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レース・イベント

■文・写真:青山義明 ■協力:Let's レン耐!http://rentai.takuma-gp.com/

1998年にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされている元WGPライダーで、青木三兄弟の次男の青木拓磨を再びバイクに乗せようという企画から発展した一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)によるパラモトライダー体験走行会。その初回開催から3年、バイク事故などで障がいを抱えてしまい、2輪車を諦めたものの、再びバイクに乗る機会を得た延べ120名を超えるパラモトライダーが輩出されている。その中からライダーとして活動を行っていくメンバーが選んだのが、青木拓磨が主宰する「Let’s レン耐!」である。

「Let’s レン耐!」は、そのネーミングからも分かるように、レンタルミニバイクで行われる耐久レース。バイクだけではなく革ツナギ等の装具もレンタルが可能という、レース初心者にとって非常に敷居の低いレースである。レース自体も途中で大きなハンデがつけられたり、ミニゲームが課されたり、単純に速さを競うものではなく、仲間とワイワイと楽しくレースをエンジョイできればという趣旨で行われているシリーズである。

 そんなレン耐に参戦をしているのが、障害のあるパラモトライダーでチームを編成している「チームSSP(サイドスタンドプロジェクト)」である。チーム名にある通り、SSPが「障がい者にもバイクの楽しさを」と展開しているパラモトライダー体験走行会で出会い、そこからステップアップをしている面々である。パラモトライダー体験走行会で知り合ったメンバーで「一緒にレースに出たい」という話が盛り上がり、このSSPの活動の元となった青木拓磨が開催しているレンタルミニバイクでの耐久レース「Let‘s レン耐!」をターゲットとし、昨年末から出場している。

Let‘s レン耐!
走行中はパラモトライダーと認識できるように、蛍光ベルトを装着する。オフィシャルや周囲のライダーからの識別が可能で、ピットロード脇でバイクへの移乗をサポートするスタッフも自主的に蛍光ビブスを着用している。

 レン耐はマシンのレンタルが基本だが、車両の持ち込みも可能となっている。「チームSSP」は、下半身での操作ができないライダー用にシフトペダルを直接動かすハンドドライブユニットを組み込んだ車両の持ち込み参戦となる。昨年12月に開催されたハルナ4時間耐久に挑戦以来、2月の筑波4時間耐久、3月の明智4時間耐久、4月と5月のハルナ150分耐久と立て続けに参戦を続けている。また、その3月の明智戦ではクラス優勝という結果も残している。

 そんな「チームSSP」がついにレン耐の長時間耐久レースのひとつ、8時間耐久レース「明智8耐ふぇす」に参戦することとなった。今回は、右大腿切断の2名(まがり美和さん、丸野飛路志さん)に、脊椎損傷の完全麻痺という障がいを持った2名(関口和正さんと古谷 卓さん)というこれまで「チームSSP」として参戦してきたパラモトライダー、そして元GPライダーで事故により足に障がいを持っている小林大さんが久しぶりに合流。さらに普段からサーキットで走行を楽しみ、鈴鹿でのパラモトライダー体験走行会にも参加している樋栄 聖さんもチームに参加した。樋栄さんは鈴鹿8耐予選の際の事故で脊椎を損傷しており、時折SSPの走行会に参加しているひとり。そして助っ人として、バイクレースを楽しむ2名、鈴木俊勝さんと大野豊和さんが加わった。この2名は、ともに足首に障がいを持っている。ただバイクへの乗車にも走行にも支障がないので、チームの中でも特にサポートを必要としないメンバーである。

Let‘s レン耐!
Let‘s レン耐!
パラモトライダーの乗降サポート、ピットロードのバイク押し、さらにサインボード掲示とサポートスタッフにとってもなかなかハードな8時間となった。右写真は走行を終えた鈴木さんとミニゲームをこなす大野さん、助っ人ライダーの2名も大活躍。

 助っ人ライダーの鈴木さんは、モーターランド鈴鹿で走行をしている際に小林大さんからスカウトされたという。左足のかかとを仕事中の事故で損傷し、左足首の動かしに支障がある。浅野さんもバイクレース事故で両足を骨折したことで、足首の可動域が狭いという。SSPのパラモトライダー体験走行会に見学に行った際に、この活動を聞いたという。レン耐にはすでに5年以上参戦をしており、興味もあって参加したという。

レン耐主宰の青木拓磨
今回は、レン耐主宰の青木拓磨も、自身のベストタイム更新をもくろみ、飛び込み参戦し103周を走行した。その中では、なんと小林大選手との元WGPライダーのツーショットも観ることができ、「チームSSP」のメンバーが歓喜するシーンも。

「チームSSP」は、パラモトライダー8名に、ボランティアスタッフ6名にメカニック2名という体制で今回の8時間耐久レースに参戦することとなった。そして鈴鹿8耐を1週間後に控えた7月30日(日)、岐阜県恵那市にある明智ヒルトップサーキットで「明智8耐ふぇす」が開催となった。この明智8耐は午前7時半にスタートし、午後3時半にレースは終了というスケジュールで、本場の鈴鹿8耐のようなナイトセッションはない。

パラモトライダー
脊椎損傷を負ってしまうと、体温調整などが厳しく、この時期の走行については非常に注意が必要、ということで、「チームSSP」のピットにはスポットクーラーや冷たい飲み物を完備してライダーの体調にも気を遣う。
レン耐
樋栄さんは自身が普段から使用しているグロムを持ち込み、「チームSSP」が持ち込んだ車両との2台の車両を使用。トランスポンダ(計測器)を入れ替えて、走行を重ねた。

 連日各地で猛暑日を記録している7月の最終週、この日の明智も好天に恵まれ、気温はどんどん上昇し、猛烈な暑さの中での走行となった。体温調整の難しい脊椎損傷ライダーも抱えている「チームSSP」は、ライダーの担当を前半と後半に分け、さらに助っ人ライダーの走行負担を多くして、という作戦でこの一戦に臨む。前半4時間をどこのチームよりも多く走行をし、トップでレースを折り返す。そして転倒もなく最終的に8時間で414周を走りきり、クラス2位でチェッカーを受けた。

Let‘s レン耐!
Let‘s レン耐!
レン耐では、ピットロード入り口でマシンを降りて、ピットロードは手押しし、ピットロード出口でバイクにまたがり、エンジンを掛けてコースへと出ていくこととなる。ピットロード入り口には、「チームSSP」専用のバイク降車スペースが設けられ、待ち構えているサポートスタッフの補助でライダーがバイクから降りる。

Let‘s レン耐!
Let‘s レン耐!
次のライダーはピットロード出口近くで待機。サポートスタッフが押してきたマシンにここで乗車し、スタッフに押してもらってコースインしていく。その際にはピットにいるほかのチームからも拍手が自然と沸き起こるようになっていた。

残念ながらクラス優勝とはならなかったものの、「チームSSP」の丸野さんは「非常に暑かった。それでもライダー、スタッフともに体調を崩すこともなく、そして転倒もなく8時間を完走できたことは良かった。なにより、青木選手と小林選手の2人の走りを見ることができて本当に楽しかった。ありがとうございました。」とコメントしてくれた。これからも「チームSSP」のレース参戦は続くそうだ。
(文・写真:青山義明)

レン耐!
8時間を走り切ることができた「チームSSP」。今後もレン耐を中心にレース活動を行っていくのだが、残るレン耐長時間耐久レースといえば、秋ヶ瀬24時間耐久だが……

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2023/08/09掲載