ベースモデルのチェンジと連動して
新生カタナはGSX-S1000シリーズをベースとしたデザインモデルとして、2017年のEICMAショーに登場したKATANA 3.0 CONCEPTが発端となり、そこからとんとん拍子に市販車デビューが実現したもの。その成り立ちはかつてGSX1100EをベースにGSX1100S KATANAが生まれたのとオーバーラップするのであって、ビッグネームである「カタナ」の裏には優れたベースモデルがあるという図式は今も変わらない。
新生カタナのベースであるGSX-S1000シリーズがモデルチェンジを果たしたのはご存知の通り。ネイキッド版のGSX-S1000は縦目のヘッドライトと斬新なウイング形状を組み合わせたデザインなどで話題となり、また本サイトでも既に試乗記をお届けしている( https://mr-bike.jp/mb/archives/25148 参照)。またカウル付モデルだったGSX-S1000Fの方は更なる大きなチェンジを果たし、車名もGTへと改めてスポーツツアラーとしての新提案をしてくれている( https://mr-bike.jp/mb/archives/24630参照)。
いずれのモデルも、ユーロ5規制に対応しつつパワーアップを果たすなど先を見据えた進化をしていて、兄弟車と言えるカタナも連動してモデルチェンジするタイミングである。
2022のカタナはこうだ!
写真を見てもわかる通り、ルックス上の変化は主にカラーリングによるところだ。そのカラーリングだが、濃紺のような「メタリック マット ステラー ブルー」と、ガンメタのような「ソリッド アイアン グレー」の2色展開。いずれもマット仕上げである。加えて黒かったフォークのアウターパイプはゴールドになり、リアサスのスプリングは赤からグレーになり、ホイールも先代の黒から各車体色に合わせた、シックな深ゴールド系とでも言おうか、そんな色合いに変えられた。
先代はスズキのヘリテイジを最大限リスペクトしもっと鮮明に「カタナのカムバック」をアピールしたかったのに対し、新型は「2022年らしいクールなルックス」を追求したといい、シートのツートーンカラーもより落ち着いたものとなっている。先代と見比べるとその意図が良くわかるが、確かに先代は当初の空冷カタナを強く意識させるのに対し、新型、特にブルーの方はいい意味で「脱カタナ」を果たしているようにも感じさせる。この進化により当時を懐かしむ層だけではなく、シンプルに「他にはない独創的で楽しそうなバイクが欲しい!」という、より若いライダー層にもアピールできそうに思えた。
なお、全てLEDとした灯火類やショートテールデザインにスイングアーム付けとしたナンバーホルダーなどのデザインは先代と同様。キーには新たにカタナのロゴが入るようになる。
ユーロ5対応&パワーアップ
エンジンはGSX-S1000同様のアップデート
厳しい環境規制に対応しつつも、さらにパワーアップをしていくのは大変なチャレンジだろうが、ベースモデルであるGSX-S1000はこれを達成しており、これをベースとするカタナも同様の動力性能が与えられている。その内容についてはGSX-S1000のページでも触れたが、電子制御スロットル、電子制御スロットルボディの採用、エアクリーナーボックスの容量拡大、バルブのオーバーラップ減少といった変更で達成。なおトルクのピーク値は若干減少しているのだが、先代にあったトルクの山や谷を均したことで平均トルク値はむしろ向上させている。これはかつてφ44mmだったスロットルボディをφ40mmへと絞ったことにもよるだろう。
既に試乗済みのGSX-S1000では増強されたトルクは十分感じ取れるもので、また先代では過敏に感じる場面もあったアクセルレスポンスはドライブモードセレクターの導入と共に綺麗に消し去られて非常に扱いやすくなっていたため、新型カタナも同様な進化を果たしているに違いない。
電子制御充実は現代のトレンド
先代もABSやトラコンは備えていて必要十分だったが、新型ではトラコンが先代の3モード+OFFから、5モード+OFFへと細分化された。この他上下方向で使えるクイックシフターが新採用され、またドライブモードセレクターも追加された。ドライブモードセレクターは既にVストローム1050やハヤブサで使われているものと同様で、A・B・Cの3つのモードを用意するというもの。いずれのモードでも最終的に到達するパワーは同じなのだが、そこに至るレスポンスが違うため、バイクの使用環境によって使いやすいエンジン特性を選べるようになっている。なお今のスズキ車では標準となってきたセルボタンワンプッシュでエンジンが始動する「イージースタートシステム」や、クラッチ繋ぎしなに回転数を自動で上げて発進を補助してくれる「ローRPMアシスト」機能はもちろん搭載している。
カタナを脱するカタナとなるか
各社共にクラシカルモデル、ネオレトロ、ヘリテイジ、などとネーミングされたこういったモデルを展開しているが、新しいカタナはそんな中で上手にカタナらしさを入れ込みながらも未来的なデザインへと進化を続けていると言えるだろう。スペック的にもベースモデルと同じ数値を誇っており、足周りや電子制御も「こういったカテゴリーだから」という差別化はせずにベースモデル同様のトップクラス装備をまとう。
むしろカテゴリーに縛られることなく、ある意味「カタナ」というブランドの殻を破るような進化をしてくれていると感じる。あの新型GSX-S1000の走りとこのルックスが組み合わさるなら……日本市場でも大きく歓迎されることだろう。導入が楽しみである。
(解説:ノア セレン)
●全長×全幅×全高:2,125×830×1,110mm、ホイールベース:1,460mm、シート高:825mm、装備重量:215kg●エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ、排気量:999cm3、ボア×ストローク:73.4×59.0mm、最高出力:—kW(–PS)/–rpm、最大トルク:–N・m(–kgf-m)/–rpm、燃料タンク容量:12L、変速機形式:常時噛合式6段リターン、タイヤ:前・120/70ZR17 M/C(58W)、後・190/50ZR17 M/C(73W)●欧州仕様
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