YAMAHA TRACER9 GT ABS 車両解説
一足先に海外でデビューした新型TRACER9 GT ABSがいよいよ国内発売される。
2021年モデルの「MT-09 ABS」同様、888cm3、水冷4ストローク3気筒、DOHC4バルブの平成32年排出ガス規制適合のCP3(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)エンジンを搭載。ピストンやコンロッドなどの多くの主要パーツが新設計され軽量化が図られた新型エンジンとなった。
燃料供給系も一新され、インジェクターは従来のシリンダーヘッド直付からスロットルバルブ側に取り付け位置を変更。噴射はバルブ傘裏方向とし、優れた燃焼効率を引き出している。こうした改良と軽量化などにより、燃費の改善を実現し、さらにクラッチレバーの操作荷重を低減することでスポーツツアラーとしての機能を高めているという。
車体面では、軽量CFアルミダイキャスト製の新フレームと専用リアフレームおよびリアアームを採用。
2021年モデルの「MT-09 ABS」のフレームをベースに「TRACER9」用に専用チューニングが施された新フレームを採用。ヘッドパイプ手前のステーや、シリンダーヘッド左右のエンジン懸架ブラケットをチューニングし、剛性バランスをスポーツツアラーとして最適化。また、リアフレームも専用設計とし、高速安定性やタンデム居住性を確保している。リアアームも専用設計で、アルミパネルを溶接したボックス構造を採用、高い剛性と軽量化を両立している。それによりトラクションをライダーに伝え、高速走行時、旋回時の安心感にも寄与しているという。
ステーやブラケットの専用チューニングと合わせ、積載時の直進安定性、旋回性も向上。さらに純正アクセサリ―のサイドケース、トップケースの計3バッグを搭載可能とし、積載性も向上した。
★YAMAHA ニュースリリースより (2021年6月22日)
スポーツツアラー「TRACER9 GT ABS」を新発売
~エンジン、フレームを刷新し、スポーツ性能とツーリング性能をさらに追求~
ヤマハ発動機株式会社は、高いスポーツ性能と実用機能を備えたスポーツツーリングモデル「TRACER9 GT ABS」を7月28日に発売します。
「TRACER9 GT ABS」は、“Multirole fighter of the Motorcycle”をコンセプトに開発しました。エンジン・車体ともに大幅に進化・軽量化した「MT-09 ABS」をベースに、高いスポーツ性能と、ツーリングなど多用途に使える実用機能を磨きながら、軽量化技術を織り込み、同クラス最軽量級の車両重量を
実現しました。また、新しい「TRACER」の世界を提唱するスタイリングを採用しています。
「TRACER9 GT ABS」の特徴は、1)トルクフルな新888cm3CP3エンジン、2)軽量CFアルミダイキャスト製の新フレームと専用リアフレームおよびリアアーム、3)独自のSPINFORGED WHEEL(スピンフォージド ホイール)技術による軽量アルミホイール、4)新IMUを活用した運転操作を支援する各種制御、5)優れた乗り心地、接地感をもたらすKYB製前後電子制御サスペンション、6)機動性と機能性を表現したスタイリング、7)スポーツツアラーとしての快適性と機能性をさらに高める充実装備と車体構造などです。
- <名称>
- 「TRACE9 GT ABS」
- <カラー>
- ・ブルーイッシュホワイトメタリック2
(シルバー) - ・ビビッドレッドソリッドK(レッド)
- ・マットダークグレーメタリックA
(マットグリーニッシュグレー) - <発売日>
- 2021年7月28日
- <メーカー希望小売価格>
- 1,452,000円
(本体価格 1,320,000円/消費税 132,000円) - 販売計画
- 1,000台(年間・国内)
-
※メーカー希望小売価格(リサイクル費用含む)には、保険料、税金(除く消費税)、登録などに伴う諸費用は含まれません。
- 【TRACER9 GT ABSの新たな特徴】
- 1)トルクフルな新888 cm3 CP3 エンジン
- 2021年モデルの「MT-09 ABS」同様888cm3・水冷・4ストローク・DOHC・3気筒・4バルブの平成32年排出ガス規制適合のCP3(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)エンジンを搭載。ピストンやコンロッドなどの多くの主要パーツを新設計し軽量化を図りました。
燃料供給系も一新し、インジェクターは従来のシリンダーヘッド直付からスロットルバルブ側に取り付け位置を変更。噴射はバルブ傘裏方向とし、優れた燃焼効率を引き出しました。こうした燃焼改善と軽量化により、燃費の改善を実現し、さらにクラッチレバーの操作荷重を低減することでスポーツツアラーとしての機能を高めました。 - 2)軽量CFアルミダイキャスト製の新フレームと専用リアフレームおよびリアアーム
- 2021年モデルの「MT-09 ABS」のフレームをベースに「TRACER9」用に専用チューニングを施した新フレームを採用しました。ヘッドパイプ手前のステーや、シリンダーヘッド左右のエンジン懸架ブラケットをチューニングし、剛性バランスをスポーツツアラーとして最適化しています。
また、リアフレームを専用設計し、高速安定性やタンデム居住性を確保しました。リアアームも専用設計し、アルミパネルを溶接したボックス構造で、高い剛性と軽量化を両立しました。それによりトラクションをライダーに伝え、高速走行時、旋回時の安心感に寄与しています。
ステーやブラケットの専用チューニングと合わせ、積載時の直進安定性、旋回性も向上。さらに純正アクセサリ―のサイドケース、トップケースの計3バッグを搭載可能とし、積載性も向上しています。 - 3)独自のSPINFORGED WHEEL(スピンフォージド ホイール)技術による軽量アルミホイール
- 当社独自のアルミ材の開発と工法の確立により“鋳造ホイールでありながら鍛造ホイールに匹敵する強度と靭性のバランス”を達成した当社独自の“SPINFORGED WHEEL”技術による軽量ホイールを採用。従来の「TRACER900」より前後で約1000g の軽量化と慣性モーメントをフロント11%、リア15%低減させたことにより、アジャイルな運動性能に貢献しています。
また、ブリヂストン社と共同開発の、ドライ性能、ウエット性能、耐摩耗性、高速走行時の直進安定性に優れる専用チューニングの新タイヤ「BATTLAX SPORT TOURING T32」を採用しました。 - 4)新IMU を活用した運転操作を支援する各種制御
- 2021年モデル「MT-09 ABS」同様に新開発の「IMU」(Inertial Measurement Unit)を搭載しました。
2015年モデル以降の「YZF-R1」で実績のある「IMU」の基本性能を維持しつつ、センサー構成を見直すことで50%の小型化、40%の軽量化を実現しました。
ECUには3種の制御システム(バンクの深さも反映するTCS、旋回をサポートするSCS、前輪の浮き上がり傾向を抑止するLIF)を織り込んでいます。個々の制御は相互に連動して運転操作を支援、マシンのポテンシャルを効率良く引き出します。各システムとも、介入レベル調整、およびON・OFF 設定が可能です。また新装備となるコーナリングランプや電子制御サスペンションの制御にも使用しています。 - 5)優れた乗り心地、接地感をもたらすKYB製前後電子制御サスペンション
- スポーツ性と乗り心地の両立を図るため、KYB社と共同開発の電子制御サスペンション「KADS(KYB Actimatic※ Damper System)」を採用。「IMU」と「ECU」、「HU(Hydraulic unit)」の情報にもとづき、「SCU(サスペンションコントロールユニット)」が、減衰レベルを最適化する仕組みです。減衰力の調整機構には、当社初となるソレノイド駆動を用いており、素早く、かつ大きく減衰力を調整できるため、優れた接地感やスポーツ走行時の高い路面追従性を実現しています。
なお、ドライのスポーティな走りを主体にウエットにも対応できるモードと長距離走行時などでの快適な乗り心地を狙ったモードの2 モードがあります。 - ※Actimatic: ActiveとAutomaticから成る造語で、自動調整により得られる高い運動性能を表現
- 6)機動性と機能性を表現したスタイリング
- 意匠のための要素をなるべく取り除き、旅をするための機能を最優先したスタイリングとしました。
「MT-09 ABS」が持つ凝縮感のあるプラットフォームをもとに、スクリーン、フロントカウル、ブラッシュガードなど最適なウインドプロテクションのための機構をコンパクトにまとめ、専用設計した灯火器の採用で、旅のための機能を最優先にしたデザインとしています。
また、ウインドプロテクションを向上させる新デザインスクリーンやフロントカウルで目的地へ向かう推進力を表現。コンパクトなブラッシュガードやフローティングさせた3.5インチダブルTFTメーターは、広い視界やハンドル切れ角の可動範囲の確保に貢献し、旅の中での軽快なハンドリングや風景を楽しめそうな雰囲気を醸し出します。 - 7)スポーツツアラーとしての快適性と機能性をさらに高める充実装備と車体構造
- ●夜間走行でライダーの負担の低減を図るコーナリングランプ
- 車速約5km/h以上で、バンク角が7度を超えると点灯する新作コーナリングランプを採用しました。ハイビーム、ロービームいずれの場合もイン側のコーナリングランプが点灯を開始し、バンクが深くなるのに伴い明るくなることでライダーの夜間走行をサポートします。
- ●3バッグ搭載を可能にするダンパー内蔵サイドケース用ステー
- 純正アクセサリーのサイドケース用のステーを装備。独自の制振技術を応用して、サイドケースの振動を減衰することで、サイドケース搭載時の高速安定性と旋回性を高次元で両立しています。
- ●3.5インチダブルTFTメーター
- 左のメインメーターは、回転数に応じて色が変化するデジタルバータコメーター、燃料計、平均燃費、水温計、外気温計、シフトインジケーター、ETCカード挿入確認※などの機能を搭載。またクルーズコントロールシステムのセット速度もメーターで確認でき
ます。右側のメーターでは各情報から4種を選び拡大表示が可 - ※二輪車用ETC車載器アンテナ分離型JRM-21を装着し、車両に装備されているETCコネクターに接続すると、メーター内のETCインジケーター表示機能を使用できます。
- ※当画像は撮影用に点灯させたもので、実際の走行状態を示すものではありません。
- ●新作のグリップウォーマー
- 指の触れるグリップ部に薄いラバーを用いることで、ヒーターの暖かさを伝わりやすくしています。
また握りやすい形状です。リングスイッチで10段階に調整ができ、極寒季から夏季の早朝まで、環境変化に対して細かなレベル調整が可能です。 - ●足つき性も向上した快適な新ライディングポジション
- スクリーン高を5mm単位で10段階に調整可能な新デザインの大型フロントスクリーンや、コンパクト設計ながら防風効果も併せ持つブラッシュガードなど、ウインドプロテクション効果の高い装備を搭載しています。加えて、シート高を「TRACER900」より40mm低い810mmに抑えることで、疲れにくいラ
イディングポジションを実現しました。またフットレストとハンドルバー、メインシートはそれぞれ2ポジションから選べ、ライダーの好みに合わせて調節が可能です。
主要諸元
車名型式 | 8BL-RN70J | |
---|---|---|
TRACER9 GT ABS | ||
発売日 | 2021年7月28日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.175×0.885×1.430※1 | |
軸距(m) | 1.500 | |
最低地上高(m) | 0.135 | |
シート高(m) | 0.810/0.825※2 | |
車両重量(kg) | 220 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※3 | 30.5(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※4 | |
20.4(WMTCモード値 クラス3 サブクラス3-2 1名乗車時)※5 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | – | |
エンジン型式 | N718E | |
水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 888 | |
内径×行程(mm) | 78.0×62.0 | |
圧縮比 | 11.5 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 88[120]/10,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 93[9.5]/7,000 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | T.C.I.(トランジスタ式)式 | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ | |
潤滑油容量(L) | 3.5 | |
燃料タンク容量(L) | 18 | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.571 |
2速 | 1.947 | |
3速 | 1.619 | |
4速 | 1.380 | |
5速 | 1.190 | |
6速 | 1.037 | |
減速比1次/2次 | 1.680/2.812 | |
キャスター(度) | 25°00′ | |
トレール(mm) | 108 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C 58W |
後 | 180/55ZR17M/C 73W | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム(リンク式) | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
※1:フロントスクリーン位置を一番低くした状態での全高。
※2:2段階に調節可能。
※3:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※4:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
※5:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。