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試乗・解説

CB400 SUPER BOL D'OR 今や唯一の4気筒400cc SRを超えるロングセラーになってほしい 不滅の名機、スーパーフォア
「ホンダらしい4気筒モデルを」とスタートしたホンダBIG1プロジェクト。
本命の1000ccより先に発売された400はもう誕生30年に迫る
超ロングセラーモデルになりつつあります!
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:折原弘之 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/■ウエア協力:クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




登場時から完成度の高かったロングセラー

 ホンダのヨンヒャクといえば、たくさん名車が思い浮かぶ。僕の世代だとヨンフォアことCB400FOURでしょ? ホークにCBX400FにCBR400F。その先はCBR400RRなんてモデルもあった。
 けれどそれらは、発売期間がほんのわずか──というか、この頃で言えば普通の期間だった。ヨンフォアは免許制度の改正で408ccと398ccとか別に作らされちゃう悲運に見舞われての発売期間は3年だったし、そのフォアよりも快速だって投入された2気筒モデル・ホークは4年、満を持して再投入されたCBXは再販時期を含めて4年、CBRは3年。
 その意味で、異例の、それも超異例の長寿モデルとなっているのがCB400 SUPER FOUR(=400SF)。発売期間はなんと約30年! 1992年4月に発売<写真①>されているから、この2021年で29年、スーパーカブ、SR400に続くロングセラーと言っていいでしょう。

 デビューした時のことも覚えています、まだ肌寒い時期、千葉は房総でメディア向けの試乗会が行なわれて、カッコいいねぇ、スゴいヨンヒャクが出たねぇ、と編集部のみんなと話した記憶があります。ムカシのバイク、しかもそれが30年も前となると「当時はすごかったけど現在の目で見るとねぇ」なんてこともあるんだけれど、400SFにはそれがない。きっと現在の僕が30年前の初期モデルに乗っても、カッコいい、スゴいヨンヒャクが出たなぁ、と思うだろう。
 

 
 その400SF、デビューして29年で少しずつ、それから大きくガラッとモデルチェンジを重ねて現在に至っています。
 発売2年後の94年には出力特性を変更、3連メーターとしてハザードランプを追加し<写真②>、95年にはビキニカウル付きのバージョンRを追加<写真③>。96年にはバージョンRのカウルレスバージョン、バージョンS<写真④>を追加。
 96年のうちに、キャリパーを4ピストンに、バージョンSはブレンボキャリパーを標準装備しました。ここまでが「三角サイドカバー」と呼ばれる400SFの第一期です。
 99年には400SFをフルモデルチェンジ<写真⑤>。回転数に応じて2/4バルブと切り替えるハイパーVテックを採用してフレームを新作。前期モデルのバージョンSのような別体サイレンサーになったのもこの型からです。
 2000年にはリアサスを赤スプリングに、01年にはタンデムステッププレートを黒に、02年にはハイパーVテックを第2世代に進化させ<写真⑥>、03年にはさらにハイパーVテックを第3世代としてシート高を下げ、テールカウルにアルミダイキャスト製のグラブレールを追加<写真⑦>。05年にはフロントフォークにプリロードアジャスターを追加し、ハーフカウル付きのCB400 SUPER BOL D’OR(=400SB)を追加<写真⑧>しました。06年にはウィンカーをスモークレンズにして、これが400SF/400SBの第二期です。
 07年にはエンジンをフルモデルチェンジし、フューエルインジェクション化、さらにハイパーVテックⅢはハイパーVテックRevoへと進化し、ABS&前後連動ブレーキを採用<写真⑨>、次のマイナーチェンジは14年で、ホイールデザインを変更、テールカウル形状を変更してグラブバーを左右分割式に、400SBのみにLEDヘッドライトを採用<写真⑩>。17年には400SFにもLEDヘッドライトを搭載して3PSアップ<写真⑪>、これが現行モデル<写真⑫>まで続いている型。大きく分けて3つのタイプがある、と考えてよさそうです。
 

 

2気筒が楽しい時がある 4気筒が気持ちいい時もある

 今回試乗したのは、現行モデルの400SB。ご存知、400SFをベースにハーフカウルを装着したバージョンで、05年に高速道路がタンデムOKになったタイミングで、CB1300 SUPER BOL D’ORと同時に発売されたモデルです。400SFオーナーもうらやむ、ETC車載器とグリップヒーターが標準装備されていて、価格は400SFの約14万円高だけれど、僕は現行400ccでいちばん装備が充実したモデルだと思っています。

 エンジンは現行400cc唯一の並列4気筒モデル。デビュー時には各メーカーとも4気筒モデルがあったけれど、みんないなくなって、今では400SF/400SBのみ。4気筒がえらい、2気筒がダメなわけでは決してないけれど、4気筒という選択肢もあっていいよね。
 その4気筒、さすがに低速からの滑らかさは他モデルでは感じられないもの。発進の回転域からトルクの出方はじわり、スーッとスムーズにバイクが滑り出す。2気筒エンジンは、この回転域からトトトトト、ってパンチのあるトルクがあるから、スムーズさって意味では4気筒の方が上ですね。
 

 
 発進トルクの上、4000rpmくらいからトルクが盛り上がってきて、6000~7000rpmくらいが中回転域、高回転域は13000rpmまでイッキに回る。このスムーズさ、高回転域のレスポンスのシャープさも4気筒特有のもの。1mmでもアクセルを開けると、リアタイヤが瞬時に反応する。その時の力強さが楽しくて気持ちがよくて、ついつい高回転を回したくなるけれど、ビッグバイクと違って、そういう回転域でも突拍子もないスピードが出てしまうわけじゃない。これが4気筒400ccの楽しさだなぁ、と思います。
 ついついいつもよりもアクセルの開閉頻度を多くして走っていると、ある回転域を境に排気音が太くなる。それが、ハイパーVテックRevo。2バルブから4バルブに切り替わった瞬間が音でよくわかるようになっていて、タコメーター数字にマーキングがしてある「6300rpm」で切り替わり、サウンドが一段太くなるんです。ただしこれ、6速のみ6750rpmで切り替わります。

 ただし、これがハイパーVテックⅢ→Revoに進化した過程で、アクセル開度もセンシングして切り替え回転数が制御されていて、アクセル開度が大きい(=ガッと開ける)と、この回転数、またはもっと「急加速したいんだね」ってバイクが判断したら、瞬時に4バルブに切り替わって音が太くなるんだけれど、開度が小さい(=ジワーッと開ける)ともう少し上の回転域で切り替わるようになっているんです。スゴい制御!
 2→4バルブの切り替えは、もちろんそれぞれのメリットを生かすためのもので、一般的に2バルブ=トルクが太くて燃費がいい、4バルブ=レスポンスよくパワーが出る、っていう特色があるので、これを両立したいためのハイパーVテック。アイドリングすぐ上、2000rpmから12000rpmまでキッチリ使える4気筒400ccエンジン。これは間違いなく歴史に残る傑作エンジンですね。
 

 
 車体の動きも、ごく標準的。取り立ててクイックなわけではない、安定性をきちんととったハンドリングで、特にフロントタイヤにハッキリとした接地感がある。これって、初心者やキャリアの浅いライダーに「怖さがない」って、すごく有り難いキャラクター。のんびり走っても、ペースを上げて走っても、この性格が変わることが少ないハンドリングです。
 車両重量は400SFで201kg、400SBで206kgと、2気筒モデルであるCBR400Rと比べると10kgほど重いけれど、低重心に仕上がっていることもあって重いと感じさせず、安定性に振っているのがわかります。

 高速道路に乗り入れると、4気筒400ccエンジンのよさが際立ってきます。低回転からスムーズに加速して、一定回転で走る穏やかさ、力感が2気筒とはハッキリ違いますね。やっぱり4気筒のシルキーさ、イイなぁ。バイクに乗っていて「気持ちいい」って思う瞬間のひとつです。
 トップ6速で走っていると、80km/hは5000rpm、100km/hは6300rpm、120km/hだと7500rpm。ハイパーVテックRevoは6速6750rpmで2→4バルブに切り替わるので、110km/hくらいまで2バルブで作動しているってことになる。けれど、これから先は高速道路の最高速度が引き上げられて、120km/hで走っていい区間も増えてくるだろうから、2→4バルブの切り替えが6速のみ7500rpm+αに変更された「ハイパーVテックRevoⅡ」なんてバージョンが出るかもしれないですね。
 

 
 ハイパーVテックがⅡ→Ⅲに進化した時、エンジニアの方と、こんなお話をしたことがありました。ハイパーVテックⅡからⅢへの進化は、バルブ作動数の切り替えを、6速だけ切り替え回転数制御を独立させる、というものだったことについて。
──なんでわざわざこんなことを?
「高速道路を走っていて、100km/h+αくらいの回転数で切り替わるように設定しました」
──そうするとクルージングの時に燃費が良くなる、と。
「6速100km/hを2バルブで走ると、燃費が3km/Lくらい上がるんですよ」
──はぁ、3km/L……。すごいっすねぇ……。(←あんまりスゴいと思ってない・笑)
「ん? あんまりスゴいと思ってないでしょ」
──いやいやそんなことないです。3km/L大事っすよ。(←あんまりスゴいと思ってない)
「3km/L上がるとどうなると思う?」
──ガソリン代が助かりますね。(←あんまりスゴいと思ってない)
「ふふふ、そうじゃなくて、高速道路を使ったツーリングだとね、400SFは18Lタンクだから、給油タイミングがサービスエリアひとつ分、伸びるんですよ! ここにこだわってテストして実証もしたんです」
──!!!(←ここでスゴいと思いはじめた・笑)

 ただ単に燃費を伸ばすだけではなく、ツーリングでの使い勝手を考えて、実際にユーザーが分かりやすい変更にする──ホンダの、そしてCB400SFへの想いがよくわかる。かように、ホンダユーザーは、ホンダに、または各々のモデルのエンジニアに愛されているのだなぁ。CB400SUPER FOUR、そしてCB400SUPER BOL D’ORは、SR400を超えるロングセラーになってほしいです! 
(試乗・文:中村浩史)
 

 

ライダーの身長は178cm。

 

水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブというフルスペックのCB400SF/SBのエンジン。初登場以来、細かな熟成が重ねられ、現在では400ccモデル世界唯一の4気筒エンジン。最高出力は56PS、ちなみに2気筒のCBR400Rは46PSだ。

 

ハイパーVテックの概念。2バルブエンジンと4バルブエンジンのいいところを両立するために、休止するバルブに切り替えピンを設け、規定回転数以下ではカムシャフトが「空振り」してバルブが休止する。ホンダは1983年発売のCBR400Fでも「REV」というバルブ切り替えシステムを実用化していた。

 

ホイールデザインも一新した現行モデル。ブレーキはφ296mmローター+4ピストンキャリパーをダブルで装備。ABSも標準装備している。特筆すべきはエアバルブをL字型にしてタイヤのエア管理をしやすくしていること。これ、他ぜんぶのモデルに採用してほしい。

 

アルミスイングアームとリザーバータンクつきリアサスの組み合わせ。サスは5段階のプリロード調整が可能。90年頃の2本サス=走らないモデル、なんて風潮を吹き飛ばした。
フューエルタンク容量は400ccとしては異例の大容量18L。今回の取材では最高で燃費25km/Lを記録したため、フルタンク400km走れました。

 

柔らかいけれどハリのあるシートは、国産モデルでもかなり上位に来る座り心地。グラブバーは左右分割式で、荷かけフックつき。シート下には400SBにのみ標準装備のETC車載器がある。モノサス車のサスペンション位置に小物入れが設けられている。

 

シート下にヘルメットホルダー用フックはあるけれど、使いやすいのはやはりこちらの外部プッシュ式ヘルメットホルダー。ヘルメット上に荷かけフックが見える。
カウルのインナーパネルには小物入れを装備。右はキーなし、左はキーロック付きで、こんな装備って、あるとやっぱり便利! ライダーはやっぱりウエスを常時持っておきたい。

 

CB400SF/SBは誕生一貫してパイプハンドル。400SBにだけ標準装備のグリップヒーターが見える。デジタルメーター全盛の現在でも、アナログ2眼+液晶表示を維持するメーター。液晶表示はオド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、使用ガソリン量などを表示。

 

単なる整風はもちろん、スタイリングの重要なアイコンとなっているハーフカウル。角型ヘッドライトはLEDで、デイタイムランニングライトを装備。スクリーン高さは固定式。

 

●CB400 SUPER BOL D’OR [CB400 SUPER FOUR] Specification
■エンジン型式:2BL-NC42 ■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ■ボア× ストローク:55.0×42.0mm ■最高出力:41kW〔56ps〕/ 11,000rpm ■最大トルク:39N・m〔4,0kg-m〕/9,500rpm ■全長× 全幅× 全高:2,080×745×1,160[1,080]mm ■ホイールベース:1,410mm ■シート高:755mm ■タイヤ(前・後):120/60ZR17M/C× 160/60ZR17M/C ■車両重量:206[201]㎏ ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■燃料タンク容量:18L ■車体色:キャンディークロモスフィアレッド、アトモスフィアブルーメタリック、ダークネスブラックメタリック[■メーカー希望小売価格(消費税10% 込み):1,084,600 / 1,040,600 [884,400]円※[ ]はCB400 SUPER FOUR

 



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2021/07/09掲載