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試乗・解説

Honda Rebel 1100 T バガーでバズる。 遠出にも良く効くT。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:赤松 孝 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、SPIDI・Xpd・56design https://www.56-design.com/




 レブル1100にフェアリングとハードケースのサドルバッグを装着したモデル、Tが加わった。
 ロー&ロングなスタイルを作る鋼管ダイヤモンドフレームに、1100㏄の直列2気筒を抱え込んだスタイルはレブルそのもの。そこに足された装備ですっかりいつもの空気感を変えてきた。その走りは? 快適性は? 街中では横幅が気にならないの? スリムなレブルを見慣れた人なら誰しも抱くその疑問、乗って試してみました。

DCTとMT、今回はMT車。

 昨年11月下旬にアナウンスされた2023年モデルのレブル1100。そこに含まれたバリエーションモデルがレブル1100T(以下レブルT)だ。ハンドルマウントの大型フェアリング、そして左右に樹脂性のサドルバッグを装備したツアラー仕立てで、レブルとは異なるオーラを放つパッケージが魅力的だ。

 スペックを見ると、レブルTはレブル1100に対して全長は同じ、全幅も同じ、全高はスクリーンを持つフェアリングの影響で1180mmと65mm高い。フェアリングやケースとそれらをマウントするステー類などにより車重は15㎏増え、6速MT車で238㎏、DCT車で248㎏となっている。また、価格は今回試乗した6速MT車が131万4500円、DCT車が142万4500円。ともにレブル1100よりもプラス17万6000円という設定になっている。
 その他はレブル1100と装備面では同様で、電子制御を使った各種デバイスをライダーの好みに合わせてチューニングすることも可能だ。路面状況や好みで3段階に選択可能なパワーセレクター、HSTC(トラクションコントロール)の介入度合いを強/通常/弱に加え、ユーザーモードではオフにする選択肢もライダーに与えられている。また、セレクタブルエンジンブレーキでは、エンジンブレーキの効き具合も強/通常/弱と3段階で調整できる。クルーズコントロールの装備を含め、スロットルバイワイヤーを装備しているバイクならではのデバイスを楽しめるのだ。

 今回試乗したのはMTモデルなので装備はしていないが、DCTモデルではシフトスケジュールを好みに合わせて変更できるのもレブルTの魅力だろう。
 ETC2.0車載器やグリップヒーターも標準装備するため、レブルTは何所にでも出かけられる準備を満たしたバイクということになる。
 

 

大トルクによる強靱な加速、そのまま。
豪快かつ軽快な走りを見せる市街地。

 低めの椅子に腰を下ろすようなレブルTのシート。ハンドルバーは肩から少し腕を拡げてグリップ位置にアクセスするような幅で、レブルシリーズでお馴染みなもの。ステップ位置はミッドでもフォワードでもなく、足が90度に曲がり、ステップにそれほど足の重みがかからないような設定だ。ステップ、座面、ハンドルバーの位置と相まって、全体にコンパクトなポジションという印象だ。腕も足も適度な曲がりが確保できる位置関係により、跨がった瞬間、一体感のあるレブルTとの世界が始まるのだ。

 それにレブルT最大の美点は、細身のタンク、細身の車体、この低い着座位置によって排気量の大きさ等からくる「ドーヤ!」という乗り手を大きさ、重さで驚かすような部分がないこと。250や500のレブル同様、気軽にバイクを楽しむ素地を持っている。もちろん、238㎏という車重は軽くない。ビッグバイクそのもの。それでも両足がしっかりと地面を捉え、取り回しに不安を持たせないのが嬉しいのだ。

 出発前、持ち味であるサドルバッグに荷物を入れてみた。開けるのは簡単だが閉じるのに少々コツがいる。ただ、オーナーとなればこれも慣れるはず。開閉にはメインキーが必要で、アンロックの位置でキー操作の必要がなく開閉ができると出先では便利だろう。デザインはさすが。フェンダーに合わせたトップのカーブ、小ぶりだが荷物を無造作に入れやすい点など、レブルの車体とマッチしているのがいい。このまとまり感はインハウスで車体込みで造形されている強みだ。

 アフリカツイン、ホーク11、NT1100と同系のエンジンを搭載するが、前者のスペックが75kWと104~105N.mなのに対し、レブルTのそれはちょっと控えめな64kW、98N.mとなっている。エンジンを始動したフィーリングは同系エンジンを搭載するモデルと同様の印象だ。そして排気音がレブル用にチューニングされているとはいえ、パワフルでパルス感があり、アクセルを少し開ければクルーザーとして、スポーツバイクとして納得の音を乗り手に届けてくれる。走りだすとそのスペック差が信じられないほどパワフルな印象に変わり始める。
 1速で発進するのもとても簡単。動き出せば、低めの回転でシフトアップをしてもギクシャクせずフレキシブルな回転フィールのままバイクを軽々と動かしてくれる。これはレブル1100と同様。15㎏の重量増をことさら意識することもなかった。
 

 

取り回しはレブルならでは。
快適性Tならでは。

 ハンドルマウントのフェアリングを持つため、左折の小回りなどタイトターンでのフロント周りの切れ込み感が少し出たかな、という程度に思えた。それは旋回初期の段階での話で、それを打ち消す方法はいくらでもあるから、まさに慣れの範疇。最初の30分で慣れてしまい、しばらくしたら忘れてしまった。
 市街地での取り回しにもフェアリングはそれほど気にならないものだった。レブル1100のネイキッドなライダービューよりはその分視界が蹴られている部分はあるものの、ロープロファイルにまとめたことで視野を遮られる感触は低い。そして両サイドのサドルバッグも幅を抑えたものなので、それほど気になる物ではなかった。

 ブレーキはそれほど鋭さを持っていない。これがレブルTに最初に乗った時の第一印象だ。トルクでスッと増速させるパワフルなエンジンを楽しんでしまうせいかもしれないが、もう少しフロントブレーキには効き味感を盛って欲しいところ。
 車高が低く後輪に近い位置にライダーがアップライトなポジションで座っているバイクだけにリアブレーキの制動力、制動感はしっかりあって、ペダルから踏んでいくと、後方から引っ張られるかのような効き味がある。ある一定のところを過ぎるとABSが介入することになるのだけど、その境界線がもう少し奥(つまり制動が高まったところから徐々に介入)にあるとなお良いと感じた。

 前後のサスペンションの動きが良く、乗り心地が良いのがレブル1100系の特徴だ。リアサスペンションのアッパーマウントがライダーの股関節の斜め後ろにあるように、後輪からダイレクトに突き上げがくるのか、と想像したが、突き上げをリアショックが見事にマイルドにしてくれている。クルーザーの中にはスタイル重視で車高が低くハードなサスでそれをカバーするあまり、荒れた路面ではシートとライダーの尻が頻繁に離れるモデルもある中、レブルTのキャラクターを考えたらこれは大切なホメどころだろう。レブルTにとって上質な前後サスペンションは大きな魅力なのだ。
 

 
 高速道路ではフェアリングの快適さ、クルーズコントロールを効かせて流す感じはレブルTの醍醐味だ。快適な乗り心地と相まって13リットルの小ぶりな燃料タンクが恨めしく思えるほど長距離性能を持っている。風の当たり具合は、身長183㎝の私の場合、シート後方に座ることもあり、風は胸上部から肩口あたりまでカバーされている。速度を上げたらもう少し巻き込みも増えるだろうが、腕周りを含め風圧の減衰はしっかりと行われている。ロープロファイルゆえ完璧なカバーはされないが、むしろ風を感じながら走れるバランスがいい。また、ライダーが背中を押される巻き込みも少ない。風による直進性へのイタズラも常識的な速度ではまったく感じなかった。

 ワインディングを走るとレブルTはイキイキとする。シフトストロークが短いミッションと、意外とバンク角が確保されていること、そしてここでも130サイズのフロントタイヤと28度と寝たキャスター、110mmのトレールが上手くバランスするようにコーナリングを楽しめる。ブレーキングを駆使するほどペースを高めるとあっさりバンク角を使い切るので、進入でしっかり減速、トルクフルなエンジンを活かして旋回中からアクセルを合わせていけば、曲がるコトを楽しみつつ、リアの車高を落とさずに駆け抜けられる。あっさり使い切る、とは言ったが、交差点を左折しただけでだらしなくステップを路面にこするシャコタンクルーザーのようなものではなく、良いペースで走ってしまえるのがレブルTの深み。走りを忘れていない。これが楽しいのだ。

 レブルTと1日走って思ったこと。しっかりとした質感、パワフルさを何時でも引き出せる気分的なゆとり、そして走るコトをツーリング先で楽しめる点で面白いキャラクターだと感じた。なるほど、スポーツバガーとも言えるわけだ。以前乗ったレブル1100のDCTモデルは、シフトスケジュールとクラッチの制御の印象から、エンジンがさらに大排気量のクルーザーに乗っていると想起させた。あのフィーリングも大ありだが、このシフトストロークが短いMTでレブルをキュンキュン走らせるのはまた別の楽しさが存在する。
 その点でこのバイクは休日を彩るバイクとしてお薦めするのは言うまでもない。
(試乗・文:松井 勉、撮影:赤松 孝)
 

 

イグニッションシリンダーは車体左側に備える。CRF1100L、HAWK 11等スポーツバイクにも使われる直列2気筒ユニットだけに、ミッションのシフトストロークも短く、スポーツ性がぐんと際立っている。だからMTモデルならクイックシフターが欲しくなるほど。エンジンのレスポンスやクラッチとシフト操作の間合いが、知らぬ間にレブルTをスポーツライクに走らせたくなる。左右のステップは丸パイプを使ったステーで支持されている。

 

フロントフォークアングルは30度、ステアリングヘッドアングル(キャスターアングル)は28度、前輪に130/70B18というワイドで大径なタイヤを装着することで、フロントエンドが「コテン」と切れ込むハンドリングを緩和、同時にロー&ロングなスタイルも融合させている。フロントブレーキはφ330mmのディスクプレートと対向4ピストンモノブロックラジアルマウントキャリパーを組み合わせる。ホイールはY字の5本スポークデザインを採用。フロントフォークはφ43mmのインナーチューブを持ち、2ピース構造のアウターチューブを合わせる。作動性、外観意匠にも効果的な酸化チタンコートを施したインナーチューブがクールさを醸し出す。

 

丸パイプを趣旨とする全体のスタイルに合わせたスイングアーム。レブル一族らしいスタイルだ。φ50.8mm径のパイプをつかっている。
縦に2つの排気口をもつ楕円マフラー。これぞクルーザーという歯切れや音圧感をライダーの耳に届ける。

 

右が16リッター、左が19リッターの容量となるサドルバッグ。リアショックの取り付け角度やリアフェンダーがテールランプに向けて描く曲線とマッチングさせた形状が魅力。全体のスラッシュシェイプもなかなか。もちろん、ラゲッジ容量だけを考えたら立方体形状が好ましいが、そこはクルーザー。外観が持つ性能成分を考えたらこれ以上マッチングを求めるのは難しいのかもしれない。リアシートやライダーのシート後部のフレーム形状も合わせて楽しめる。リアフェンダーはフロント同様に鋼板を絞り加工して造られたもの。それ自体が剛体となって荷重を受け止めている。開閉はメインキーでアンロック、キーシリンダー下のレバーを操作して開けるというもの。締めるときは、バッグのリッド側をバッグ側にある締めるときに合わせる目安となるキーシリンダー上部の赤い線にしっかりと被せるように押し込むとラッチが噛んでくれる。

 

丸いライト本体の中に4つのLEDが備わるヘッドライト。フェアリングはこのように左右のグリップまで覆うような幅をもっている。スクリーンは低いものの、効果は高い。中央に空いた空気抜きの穴から空気をカウル内側に流すことで、カウルにあたる風が上方に向かって跳ね上がった時に、ライダー側との圧力差を緩和して快適性を高めてくれる。

 

デフォルトのライディングモードが3種類。スタンダード/スポーツ/レインとある。燃料系下部にある表示はパワーセレクター(P)、HSTC(T)、セレクタブルエンジンブレーキ(EB)のパラメータ。DCTモデルではこれにシフトスケジュールを示すグラフが加わる。
テールランプ、ウインカーも含めてLEDを採用している。

 

ハンドル周りのスイッチは、右側にスターター&キルスイッチ、クルーズコントロール操作スイッチ、左にはモードスイッチ、セレクタースイッチに加え、ウインカー、ホーン、ヘッドライト切り替え、ハザードスイッチが備わる。

 

●Rebel 1100 T 主要諸元
■型式:ホンダ・8BL-SC83 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒OHC4バルブ ■総排気量:1,082cm3 ■ボア×ストローク:92.0×81.4mm ■圧縮比:10.1■最高出力:64kW(87PS)/7,000rpm ■最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/4,750rpm ■全長×全幅×全高:2,240×850[845]×1,180mm ■ホイールベース:1,520mm ■最低地上高:120mm ■シート高:700mm ■車両重量:238[248]kg ■燃料タンク容量:13L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン[電子式6段変速(DCT)] ■タイヤ(前・後):130/70B 18M/C 63H・180/65B 16M/C 81H ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:ガンメタルブラックメタリック、ボルドーレッドメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,314,500円[1,424,500円] ※[ ] はDCT

 



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2023/04/26掲載