第142回 「2022年幻立喰・ソ」
気がつけば、もう12月も終盤、今年もあとわずかになりました。と、毎年同じことを言い続けているような気がする、いや間違いなく言っています。1日、1週間、1ヶ月、1年が本当に短く感じます。そのくせ、立喰・ソで生麺をゆでるまでの時間や寒い中バス停で待っている10分、さらに尿意を催して乗るエレベーターは、永遠の時間にさえ感じてしまうのは私だけでしょうか。ちなみに、子供の頃は一日が長かったと言いますが、昨日のこともはっきり覚えていないのに、50年以上前のことなんか覚えているはずがありませんが、おそらく万人に対して平等に時間は経過しているはずです。
今年も多くの名店がのれんを下ろしました。営業時間が終わればのれんを下ろすのは当たり前なのですが、翌日になっても上がることのないのれんも残念ながら多々ありました。ざっと思い出すだけでも1月、テレビのニュースになるほどの人気だった小山駅そば。2月、閉店から奇跡の復活もつかの間の夢の如くの明神そば。3月、山盛りの揚げたて天ぷらの名店のれんを受け継ぎ人気だったとんがらし。4月、カレーも美味しかった下町のミスジ。5月、老舗の立ち食い部門という珍しい形態の永坂更科 布屋太兵衛 新宿地下鉄ビル店。6月、最後の?六花、六花たべりゃんせ。7月、最近減少傾向の越後そば、激戦区の亀有店。8月、おかあさんの笑顔が最高のえびすや。9月、えきめんやのフラッグシップ的存在、品川店。10月、地下鉄東西線の歴史と共に歩んだであろう東西そば。11月は未確認ですが、今月は住宅街の中にたたずむあかくらが12月30日までの予定です。行ったことがあり、印象深い名立喰・ソが、毎月消えていく、さらにまだ未食だった立喰・ソも……悲しいとか寂しいというよりも、どんどん楽しみを奪われていき、何か取り残されていくような恐怖感すら感じてしまいます。とはいえ、今年オープンした新立喰・ソも私が確認できただけでも30軒近くありますし、まだまだ未食の立喰・ソだらけなのですから、悲観してばかりもいられません。
来年はどんな年になるのか、政治的に経済的、世界情勢に地球環境など難題が山積みの状況で景気の良い話は期待できません。が、まだ見ぬ食べぬ立喰・ソと出会えることを楽しみにしましょう。そして今年のれんを下ろし幻立喰・ソになってしまったお店のみなさま、長い間おつかれさまでした。ありがとうございました。
永らくのご愛読、ありがとうございました。来年も、みなさまにとってすばらし立喰・ソ年になりますように。
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