第138回 「さば」
「サバサバした人が好き」って言葉、普通に使います。どんな人かといえば、やはりサバ×2のような人のことでしょうか。サバ缶は安くてうまい缶詰の、サバ味噌はおふくろの味の代名詞的存在ですが、生のサバはアニサキスが寄生していることがありますから要注意です。つまり極端な二面性がある、煮ても焼いても食えないではなく、煮たり焼いたりすれば安心して食べられる人ということですね。はて、私はいったい何を言っているんでしょうか?
いつもブリブリしている人はあまり好かれる事はなさそうです。脂がのりまくって、刺身でも鍋でも照り焼きでもおいしいのですが。で、マグロマグロな人は……まあ、この辺りは嗜好性の問題ですから、これ以上はやめておきます。
サバやブリ、マグロといった魚類はあまり立喰・ソと深い縁はなさそうです。立喰・ソでおなじみの魚介類といえば、代表はイカ(ゲソ)。次に高級的なえび、アジ、あなごに、あさりや貝柱系のかき揚げも。そうそう、最近ではあまりお目にかかれなくなりましたが、おきあみもメジャーでした(おきあみは魚介類?)。これらは天ぷらにしてトッピングするのが定番で、生のイカやエビ、アジを載せた立喰・ソはみたことがありません。ましておきあみなんて論外です(おきあみって生で食べられるの?)。
それでも例えば、京都のにしんそばや下関のふく天などの名物系トッピングはありますし、鶴見系といわれる鶴見界隈では、のり弁に載っているあの白身魚のフライはトッピングとして定番のようですし(コロッケやメンチは最近関東以外でも定番化しているので、白身魚フライの全国進出は時間の問題かも)、山形ではサバ缶を使ったひっぱりうどん(どこかの立喰・ソで山形ひっぱり風というソを期間限定でやってたと思います)もあります。私が見たことないだけで、「刺身三点盛りソ毎日食べてるよ」という、漁業関係の方がいても不思議ではありません。
知らないことがあるから、世の中おもしろいのです。「俺は何でも知っている」という人、趣味の世界ではよくいます。知っていることは大変素晴らしことなのですが、知っていることをひけらかすのは素晴らしいかどうか、品格が問われるところでしょう。さかなクン級の超博識人になると、聞かれたことは完璧に回答してくれますが、俺が的なブリブリ感はまったくありません。わたしの場合、そもそもの知識量が絶対的に不足しているので、ソくんと呼ばれるくらいの博識人になることは日本の政治家がすべて聖人君子になることと同じように絶対的に絶望的ですから、心配も憂慮もしなくていいです。私が一番好きな魚介類のトッピングは魚肉ソーセージ天です。でも、これが魚介類ならば、ちくわ天のほうが好きです。じゃ、わかめは?
あまりの暑さとショックで、頭が回りません。暑くなくても回りませんけど、2022年7月31日高田馬場の吉田屋が幻立喰・ソになってしまいました。さらに、横須賀のえびすやも8月31日限りで幻立喰・ソに……それほど何度も行ったことはないので、常連さんの大ショックとは比べようもありませんが、そんな私でもかなりの衝撃を受けてしまいました。吉田屋はまさに江戸っ子という雰囲気のサバサバした女将さんが、吉田屋はサバの味噌煮のような、温かく優しい女将さんがとーってもステキで、一見さんでもほっとする立喰・ソでした。そんなサバサバした女将さんと、どこかの立喰・ソで出会えますように。長い間、ほんとうにおつかれさまでした。
もう食べられません。幻立喰・ソの魚トッピング。
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