車いすドライバーとしてついにこの8月にフランスのル・マン24時間レースに参戦を果たした元WGPライダー、青木拓磨を再びバイクに乗せるという、2019年の鈴鹿8耐の場で実現した「Takuma Ride Again」のプロジェクトから派生した一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)のプログラム「パラモトライダー体験走行会」。
「パラモトライダー体験走行会」は、事故などで障がいを抱えてしまって、2輪車を諦めた人に再びオートバイに乗ってもらって、オートバイに乗る趣味を一緒に楽しんで行けるように応援する企画。昨年からスタートしたこの企画も2020年に6回開催され、2021年はすでに4回が開催されている。その体験走行会の舞台は、他に車両のいない状態で走行が可能なサーキットや、休校日の自動車教習所となる。主として千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイを使用しているが、6月には鈴鹿サーキットでも開催されている。
この体験走行会では、シフト操作ユニットをSSPが独自に組み込んだ車両を使用する。左側のハンドル近くにシフトスイッチを用意しアクチュエーターで直接シフト操作をする。下半身は、両腿を留めるシートベルト、そしてライディングブーツとバイクのステップをビンディングで接合することで固定。発進と停止の際には、ボランティアスタッフがバイクを支えることとなる。バイクに乗る際に必要となるライディングギアについては、SSPがヘルメットからツナギ、ブーツまで必要な装備をすべて用意する。今回、サーキット走行にはMVアグスタ・ストラダーレ800&ドラッグスター、BMW F750GS&R1250Rが用意されている。
これまで数多くの参加者が、再びバイクに乗るという貴重な体験を経験している。参加者は主に、拓磨選手と同じく脊髄損傷によって半身不随となり、車いす生活を余儀なくされた参加者が多い。今回は脊椎損傷(Th12-L1)による下半身の完全麻痺の古谷 卓さんと長田龍司さんが参加。さらに大腿切断による義足の丸野飛路志さんと諸隈有一さんが初参加となる。
ちなみにこの4名はいずれもバイク事故による障がいという。にもかかわらず再びバイクに乗りたい、そして乗れたという感動はひとしおである。
プログラムに参加するには、まずSSP専属の理学療法士が参加者の問診を行ない、参加の可否を判断。参加できると判断されたところで、実際にバイクへの乗車体験を行なうのだが、まずはパドックなどの広場でアウトリガー補助輪付きの小型車両で車両の制御ができるかを確認。ここで走行に問題がないとなれば、トルクの太い大型車両に乗り換えサーキットの周回コースを先導車付きで走行することとなる。
小雨が降ったり止んだりする天候で、路面は常にウエットの状態だったものの、転倒に注意しながらも各参加者は順調に走行を体験した。
今回は、所用で少し遅れて会場に参加者が合流した。それが視覚障害の縫田政広さん。7月に開催となった神奈川県の向ヶ丘自動車学校での体験会には参加済みで、今回2回目の参加となる縫田さんは、先の4名がサーキット走行を重ねているタイミングでパドックで走行確認を行った。
SSPではアウトリガーのタイプの異なるアウトリガーを数種類用意しているが、前回の自動車学校での走行会で縫田さんはSide AssistType1(補助輪が低く設定されておりオートバイが傾かないようになっている)で走行。今回はパドックでType 2(補助輪が約10㎝地面から浮いている)、さらにType 3(補助輪が約20㎝地面から浮いていてコーナーを曲がれる)でチャレンジし、これをクリアしての本コースデビューとなった。
縫田さんの参加に際し、SSPでは、サインハウスの協力によりバイク用インカムB+com(ビーコム)を使用、スタッフが走行を指示することで走行をしてもらうこととなった。今回は縫田さん以外にも全パラモトライダーにこれを装着し、コミュニケーションを取りながら走行を楽しんでいる。縫田さんの今回のサーキットデビューについては、念のためアウトリガー付きの車両を使用し、車両が並走し、進行方向や曲率を指示しながらコースを一周した。途中コースアウトする場面もあったが、無事にコースを周回することができた。
※次回のサイドスタンドプロジェクト(SSP)の「パラモトライダー体験走行会」は、9月19日(日)に群馬県自動車学校での開催を予定している。
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