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レース・イベント

■第26回SSP@上尾 新規参加者を集めて バイクの楽しみをより多くの方へ
■文・写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクトhttps://ssp.ne.jp/




あの「青木三兄弟」の三男・治親が理事を務める一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が障がい者を対象に開催している『パラモトライダー体験走行会』。初開催からまる3年となる6月5日(月)、埼玉県上尾市にあるファインモータースクール上尾で、久しぶりに新規参加者のみを集めての開催となった。

 
 青木三兄弟の次男・拓磨を再びバイクに乗せたいという思いを、2019年の鈴鹿8耐のオープニングイベント、そして同年MotoGP日本大会プレイベントで実現した兄弟が、それに続けて展開を始めたのが一般の障がい者にも同様に、障がいがあってもバイクに乗る夢を追い続けるすべての人々を後押しするための活動『パラモトライダー体験走行会』だ。
 バイクの事故による脊髄損傷の元ライダーから、生まれながらや後天的な障がいでバイクに触れる機会のなかった未ライダーまで、障がいの内容も問わず対象を広げて活動を展開している。
 

多くのボランティアスタッフに支えられているSSPのこの活動。この笑顔が見たくて参加するボランティアも多数。毎回感動のシーンに立ち会える、素晴らしい体験の場と言える。

 
 この活動では、バイクもライディングギアもSSPが持ち込む。バイクについてはそれぞれの障がいに合わせてカスタムしていて、今回は転倒を防止できるアウトリガーを装着したKTMデューク250を使用した。参加者の障がいに合わせ、ハンドドライブユニットを付けたり外したりしながらそれぞれの走行をサポートしていく。もちろん、停止&発進時のタイミングでは、不安定になるバイクを支えるボランティアスタッフがカバーすることになる。
 今回参加となった5名はいずれもこの体験走行会初参加者。2名の視覚障がい者と事故による下半身不随、脊椎損傷、そして右足首の関節機能障害を持つ合計5名。会場は、埼玉県内で自動車教習所3校を展開しているファインモータースクールの上尾校。
 

 
 当日夏日を記録した上尾市周辺では、体温調整の難しい参加者もいることもあって、こまめに水分補給と休憩を挟みながら、アウトリガー付きの車両でバランス取りやブレーキの練習を重ね、無事に5名のパラモトライダーを誕生させることができた。各参加者はボランティアスタッフへの感謝の言葉を口にし、さらにそれぞれが「あきらめなければ」という言葉をかみしめながら、引き続き走行会参加の意欲を見せていた。不可能を可能にする機会は今後も続く。次回のSSP「パラモトライダー体験走行会」は7月10日(月)に三重県にある鈴鹿サーキットで開催される。
(文・写真:青山義明)
 

視覚障がいを持つ小泉 貴さん。網膜色素変性症を患い中学生のころから夜盲で、徐々に視野が狭まっていき40歳くらいには現在のような「光がわかる程度」という状態になっていたという。また聴覚も弱く補聴器も付けている。このSSPの活動には、以前この体験走行会に参加した参加者をリハビリテーションセンターで知り、「諦めないでやってみよう」と一念発起し、参加となった。「懐かしくバイクを楽しめました。この場に来ることができて本当に良かった。ただ、時間が短かった。その中でバランスを取ることに終始してしまったのはすごく残念です。次こそステップアップしていきたい」と語ってくれた。

 

伊藤祐希さんは、16歳からバイクに乗ってきていたものの、交通事故により四肢不全麻痺を負ってしまう。頸椎の損傷もあって体温調整は難しく、熱いや寒いといった温度の感覚がなく、排せつ障害もあるという。さらに右腕や右足の可動域も狭い。「バイクを諦め、他にもこのままいろいろなことを諦めていく人生なのかなぁ、と思っていました。でも、もしかしたら乗れるかも、ということでSSPに連絡を取りました」と言う。「諦めていた単車に乗ることができたのは、皆さんの力添えがあったおかげです。本当に感謝しかありません。自分の走りについては思っていたよりもできていなくて恥ずかしいという思いでいっぱいです。来年の箱根(箱根ターンパイクでのツーリング)には間に合うように頑張っていきたい」と新たな目標を持ってリハビリにも励んでいくそうだ。

 

細野直久さんは、16歳の時、バイクでの右直事故で、脊椎損傷(Th5)を負い、現在はわきから下が完全麻痺となっている。以来40年、バイクに乗れるかな? とサイドカーやトライクを検討してきたものの、このSSPの活動を知って、こちらにまず参加してみようということでこの日を迎えた。「40年ぶりのバイクは楽しかった。ただ感覚がよくわからないね、体格も当時と変わっちゃったし(笑) あれをやらなきゃこれをやらなきゃって頭で考えない方がうまくいくことがよくわかりました。今日はまず初回ということで、できないと思ってたことが、やればできるってことがわかったところで良しとします。やっぱり、人生諦めなければまだまだできるということを実感できました。それを実践している(青木)拓磨さんにことあるごとに教えてもらっていますが、まさにそうだな、と今思っています」と、次はステップアップしますとも早くも次回の走りを妄想中だ。

 

金子 聡さんは、網膜色素変性症を負って30歳を目前に生活に支障が出て、現在はほぼ全盲となっている。テントとシュラフをバイクに乗せて日本一周をしたこともあるという元ライダーだが、現在はサーフィンやセーリングといった活動をアクティブにこなしている。このSSPの活動をFacebookで見つけ、視覚障がいを持っていてもバイクに乗れるということで、参加した。「(視覚障がいを負って)失ったものの中で最も大きいのがバイクに乗れなくなったこと」と語る。「自動運転など技術の進化はあるけれど、死ぬまでバイクに乗れることはないんだろうなと思っていました」。そして、ついに再びバイクに乗る機会が実現したという。「30年ぶりに股下でドコドコと脈動するエンジンを感じることができました。まだしっかりアクセルを開けることができなかったですしシフト操作もできませんでしたが、今日は、ファーストステップです。これで満足して帰れるはずもありません。ステップアップして、いつかサーキットを走行したいです」。

 

竹内直紀さんは右足首関節機能障害という下肢障がいを持つ。乳児の頃に足首を骨折したことが原因で、現在も右足首の可動領域が制限されているという。SSPの活動を知ってゆくゆくはこの活動のボランティアスタッフとして手伝いをしたいということで、「まずは参加をしてみよう」と。これまで原付スクーターには乗車した経験があったがギア付きの車両は初めて。「思っていたようにはうまくいかないものですね。エンジンが大きくてトルクもあって難しかったですね。もう少しアクセルコントロールがうまく出来るようになりたいですね」。

 



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2023/06/22掲載