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試乗・解説

実力派カフェレーサーから感じた 新しいトレンド Triumph SPEED TRIPLE 1200 RR
TRIUMPHストリートファイターのフラッグシップモデル、SPEED TRIPLE 1200RSをベースにして、レトロな雰囲気を持つハーフフェアリングを装着した新しいスポーツモデルがSPEED TRIPLE 1200RRだ。ネイキッドスポーツモデルとは異なるライディングして感じた印象をお伝えする。
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:渕本智信 ■協力:Triumph Motorcycles https://www.triumphmotorcycles.jp/ 、JAIA https://www.jaia-jp.org/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、KADOYA https://ekadoya.com/




レトロモデルの広がりが止まらない

 現代の車体やエンジンに、レトロな雰囲気に仕上げたスタイルを与えた車両が世界的に人気で、いろいろなメーカーから誕生し、そのカテゴリーがマーケットの中で占める割合は増え続けている。この流れはまだ広がっている途中のようだ。これまで、その中心はネイキッドモデルだったが、次のトレンドになるのは、懐かしいテイストのロケットタイプフェアリングを装着したカフェレーサーなのかもしれない。MV AGUSTA SUPERVELOCE 800や今年の秋に発売が決まったホンダ HAWK 11、そしてこのTRIUMPH SPEED TRIPLE 1200RRがそれをあらわしている。

 1990年代に登場し、いわゆるストリートファイターカテゴリーの先駆けとなったのがTRIUMPH SPEED TRIPLEシリーズ。その最新版である1200RSをベースに、フレームマウントとしたハーフフェアリングを装着し、パイプのハンドルからクリップオンハンドルに変更して、まったく違うものに仕上げている。シートに跨ってトップブリッジの下に取り付けられ1200RSより低く、前にあるハンドルのグリップを掴むと、身長170cm、体重66kgの体型で少し腕が短い私にはかなり拳の位置が低く、結構な前傾姿勢になる。それはシート座面よりは高いが腰の出っ張った部分より低い。その昔流行ったレーサーレプリカ時代を思い出す前かがみ具合。スクリーンにヘルメットを隠すように伏せるとヒジとヒザがかなり近くなるスパルタンなポジション。
 

 
 低くなったハンドルに合わせて、座るお尻の中心よりやや後ろ、1200RSより後方で、若干高く位置するバックアップステップになったペグだから、フトモモのフィット感のいい燃料タンクのおかげもあって、ちぐはぐした感じはなく、腕に上半身の重さが大きくかかることがなく乗れる。ただし、ハンドル切れ角があまりないのもあって、Uターンの場合はそれなりに気を使う。日常的な使い方ならSPEED TRIPLEの方が間違いなく楽だ。しかし、個人的には丸ヘッドライトの低く構えたフェアリングのスタイリングと、低い視線でスポーティーさがきわだつライダーとの組み合わせが魅力的で心が踊る。やっぱりカッコイイは正義である。
 

 

スタイリッシュなストリートのスーパースポーツ

 水冷並列3気筒DOHC4バルブ1160ccエンジンは最高出力180ps/10750rpm、最大トルク125Nm/9000rpmのスペックだから、スロットルを大きく開ければ、そりゃあ速い。11,000rpmちょいのレッドラインまであっという間。今回の狭い試乗場所では加速とスピードに不満なんて出てきやしない。7000回転くらいからのブーストがかかったようなワイルドな押し出し感はトライアンフ3気筒ならでは。しゃかりきにならず、ぼんやり流して走っても、低中回転域のトルクがあるから神経質なところがなくスムーズに走れるから、スピードを求めてプレッシャーをかけられるような心理にならないのがいい。前傾姿勢に抵抗がなければのんびりツーリングのような使い方もいける。任意に設定できるのを合わせて5つのライディングモードが備わるが、それを詳しく評価して述べられる試乗時間はなかったので、ざっくりとした感想だと思って欲しい。
 

 
 オーリンズ製Smart EC 2.0電子制御式セミアクティブサスペンションを標準装備したのも話題のひとつ。前後、左右、上下、の加速度と、ピッチ、ロール、ヨーといった3軸方向の角速度を検出する6軸IMUによって、いろいろな電子制御によってライディングを助けてくれる最新のスポーツモデルらしい成り立ち。速く走ってのスポーツ性能を味わうシチュエーションではなかったけれど、その中でがんばって走行しとても印象的だったのは左右にリーンさせるときのステップ荷重による軽快感と反応の良さだ。このフットワークから1200RRが名ばかりのカフェレーサーではないことがわかる。ライディング中に疑問や違和感を感じる場面がなかったことも最後に付け加えておこう。レースで戦えるために技術の粋をつぎ込んだスーパースポーツとは違い、カジュアルな装いも似合うストリートのスーパースポーツといったところ。トラックでもかなりやれそうだけどね。
 

 

ライダースペック 身長=170cm 体重=66kg。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

フロントフォークはインナーチューブ径43mmのオーリンズフルアジャスタブルタイプで、電子制御(S-EC 2.0 OBTiシステム)によってコンプレッションとリバウンドのダンピングを調整する機能を持つ。ホイールトラベルは120mm。フロントブレーキはφ320mmのディスクローターにラジアルマウントしたBrembo製のStylemaモノブロックキャリパーを組み合わせたもの。ハイグリップなPIRELLI製Diablo Supercorsa V3タイヤが標準。
トライアンフの代名詞である並列3気筒エンジンは1160cc。最高出力と最大トルクなど基本スペックはネイキッドのSPEED TRIPLE 1200RSと同じ。DOHCで1気筒あたり4バルブ。ボア・ストロークは90×60.8mmとショートストローク。アップ、ダウンに対応するクイックシフターを標準装備する。6軸IMUを採用してトラクションコントロール、ABS、アンチウィリーなど高度な制御が働く。クルーズコントロールもついている。フレームはアルミのトレリス風ツインスパー。Brembo製。

 

片持ちアルミスイングアームに履いているキャスティングアルミの17インチホイールは6インチ幅。リンク式リアサスペンションもオーリンズ製でセミアクティブ。ホイールトラベルはフロントと同じ120mm。リアブレーキローターは220mm径でブレンボ製2ポッド。エキゾーストマフラーは、ステンレス製3 into 1ヘッダーにステンレスサイレンサー。ボルトオンのサブフレームもメインと同じくアルミ製。

 

ベースとなったSPEED TRIPLE 1200RSと同形状の燃料タンクの容量は15L。白いステッチが入ったシートの座面高さは830mm。フォークトップにはダンピングを電気的に制御するための配線が伸びている。燃料タンクのニーグリップ部分に大きく“RS”と文字が入った1200RSと違い1200RRはツートーンでシックなカラーリング。
普通のロケットカウルのように見えて、丸いヘッドランプがウイング形状のステーで支えられたような凝ったカタチにデザイナーのセンスを感じる。ミラーのステーもウイング形状。昆虫のようなデュアルヘッドがトレードマークになっているSPEED TRIPLE 1200RSとは全く違うおもむき。トップブリッジの下に取り付けたセパレートハンドルのグリップ位置は1200RSよりやや低くてやや遠い。

 

5インチTFTフルカラーディスプレイを採用。周りの明るさによって調光し、表示レイアウトも変更可能。気温、各部の設定の状態、タイヤ空気圧、路面凍結注意なども表示。Bluetooth接続もできる。スマートキーを使ったキーレスイグニッション。燃料の残りが3.5Lになると燃料残量警告灯が点灯する。給油口もキーレスで、イグニッションオンでロックが解除になり手動で開けられ、イグニッションオフにしても1分間はロックされないので大丈夫。

 

●SPEED TRIPLE 1200 RR 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク並列3気筒DOHC 4バルブ ■総排気量:1160cm3 ■ボア×ストローク:90.0mm×60.8mm ■圧縮比:13.2 ■最高出力:180PS(132.4kW)/10,750rpm ■最大トルク:125N・m/9.000rpm ■全長×全幅×全高:–mm×758mm×1120mm ■ホイールベース:1439mm ■シート高:830mm ■車両重量:200kg ■燃料タンク容量:15L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR-17・190/55ZR-17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:レッドホッパー×ストームグレー、クリスタルホワイト×ストームグレー ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):2,285,000円

 



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2022/06/13掲載