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試乗・解説

4速から5速になったって 悔しくなんかないんだからねっ! Honda Monkey125
昨年の今ごろかな、晩秋の頃
今の愛車、モンキー125を買ったのです。
可愛らしい、よく走る、燃費もいいし、乗り心地もいい。
欠点なんか見当たらないくらい気に入ってるんだけれど
唯一、ここ残念だな、と思っていたのが
4速ミッションだったんです!
え? 新型だって? え? 5速ミッションだって?
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:赤松 孝 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/  ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html クシタニ https://www.kushitani.co.jp/






 

5速ミッション化でどーなった?

 125ccになった新世代モンキーは、ホンダ原付ニ種シリーズの中にあっても人気モデルです。
 かつての50ccバージョンは、前後8インチホイール/全長1m36cm/ホイールベース89cmというミニサイズということもあって、実用的街乗りのバイクというよりは、ホビー用というかカスタムバイクのベースというか、1/1サイズのプラモデル的人気もあったんだけれど、125ccとなった新世代は、前後12インチホイール/全長1m71cm/ホイールベース1m15cmとなって、GROMやApe的なミニバイクサイズになって、じゅうぶん実用に耐えるようになりました。もちろん、8インチの50ccモンキーを使い倒しているオーナーさんもいらっしゃいましたけどね。
 そんなモンキー125を、2020年秋に購入しました( https://mr-bike.jp/mb/archives/19139 参照)。原付二種の便利さ、使い勝手の良さに気がついて、この10年ほど125ccモデルのある生活をしているんだけれど、KTMの125DUKE、ホンダCB125Rに続いてモンキー125としたのでした。CBから買い替えた理由は、CBの本格的なスポーツ性能を気に入りつつ、もう少し気軽に乗りたいな、もっとトコトコ走りたいな、と思ったからです。
 僕は、125ccスポーツの良さのひとつを「飛ばそうと思わない」走りだと思っています。事実、125で街乗りしていると、まるでスピードを出さない自分に気づきましたね。もちろん、原付ニ種ですから、まわりのクルマと制限スピードは同じで、流れに乗って走っていいんですが、それすらせずに、流れからあえて外れて気持ちのいいスピードで走るようになりました。
 125DUKEの時は「125だってこんなに速いんだぜ」ってまわりのクルマやバイクと競っていたのが、CB125Rで「125だから流れに乗って走れるんですよ」って走るようになって、モンキーでは「125だけどのんびり走りますよ」って走り方になりました。もちろん、のんびり過ぎて流れを妨げない程度に、です。
 

写真手前が新型モンキー125、写真奥は筆者中村の「旧型」モンキー125です。パッと見では、タンクの塗り分けとホイール、スイングアームの色コーデが違います。

 
ああ モンキーは125ccとなって実用的な街乗りバイクになりました。まわりのクルマのスピードと同等で走れる、つまり交通の流れに乗って走れるのが大きくて、10psもないパワーではあっても、最高速度はメーター読み120km/hオーバーの実力もあります。(そんな動画は兄弟誌オートバイのwebサイト Webオートバイhttps://www.autoby.jp/_ct/17251268)。
 もちろん、普段のスピードは公道のリミット60km/hと言ったところがマックス。このスピード域ならば、信号発進でモタつくこともなく、まわりの交通の流れを妨げず、それどころか流れをリードすることだって可能。もちろん、それに対応するブレーキングも能力充分だし、ABSだってついている。
 もちろん、ハンドリングだってニュートラルで安全、ブロックタイヤだからハイグリップとは言わないし、コーナリングが速い云々、そんな走りはモンキーに求めてないもの。
 DUKEにもCBにもなかったモンキーのいいところは、シートがフカフカなこともあります。これで、ロングランも苦にならないので、フラッと日帰り100kmなんてツーリング、よくやってます。
 

 
 その気に入っているモンキーですが、唯一ミッションが4速なのが残念だって思っていました。もちろん、5速にしてもっとスピードを出したいって意味ではなくて、ついつい「幻の5速」に入れちゃうんです。ローギアで発進、2速、3速、4速とシフトアップして巡行スピードに達して、5速に入れるつもりでスカッと空振り(笑)。これ、1年以上乗っていても、まだ時々やりますね。
 それが! なんと新型モンキー登場です。新型はなんと、5速ミッションの新エンジンを投入! ひゃー、唯一の不満点、解消しちゃったか~!
 新エンジンは、ロングストローク化を図って圧縮比を高め、新規排気ガス規制(令和2年規制)に対応したものです。ロングストロークって言うのは、旧型(僕の初期モデル)がボア×ストローク=52.4×57.9mmなのに対し、新型はGROM125やスーパーカブC125と同じ50×63.1mm。一般的に言うと、スモールボアのロングストロークは、低回転トルク型と言われています。
 新規排気ガスに対応するのは、つまりインジェクションが燃料を薄く吹くことです。その分、低回転トルクが薄くなるものを、ギアレシオをローギアードにして、5速化した、ともいえるのです。
 ギアレシオは旧型→新型で下のように変わっています。
1速:2.500→2.846
2速:1.550→1.777
3速:1.150→1.315
4速:0.923→1.034
5速:なし→0.843
 これまでの4速レシオを、さらに高低に広げて5つに割り振った、という感じでしょうか。1速から4速までを旧型よりローギアード、つまりダッシュ型にして、5速を旧型の4速よりもハイギアード、つまり最高速寄りにした、ということです。
 二次減速比も2.266→2.642とややローギアード化されていて、ドライブスプロケットが15→14丁に、ドリブンスプロケットが34→37になっています。一次減速比も3.350→3.040になっていますが、一次減速比が同じだと仮定すると、スプロケットはドリブン換算で6丁ローギアードになっていることになります。
 

 
 今回は、新型の試乗場所に僕の旧型(なんか悲しい響き・笑)で乗りつけて比較試乗したので、変化は明確。ミッションの5速化だということのほぼそのままで、ダッシュが力強く、例えば60km/hで走った時の5速のクルージング時は、同じスピードでもエンジン回転が抑えられている、という感じです。当然、燃費も良くなっていて、WMTCモード(Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycle=バイク専用の世界統一燃費計測方式)のカタログデータでは旧モデルが67.1km/L、新型は70.0km/Lです。僕が実走しての実質燃費も約65km/Lくらいですから、ほぼ実際と変わらないデータ、ということは2~3km/L伸びる、ということです。
 もちろん、この変化は旧型で「トップギア4速で走っていると失速するような、例えば上り坂で、3速にシフトダウンすると回転が上がりすぎちゃう」ようなシーンで、新型は4速でフィットしたり、と細かいメリットは多いんですが、そう大きな違いではないと思います。
 

 
 圧縮が高まっていることに関しては、爆発が少し力強い気がします。一発一発が歯切れよくなって、パルス感が感じられるパワー特性になった感じ。とはいえ、この差はかなり微妙なもので、同時に乗り比べて初めて「ん?ちょっと違うかな」と感じるくらいでした。
 リアサスが仕様変更していたり、ホイールベースが10mm短くなったなど、その他の乗り味は、目隠しすれば気づかないレベル。つまり今回のモデルチェンジのトピックは、新規排気ガスに対応した、5速ミッションの新型エンジン採用に尽きる、と言っていいでしょう。ABSなしバージョンは廃盤となって、ABS標準装備の1グレードで、価格も税込44万円と据え置きです。
 そもそも、ミッションが4速か5速か、または5速か6速か、っていうのは昔から議論されていたことで、あのCBX400Fが6速なのにCB750Fはなぜ5速なんだとか。でもそれは、トルクが小さいエンジンだから多段化するというのがセオリーですから、いわばモンキー125が旧型から新型になったのも、限りあるパワーをより効率的に、ということでもあるんです。
 4速だからって悔しくないんだからねっ!
(試乗・文:中村浩史)
 

 

新型エンジンはロングストローク化、圧縮比アップ、5速ミッションの採用のほか、オフセットシリンダーやローラーロッカーアームを新採用。これはフリクションロスを低減する手法で、出力特性を向上して燃費を良くするもの。旧型から新型になって、外観上の違いも大きくはないが、オイルフィラーキャップがクラッチカバーのメッキリングの前方に移動。プラグキャップ上のカムタワーデザインも角型から丸型に変更された。

 

ブレーキは変わらず2ポッドキャリパーのシングルディスク。旧モデルではABS装着/非装着モデルが選べたが、新型はフロントのみABSを標準装備。倒立フォークのアウターチューブはボディ同色としている。

 

リアサスは等ピッチスプリングから不等ピッチのダブルレートに変更。旧型はボディカラーごとにスイングアーム色も揃えていたが、新型は全ボディカラーともマットグレーで、ホイールカラーもシルバーからグレーに。

 

ボディカラーは黒=パールシャイニングブラック、青=パールグリッターリングブルー、赤=パールネビュラレッド。タンクの塗分けラインが変更され、ボディカラーが下半分に。タンク形状、容量は変わらない。
モンキーの人気ポイントのひとつが、この肉厚シート。ミニバイクサイズながら、ステップとの間隔をとるためかシート高も高く設定され、クッション厚もあってロングランが苦にならない。両前方下のボルトで取り外せる。

 

丸型のLEDヘッドライトも変わらず。ロー/ハイビームを囲むようにポジションランプを配置したデザインで、実はオーナーたちの間では、ライトオフ時によーく見ると「サルが笑っている」ように見えるデザイン。
ヘッドライトをはじめ、丸テールランプ、ウィンカーともLEDを採用。LED採用という新しさと、丸デザインのクラシカルな組み合わせが新旧ミックスな感じ。これもモンキーという伝統を受け継いでいる証だ。                                                                                                                                                                                                                                                             

 

ヘッドパイプ位置は低いけれど、アップハンドルを採用して自然なライディングポジション。メーターはフルデジタルで、スピード表示上に燃料計、下側にオド&ツイントリップを表示。燃料計は6目盛りだが、ラスト1目盛りが点滅=給油しなさいよ、なサインが出てから100kmは走れる。筆者は5.6L容量の1タンクで300kmくらいをめどに給油しています。メーターに時計があると便利だな、と思います。

 

キーロック式の左サイドカバーは書類と車載工具入れ。サイドカバー後方にヘルメットホルダーがあるのはありがたいけれど、ロック位置が奥まっていて使いづらく、ヘルメットロック用ワイヤーが付属されている。

 

アップマフラーはエンドキャップのデザインが一部変更。マフラーはアップタイプのため、右サイドカバーはなく、マフラー交換でダウンタイプに変更したい時用に、社外パーツの右サイドカバーも発売されている。
写真は初期4速ミッションモデルのフレーム&スイングアーム&リアサスペンション構造。リアサスはスプリングが不等ピッチとなったくらいで基本構造は変わらず。ただし、旧型は4色のボディカラーに合わせてフレーム、スイングアームも4色そろえられていたが、新型はマットグレーに統一された。4速ミッションオーナーはここを自慢しよう(笑)。

 

●Monkey125 主要諸元
■型式:8BJ-JB06 ■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■総排気量:124cm3 ■ボア×ストローク:50.0×63.1mm ■圧縮比:10.0 ■最高出力:6.9kW(9.4PS)/6,750rpm ■最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/5,500rpm ■全長×全幅×全高:1,710×755×1,030mm ■ホイールベース:1,145mm ■最低地上高:175mm ■シート高:776mm ■車両重量:104kg[107] ■燃料タンク容量:5.6L ■変速機形式:5段リターン ■タイヤ(前・後):120/80-12 69J・130/80-12 69J ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク(ABS)/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:パールネビュラレッド、パールグリッターリングブルー、バナナイエロー、パールシャイニングブラック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み): 440,000円

 



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2021/11/19掲載