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試乗・解説

ずっと乗っていたくなる楽しさ DUCATI MONSTER+
DUCATI MONSTER 821の後継モデルとして登場した現行MONSTERをレビューする。過去を捨てた新しいフレームに、パワフルかつフレンドリーさに磨きがかかった水冷Lツインエンジン、そして軽量化とまっとうな進化である。上位機種のMONSTER+(モンスター・プラス)に乗ってブラッシュアップされた走りの魅力をお伝えしよう。
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:渕本智信 ■協力:Ducati Japan https://www.ducati.com 、JAIA https://www.jaia-jp.org/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、KADOYA https://ekadoya.com/




短い足が地面にとどいてしまう

 シートに腰をおろすと、日本仕様の775mmという数値の低いシート高に驚く。身長170cmの66kg、一般的な体型より短足を痛感することがよくある私で両足裏が地面にベタ着きして少し余裕まであるのは、クルーザーを除くとなかなかない。これだけで、このDUCATI MONSTER+がターゲットユーザーを幅広くしたことがわかる。

 このモデルは初代から採用してきたトレリスフレームにさよならをした。Lツインエンジンを強度メンバーとして大いに活用し、トレリスのかわりに鋳造されたアルミ製フロントフレームを取り付けた。これは走りだけでなく視覚的にも変化をもたらしている。
 リアのフレームは、それとは分離されて、エンジン後方シリンダーのヘッド部分とクランケースに接続した、ガラス繊維強化ポリマー(GFRP)でできたもの。これはパニガーレでやったのと同じ考えだ。結果、シートの幅からそのまままっすぐ足をおろしている感覚になる細身を手に入れた。良好な足着きだけでなく、ライディングをしていてバイクと一体になっていることを強く感じるフィット感にもつながっている。
 

 

軽くなることに何の不満があろうか

 そしてとにかく軽い。937ccとは思えないほど。旧モデルのMONSTER 821より排気量アップしながら乾燥重量166kgとより軽く、それは乗っても押しても実感できる。アップハンドルのグリップを掴んで、気持ち程度の前傾姿勢で速度を上げながらスラロームをやってみた。内側ステップに荷重して倒し込むとときの反応の良さ、俊敏な動きが実に気持ちいい。使い古された“ヒラヒラ”という擬態語を使うことを躊躇しない軽快感。それは400ccくらいのネイキッドに乗っているかのよう。
 ハンドル切れ角が36°になって、試乗コースにあった小さくUターンする場面でも困らない。ライド・バイ・ワイヤシステムで、スロットルバルブにECUが介入して適正にする効果で、低回転域のままパーシャルでゆっくり進む場合でも神経質なそぶりをみせずUターンのやりやすさにつながっている。MONSTER 821であった低回転域で多少ギクシャクしたところが影をひそめた。
 

 

どこでもアンダーコントール

 水冷4バルブのテスタストレッタ11°エンジンは、コンロッドやピストンなど細部の重さを削ってMONSTER 821より単体で2.4kgも軽量化されている。最高出力は821より2PS増えた111PSで、最大トルクは86Nmから7Nm増えた93Nmを、より低い6500rpmで発生。軽量化してパワーアップという事実は正当なパフォーマンスアップのレシピ。
 3つあるライディングモードを最もハイレスポンスなスポーツモードにして、スロットルを大きく開けると、6千回転付近から加速が勢いづいて、1万回転付近まで簡単に回りきる。思いっきり走ると、ちゃんと速いけれど、エンジンパワーはしっかり路面に伝わって、確実に前に進ませ、さらにそれが手の内にある感覚。持て余すところがない。
 

 

走るおもしろさがモンスター級

 ブレーキは申し分なく効いて、低速域からしっかり動いて突っ張る印象がない前後サスペンションは、飛ばしても不満のない減衰でタイヤを路面から離さない。
 素晴らしいほど身軽なフットワーク、もどかしくない加速で唐突に力が出るところがなく扱いやすくて最後まで使い切れるエンジン。私の中にある、走るのが楽しくてしかたがないスポーツバイクの基準を満たしている。
 シフトアップだけでなく、コーナー進入に向けての減速でも単純に踏んで落とすだけで強いエンブレも感じられずに決まるクイックシフトもうれしい装備。旋回しているときも安定しておりまったく難しくなく曲がれる。ウキウキするようなスポーツライディングする魅力が詰まっていながら、ビギナーにもおすすめできる乗りやすさだ(シート高も低いし)。

 取って食われるようなMONSTER=怪物と思うところは前のMONSTER 821ですらなかったから、表現するなら、モンスター級のフレンドリーさと走るおもしろさ、である。正直に言って個人的にこういうのにめっぽう弱く、操りながら欲しい欲望がふつふつとわいてきて困った。
 

ライダーの身長は170cm。写真の上でクリックすると、両足着き時の状態が見られます。

 

水冷4バルブデスモドロミックL型2気筒のテスタストレッタ11°エンジン。MONSTER 821より排気量を116cc増やした937cc。それでいてエンジン単体は821より軽い。MONSTERシリーズの伝統であったトレリスフレームをやめて、鋳造されたアルミのフロントフレームを採用したことが新しい。この変更でフレーム単体も軽くなっている。変速は6段で、アップ&ダウンに対応したクイックシフターが標準。

 

タイヤはPIRELLI DIABLO ROSSO III。倒立式フロントフォークのインナーチューブ径はφ43mm。低速域からしなやかに動く。ホイールは前モデルのMONSTER 821より前後で約1.7kg軽量になった。ラジアルマウントされた4ポッドモノブロックキャリパーはブレンボ製。ローター径はφ320mm。コーナーリングABSを備える。
エンド部まで凝ったデザインの右側2本出しマフラー。片持ちではなく、両側にある一般的なスイングアームはMONSTER 821より1.6kg軽い。リアサスペンションのショックはプリロード調節が可能。ステップ位置が以前より10mm下がり35mm前に。これでよりリラックスした下半身になり身長が高い人でも窮屈に感じさせにくい。

 

ハンドルはアルミテーパーバー。MONSTER 821 よりライダーに近づいてアップされたことで前傾姿勢が弱まった。ハンドル切れ角は左右36°電子制御スロットルを採用してスポーツ、アーバン、、ツーリングと3つあるライディングモードはハンドルスイッチで簡単に変更ができる。メーターは4.3インチのカラー液晶ディスプレイ。トラクションコントロール、ウイリーコントロール、ローンチコントロールなど現代的な電子制御も抜かりない。

 

日本仕様は775mmと1000ccに近いネイキッドスポーツとしてはかなり低い。運転席の座面はえぐったような形状。立体形状のシートフレームはガラス繊維強化ポリマー(GFRP)製で、後ろバンクのシリンダーヘッドとクランクケース後ろ側にボルトオン。これで細い車体を実現。
MONSTER+は標準MONSTERにヘッドライト上のマイクロビキニカウルがついて、パッセンジンジャーシートカバーがついたスポーティーなルックス。フルLEDのヘッドライト。シュラウド部分に帯状に入ったLEDウインカーはシーケンシャルタイプ。ミラーも含めて斬新なデザインだ

 

●Monster +
■エンジン種類:水冷4ストロークL型2気筒DOHC 4バルブ ■総排気量:937cm3 ■ボア×ストローク:94.0mm×67.5mm ■圧縮比:13.3 ■最高出力:82kW(111PS)/9,250rpm ■最大トルク:93N・m(9.5kgf・m)/6,500rpm ■全長×全幅×全高:–mm×–mm×–mm ■ホイールベース:1,474mm ■シート高:775mm ■車両重量:166kg(乾燥) ■燃料タンク容量:14L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17・180/55ZR17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:ドゥカティ・レッド、アビエイター・グレー、ダーク_アウテルス ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,525,000円

 



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2022/04/29掲載