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親子の絆を深め、世界の選手を輩出した千葉北に、未来のスター大集結!

 千葉北ポケバイコースは日本唯一のポケバイ専門コースとして2023年で45周年を迎えるコースだ。原田哲也、松戸直樹、中野真矢、中上貴晶、長島哲太ら、ロードレース世界選手権(WGP)で活躍するトップライダーを生み出している。卒業生ライダーたちが駆けつけ2022年12月に「ちばきたクリスマスカップ」が開催された。

 コースオフィシャルに全日本1000の長谷川聖、中野真矢のチーム56で走る小田喜亜門、MiniGPランキング2位になった松山遥希、フラッグを降るのは、Moto3から帰国し、今季は全日本ST600参戦の國井勇輝、周回数を提示するのは全日本JSB1000、ホンダのエースライダーである名越哲平という豪華さだ。午前中には9クラスの練習走行と第1ヒート/予選が行われ、昼休みにはうまい棒をバトルにして、それをつなぐリレーが行われ笑顔が弾けた。午後に第2ヒート/決勝。最後にはオヤジレースお祭りクラス、熱血クラスと親が参加するクラスも行われた。1日中、ポケバイのエンジン音と、子供たちの声が響いた。



 レース前のミーティングではWGPで活躍した東正雄(現ブリヂストン)が子供たちにプレゼントを渡し「バイクを楽しんでほしい」と挨拶した。

 OBクラスには今季、鈴鹿8時間耐久優勝、MotoGPやスーパーバイク世界選手権への代役参戦で活躍した長島哲太が、8耐優勝ツナギで参戦、熱戦を繰り広げた。ポケバイからMotoGPまで操るスーパースターの登場となった。ハンデ戦でのスタートだったが、長島と同じコースを走れることで参加者は大満足の一戦となった。全日本JP250(NAT)チャンピオンの山根昇馬や、J-GP3の田中風如らが参戦した。

 年間6戦で、各クラスのチャンピオンは決定しており、クリスマスカップはレースを楽しむという目的のようだが、参戦ライダーたちは本気モードで熱戦を繰り広げた。イーブルエキスパートは、ランキング2位の那須南斗が勝ち、チャンピオンの谷口隆成が2位となる。74エキスパートはチャンピオンの田中楓人が優勝、2位に藪勇太、3位にランキング2位の中山結互。オープンクラスは和智亘晴。イーグルビギナーは平木竜翔、74ビギナーは伊藤由揮、ストライダー年中クラスは庄田帆那、年長クラスは川田逸人が、それぞれ勝った。


 
 名越は「小学校6年生くらいまでポケバイに乗っていたので、小学校時代の思い出は千葉北にあるような気がします。学校の校門を出ると父が待っていて、車に乗ってここにきてポケバイに乗っていました。ナイター設備もあるので、夜遅くまで走っていました。やりたいとかやりたくないとか、選択肢はなかったけど、家族でいつもここで過ごしていたのはいい思い出だし、今の自分がいるのも、ここでの時間があったからだと思う」と言う。

 國井は「本コースの脇に、練習する小さなコースがあって、そこで、膝を擦れるようにならないと、本コースを走ることが出来なかった。すごい頑張って練習して、本コースに出た時が嬉しかったのを覚えています」と笑顔を見せた。

 長島は「自分も小学校6年までポケバイに乗っていたから、ここを良く走らせてもらいました。今はなくなったけど、最終コーナーには草が生えていて、そこに突っ込むライダーがたくさんいました。よく転んでいたのは、ぶっとびの大久保光、最速ライダーは自分の時代だと篠崎佐助かなぁ。このコースは奥が深いので、攻略法を叩き込まれたことはその後にも生きていると思う」と懐かしそうに教えてくれた。

 少し前までは、小学校時代はポケバイで学び、中学生でミニバイクという流れが一般的だった。ここ千葉北から育ったライダーたちの多くが、長くポケバイレースを経験しているはずだ。成長期での1歳の違いは大きい。それでも、大きくなった身体を使い、体重の軽い年下ライダーに勝つために、年上ライダーたちはテクニックを駆使して戦って勝利を挙げて来た。その経験が排気量の上がったバイクでも生かせていたように思う。

 だが、ロードレース世界選手権(WGP)参戦、アジアタレントカップセレクトなどの低年齢化でポケバイ卒業年齢が早まり、今では小学校4年生くらいでポケバイを卒業してしまう。グリッドで、今年でポケバイ卒業するのは? という問いかけに、多くの手が上がった。アナウンサーからは「さみしいなぁ~」と本音が漏れた。
 
 WGPではライダーの低年齢化にストップをかけようと、これまでMoto2、Moto3は参戦年齢が16歳からだったのが、2023年から最低年齢が18歳以上とMoto3、Moto2、MotoGPの全てのクラスで最低年齢が適応されることになった。

 ポケバイを楽しむ親子が、すべて世界を目指しているわけではないと思うが、ライバルとして切磋琢磨して来た仲間の卒業と一緒にやめてしまうこと、まだ、学べることがあるのに、ステップアップしてしまうのはとても残念なことだと思う。ポケバイは親子の絆を深めるスポーツとして、とても秀悦なものだと思うからだ。野球もサッカー、他のスポーツも素晴らしいが、競技は監督に任せることが多いように思う。だが、ポケバイは親が監督でメカニックだ。親子が信頼関係を築き、こんなに密接に喜怒哀楽を味わうことが出来るスポーツはなかなかないと思う。

 千葉北の表彰式は、夕焼けが暗闇となるまで続いた。全日本ST600唯一の女性ライダーの平野ルナが、プレゼントを持って駆けつけ、子供たちの嬌声と、親の優しく暖かいまなざしが冬の寒さを吹き飛ばしていた。

(レポート:佐藤洋美)







2022/12/29掲載