GSX-R125 ABSの実力を探るために、当初は満タンでどこまで行けるのかを試そうと思った。しかし、WMTCモード値の燃料消費率は45.1㎞/Lとなっており概算で500㎞、つまり西日本方面なら京都、東日本方面なら岩手県一関市を過ぎたあたりだ。高速道路に乗れるならまだしも高速道路に乗れない125㏄だと行きはいいが、帰りがしんどい。いろいろと調べた結果、自宅(調布市)から約120㎞離れた富士山を目指し、富士山をぐるりと一周して約120㎞、そして自宅まで約120㎞、合計すると400㎞前後になり、500㎞には及ばないものの燃費を測るにはちょうどいい距離であることがわかった。さすがに一般道メインで日帰りは厳しいので、初日は富士山周遊の出発地である河口湖まで行って宿泊。翌日河口湖を出発して富士山を一周して河口湖に戻り、そのまま帰宅するというスケジュールにした。
出発当日の天気は快晴。気温も高く絶好のツーリング日和だ。河口湖までのルートは至って単純。国道20号線を甲府方面にひたすら進み、笹子トンネル手前で県道212号線に入って笹子峠を通過。再び国道20号線に戻って山梨県笛吹市に入って国道137号線に進み、県道708号線を通って御坂峠を通過して河口湖にあるホテルルートイン河口湖に到着するというルートだ。河口湖やその周辺は何度も訪れているが、一般道を通って行くのは初めてだ。あえて県道を選んだのはワインディング路での乗りやすさを確かめるためだ。
自宅から出てすぐの交差点で、犬を散歩させているオジサンとすれ違い、目が合ったのでなんか気に障ったかなと思いきや「カッコイイよ!」と思いもよらない言葉をかけられた。ホンダ400Xではそんなことを言われたことがないのに……GSX-R125 ABSの予想外の魅力に気づいてしまった。都心とは逆方向とはいえ午前中は交通量が多くストップアンドゴーの連続だが、低中速域でも扱いやすいのでストレスなく進める。国道20号線のバイパス方面に進み、日野市付近からようやく通行量が減り始めた。JR八王子駅近くを通過して高尾駅までは平坦な道が多く。京王線の高尾山口駅を通過すると大垂水峠に向かって登り坂とワインディングが続く。いよいよGSX-R125 ABSの本領発揮といったところ。峠に向かって登り坂とカーブがキツくなるが意外とトルクがあってストレスなくグイグイ進む。セパハンのポジションにもだいぶ慣れてきたのと車体が軽いこととあいまってハンドリングしやすい。これは楽しいぞ。
大垂水峠を過ぎて第1チェックポイントの相模湖公園に到着。一昨年にホンダモンキー125で訪れて以来だ。相模湖公園まで自宅から約2時間かかった。しかし、ここまで来て出発時にトリップメーターをゼロにしていなかったことが判明。約40㎞ほど走ったが仕切り直してここからトリップメーターをゼロにしてスタート。気温はさらに上昇してまるで初夏の陽気だ。平日にもかかわらずツーリングしているライダーが多かった。
相模湖公園を出発して再び国道20号線を甲府方面に進む。大月市まではカーブやアップダウンが多いものの信号は少なく流れはスムーズ。何度も通過しているルートだが、125㏄だと景色が違って見える。途中、上野原市内に入るとストップアンドゴーが増えたものの、そこ以外はほぼギアは5速〜6速に入れっぱなし。大月市を通過するとさらにカーブとアップダウンが減りクルージング状態に。ここまでお尻がちょっと痛くなってきたが、首は痛くなく疲れもそれほど感じない。
笹子トンネルに差し掛かる手前で笹子峠方面へ分岐する県道212号線を進む。林道は舗装されているものの道には落石や枯れ木が落ちてちょっと荒れ気味。こういう時、トラブルが起きても車体が軽くて足着きがいいと安心だ。勾配のキツい箇所もあったが、パワー不足は感じなかった。矢立の杉と笹子峠下にある笹子隧道(ずいどう)を通過し、下りのワインディングを乗り切って国道20号線に合流。県道212号線は今まで通ったことがない道だったが、なかなか味わいがあって良かった。
再び国道20号線を進み勝沼町を通過して、笛吹市に入ったところで河口湖方面に向かう国道137号線に入る。ここから御坂峠に向けて登坂車線が続き、さらに交通量が多くてアベレージスピードも高い。勾配がキツくなるにつれてどんどんスピードが落ちてくる。後続車に道を譲りながら進む。自分のライディングレベルにもよるだろうが、さすがに125㏄では厳しい感じだ。そのまま新御坂トンネルを進むのは危険なので、予定どおり御坂峠に向かう県道708号線に進む。交通量は少なく、先ほどの県道212号線に比べれば走りやすい。最高地点の天下茶屋から望む富士山はなかなかの光景だった。
富士山を堪能した後は県道708号線から国道137号線に入って今宵の宿であるルートイン河口湖を目指す。河口湖の湖畔に建つルートイン河口湖に到着したのは午後5時。ここからも富士山が望めた。走行距離は相模湖公園からちょうど100㎞、自宅からはおよそ150㎞だった。平均燃費は48.8㎞/lを叩き出してカタログ数値よりもいい結果に。噂に聞きし好燃費だ。途中ワインディング路が多かったので平坦な道が多くて、走り方を工夫すればもっと燃費が上がったかもしれない。
翌朝、天気は雲ひとつない快晴。富士山一周にふさわしい天候だ。まずはホテルの目の前で富士山をバックにツーショット撮影した後、河口湖を午前8時30分に出発。ここからは国道137号線を笛吹市方面に少し戻って県道21号線に入って西湖、国道139号線に入って精進湖、本栖湖の順で進んでいく。ホテルを出発していきなり絵に描いたような「逆さ富士」に遭遇。これは縁起が良さそうだ。河口湖を通過して西湖に到着。湖畔を走っていたらビューポイントを発見。富士山とのツーショット撮影後、精進湖へ。平日のためか交通量は少なく、あっという間に精進湖に到着。ここでも西湖と同じビューポイントを見つけてツーショット。続く本栖湖では富士山とのツーショットはできなかったが、青く澄んだ空にGSX-R125 ABSのトリトンブルーメタリックが良く似合う。
富士五湖のうち四湖を攻略して、ここからは国道139号線を走り、静岡県に突入して富士山のビューポイントで有名な朝霧高原に向かう。河口湖に戻るまで富士山は拝み続けられるのだろうか。(後編に続く)
※この記事は緊急事態宣言発令前の4月22日〜23日に取材したものです。