コロナ禍により3年ぶりに開催された「ホンダレーシングサンクスデー」はモビリティリゾートもてぎにて快晴のなか大勢のホンダファンで賑わいました。ホンダ4輪ファンにとっての目玉はF-1ドライバーの来日になりますが、2輪のプログラムも、元MotoGPチャンピオンでマルク・マルケス選手はもちろんのこと、Moto2クラスランキング2位を獲得した小椋藍選手、チャントラ選手、Moto3の古里太陽選手、BSBに参戦した高橋巧選手、水野涼選手、鈴鹿8耐ウィナーでテストライダーの長島哲太選手がロードコースのデモ走行など(中上貴晶選手、名越哲平選手は療養中により走行はナシ) 充実していました。
また従来のサーキットでのパフォーマンスプログラムに加えてオフロードコンテンツも充実。ダートトラックコースに大量の土を運び込んで作られた特設コースでは、MXGPチャンピオン、ティム・ガイザー選手、ダカール・ラリーのチャンピオン、リッキー・ブラベック選手、今シーズンよりホンダに加入したエイドリアン・ファン・べヘレン選手、全日本モトクロスライダーの大城魁之輔選手、大倉由揮選手らが走りを披露、なかでも観客の目の前に作られたビッグジャンプをラリーマシンが飛びきる光景はオフロードファンなら息をのむほどの圧巻でした。
さて本題に入りますが……ホンダレーシングサンクスデー、トライアルファン最大のお楽しみコンテンツであるトライアルのデモ。この2年、世界選手権トライアルの日本ラウンドは中止となり王者トニー・ボウ選手の走りを見るのも3年ぶり、ガブリエル・マルセリ選手と、全日本V12チャンピオンの小川友幸選手と今季初優勝した氏川政哉選手が参加。そして2021年を最後に引退したフジガスこと藤波貴久選手が、日本のファンの前で、トライアル選手としては最後となるパフォーマンスを披露しました。
現在、レプソルチームの監督として活動しているフジガス、「全然バイク乗ってない!」と言いつつも、もてぎの難セクションの壁を目の前にすると負けず嫌いが発動! 現役と変わらない走りを見せ、会場を沸かせました。トニー選手や小川選手とも息の合ったジャンプを見せ、2回目のデモではマイクをとり会場に集まったファンに「直接会って言いたかった」とトライアル会場に集まった大勢のファンに、これまでの感謝と、これからも監督としての立場でトライアルに携わっていこうとを報告。大きな拍手に包まれました。
藤波選手が、引退に際し行われた合同インタビューでは今の率直な気持ちを語ってくれました。
「正直26年間もこの世界で戦うなんて思ってもみませんでした。昨年、引退のシーズンでも優勝することができ、悔いの残らないかたちで満足してシーズンを終えました。
たくさんの思い出がありますが、日本グランプリが開催されたのが2000年。その頃はランキング2位になっていて、チャンピオンをどうしても取りたい思いが強く、それでもなかなか獲れないシーズンでした。それでも2004年のもてぎ大会で土曜、日曜と2レース優勝し、2004年に世界チャンピオンを獲れたことは一番の思い出です。
そして今シーズンは、僕が所属していたチームでそのまま監督になることができました。ライダーではない仕事の部分で大変だったりしましたが、チーム一丸となってトニー・ボウがチャンピオンになり、新しく加入したマルセリ選手も頑張ってくれて、僕にとっても最高のチームになったと思います」
「チャンピオンを目指して世界選手権を戦い、ランキングも3位や5位を経験して、僕の中ではまだまだ勝てると思って続けてきましたが、トニーと練習していて、ふと僕の中でチャンピオンにはなれないのかな?と、彼にはかなわないと実感したのが引退の決め手だったと思います。トニーの凄さは5年も10年も前から分かっていたけど、それでも勝ちたいという気持ちがあった。2年くらい前に、彼には心底勝てないなと思ったことが決め手になりました」
「今後はライダーからは退きます。自分の中でももう切り替えが出来ています。今後は教える立場として、ライダーの考えていること、僕の経験したことを色んなカテゴリーのライダーにも共有できたらと思いますし、目先の目標としては、トニー・ボウとマルセリ選手のワンツー(表彰台)が一番最初の目標。アスリートとして他のカテゴリーで走ることは全く考えていないです」
「来年度はモンテッサタレントチームを作り、若手ライダーを入れて世界選手権に参戦させようと計画を立てています、そこに日本人選手が入る可能性もあります」
「自分の参戦経験として、ホンダに助けて頂いていましたが、ほとんどが個人活動で、ファミリーで世界転戦をしていくことで大変な思いをしました。若手にはそれ以上に練習に集中できる環境を作って助けてあげたい。自分の経験を生かして若手育成をしていきたい、自分にはそれができると思っています」
この育成チームには、自分の甥っ子である氏川政哉が入る可能性はあるかという問いには「完全に実力!」との答え。
コロナ禍により、現役最後のレースが日本で見ることが適わなかったのは本当に残念でなりませんが、フジガスはすでに意識を切り替え、1シーズンを監督として過ごしていて、新たな目標に向かって進んでいる真っ最中です。
イベントのフィナーレに差し掛かった頃、本コースでも引退セレモニーが行われました。
地上へ続く地下の階段から飛び出し、グランドスタンドの観客の前に作られたセクションを軽々と越え、ホームストレートに集まったホンダライダーに囲まれ祝福されるという、サンクスデーでしか実現しえない豪華なセレモニーとなりました。
来シーズンは6月にもてぎで世界選手権トライアルが開催される予定です。トニー・ボウとマルセリに激を飛ばす監督に自然と注目がいくことでしょう。フジガス監督率いるレプソルチームの活躍をお楽しみに。
*日本グランプリは5/20〜21 モビリティリゾートもてぎで開催!