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試乗・解説

「フレンドリーモタード」 という新ジャンルがここに! Honda CB250R
ホンダの250ccと言えば飛ぶ鳥を落としまくっているレブルがすぐに頭に浮かぶが、そのレブルの翌年にデビューしスタンダードなネイキッドスポーツとしてじわじわと浸透し、地味に(失礼!)進化を重ねてきたのが、レブル及びCRFとエンジンを共有するこのCB250R。今回フロントフォークのアップデートなどを果たしモデルチェンジしたため試乗したが、あれ? こんな感じだったっけ??
■試乗・文:ノア セレン ■撮影:富樫秀明 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、Alpinestars http://www.okada-corp.com/products/?category_name=alpinestars




肩肘張って乗る楽しさ?

 正直に言ってしまうと、レブル250のデビューとその衝撃的な人気の影に隠れてしまい今ひとつ存在感が薄いCB250R。パラツインのスーパースポーツCBR250RRの前にそのカテゴリーを担っていたシングルのCBR250Rがあり、それのネイキッド版のCB250Fがあって、それがいつの間にかネオスポーツカフェのスタイリングのCB250Rに代わってたんだ……的な、ひっそりとした登場にも思える。

 しかも、250だけでなく125も同様なのだが、小排気量で大変に軽量にもかかわらずかなり剛性の高い倒立のフォークを備え、かつラジアルタイヤも装備し、妙に剛性が高いような感覚があり乗り味もいくらかマニアックだった。これをしっかり感と捉えることもできたが、逆にこういった軽量なバイクが生み出しえるナチュラルな操舵感覚を阻害しているような雰囲気もあったように思う。肩に力が入ってしまい、押さえつけながら走ってしまうような……そんな感覚に「この車両を買う人はビギナーも多いだろうに、ちょっとハードルが高いような気がするなぁ。そりゃみんなレブルにするよなぁ」と思ったのも事実だ。同時にシート高や重心も高めなようで、こんなこともハードルの高さに感じ、レブルの間口の広さとは対照的な印象を持っていた。
 

 
 ところが新型はこういったハードな印象がずいぶん和らいでいるように思う。シート高は前回のモデルチェンジ時に下げられたが、今回はこれに加えフロントフォークに最近ホンダが多く採用しているSFF-BPタイプを投入、あわせてリアサスの設定も変更されたのかそれともフロントフォークとのバランスがとれたのか、全体的にしなやかになり「こんなに接しやすくなったんだ!」と印象が大きく改善した。先代は開き気味のハンドルとどこかハードというか、時にはぶっきらぼうな操作感に対応すべく肩ひじを張って乗るような感覚があり、それも楽しさだったかとは思うが新型ではより自然な構成になっていて確かな進化に感じる。
 

 

ナチュラルになって新たなカテゴリーを切り開く

 前回のモデルチェンジでシートが低くなり、今回のモデルチェンジでサスが良く動くようになったおかげで走っている時の重心はさらに低くなった印象があるため、比例して安心感も大きくなったと感じる。初期型にあったような腰高感がずいぶんと薄れて、実際に足が着きやすいことだけでなく感覚的にも「地に足の着いた」乗り味に変わっていて、このしなやかさがあってやっと高剛性フォークやラジアルタイヤが活きてきたとも感じる。

 ちょっと荒れたワインディングなどを走るとこの恩恵はすぐに感じられる。バンクしている状態でギャップやうねりに乗ってしまった際など、前後サスと車体全体でとてもナチュラルにその外乱を吸収してくれるのだ。グワン・ビョン!と確かに軽量な車体は振られるものの、そのストロークが一回で収束し、「おおッと危ない」とか言いながらアクセルを戻す必要はないのだ。よくグリップするタイヤが猫足で路面を捕えていく感覚は今はホンダラインナップにないモタード車的で、自由自在に振り回せるスポーツ性は本当に楽しい。
 

 
 その乗り味はモタード的とは言ったものの、重心の低さやシートの快適さはまさにロードスポーツ。ではかつてのシングルスポーツ車、旧い話だが例えばGB250クラブマンや、もしくはツインだがVTR250的なスリムなロードスポーツ車感覚かと言えば、決してそうでもないのだから不思議だ。そのスリムさや軽さからは、ロードスポーツどころかどこかトライアル車すらも連想させる部分もあるぐらい、カテゴライズしにくいモデルに感じた。ロードスポーツの快適性、オフ車的軽量さ、モタード的猫足などを組み合わせ、その多様さがありつつ乗り物として破綻させないナチュラルさで包んでいることが素晴らしい。まるで新たなカテゴリーが切り開かれたような感覚なのだ。
 

 

一方でエンジンは。

 車体の自在さや確かな進化にすっかり感動した一方で、エンジンについては逆に少し不明点が残った。というのもジキルとハイドというか、二面性があるように感じられたのだ。
 特に印象が良いのは極低回転域。アイドリング+αの領域ではとても力強く、多少ラフにクラッチを繋いでも安心感を持ってツトトトっと発進でき不用意にスコン!と止まってしまうような感じは微塵もない。これは特にUターンなど低速の取り回しの際に活きていて、ツインかのような粘りは初心者にも安心の部分である。またこの領域では不用意なパルス感など演出的な要素は全くなく、実直に極低速域での取り回しをサポートしてくれる。
 そして高回転域、これまた気持ちが良い。8000rpm以上の領域ではさすがDOHC!と言いたくなる元気なパワーバンドがあり、これを維持すれば前述のモタード的な自在感を持った車体と合わせてかなりエキサイトさせてくれる。

 ところがその二つのオイシイゾーンを繋ぐ中回転域、ココのトルク感が何だか薄いのが気になってしまった。走り出してすぐ、クラッチ繋ぎしなが頼もしいから、回転数が増えるほどにそのまま力強さが続くのかと思いきや、4000rpmあたりでは「あれ?」とアクセルを開け増すような場面があるのだ。気がづくとアクセルがかなりワイドオープンになっていて、そのまま8000rpmあたりを迎えてしまうとギューン!とパワーバンドに入ってしまってスピードもどんどん乗ってしまう。逆に8000rpm以上を使ってキビキビ走っている時に意図せず8000rpmを割ってしまうと、途端に駆動力が鈍り急いでシフトダウンすることがあった。
 

 
 この特性を理解するのには少し時間がかかり、最初は「あれ?アレ?」とギア選択を試行錯誤していたが、しばらく乗るうちに「元気に走りたいのか、それとものんびり走りたいのか」を明確にして走れば良いことに気付いた。高回転域ばかりを使って元気に走っている時は、パワーバンドを絶対に外さないぞ!といったストイックさが楽しめる。逆にパワーバンドを使わない領域でのんびり走るには、アクセルに対する反応ものんびりな5000rpm近辺を使えばスポーツマインドを刺激されず、ストレスなく距離を稼ぐこともできるだろうし、日常的な移動など実用的な使い方にも応えてくれるだろう。

 なるほど、そういうことなのかな……。と理解はしたつもりでいるものの、やはりせっかく元気な極低回転域&パワーバンドなのだから、それを繋ぐ領域のトルクフルさも欲しいよなぁ、と思ってしまうのも人情だし、ベテランライダーほどここを何とかしたいと感じるのではないかと思う。幸いこのエンジンは様々なノウハウやアフターパーツもあるため、もう一歩先のパワー感・トルク感・出力特性を求めるのも一つの楽しみだろう。そこまでこだわる価値のある車体だとも思う。
 

 

ビギナーからベテランまで、幅広く楽しめる「オモチャ」

 高速道路も走れる250ccクラスのバイクを捕まえて「オモチャ」扱いするのは失礼だが、しかしビギナーでも気軽に乗れる優しさや、ベテランがチューニングする楽しみがあるのと同時に、倒立フォークやラジアルタイヤを備えるのにレブルよりも安価ということもあって、気軽に買って気軽に接して色んな楽しみ方をして欲しいという想いで「オモチャ」と書いておきたい。バイクがプレミアム化し高価な趣味と認識されることが多いと感じる昨今だからこそ、こうしたスタンダードな250ccシングルを思いっきり楽しんだらいいだろうな!と思うわけである。

 レブルの陰に隠れてちょっとマイナー感があったCB250Rだが、今回のモデルチェンジでかなり進化したと断言する。「何か良いの、ないかな~」と思っていた人、ぜひ試してみて欲しい。
 蛇足だが、ホンダはこのネオスポーツカフェシリーズで125/250/650/1000と展開しているわけだが、400が抜けているではないか。CBR400Rや400Xのエンジンがあるのだから、400版も是非投入してほしい。この自在さのまま400のパワーがあったらまた素敵な世界が広がるはずだ。
(試乗・文:ノア セレン)
 

 

何も違和感のないポジションではあるものの、本文中にもあるように重心が低いモタード車的なテイストもあるタンクの短さとハンドルの開き具合である。筆者のように大柄だと(185cm)いくらか車体が小さく感じることもあるが、しかし走っている時は特別窮屈だとかそんなことはないし、ニーグリップするとタンクのエラに膝があたって痛いだとかそういった違和感もなかった。足つきは良好、兄貴分のネオスポーツカフェシリーズと共通したなかなかカッコ良いデザインである。このブラックの他にブルーとレッドがありイメージも違うため合わせてチェックしてみて欲しい。※ライダーの身長は185cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

最新のR2年規制に対応すべくトルクや出力の発生回転数は前モデルから変更されたが、各最高値は変わらずのエンジン。特に極低回転域の粘り強さが好印象で、発進やUターンでは頼もしい。また今回アシスト&スリッパ―クラッチが投入されたおかげでクラッチは信じられないぐらい軽い! 8000rpm以上の高回転域では元気なパワーバンドがあるが、5000rpm周辺の常用域は逆にのんびりした味付けで日常の実用的な使用では気兼ねない一方、ベテランライダーはもう少しパンチが欲しく感じるかもしれない。
基本骨格に変更はないが、前後足周りの設定変更によりかつてのファイター的味付けからよりしなやかな、どこかモタード的な乗り味へと変わってきた。フレームは軽量なメインフレーム部とピボット部を別部品とし、後輪荷重を軽減しつつ軽快なハンドリングを追求しているという。この新型ではしなやかさが加わり先代ほど肩肘張る感覚はなくなり、自然操舵に任せたナチュラルな運転がしやすくなったと感じる。なお太い倒立フォークを備えるもののハンドル切れ角はしっかり確保されており、Uターンなど小回りは得意だ。

 

今回のモデルチェンジで新たにショーワ製SFF-BPフォークを採用、軽量アルミホイール&ラジアルタイヤと路面追従性を追求している。実際にはストローク感がありモタード的な自在さを楽しめる。ブレーキはラジアルマウントタイプのキャリパーを採用するものの絶対的制動力よりも日常のファジーさを重視した設定か。アクティブに走るならパッド交換をしても良いかもしれない。

 

150幅のラジアルタイヤを装備。スイングアームは高剛性としなやかさを兼ね備え、アクスルは中空とするなど、軽量さにもこだわった設定。リンクレスのリアサスは7段階プリロード付きだが、72kgの筆者は出荷時設定のままで猫足フィーリングを楽しめた。

 

先代まではニュッと伸びた細長い形状だったのが、今回は少し短くスマートな印象となったサイレンサー。カバー部にはCBの刻印も入れられなかなかカッコ良い。音質及び音量はとても大人しく、これなら住宅街でも気兼ねする必要はないはずだ。

 

ネオスポーツカフェシリーズに共通する丸ライトスタイルを継承。伝統の丸ライトながら中身はLEDでモダンなルックスとなる。ウインカーもLED。メーター類がコンパクトなうえ位置も低いため走行風は直に当たるが、他のネオスポーツカフェシリーズ同様に丸ライトが上手く風を散らしてくれるのか、ネイキッドスタイルのわりには意外と風当たりはきつくない。
テールカウルを持たず、タンデムシートの後端に直接テールランプがつくデザイン。いかにも凝縮したような、マスが集中したことをデザインからも発しているが、タンデム時や荷物の積載時にはテールランプを隠してしまわないように気を付けたい。
短くてハンドルが近く感じるタンクもまたモタード的な感覚にしてくれる部分だろう。フレームに沿った形をしていて筆者のように大柄でもどこかに膝があたってしまうなどといったことはなかった。容量は10L、スペックによるとWMTCモードで33km/L走るため、ワンタンク300kmほどは走ることだろう。

 

タンデムシートは面積も少なく荷掛けフックの類もないため、ツーリングやタンデムはあまり得意とは思えない。一方でライダーのシートは適度にクッションがあり、また着座位置を限定しない許容度もあった。少し後ろに腰を引いて乗ってもハンドリングが悪化することが無かったのも好印象。タンデムシート下のスペースは少ないがETCぐらいは入るだろう。

 

コンパクトなメーターには新たにギアポジションインジケーターが追加された。ラバーマウントされるテーパータイプのハンドル形状は、タレ角の少ない開き気味な設定でここでもオフ車感がある。ブレーキレバーは握り代の調整機能がないため、手が小さい人は社外のレバーを投入しても良いかもしれない。なお左スイッチボックスでホーンボタンがウインカースイッチの上にあるという構成は、これだけ時間が経ったのにもかかわらずまだ慣れずに「ピッ」とホーンを鳴らしてしまう。何とかなりませんかホンダさん。

 

●CB250R 主要諸元
■型式:ホンダ・8BK-MC52 ■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ■総排気量:249cm3 ■ボア×ストローク:76.0×55.0mm ■圧縮比:10.7 ■最高出力:20kw(27PS)/9,500rpm ■最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/7,750rpm ■全長×全幅×全高:2,020×805×1,045mm ■ホイールベース:1,355mm ■最低地上高:153mm ■シート高:795mm ■車両重量:144kg ■燃料タンク容量:10L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤ(前・後):110/70R 17M/C・150/60R 17M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式(倒立サス)・スイングアーム式 ■車体色:マットガンパウダーブラックメタリック、マットパールアジャイルブルー、キャンディクロモスレッド ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):564,300円

 



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2022/10/13掲載