方までは記載しませんでした。ダブルアールを否定するものではなく、あくまでもメーカー側の読み方を示した形でした。
 その後、CBR1000RRは飛躍的に進化を遂げ、2020年にCBR1000RR-Rが誕生。RRにもう一つRが付くという究極形です。この車種で初めて読み方が広報リリースで紹介されました。

CBR1000RR
・2009年 CBR1000RR ※広報資料に読み方までは記載に至らず。
CBR400RR
・2020年 CBR1000RR-R FIREBLADE (シービーアール1000 アールアールアール ファイアブレード)

 
 車名の読み方、呼び方は、これまで使っていたものでも良いと思いますが、混乱しないようにメーカー側が決めたものがあることも知っていただければと思います。
 将来、AIにナレーションを任せる際には、正しい読み方を伝えてくださるようお願いいたします。

【四輪製品編】

 
 四輪製品は、テレビCMで紹介される機会が多かったので、読み方はある程度浸透していると思います。しかしながら、古いクルマの場合は知る機会が限られますから、読み方に迷いそうな車種を紹介いたします。

1300 77
・1969年 1300 77(センサンビャク セブンティセブン) 強制空冷方式にこだわった4気筒1300ccエンジン搭載の4ドアセダン。77はシングルキャブレターモデルで、最高出力は100PS。4連キャブレターの高性能モデル、1300 99(センサンビャク ナインティナイン)の最高出力は115PSを発揮しました。報道に配布された写真には、車名が記載されていますが、読み方は記載されていません。
1300 クーペ7
・1970年 1300 クーペ7(センサンビャク クーペ セブン) 流麗なスタイリングのクーペタイプが追加されました。7はシングルキャブレター、9は4連キャブレターを採用。エンジンは1300と同じ強制空冷仕様です。

145
145
・1972年 145(イチヨンゴ) / 145 クーペ(イチヨンゴ クーペ 写真右) 強制空冷方式から水冷方式に変更し、排気量を1450ccに高めたモデル。1450(センヨンヒャクゴジュウ)ではなく、145というシンプルな名称を与えました。

STEP WGN
・1996年 STEP WGN(ステップ ワゴン) 解説する必要はないほど読み方は浸透していると思いますが、クルマに関心のない人にとっては、WAGONの略称であるWGNを正しく読むことができないかもしれません。WGNと略したことについては、ホンダ発行資料には記載されていません。
クリエイティブ・ムーバー第3弾として登場しましたので、車名ロゴにも斬新な感覚を取り入れたものと思われます。初代モデルは、「こどもといっしょにどこいこう」のキャッチフレーズで大ヒットしました。
S660
・2015年 S660(エス ロクロクマル) 広報リリースでは、読み方を丁寧に紹介しています。660ccエンジン搭載の軽四輪オープンスポーツカーです。

 
 ホンダのスポーツカーの歴史は、1963年に発売したS500(エス ゴヒャク)に始まります。
 1964年に排気量をアップしモデルチェンジしたS600(エス ロッピャク)を発売しました。その後、1966年発売のS800(エス ハッピャク)へと進化しました。この3台は若者たちの憧れのスポーツカーとして人気を博しました。

S600
・1964年 S600

 
 S500はエスゴ、S600はエスロク、S800はエスハチの愛称で呼ばれ、広く浸透していきました。S660は、ホンダスポーツのDNAを受け継ぎますから、読み方にもこだわったのだと思います。


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2024/12/24掲載