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試乗・解説

●文&撮影:毛野ブースカ ●撮影協力:玉井久義 ●取材協力:スズキ https://www1.suzuki.co.jp/motor/

 コロナ禍において通勤・通学手段としてバイクを選ぶ方が増えているという。かくいう私もホンダ400Xを購入してから電車通勤だったのだが、昨年からバイク通勤に戻した。しかしホンダ400Xはツーリングマシンにして、通勤専用のバイクが欲しいのが今の本音。そこで気になるのが維持費が抑えられて扱いやすい125㏄(通称ワンツーファイブ)クラスのスクーターやギア付きスポーツバイクだ。実際にこのクラスは人気があり、街中でもよく見かける。CT125が出ても人気のクロスカブ110は試乗させてもらったことがあるので、今度はスポーツバイクの実力を味わってみたかった。





 かつて2ストローク125㏄のスポーツバイクが隆盛を極めた時期もあったが、近年は250㏄クラスのスポーツバイクも含めて気軽に乗れるこれらのクラスに注目が集まっている。そんな125㏄クラスを牽引しているのが「GSX」の名が冠されたスズキGSX-R/S125 ABSだろう。Sはネイキッド、Rはフルカウルつきで、どちらもエンジンは水冷DOHC 4バルブ仕様の単気筒125㏄。ダイヤモンドタイプフレームやペタルディスク、ABSを標準装備するなどGSXという名に恥じない贅沢な仕様となっている。今回私が試乗したのはスズキを代表するスーパースポーツGSX-Rシリーズの末弟に位置付けられるGSX-R125 ABSだ。

 本当はネイキッドタイプのGSX-S125 ABSに乗りたかった。その理由は単純でフルカウル+セパレートハンドル(セパハン)仕様のバイクに乗ったことがなく、乗りこなせるかどうか不安だったからだ。今まで所有した3台のオフ車、現在所有しているホンダ400Xいずれもアップライトなライディングポジションのバイクばかり。GSX-Rのようなフルカウル+セパハンの「本気モード」(あくまでも私論)のバイクは初めて。周囲から「首が痛くなるよ〜」とか、同僚の玉井カメラマンからは「おじちゃんセパハン初めてでしょう、大丈夫?乗れる?」なんて忠告や心配されるばかり。実は当の本人がいちばん不安で、「オレ大丈夫かな…乗りこなせるかな…」と試乗車を引き取る寸前まで逡巡していた。

 しかし、実車を目の当たりして第一印象が「あ、想像よりもスリムでコンパクトだな」ということ。兄貴分のGSX-R1000R ABSをひと回り小さくしたようなスタイルは、MotoGP車を思わせるようなデカールが印象的なトリトンブルーメタリック仕上げ。かつてバイクブームの時代を席巻したレーサーレプリカを思い浮かべる方もいるだろう。上級モデルのダウングレードのようなイメージがあった125㏄とは思えない。スズキのこのバイクに対する本気モードが伝わってくる。個人的にはブルーが好きなので、このカラーリングはかなり高得点だ。

 跨ってハンドルを握ってみると、あれ?思っていたよりもライディングポジションはシビアではなく窮屈な感じはない。確かにハンドルポジションは低いが、気合を入れ身構えて乗るほどではない。シートは座りやすく、身長168cm、体重78㎏の私で両足はべったり着く。小柄な方でも足着きは問題ないはず。オフ車やホンダ400Xに比べて視線は低くなるものの周囲の状況はしっかり把握できる。フルカウルながら車両重量は134㎏なので、かつて乗っていたススキジェベル250XCとほとんど変わらない。この軽さも扱いやすい印象を与えている。125㏄ならではかもしれないがこれなら乗りこなせそうだ。

 セルボタンを押すとエンジンがかかり、単気筒の125㏄エンジンが静かに小気味よく回っている。125㏄のフルカウルと聞くと、高回転でエンジンをぶん回して乗るようなイメージがあり、ちょっとスロットルを開け気味にクラッチを繋いだが、そんなことをしなくても楽にスタートできることに気づいた。2000〜2500回転あたりでクラッチミートできる。乗り始めからいい意味で期待を裏切られた。スタートして流れの良い片側3車線の国道から交通量の多い都心部に入り、交差点の左折でちょっと気を使うもののギクシャクする感じはない。中低速トルクは充分あり扱いやすい。都内だと3〜5速を多用する感じだが、空いている国道では6速に入れて6000回転くらいで流れに乗って巡航できる。

 玉井カメラマンから「ハンドル切っただけじゃ、しっかり倒さないと曲がらないよ」と忠告を受けていたが(個人的にはそんなことは百も承知なのだが…)、そこまで意識しなくてもヒョイと曲がれることがわかった。想像していたよりも全然乗りやすい。私のフルカウル+セパハン+125㏄仕様のバイクに対する先入観があまりにも偏っていて歪んでいたのかもしれないが、乗れば乗るほど楽しくなってきた。気になる燃費だが、都内を中心に走ってリッター45㎞前後で、ほぼカタログデータに近い数値となった。燃費の良さは噂には聞いていたが、ストップアンドゴーが多く、車の流れがあまり良くない都内でこれだけの数値が出るなら通勤快速としてアリだと思った。

 GSX-R125 ABSに乗った後、ホンダ400Xに跨ったら、ハンドルポジションの違いに乗り慣れているはずなのに戸惑ってしまった。それくらい両車のハンドルポジションに違いはあるもののGSX-R125 ABSが乗りにくいと感じない。フルカウル+セパハン初心者でも迷うことなく乗れる。双子のGSX-S125 ABSにフルカウルとセパハンを付けただけではない、かなり絶妙なパッケージングにその理由があるような感じがする。長距離を走った後の燃費も気になるところだ。これはじっくり乗って確かめてみるしかない。ということで、コロナ禍なので3密にならないように考慮して、自宅から現地まで片道約125km、周囲約125㎞の富士山周辺を1周する1泊2日のツーリングに出かけてみることにした。

GSX
GSX
GSX-Rシリーズの血統を引き継いだフルカウル仕様のGSX-R125 ABS。色は現行のGSX-R1000R ABSにも用意されているトリトンブルーメタリック。カウルやデカールのデザインなどGSX-R1000R ABSを踏襲しており、パッと見では125㏄とは思えない。まさに弟分だ。GSX-R1000R ABSオーナーなら欲しくなってしまうのではないだろうか。

GSX
フロントカウルをスラントさせることで流れるようなラインと引き締まったシルエットを実現。また空気抵抗の低減と高い安定性の実現、燃費向上にも一役買っている。
GSX
カウルと一体感のあるヘッドランプはスズキのアイデンティティである縦型2灯式。LEDが採用され、上がロービーム、下がハイビーム、左右にポジションランプを装備。

GSX
GSX-Rシリーズらしく左右のカウルにはGSX-Rのトレードマーク、SUZUKIのロゴ、そしてスズキ純正エンジンオイル「ECSTAR」のデカールが貼られている。
GSX
コンパクトなタンクの容量は11リットル。WMTCモード値の燃料消費率は45.1㎞/Lとなっており満タンで500㎞ほど走れる計算だ。実燃費についてはパート2でレポートする。

GSX
低くマウントされたセパレートハンドルとスラントしたフロントカウル。アップライトなライディングポジションに慣れた私にとってこの景色は未体験ゾーンだった。
GSX
右手元にはハザードスイッチとエンジンストップスイッチ、そしてスタートボタンにはワンプッシュで始動できる「スズキイージースタートシステム」が標準装備されている。

GSX
左手元にはバッシングスイッチ、ディマスイッチ、ターンシグナルスイッチ、ホーンスイッチが装備されている。
GSX
これがメインキーとキーシャッターオープナー。ちなみにGSX-S125 ABSはメインキーとキーシャッターオープナーが一体になっている。

GSX
GSX
タンク上面に設けられたキーシリンダーには盗難抑止用のシャッターが装備されており、メインキーに付属するキーシャッターオープナーでワンプッシュで解除できる。

GSX
キーシャッターオープナーのマグネット部分の凹と窓側の凸を合わせて押し込むとシャッターが解除できる。ツーリング時などチェーンロックを持ち歩けない場合に便利だ。
GSX
シートはセパレートタイプ。長時間座っても痛くなりにくく適度なコシがあって座りやすい。荷掛けフックなど装備されていないので、リアシート上に荷物を載せにくい。

GSX
ナンバーを見るとこのバイクが125㏄であることがひと目でわかる。テールランプとウインカーはバルブ式だがナンバープレートランプにはLEDが採用されている。
GSX
カウルの奥に水冷DOHC 4バルブ仕様の単気筒125㏄エンジンが見える。最高出力11kW/10000rpm、最大トルク11N・m/8000rpmを発生する。シャシーは高剛性と軽量化を実現したダイヤモンドフレームを採用している。

GSX
GSX
花弁形状のペタルタイプのブレーキディスクとリンク式モノショックリアサスペンションを装備。フロント、リアともに10本スポークの17インチアルミキャストホイール/チューブレスタイヤを採用。車名のとおりABSが標準装備されている。

GSX
リアシートを開けると書類入れやサービス工具が収納できるスペースが設けられている。説明書を見るとヘルメットホルダーが付属しているとのことだが確認できなかった。
GSX
デュアルテールエンドマフラーは上下2つある排気口の直径が異なる特徴を持つ。見た目のカッコよさと心地よいエキゾーストノートを奏でる。

GSX

GSX

GSX

身長168cm、体重78㎏の私が跨ってみたところ。足着きはとても良く、想像していたよりもライディングポジションは楽だ。とはいえ、ちょっとぎこちないライディングポジションはご愛敬。スリムでコンパクトなボディは取り回しやすい。

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2021/06/01掲載