YAMAHA TMAX560 ABS/TMAX560 TECH MAX ABS 車両解説
スタイルはスクーターに似ていながら、走行性能はスポーツモデル、というユニークな乗り物「TMAX」が国内市場にも導入されて20年を超えた(2001年8月に国内発売開始)。その後、他社からも“オートマチック・スポーツモデル”が登場するなど、スポーツモデルに対するオートマチック化は徐々に広まってきているが、それにしてもこの20数年で劇的な変化があったかと言えば、残念ながら未だあくまで独自のモデル、バリエーション的なものとしてしか認知されていないというのが現状だろう。ホンダのDCT車の登場でも、かつてクルマの世界で起こったオートマチック化への雪崩現象が起こってきているとは、まだまだ言えない。
そんな世間の情勢はともかく、この間、TMAXは熱烈なファンを着実に増やしてきたのは事実。オートマチックがどうのこうのではなく、「TMAXのスタイル」、「TMAXの走り」、TMAXそのものが支持されてきた証だ。支持されていればこそのロングセラーになりつつある。
最近では、2018年5月にカラーリングを変更した2018年モデルをリリース。ベーシックモデルのTMAX530 SX ABSと、クルーズコントロールや電動調整式スクリーンなどが与えられたデラックス版のTMAX530 DX ABSでは若干設定が異なり、「マットダークグレーメタリック8」が共通の新色で、それぞれもう一色、「マットシルバー1」がSX、DXでは「マットダークパープリッシュブルーメタリック1」がそれぞれの専用色となっっていた。
2019年2月には、2019年モデルとしてさらにカラーリング設定を変更。SXでは新色の「マットダークパープリッシュブルーメタリック1」1色となり、DXでは「マットライトグレーメタリック4」の新色が登場、継続色の「マットダークグレーメタリック8」1色と合わせて2色のラインナップとなっっていた。
2020年5月のモデルチェンジでは、“Sophisticated MAX”を開発コンセプトに、561cm3へと排気量アップしたエンジンを搭載、環境規制への対応とスポーティかつ低振動の上質な走りを両立、前後サスのセッティングを変更、そしてデザインをリファインしたものだ。
ちなみにこの時に新たにラインナップされた“TECH MAX”というモデルは、TMAX560をベースに、クルーズコントロールシステム、電動調整式スクリーン、グリップウォーマー、シートヒーター、調整機能付きリアサスペンションなどを装備した上級モデル。
2021年4月には“TECH MAX”に新色「パステルダークグレー」を採用、継続色の「マットダークグレーメタリック」と併せて2色のカラーラインアップとした。またスタンダード仕様のTMAX560 ABSの「マットブルーイッシュグレーメタリック3」も継続販売とされていた。
今回のモデルチェンジでは、バネ下重量の軽減を図れる軽量“SPINFOGED WHEEL”を採用(新タイヤ“Accelerator Position Sensor Grip”も採用)しスポーツ性能の更なる向上を目指したという。ちなみに開発コンセプトは「Maximize the Moment」。この他、ヤマハ初の電動タンクキャップ、エルゴノミクスに配慮した新しい機能・装備、スマートフォンとの接続で、ツーリングの楽しさを拡張する7インチ高輝度TFTメーター、TMAXらしいスポーティさを受け継ぎながら一回りコンパクトになったオールニューのスタイリングなど。
★ヤマハ ニュースリリースより (2022年6月2日)
「TMAX560 TECH MAX ABS」「TMAX560 ABS」2022年モデル発売
~バネ下重量低減を図る軽量ホイール、ナビ機能に対応するTFTメーター採用 ~
ヤマハ発動機株式会社は、オートマチックスポーツ「TMAX560 TECH MAX ABS」および「TMAX560 ABS」をモデルチェンジし、2022年7月7日に発売します。
2022年モデルの「TMAX」は、“Maximize the Moment”をコンセプトに開発しました。新たな特徴は、1)軽量“SPINFORGED WHEEL(スピンフォージドホイール)”、新タイヤ、Accelerator Position Sensor Gripの採用などによる、スポーツ性のさらなる向上、2)走行性能に調和させた新ライディングポジション、3)当社初の電動タンクキャップなど、エルゴノミクスに配慮した新しい機能・装備、4)スマートフォンとの接続で、ツーリングの楽しさを拡張する7インチ高輝度TFTメーター、5)「TMAX」らしいスポーティさを受け継ぎながら一回りコンパクトになったオールニューのスタイリングなどです。
「TMAX560 TECH MAX ABS」は、「TMAX560」をベースに、クルーズコントロールシステム、電動調整式スクリーン、グリップウォーマー、メインシートヒーター、調整機能付きリアサスペンション、夜間の視認性をサポートする光るハンドルスイッチ(一部「TMAX」にも採用)を搭載し、快適性を高めた上級モデルです。
- ●発売日
- ●メーカー希望小売価格
- TMAX560 TECH MAX ABS 1,551,000円(本体価格 1,410,000円/消費税 141,000円)
- TMAX560 ABS 1,364,000円(本体価格 1,240,000円/消費税 124,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれていません
- ●販売計画台数
- (国内・年間) 300台
- ●カラー
- TMAX560 TECH MAX ABS
- ・マットダークブルーイッシュグレー メタリック4(マットダークグリーン)
- ・パステルダークグレー(グレー)
- TMAX560 ABS
- ・レディッシュイエローカクテル1(イエロー)
2022年7月7日
- 【TMAX560 ABSの新たな特徴】
- 1)軽量“SPINFORGED WHEEL(スピンフォージドホイール)”、新タイヤ、APSGの採用などによる、スポーツ性のさらなる向上
- 当社独自の“スピンフォージドホイール”技術による10本スポークの軽量アルミダイキャストホイールを採用。慣性モーメントをフロント約10%、リアは約6%低減。スポーティな走りに貢献しています。 また、専用開発のタイヤを採用。あわせてΦ41mm倒立式フロントサスペンションとリアのショックアブソーバーもセッティングを変更しました。前後とも減衰力は、従来モデル比でやや“ハード”な設定です。
- さらに、スロットルケーブルを廃したAPSG(Accelerator Position Sensor Grip)を採用。軽量化とともに自然なアクセル操作感を実現し、高いスポーツ性に貢献します。
- 2) 走行性能に調和させた新ライディングポジション
- スポーティな乗り味をさらに引き出すため、ハンドル、シート、ステップのライディングポジション3点を一新。従来モデル比でわずかに前傾気味としました。 フットボードは前後に面積を広げ、シートは前後に延長。また、工具不要で3段階調整(±15mm)可能なバックレストの採用により、ライダーの居住性を高めています。また、タイトに絞ったボディ造形により、足つき性も向上しました。
- さまざまな体格にマシンをマッチングさせるだけでなく、“腰と足”で車両をホールドした一体感のあるポジションと、広々とした快適で自由度の高いポジションを両立しています。
- 3)電動タンクキャップなどエルゴノミクスに配慮した新しい機能・装備
- 車両の電源をOFFにした後2分以内にヒンジを引き上げるとロックが解除され、キャップを開けることができるスマートキャップ(電動タンクキャップ)を当社では初めて採用しました。
- また、電源のON/OFF、ステアリングロック、シートオープンの操作は、ハンドル下に配置されたセンタースイッチで行えます。
- さらに左ハンドルスイッチのジョイスティックにより、メーターディスプレイの切り替えなど直感的な操作が可能です。
- なお、「TMAX560 TECH MAX」では、エンジンワンプッシュスタートと、発光タイプの左右ハンドルスイッチを採用。スイッチが発光することで、暗いところでも操作しやすくなっています。
- 4)ツーリングの楽しさを拡張する7インチ高輝度TFTメーター
- 大型で見やすい7インチ高輝度TFTメーターを採用。デザインはシーンや好みに合わせて3種類から選択できます。
- また、ライダー自身のスマートフォン情報を車両のTFTメーターで表示するアプリ「MyRide – Link」Appを開発しました。このアプリをインストールし、Bluetooth®経由で車両と接続することで、着信やメール受信、現在地周辺の天気、音楽再生など、スマートフォンの情報を車両のメーターに表示可能です。
- さらに当社とGARMIN社がTMAX560専用に共同開発した二輪ナビアプリ「Garmin MotorizeTM」(有料)をインストールすれば、メーター画面でナビ機能を使用できます。
- ※ 着信と音楽再生はアプリを利用せず、Bluetooth接続のみでも利用可能です。
- 5)「TMAX」らしいスポーティさを受け継ぎながら一回りコンパクトになったオールニューのスタイリング
- 「The Beast unveiled」をデザインコンセプトに、TMAX固有のスポーツ性を際立たせるため、ボディをコンパクト化しました。また機能部品をあらわにすることで、メカニカル感・信頼感を表現。 TMAXのアイコンである2灯のヘッドランプは薄くシャープな形状にし、空力を意識したフロントカウルは、エアインテークを思わせるスポーティなディテールを採用しました。車体の剛性感を象徴するブーメラン型のフレームカバーは、前へと押し出す力強いイメージとしています。
- 【TMAX560 ABSの従来からの特徴】
- ◎スポーティかつ上質な走りを生む561cm3エンジン
- 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・直列2気筒・360度クランクの561cm3エンジンは、軽量感を維持しつつ、パワフルで低振動、質感の高い動力性を達成しています。扱いやすさはそのままに中高速での加速性、ライダーの意図通りに操れる駆動力特性を獲得。低速から高速にわたって全域で高い駆動力を実現しました。また、スロットルバルブ駆動を電子制御するYCC-T(電子制御スロットル)の採用により、優れたレスポンスを引き出しています。
- さらに滑らかな発進・走行をサポートするトラクションコントロールシステム、走行環境や好みで走行モードを選択できるD-MODE(走行モード切り替えシステム)も搭載しています。
- ◎加速時のエキサイトメントとクルージング時の静粛性を両立したサウンド
- TMAX560の2気筒360度クランクエンジンは、等間隔爆発であるため、音の発生がエンジン回転速度の整数倍になる特性があり、その特性を活かしたサウンドデザインを施しています。
- エンジンに採用されている水平対向の往復式ピストンバランサーが、雑音成分となる振動を打ち消し、加えてエアクリーナー剛性によって音レベルの形状を変更することで、エンジン回転速度の整数倍のサウンドへとチューニング。心地よく官能的な音を追求し、静粛でありながらも、低く力強く成実な排気音を実現しています。
主要諸元
車名型式 | 8BL-SJ19J | |
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TMAX560 ABS〈TMAX560 TECH MAX ABS〉 | ||
発売日 | 2022年7月7日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.195×0.778×1.415 | |
軸距(m) | 1.575 | |
最低地上高(m) | 0.135 | |
シート高(m) | 0.800 | |
車両重量(kg) | 218〈220〉 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 31.7(国交省届出値 定地燃費値※2 60km/h 2名乗車時) | |
22.1(WMTCモード値 クラス3 サブクラス3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | – | |
エンジン型式 | J420E | |
水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 561 | |
内径×行程(mm) | 70.0×73.0 | |
圧縮比 | 10.9 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 35[48]/7,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 56[5.7]/5,250 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | TCI(トランジスタ)式 | |
潤滑油方式 | ドライサンプ | |
潤滑油容量(L) | 3.50 | |
燃料タンク容量(L) | 15 | |
クラッチ形式 | 湿式遠心多板 | |
変速機形式 | Vベルト式無段変速/オートマチック | |
変速比 | 2.041~0.758 | |
キャスター(度) | 26°00′ | |
トレール(mm) | 98 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70R15M/C 56H |
後 | 160/60R15M/C 67H | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | 倒立テレスコピック式 |
後 | スイングアーム(リンク式) | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
※1 燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※2 定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
※3 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。