人気のレブルシリーズに1100が加わった。レブル1100も、レブル250、500と同様、スキニーボディーに小ぶりなタンク、そして低いシートというスタリイを踏襲する。シルエットで見比べたら、この三兄弟、見分けがつかないのでは、というほど似ている。
しかし、レブル1100は高い質感も備えている。それは、コーティングされダークブルーになったフロントフォークのインナーチューブ、リアサスもリザバータンク付きのショックユニットだ。なによりドライブチェーンを含め、エンジン、車体の構成パーツがダークトーンで統一され、ギュッと引き締まって見える。また、ボディ同色にペイントされたフロントフェンダーなど細部のコーディネイトも含め、上級モデルを静かに語っているようだ。
他にもある。排気量相応サイズの大きなマフラー、また250、500では150/80-16という同サイズだったリアタイヤが、1100では180/65-16というワイド化されるなど、所々にやっぱりデカイ! と思わせるディテールが潜んでいたりする。
でもそれくらいだろうか。250と500が共通のボディサイズを持つのに対し、1100は全長で35mm、全幅で30mm、全高25mmサイズアップしている。しかし、デザイン上の特徴でもあり、抜群の足着き性を持つシート高は、レブル250、500から10mmアップの700mmにとどめている。
車重に関してはさすが1100。250の170㎏、500の190㎏に対し1100のそれはマニュアルミッション車が223㎏、DCTモデルが233㎏とそれぞれ43㎏、53㎏の重量が増している。それだけに跨がってサイドスタンドから起こしたり、向きを変えるために押してみてもさすがに重量を感じるが、いわゆる1100のバイクとして考えたら平均的な重さ感だろう。
搭載されるエンジンは、CRF1100Lアフリカツインに搭載されるものと同型の水冷直列2気筒、クランクシャフトに90度の位相角をつけた不等間隔爆発エンジンだ。90度V型2気筒エンジンと同等の爆発間隔を持つエンジンだけに、エンジンのパルス感はクルーザーにマッチするもの。
エンジン特性はアフリカツイン用ユニットよりも低中速トルク型に振られていると想像できる。レブル用ユニットは、最高出力64kW/7000rpm、最大トルク98N.m/4750rpmを発揮する。アフリカツイン用は、75kW/7500rpm、105N.m/6250rpmで、レブル1100用ユニットよりもさらに高い回転域でそれを生み出すことが予想の根拠だ。つまり、常用域でアフリカツインのそれを上回るパンチがあのだろう。
60km/h定地走行燃費値がほぼ同等なのに対し、WMTCカテゴリー3-2の燃費データがアフリカツインの21.3km/lなのに対し、レブル1100のそれが18.7km/lとなっているのもそれを裏付けるのではないか、と想像する。
WMTCはそもそも排出ガスの環境テストのためのテストサイクルで、市街地、郊外路、高速道などをシミュレーションした走行サイクルをシャーシダイナモ上で再現。一定の気温下という整えた室内で計測する。
そしてシャーシダイナモ上で同じ時間、同じ距離で走行シミュレーションをするのだ。その時に排出された排ガス成分から逆算して燃費を算出している。つまり、燃費が悪い→燃料を多く使う→トルクを多く出している、という点からも、レブル1100の常用域で持つ加速力への期待に胸が高鳴る。
補足で言えば、WMTCカテゴリー3-2では、高速モード測定時に130km/h程度までを上限に高速燃費モードでも加減速が頻繁に行われるため、一般的な使い方よりは燃費が悪い傾向が多い。一般道を流すペースで走れば、レブル1100もWMTC値が示す値よりだいぶ良い燃費になるはずだ。アクセルをガバッと開ける必要があるWMTCテスト。そこではじき出された燃費データから、レブルのエンジン特性を占ってみた、というものでした。
とにかく、レブル1100のミッドステップと相対的にアップライトになるライディングポジションから想像すれば、腹筋とシート後部のバケット形状のところに相当な加速Gを楽しめるハズだ。
装備面からしても、クルーズコントロール、ETC2.0、グリップヒーター、シート下にはUSBソケットなどを装備するだけに、MTモデルで110万円(税込み)、DCTモデルで121万円(税込み)という価格は魅力的。
クルーザーというカテゴリーとなるレブル1100だが、レブル250が表現したように、このバイクは、レブルという存在自体がニュースクールなパッケージだ。ワインディングや市街地をヒラヒラ走るファンバイクとしてレブル1100がどんなユーザーにコネクトするのか。今から楽しみだ。
(解説:松井 勉)
■型式:ホンダ・8BL-SC83 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒OHC4バルブ ■総排気量:1,082cm3 ■ボア×ストローク:92.0×81.4mm ■圧縮比:10.1■最高出力:64kw(87PS)/7,000rpm ■最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/4,750rpm ■燃料消費率:国土交通省届出値、定地燃費値31.5km/L〈60km/h、2名乗車時〉 WMTCモード値18.7km/L(クラス 3-2)〈1名乗車時〉■全長×全幅×全高:2,240×850[830]×1,115mm ■ホイールベース:1,520mm ■最低地上高:120mm ■シート高:700mm ■車両重量:223[233]kg ■燃料タンク容量:13L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン[電子式6段変速(DCT)] ■タイヤ(前・後):130/70B 18M/C 63H・180/65B 16M/C 81H ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:ガンメタルブラックメタリック、ボルドーレッドメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,100,000円[1,210,000円] ※[ ] はDCT
| ホンダのWEBサイトへ |