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レース・イベント

障がい者チームが 「レン耐!」積極参戦を継続中
一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)の「パラモトライダー体験走行会」で、ライダーとして再びバイクに乗る楽しみを堪能した障がい者が、ミニバイクの耐久レースに参戦を目論み、チームを組んでいる。昨年末に開催されたLet's レン耐!ハルナ戦に続き、今回は2月12日(日)に開催されたLet's レン耐!筑波戦に挑戦した。
■文・写真:青山義明  ■協力:Let's レン耐!http://rentai.takuma-gp.com/




あの世界レベルのトップライダーとのバトルも?

 バイクの事故や病気によって、バイクに乗ることをあきらめていた人たちに希望を与えている「パラモトライダー体験走行会」を主催しているのは、ロードレース界のレジェンドである青木三兄弟の三男・治親が代表理事を務めるSSP(サイド・スタンド・プロジェクト)。そのSSPが主催しているパラモトライダー体験走行会では、障がいに合わせて運転操作を加工したバイクをSSPが用意し、ボランティアスタッフが車両を支えることで、その障がいをカバーし、バイクの楽しさを再び実感できる機会となっている。
 パラモトライダー体験走行会は2020年から月に一回ほどの頻度(冬季を除く)で開催してきており、初開催から丸3年、これまでに数多くのパラモトライダーを輩出してきている。SSPとしては他にも神奈川県にある箱根ターンパイクを借り切って、免許を返納した障がい者の公道再デビューの場も提供してきている。
 

「サイドスタンドプロジェクトから始まったメンバーですが、ライダーだけでも走れないし、サポートしてくれる方がいて初めてできるチームですが、それを今日もしっかり感じさせてもらいました」と、前回はライダーとして参加し今回サポート部隊に加わりチーム監督を務めたのは、全日本選手権250ccクラスの元チャンピオンで1987年の日本GPでは優勝した小林 大さん。

 
 このSSPの活動を経験し、「もっとバイクに乗りたい」というパラモトライダーと、彼らを「もっと支えたい」というSSPの活動を支えるボランティアスタッフたちが独自にバイクレースに出場している。その舞台が、同じ青木三兄弟の次男・拓磨が主催するLet’s レン耐!(Let’sレンタバイク耐久レース)である。
 「Let’s レン耐!」は、レース参戦することへの高いハードルとなるバイクを貸し出すことで気軽にレースを楽しもうというコンセプトのミニバイクレースである。車両はエイプ100~グロム125といったミニバイクをレンタルするのはもちろん、スーツなどの装具も貸し出しをしている。もちろんレース初心者向けの初心者講習会も同日に開催されており、まさにヘルメットと身体ひとつで参戦が可能な、極めて簡単にレースができる場として今年で19年目となるレースシリーズである。日本各地で年間38戦も開催しているのも特徴のひとつで、仲間と時間が合えばいつでも参戦できるというところも魅力のひとつである。
 

今回のレン耐では、昨年Moto2クラスでタイトル争いを繰り広げた小椋藍選手も参戦。世界を走るライダーとの一戦ということで会場は大いに盛り上がった。

 
 レン耐を主催している青木拓磨も、1998年のテストの際の事故により車いす生活を余儀なくされている。しかし、現在は4輪ドライバーとして活躍しており、また、SSP専属パラモトライダーとして、実際にパラモトライダー体験走行会にも参加している。さらにSSPのハンドドライブユニットを組み込んだ車両で、レン耐の場で実際に走行をしている姿を見せてもいる。
 体験走行会を通じて意気投合したパラモトライダーたちが、実際にグロムを購入し(レン耐では持ち込み車両の参戦も可能)、SSPで使用しているシフト操作をハンドル側で操作できる加工を施したハンドドライブユニットを組み込んでレン耐の「1グロム125クラス」に参戦している。そして昨年末の12月18日(日)に開催された東日本第27戦「RSタイチCUP Xmasレン耐ハルナ4時間耐久」でレン耐デビューした。

 「チームSSP」として2戦目となる2月12日(日)に開催された『SEV杯 Let’sレン耐4時間耐久&90分耐久』には、ハルナ戦で参戦したメンバーである、古谷 卓さん(脊髄Th.12損傷の下半身完全麻痺)、丸野飛路志さん(右大腿切断)、まがり美和さん(右大腿切断)の3名に、新たに関口和正さん(胸椎Th9損傷の下半身完全麻痺)を加えた4名で4時間耐久レースに参戦した。
 またパラモトライダーのサポートを行うヘルパーは前回2名が参加したが、今回は9名が参加。チーム名は、この面々を引き合わせたSSPから取って「チームSSP」となり、「SSP」からもじった「559」をゼッケンとして登録している。
 

この日の筑波サーキットTC1000では、初心者90分耐久と4時間耐久の2レースを開催。4時間耐久では例年より若干少ない全27台が参戦した。

 
 そして迎えたチームSSPレン耐参戦2戦目となる今回。ライダー&ヘルパーは前泊してチームとしての決断力も増量しての参戦となった。今回もピットロードは手押しというレギュレーションとなるため、ピットロード入り口でパラモトライダーを下ろし、バイクを受け取ったヘルパーが手押しでピットロード出口側まで運び、次のパラモトライダーを乗車させて送り出す。

 当日は、春先を思わせる暖かい一日となった。レン耐本戦を前に午前11時10分から20分間の練習走行があり、参戦するパラモトライダーの確認と、ヘルパーの作業確認をした後、午前11時50分にレースはスタート。レン耐はホームストレートにマシンを並べ、その反対側からライダーが走り寄ってマシンに乗り込むル・マン式スタートとなっているが、チームSSPでは、スタートライダーは先にマシンに乗車し、ヘルパーがライダーの代わりにマシンに走り寄って、他車のスタートを見届けてから発進させ、接触などのないようにライダーを送り出してレースをスタートしていった。
 

車両はハンドドライブユニットの装着。シフト操作はステアリング左側のボタンを使う。今回はパラモトライダーの膝の曲がり具合に合わせるために急きょシートをかさ上げしている。

 
 今回の筑波では、なにかあった場合にパラモトライダーとして認識できるようにということで、反射安全ベストを装着してもらうということでの参戦となった。逆にヘルパースタッフもパラモトライダーを見つけやすいというメリットもあり、ピットインなどの指示も的確に出せて、ヘルパーの数も多かったことからライダー交代はスムーズに行うことができた。8周から16周前後で各ライダーが交代をしていく。
 
 

ライダー交代は他のチームの邪魔にならないように、ピットの入り口側と出口側の広いスペースを使用。ヘルパーがバイクを受け取り、ピットロードを押して、出口側で次のライダーを乗せスタートの補助も行う。

 
 順調に走行を重ねていたものの、今回はまさかの転倒をしてしまう。レース折り返しを過ぎた午後2時直前、109周目を走行していた559号車の古谷選手が、TC1000唯一の左コーナーである2輪インフィールドのコーナーでコーナーを曲がり切れずオーバーランの上、転倒をしてしまったのだ。幸いにも古谷さんは転倒後すぐのタイミングでブーツを固定していたビンディングを外すことができた。また、反射ベストを着用していたこともあって、レースオフィシャルが迅速にコース上をFCY(コース全域でイエローフラッグ状態となること)とし、同時に救急車を発進させ、と筑波サーキットのスタッフの迅速な対応が取られ、他チームのマシンとの接触もなく、転倒した古谷選手も怪我もなく、ピットに戻ってきた。
 その後、559号車の修理に25分近い時間をロスしたもののコースに復帰。レース最終盤に再び古谷選手が搭乗し、無事にチェッカーを受けることができた。ダブルペリア方式のハンデもあり、正式結果としては215周を走行してクラス11位でフィニッシュという結果となった。
 

「今日に向けて体調も整えて、楽しく4時間を過ごすことができました。思うこともいろいろありますが(笑) 次も頑張りたいとおもいます」とまがり美和さん。
「コーナーの出口を見ていて、ふっと前輪の位置を確認したらフロントが滑ってしまって…。自分でビンディングを外して、座った状態で後続に手を振ってわかるようにしてました。次はこんなことのないように慎重に行きたいと思います」と古谷 卓さん。

 
 転倒後、主催する青木拓磨氏からは「今はまだレン耐を、参加しているみんなに認めてもらう時期なのだから」と少しお小言があったようだが、それでも、参加しているほかのチームからも「怪我がなくて良かったね」という声も掛けられており、周囲の理解も少しずつ進んでいっているようす。今後も健常者と障がい者の隔たりのない参戦が継続されていくことを期待したい。
(文・写真:青山義明、協力:Let’s レン耐!http://rentai.takuma-gp.com/
 

初参加となった関口和正さんは「走っているときに泣きそうになりました。4輪では走っていることがありましたが、違った視点ですごく新鮮でした。これからもレン耐にお世話になっていきたいと思います」と。
丸野飛路志さんは、今回は義足を外して参加。バランスがとりづらそうにも感じるが、本人はいたって普通に走行を楽しんだ様子。

 



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2023/03/06掲載