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試乗・解説

Honda Dax125 ホンダの新作・ファンバイク。 ダックス125は どれだけ楽しめるのか?
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:赤松 孝 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、SPIDI・Xpd・56design https://www.56-design.com/ 





 1969年、かのCB750FOURが発売された同じ年にダックスは生まれた。「しゃれたデザイン、全く新しい2輪車」と紹介されたそのバイク、ST50/ST70シリーズはダックスホンダと名乗る。ミニバンがないころ、セダンのトランクに搭載できるようフロント周りがごっそり外せて、折りたたみ式のステップ、ハンドルのほか、横倒しして積載してもガソリンが漏れない燃料キャップ等々、「クルマに載せて出かけて楽しむ」というライフスタイルを提案した、当時としてはゴージャスで遊び心を持ったバイクだった。ぱっと見、ステキな遊び心をそっくりそのまま受け継いだダックス125は、乗ったらやっぱり楽しかったのである。

 
 ホンダの125クラスは充実のラインナップだ。CT125、C125、モンキー125。グロムやCB125R、PCX、PCXハイブリッド等がある。詳しく見ると、前出3台は125クラスであるのと同時にホンダのヘリテイジモデルシリーズでもある。そこに加わったのがこのダックス125だ。鋼板プレスバックボーンフレームで造られたそのスタイルは、初代をモチーフにしたダックスフントスタイルとその製法までカバーしてみせた。

 モナカ状の鋼板プレスフレームの間にできた空間でありシート下に燃料タンク、バッテリー等々を収め、胴長スタイルをフレームで、足の短いスタイルを12インチホイールで醸し出したのはなかなか。同時に二人乗りを前提にした長いシートも胴長スタイルを補強するアイテムだろう。どこでも走れるんだ、というムードは往年のダックスホンダそのもの。
 エンジンは空冷OHC2バルブ単気筒だ。ボア×ストロークなどはグロム、C125、CT125、モンキーに搭載されるものと同じ。自動遠心クラッチとロータリーチェンジの4速ミッションを組み合わせることで、小型AT限定免許でも乗れるパッケージになっている。前後にディスクブレーキ、フロントのみに作動するABSを備えている。環境対策やこうした装備が標準化を求める現在のルールのもと、価格は44万円となっている。
 

 

毎日を冒険にしてくれる魔法。

 パールカデットグレーと呼ばれる今時な色のダックス。初代ジェネレーションには70年代を表すようなキャンディーカラー(パールミネラルレッドはそれ風だと思う)や、柄をあしらったシートカバーなどファンな要素を外観に取り入れていたダックス。初年度はこの2色だが、今後の展開から目が離せないと思う。

 モンキーよりは大柄だが、C125よりは全長もホイールベースも短い。ホイールサイズと車体サイズがしっかりとバランスするようにデザインされている。
 モンキーと同等のシート高のダックス。シートに座った両足の間からボディというか、ダックスのネック、そこにある黒いデカールはわんこの首輪だろうか。メーターはモンキーと同様の丸型LCD。スターターを回せばエンジンはすぐに目覚め、たとえば小春日和の気温ならすぐに走り出せるほど安定したアイドリングを刻み出す。ちょっと気構えながらシーソーペダルを踏み込み1速にシフト。アクセルを開ければスムーズかつするりと動き出した。
 踏み込んで2速、3速、4速と変速するミッション。アクセルをわずかに戻しシフトする左足のつま先を上手くシンクロさせれば、マニュアルクラッチ+マニュアルトランスミッションのバイクかそれ以上の操作感が楽しめる。トルクフルなエンジンがもたらす加速は充分なスピード感を楽しめる。各ギアで引っ張れば交通の流れは確実にリードできる実力だ。他の125モデルと同様、一般道の交通のなかで不憫な思いをすることはなさそう。
 

 
 ブレーキのタッチはフロントがやや硬め。ソフトな効き味だが、制動力は握力次第で引き出せるので不足は感じなかった。リアブレーキの踏力と制動力、タイヤのグリップを勘案したセッティングであること、ライダーの体重が後輪にしっかり載るライディングポジションでもあることもあり、ABSがないからといってロックしがちなこともなかった。

 面白いのは曲がり方。クルリとUターンができ、寝かす時の重みも感じない。大袈裟に言えば、モンキーと同じくらいクルリと曲がれる。左折のタイトターンも同様。よく曲がるから安心してちょっとした細い道でもスイスイといける。大通りの大きな交差点を曲がる時や60km/hで流れる道でカーブに遭遇してもそこではしっかりとした安定感がある。
 きっとステップの位置、幅とシートの着座位置、ハンドルバーのグリップの位置など乗り場所をしっかりと検討したのだろう。長めのシートでちょっと後ろに座っても安心感が薄れる傾向もなく、しっかりした印象があった。それもあって走り始めてから乗り終わるまで始終楽しめた。日常にダックスという乗り物がもたらす不思議な冒険感。楽しいな、これ。
 

 
 バイク乗りになる前、僕はチャリダーだった。夏休みにペダルを漕いで大間崎まで行ったことがある。キャンプ道具を仲間と分担して運びながら帰宅まで三週間の大冒険だった。峠の上りでは追い越してゆく原付の旅人が神に見えた。こっちはしたたる汗、悲鳴を上げる足(笑)。あの頃を思い出し、国道4号や東北のリアス式海岸を抜け、十和田湖から青森、恐山を越えて北海道みたいな風景になる下北半島へ。
 このダックスに乗っていると、そんな家財道具を積んだ大冒険を思い出す。荷物積んで、という妄想が広がるダックスだ。それならドンズバ、CT125だろ、という声が聞こえるし、その通り。でもダックスが持っている荷物を積んだら夏休み、という感じがいい。唯一心配なのは、当時は大小様々あったガソリンスタンドの多くが姿を消し、都市部以外では長いレンジを求められる。その時、3.8リットルという燃料タンク容量が唯一の心配の種なことを告白しておく。行くって決めてもないし、ダックス買ってもないのにね。それほど夢広がる乗り物でした。
(試乗・文:松井 勉、撮影:赤松 孝)
 

 

ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

ブラックとシルバーを使い分けた外観をもつエンジン。つま先、踵を使ってシフトチェンジをするペダル。

 

倒立タイプのフロントフォークを採用。フェンダーの形状は往年のダックスを思わせる丸みのある形状。フロントブレーキは2ピストンキャリパーを採用する。
角型スイングアームと2本ショックを採用するリアサスペンション。リアブレーキはシングルピストンキャリパーを採用。

 

エンジンから長いエキゾーストパイプを取り回したマフラー。丸穴のヒートガードが付く排気系。横方向への張り出しがある分、タンデムステップはステッププレートでステップ位置を少し外にだしている。
LCDモニターをつかうダックスのメーター。燃料系、速度、オドメーターなどを表示するほか、各種インジケーターランプが備わる。

 

しっかりとした剛性感のあるハンドルバー。左右のスイッチは必須項目のみで操作はシンプル。グリップの模様はモンキーと同じだ。

 

鋼板プレスバックボーンフレームが造る空間が広がるシート下部。燃料タンクなど必須アイテムが収まる。環境対応のための装備もあるため整然と並ぶレイアウトに開発の苦労もあったという。リアショックのアッパーマウントなど技術がつまっている。シートは上部がフラットで段差のない形状が特徴。

 

丸いテールランプ、ウインカーなどこちらもモンキーと同系のものが使われている。
ヘッドライトはLED光源を使う。被視認性は高い。

 

●Dax125主要諸元
■エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒 ■総排気量:123cm3 ■内径×行程:50.0×63.1mm ■最高出力:6.9kW(9.4PS)/7,000rpm ■最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/5,000rpm ■変速機:4段リターン ■全長×全幅×全高:1,760×760×1,020mm ■軸間距離:1,200mm ■最低地上高:180mm ■シート高:775mm ■車両重量:107kg ■燃料タンク容量:3.8L ■タイヤ(前・後):120/70-12 51L・130/70-12 56L ■ブレーキ(前・後):油圧式ディスク(ABS)・油圧式ディスク ■車体色:パールネビュラレッド、パールカデットグレー ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):440,000円


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2023/06/22掲載